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【カナル型イヤホン NICEHCK M6 レビュー】劣化DMG。つまんないうえに構造上危険なノズルシステムは問題あり。もさっとした分離感の悪い中低域、異様に目立つ高域というバランス

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NICEHCK M6

NICEHCK M6

NICEHCK M6 複合ダイナミックドライバ + バランスドアーマチュア4基 カナル型イヤホンMMCX コネクタ リケーブル メタルハウジング 2DD(複合DD)+4BA 3.5mmプラグ ハイブリッド 銀メッキ高純銅ケーブル付属 耳掛け式 高解像力 高音質 高遮音性 中華イヤホン (緑色)

 

 

【1】装着感/遮音性/通信品質「若干不安定なところもあるが、ほぼ安定した品質」

おすすめ度*1

NICEHCK M6

ASIN

B07K441Y2P

 シュア掛けタイプのハウジングの装着感は悪くない。遮音性はほどほど。音漏れは少し。

 

 BGVP DMGという中華イヤホンに外観はほぼそっくりで、OEMやメーカーを変えた並行輸入品かと思うだろうが、実際は外観だけパクったというのが事実で、正規のライセンス関係はなく、中身も別物らしい。実際私が聴いた感じでもDMGとは個体差以上に音質差を感じた。

 

www.ear-phone-review.com

 

【2】外観・インターフェース・付属品「ノズルシステムは煩わしいだけで構造的にも固定が悪く危険」

 付属品は多数のイヤーピースの替え、3種類の音質ノズル、携行ケース。リケーブル可能。標準ケーブルにタッチノイズはない。

 

 音質を変更するノズルシステムは音の高低バランスを変えるだけで音味を本格的に変えるわけではないタイプで、面白味に欠けるし、なくてもいい。

 むしろ危険なのはこのノズルがネジ回しで本体に収まる形式になっているが、同じようなノズルシステム採用機に比べて固定が甘く、使用中に取れやすいことである。短時間の使用ではそれほど問題とならないが、外出時に長時間使用していると、場合によってこの部分が緩くなってノズルが取れ、耳穴に残ったり、紛失してしまうということがありうる。私はテスト中にノズルが取れて耳穴に残ってしまい、ちょっとこわい思いをした。このノズルのデザインはBGVP DMGも共通であり、危険である。

 大幅に音味を変えるHA-FD01SPのノズルシステムとは異なり、大した効果の無いノズルシステムなので、ハイリスクローリターンであり、これはちゃんと固定される構造に設計し直すか、いっそなくした方がいい。

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【3】音質「中低域はもっさりしているが、厚みがあり、高域は元気」

 このイヤホンはノズル変更によっても音味自体に大した変化はないので、以下は標準ノズルの音質でのレビューになる。ノズルごとの音質のわずかな違いについては総評で軽く述べる。

 

 多ドライバー機らしく、低域の厚みと高域にパワフルさを共存させているところがあるのは好印象。1ドライバーイヤホンに比べると、調整が甘いのか、わざわざ狙っているのかはわからないが、高域と低域それぞれに音の焦点があるような感じになり、少し不自然な立体感はあるし、圧迫感も出やすいが、いわゆる打ち込み系のサウンドには結構強い印象だ。アコースティックな曲、たとえばオーケストラサウンドだと、高域木管、ヴァイオリンあたりが浮き上がって聞こえるところがあり、低域が引っ込んだような前屈みな音になり、自然な聞こえ方とは大分異なる印象を受ける。高域楽器が目の前に居座り、低域楽器はだいぶ奥の方から聞こえてくる。そういう意味では、開放感を感じるかも知れないが、実際の音場が広いわけではなく、むしろ高域が近く出てくる分だけ狭く感じる。

 得意な曲調としてはエレクトロダンス系の曲、ゲームのサントラなんかの電子系音楽がいいだろう。音には耳当たりの良いウォームな傾向があるのでオーケストラやJAZZも案外悪くない感じははあるが、全体的に高域が出過ぎて明るすぎるところがあり、中低域にもたつく感じもあるので、このイヤホンの不得手な部分が見えやすいと思う。本格的なハードロックからヘヴィメタは大抵低域がうるさくなってダメだろう。

 

[高音]:高域が近く聞こえる癖がある。突き抜け感は良好。オーケストラだとヴァイオリンセクションの中から音を聴いてるんじゃないかと思えるくらい。かなり存在感は強調されており、精彩感はあるので、その点高域好きの人は解像度感を感じるのかも知れない。煌めき感や透明感は強調されず、自然な色味がある(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:ややドンシャリ傾向があって中域付近が少しスカスカするかもしれないが、中低域付近が出張ってきやすいのでそれほどスカスカ感はない。どちらかといえば目立つ高域を支える役回りになりやすく、地味ではある。

