今回は3000円未満の低価格帯イヤホンの中から、実際使ってみておすすめできると思った、魅力的なイヤホンを5つ紹介します。
【1】SONY XBA-C10
【評価】
高域:☆☆☆☆☆
中域:☆☆☆☆☆
低域:☆☆☆★★
[高音]:のびやかで透明、クリアで明瞭、突き抜け感もあり高さも出やすい。そのうえ尖りすぎずほどよく聴きやすい。この価格帯では別格に近い音。
[中音]:ピアノ音は鮮やかで、ストリングスはのびやかでやわらかみもある。広さの表現に貢献している。バランスドアーマチュア型だと刺さった感じで出やすいイメージがあったが、ほどよい丸みがあって優しい。
[低音]:100hz~40hzまでしまりがあるきれいな振動で素直に減衰する。30hzから沈む。ややおとなしめ。
[解像度・立体感]:緻密で定位感はなかなかにあり、奥行き感が感じられる。
[パーカッション・リズム]:控えめではあるが、力強さとそこそこメリハリの感じられる存在感のある音。立ち上がりはそれほどでもなく、疾走感もまあまあ出ている。
[ボーカル傾向]:のびやかで透明感があり、明瞭でクリア。
【総評】
高域の表現力はこの価格帯ではかなり上質。中域以下も鮮やかがあり、ほどよくメリハリ感もある。高域寄りの女性ボーカルの曲は緻密さとキラキラ感、のびやかさを同居させた、かなり精彩のある音楽になって素直に嘆賞してしまう。バランス感覚にも優れており、バランスドアーマチュア独特のギラギラ感がほとんどなく自然に近づけている表現力はうまい。
この価格帯の高域モデルではベストバイに近い完成度に思う。
【2】SONY MDR-EX250
【評価】
高域:☆☆☆★★
中域:☆☆☆☆★
低域:☆☆☆☆★
[高音]:高域はやや天井感がある。明白な頭打ちは感じないが、それでものびやかさには若干欠ける印象。
[中音]:ピアノは柔らかく、ポロンポロンという優しい鳴り方。全体的に中域は広く、奥まった感じでスカスカしているところはある。
[低音]:全体的にやわらかい弾みを感じ、地鳴りに近い空間下方向に広がる鳴り方100hz~20hzまで素直な減衰で40hz以下はほぼ聞こえない。荒れた振動域はなく、下へはかなり深掘りされて聞こえる。
[解像度・立体感]:とにかく広い音場。全体的にのびやかで奥行きを感じさせ、圧迫感はない。最初の印象では音が遠く小さく感じられるが、耳を澄ませると音像ははっきりしており、澄み渡るといった感がある。
[パーカッション・リズム]:精度は高く、意外と鮮明に聞こえるが、全体的に強調されないので、曲調はどれも比較的穏やかに感じられる。
[ボーカル傾向]:やや暗く感じられるが、中低域は活き活きしている。高域は若干弱い。
【総評】
低価格イヤホンでは随一といっていいくらいの広い表現が魅力。一般的なイヤホンと比べるとおとなしめに感じるので、最初は味気なく感じるが、聞き慣れてくると、聞き疲れせず、ほどよい繊細さもあり、気に入れば他のイヤホンとは明らかに違う魅力に気づく。好みは分けそうであるが、低価格とは思えない空間表現力を持っているのは事実で、それだけ考えればコスパは悪くない。が、広さに偏りすぎているところもあり、万人向けという感じではない。
【3】Bengoo KZ-ED2
【評価】
高域:☆☆☆☆★
中域:☆☆☆☆★
低域:☆☆☆☆★
[高音]:のびやかで厚みと温かみもあり、ほんわかとした優しい音。
[中音]:密度と温かさがあり、充満したエネルギーを感じる。響きに丸みがあってマイルド。ピアノや弦楽の音もはっきり聞こえて広さより密度を作る印象。
[低音]:音像にブレが少なく、100hz~20hzまで素直に減衰する。振動の出方がやはり優しく、温度感がある。弾みよりはエネルギーを内に溜め込む膜を張るような音。
[解像度・立体感]:丸みを感じやすい音場。細胞壁的なタイトな空間というよりは細胞膜で囲むような膨張感のある球状の空間にエネルギーが充満する。
[パーカッション・リズム]:アタック感よりは音場を支える安定感のある表現。
[ボーカル傾向]:ボーカルは楽器音に包まれている。ボーカルは近く、やや低めで安定した位置取りをしている。寒い中で息が白くなるような、ふんわりした感じのある吐息の暖色が感じられる声質になりやすい。
【総評】
あたたかみのある生命感を感じる味付けが柔らかく、優しい。女性ボーカルは非常にふっくらとしたたおやかな音になって、ギザギザしたところは全くない。楽器とボーカルの距離も近く、低域も膜を張るような感じで全体としてややぼんやりするところはあるものの、音場の充実した表現は一聴に値する。
どんな曲でもいけるが、とくにJAZZ、クラブミュージックなどに向く気がする。
【4】Archeer AH15
【評価】
高域:☆☆☆☆☆
中域:☆☆☆☆☆
低域:☆☆☆☆☆
[高音]:透明感とのびやかさがあり、ほどよい突き抜け感もある。
[中音]:中域は緻密。様々な音を細かく描き分けてしかもボーカル周りに配置するので密度が高い。細密画のような表現。
[低音]:広く強めに響く。100hz~90hz付近は中域と近いのでドライバー同士の干渉があるのか音像に乱れがある。80hz~60hzが非常に締まって綺麗な振動。50hz~20hzの振動は地鳴りを作る沈み込む音だ。専用ドライバーを搭載しているだけあって、ドラムがかなり自由に広く動くので躍動的。また地鳴りを作りながらも沈み込まない、床面を意識させる音。
[解像度・立体感]:広い低域の上に緻密な中域、高さのある高域と三角形の音場。
[パーカッション・リズム]:ドラム重視でシンバルなどはやや軽く弱めで塩を振っているような音。ドラムは躍動的だが、その存在感に比べてシンバルの走りを感じづらいので疾走感にはやや乏しい。
[ボーカル傾向]:ボーカルは楽器に近いが、埋もれない。楽器とボーカルの一体感が強く充満した音楽表現に感じる。高域まで元気さが失われず、刺さりも少なく聞きやすい。
【総評】
2ドライバーの実力はとくにクラブミュージックに強みがあるようだ。吹き鳴らす金管楽器はきれいだが、ピアノはやや荒れやすいのでJAZZは曲によって向き不向きが出やすい。低域のしっかりした床面とボーカル周りに充満する稠密な表現は聴き応えがある。
【5】YAMAHA EPH-22
【評価】
高域:☆☆☆★★
中域:☆☆☆☆★
低域:☆☆☆★★
[高音]:ほどほどのびるが、キラキラ感や透明感にはやや乏しく、暗めに感じやすい。
[中音]:ほどよい広さと定位感。
[低音]:比較的振れ幅の締まったヴーという音。減衰は素直。
[解像度・立体感]:定位感は良好。足場は若干腰高。
[パーカッション・リズム]:ドラムは反発力があり、ハイハットの粒感も比較的良く出ていて疾走感も出る。
[ボーカル傾向]:自然な味わいで、のびやかさは少し弱いか。やや暗め。
【総評】
低価格モデルの中ではバランス感覚に優れたモデルと言えそうだが、全体的に耳を澄ませばよく出ているものの、個人的に音の印象が薄弱になりがちでいまいちハマるところの少ないイヤホン。上品すぎて面白みに欠ける印象だが、逆に言えばそれは安定した実力がある証拠なのかも知れない。