final バランスドアーマチュア型イヤホン Heaven V FI-HE5BSB3-A
おすすめ度*1 |
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ASIN |
外観デザインはHeavenシリーズ共通のようで、final audio designらしいシンプルながら洗練されたデザイン。軽量小型で耳当たりは良い。遮音性はそこそこ高いが、音漏れはやや大きめで目立つ。
【1】外観・インターフェース・付属品
付属品は携行ポーチとイヤーピースの替え。平形ケーブルはややタッチノイズが目立つ。
【2】音質
HeavenⅣはどちらかというと素材の自然な色を重視したすっきりした味わいでスリムな印象だったが、上位機種であるⅤは色合いとフレーバーが増した充実した味わいで高級料理のような素材の味を熟成させ、混ぜ合わせた濃密さがある。密度が高く色づきもやや濃いめのはっきりした感じで低域の表現力もよりしっかりしていて厚みと反発が増し、空間的な熱量も高まっている。HeavenⅣがピリッと辛味が利きながらすっきりしたコンソメスープな味わいであったとすれば、こちらはカレーのような味わいでコクがあるというイメージだ。
[高音]:高域だけはやや高く伸び上がる傾向があり、分離感が強く頭一つ出る(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:定位感良く、密度も高い空間。音の量感もたっぷりあるのでやや狭く感じられるところはある。HeavenⅣにあった弦楽のややヒステリックな傾向は、厚みと奥深みが少し増したせいか色気を放つようになり、艶のあるコケティッシュな味わいになっていてそそられる。
[低音]:床面をしっかり意識させる厚みと反発力がある。振動も厚ぼったい存在感のある音。減衰は素直(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:背景の音はやや押されがちに聞こえるものの、音は潰れていない。低域がしっかりと床面を作り、中域は密度と色気を、高域は高さと開放感を出す三位一体をよく実現している。音場全体は三角形に頭を包み込む形で前面に出てきている印象だ(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:メリハリがしっかりと出る。ドラムは厚みと躍動感が同居していて、ハイハットは粒感良好でフレッシュに果汁がはじける果実のようだ(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:透明感と伸びやかさがあり、キラキラ感を抑えた自然な味わいながらみずみずしさがあってサ行に刺さるところがない。抜けはスッキリ。
【3】官能性
petit milady「azurite」はドラムに重みと厚み、そして何より弾みがあって音場を躍動的にする。楽器の密度が高く、飛翔感を演出する効果音は背景に隠れがちではあるものの、反面元気で力強いロックサウンド風味が強く打ち出される感じで満腹感がある。
KOKIA「Dance with the wind」は弦楽音の色気が艶めかしく美しい。そこにかぶさる透明感の強いボーカルが幻想的な雰囲気を丁寧に織り込んでいて、絶品だ。
ClariS「Time」は低域に粘りと力強さがあって中毒的。低域が全体をしっかりまとめ上げてボーカルに素直にエネルギーを与えており、ボーカルの味わいに彩りを感じる。
光田康典「ブランデンブルク協奏曲5番第1楽章 ユーロヒストリア アレンジバージョン」では躍動的な低域と、艶があってコケティッシュな弦楽のコラボレーションが明るく楽しい空間を作り上げる。途中の管弦楽器の掛け合いも愛嬌たっぷり。
【4】総評
主力機種であり、値段的にもこなれてきて流通数も比較的多く、どこで買っても極端な高値掴みにはなりにくいので、順当な価格で買えるのがよい。音質的な充実感、濃厚な味わいは非常に魅力的で、弦楽を中心に色気のある音はとてもきれいで楽しい。低域もしっかり聞こえて量感もたっぷりあるので、熱気や力強さも十分でパワフルなサウンドが聞けるため、どんな曲でも比較的よく聞こえる。個人的にはこの価格帯で真っ先におすすめしたいイヤホンの一つだ。
【5】このイヤホン向きの曲
ドラムの地熱感と立ち上がりの良い楽器音が雰囲気を否応なく盛り上げる。ボーカルはのびやかで突き抜け感があり、コシもあって力強い。金属的な楽器音も鮮明度が強く、弦楽には色気がある。空間的な密度感も良好で中盤のバジュラの歌声の場面も空間表現的にうまく出て、シネマティックな盛り上がりが感じられる。(中島愛&May'n「サヨナラノツバサ」)
楽器のキレのよさと密度が濃密な空間を作る。ボーカルと楽器が一体的に響いてくるが、ボーカルが楽器に埋もれず調和的に空間に溶け込んでいる。クライマックスで高く伸びて突き抜けるボーカル表現部分はとくに妙味が感じられるところで、濃厚な空間を上へと開放していくカタルシスがある。(The Corrs「Good bye」)
パーカッションが刻みよく、地熱感を加える。金属的な色彩感を楽しめる弦楽には色気もある。残響感もしっかりしていて空間に色合いが感じられ、艶がありながら力強くソウルフルなボーカルも思う存分味わえる。(Hall & Oates「Man On A Mission」)
のびやかなボーカルとその空気への溶け込みが美しく、それだけでお腹いっぱいだが、さらに突き抜け感もきれいに出て空間を広げる。きらびやかさを増していくノスタルジックな展開も丁寧に表現され、弦楽のまとめあげ方が美しく、そして情感たっぷり。クライマックスにパーカッションが加わってからの密度感がさらに秀逸だが、それはこのミュージッククリップでは省かれているので・・・・・・音源を手に入れた人だけのお楽しみだ。
final バランスドアーマチュア型イヤホン Heaven V FI-HE5BSB3-A
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。