JVC HA-ET900BT 完全ワイヤレスイヤホン Bluetooth/防水(IPX5対応)/最大9時間再生 ブラック HA-ET900BT-B
おすすめ度*1 |
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ASIN |
完全ワイヤレスタイプではやや大きめのハウジングながら、イヤーフック付きで耳への収まりは悪くない。やや重みと硬さを感じる装着感なため、耳の形によっては気になる人がいるかも知れないが、個人的に外出時に利用した感じではイヤーフックをしっかり働かせれば、耳当たりは優しく、疲れたり痛む感じはない。ただし、本体の大きさで耳から出っ張る形となり、満員電車などでは外れやすい場面もあるかもしれない。
遮音性はそれなりに高く、完全ワイヤレスモデルの中では環境音低減を感じるほう。音漏れも少なめな印象でスポーツモデルの需要をよく踏まえている。
aptXには対応しないが、通信性能の安定性は高い。音響機器から5m以上移動しても途切れや遅延は感じられず、シームレス。動画鑑賞でも不自然な音ずれは感じないだろう。
【1】外観・インターフェース・付属品
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、専用充電ケース、日本語マニュアル。
【2】音質
まず完全ワイヤレスモデルとしては広めの空間表現で圧迫感がない。JVCらしい音のエッジ感をきれいに出すモデルで低音量時にも音の輪郭感が失われない。ただし曲によってはシャリ傾向が出る場合があり、また低域近くの音には毛羽立つ感じが出る。完全ワイヤレスモデル全般の傾向として低域がやや簡素な印象があるが、このイヤホンもその点は大枠変わらず、重みと量感はどうしても感じづらい。しかし、締まりは良く弾けも感じられる音。高域もそれなりに高さを感じる。弦楽の伸びやかさ、色づきのバランスは良く、情感もきれいに出るので弦楽の味付けはよく生きる。ボーカルはエッジ感がしっかりしており、息遣いや輪郭が強い。キラキラした感じはあまりなく、自然に近い感じでほどよい温度感もある。
[高音]:高さが感じられやすく、広さに貢献している。弦楽の伸び上がる感じもうまく出る。音味はキラキラしすぎず、エッジ感があってのびやかさを感じやすい(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:完全ワイヤレスモデルにしては左右かなり広く、定位感がある。弦楽の奥行き感・情感はきれい。ピアノは比較的自然に近く、落ち着いている印象。一方でエレキ音などはエッジ感が毛羽立つ感じで強調されやすく、好みを分けそうなところはある。
[低音]:低域は重みがなく、量感的には物足りない。比較的タイトで音の輪郭ははっきりしているので、深みはかなり感じられる。聞き疲れはしにくい音。(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:高域高く、中域広く、低域深く。ボーカルを中心にかなり広めに空間を確保する球状構造を感じる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:輪郭感ははっきり出る。低域ドラムは重みがなく、支配的ではない。シンバルの輪郭感も出やすく、瞬発力もあって比較的軽快な色合いで明るく感じやすい(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:息遣いなどは感じられやすい輪郭のはっきりした声。若干シャリ傾向と思えるが、耳に刺さる感じはない。男性ボーカルの曲は厚みがやや足りなく思えるかも知れない。
【3】官能性
Uru「フリージア」はピアノのほどよい色づきと透明感が曲の色合いを落ち着いたものにし、精彩のある弦楽が情感と高さを表現する。ドラムはやや軽く湿っぽく、若干ズチャズチャした粘り気が出た味わい。個人的にはどちらかというと硬い反響感が好みなのでその点やや残念に思うが、中高域の充実感は頑張っている。
山崎あおい「夏海」はシンバルのほどよい精彩、明るい色合いのギター、輪郭感があるのでそれなりに重みを出しているドラム、ボーカルの息遣いも丁寧で高く伸びていく声色、広い空間表現となかなかに秀逸。
fhána「星屑のインターリュード」も悪くない印象。この曲は若干ガチャガチャしやすい曲だが、丁寧な空間表現と輪郭感のよさでうまく仕上げている。ピアノがキンキンせず、精彩に満ちた弦楽の表現もアクセントになっている。低域も響きすぎずタイトに丁寧に音を加える表現がうまく利いている印象。
Choucho「telescope」は全体的に瞬発力があって小気味よく、上方向へも高さを感じられるので、サビでののびやかさもよく出る。全体的に軽快で快活な味がよく出る上、緻密に音を描き分け、効果音のスパイスもかなり丁寧に出る。
【4】総評
価格的に完全ワイヤレスモデルではミドルレンジに当たり、低位機種で飽き足らない人をターゲットにしたと思われる商品。しかし音質的には上位機種に劣らぬ空間表現と解像度で、緻密かつ伸びやかな音楽空間を丁寧に作っていて、かなり完成度は高く思える。とくに高域方向の高さの感じられ方、弦楽の色づきのよさはかなりのもので、爆発力のあるパーカッションはスパイシー。曲によってシャリつく傾向が出たり、低域は全体的に物足りなく感じられてしまうという欠点はあるものの、魅力は十分。
装着感や装着性の安定感の面ではこなれていないところも感じられるが、通信品質は高く、上位機種でも通信性能が不安定だったりすることもある時期に、バランス良く使い勝手の良い機種をうまく投入してきた印象だ。20000円以下クラスの完全ワイヤレスモデルではかなりおすすめで、完全ではないワイヤレスモデルとの比較でも中高域と空間表現に関しては同価格帯の機種と渡り合える十分な音質といえる。
【5】このイヤホン向きの曲
緻密で瞬発力があり、爽快感のある傾向。若干シャリっとしやすいものの、効果音の輪郭感も爆発力も良好で充実した表現が思う存分楽しめる印象。ボーカルの声色も明るくのびやかに聞こえる。(歌組雪月花「夢見サンライズ」)
情感のある弦楽と上方向へのびやかなボーカルが曲全体の雰囲気作りに貢献している。ピアノはやや控えめで落ち着いているが、空間への溶け込みはよく感じられる。表現は全体的に緻密。(水瀬いのり「Wishing」)
この曲はボーカルの厚みがやや足りない気もするが、一方で広く吸い込んでいく空間はよく表現されており、個々の音の輪郭も良く、緻密さも感じられる。ミニチュア的ではあるものの、比較的うまく表現されている。
エッジ感が利いて、音の空間的な拡がりもよい。瞬発力もあって曲の展開もくっきりしており、ボーカルの透明感と伸びやかさも鮮明というより鮮烈といってよい。
弦楽の色づきもよく、開放的で、力強いボーカルも上方向に高く伸びていく。低域は量感はやや足りなく思うかも知れないが、輪郭はしっかりしているので確かな鼓動を感じさせ、シンバルの粒も細かく、ドラムス表面の爆発力もあるので弾けるビートが感じられる。
JVC HA-ET900BT 完全ワイヤレスイヤホン Bluetooth/防水(IPX5対応)/最大9時間再生 ブラック HA-ET900BT-B
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。