[低音]:厚みのあるぶっとい振動で100hz~40hzまで素直な減衰。30hzでややおとなしくなり、20hzはほぼ無音(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:高域が近めのバランスで出るので、印象的には前屈みに感じることが多い(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:地熱感と膨張感はそこそこで張りのあるバッスンバッスンという感じで爆発力のあるドラム表現になる。シンバルの粒感と発色は良く、ロックではパーカッション周りは結構気持ちよく聴けそうだ(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:中域付近で分離感が悪く楽器に埋もれやすいところがあるので、できれば女性の位置的に高めのボーカルだと聞こえが良い。のびやかさは丁寧に出るので突き抜け感も感じられる。

 

【4】官能性「低域の重厚感もそこそこ感じさせつつ、高域を出張らせる高域重視なバランス」

すぎやまこういち「この道わが旅」(交響組曲「ドラゴンクエスト」コンプリートBOX【2003年版】)

  ヴァイオリンとハープ、フルートが中心となる。低域弦楽は下の方でやや深めに分厚い底を作るバランスになる。とくにヴァイオリンの音は輪郭感が良く、引き締まりもよいうえ、低域がだいぶ下に聞こえる感じで分離感があるせいか、コントラストも良い。やや明るめの色合いだが、ウォームな柔らかみがあり、空気感はそこそこ出る。高域中心でさっぱりしすぎている感じはあるが、その分見通しは良い印象だ。こういう低域と高域の役割がはっきり分かれている曲には強い印象だ。

 ただ、私自身の感想としては低域と高域の間が離れすぎていて、この曲の密かな魅力である低域の空気感と高域の連携が失われており、きれいではあるが深みに乏しい、一本調子に聞こえる。まあ低域が引っ込む感じという意味では、ホールに近い音の鳴り方だねとかって肯定的に評価できるのかも知れないけど、残響感に乏しいからリアルさに欠ける。剥き出しな音が聞こえるって意味では生の楽器音に近いが、オーケストラの聞こえ方ではない。ヴァイオリンやハープに近い左側前列くらいに座っている感じかな?JVC HA-FX1100といった、このジャンルにおける本格派プレーヤーと比べれば、その差は明らかだ。まあ比べる方が悪いのだが。S席で聴くオーケストラサウンドを味わうならJVC HA-FX1100を買うべき。

 なおこの2003年版コンプリートBOXはロンドン・フィル・ハーモニーが担当している。ドラクエの交響組曲には現行の新録もあるが、そちらはだいたい東京都交響楽団が担当しており、曲によってオケ構成もやや異なるようだ。

 


交響組曲「ドラゴンクエスト」コンプリートCD-BOX

 

 ロンドン・フィル版コンプリートBOXはプレミア化しているが、以下のアルバムが曲の構成は変わっているものの、音源は同一のものを使っているようである。数量限定らしいが、プレミア化しているロンドン・フィル版に興味があるなら、こちらを手に入れた方が良いだろう。


ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団による 交響組曲「ドラゴンクエスト」I~VII すぎやまこういち(数量限定盤)

 

MYTH & ROID「STYX HELIX」

 個人的にこのイヤホンが得意なジャンルっていうと、一つはこういうプログラミングされたようなDTM色全開で幻想性を強調する曲だと思う。1ドライバーだとこういう曲はどうしても音圧が全音域に均等に出ないところがあって、とくに高域に焦点があるようなこういう曲をうまく鳴らせるっていうのは稀。こういう曲に関しては低価格中華多ドライヤホンの需要は確かにある。ただし、最近はこうした1ドラの弱点を補うグラフェン素材っていう新素材が出てきて、低価格でも高域発色と瞬発力は改善される傾向にあるので、多ドラの独壇場ってわけでもなく、コスパ的にはグラフェンのほうがよいことも多いので、多ドラにわざわざこだわるほどでもない。

 そうとはいえ、この曲も含めてMYTH & ROID的な幻想感のある高域を味わうには非常に都合が良いことは事実で、緻密感と音圧感をしっかり共存させて表現できるのは多ドラならではで、このイヤホンもこの点では、価格以上の実力があることは間違いないだろう。

 


TVアニメ「 Re:ゼロから始める異世界生活 」エンディングテーマ「 STYX HELIX 」

 

渕上舞「グラヴィティ」

 こういう曲をどういうジャンルで表現したらいいのかは厳密には私にはわからないところがあって、エレクトロポップスロックと言えば良いのか、フュージョンロックとすればいいのか、いっそDTMロックと言えば良いのかわからないが、こういうエレクトロダンス系の表現を取り入れたロック曲に関しては、このイヤホンは比較的得意。

 低域と高域の役割がはっきりしているわかりやすい構成なのがこのイヤホンの特性に合っているというのもあるが、低域に一定の厚みと爆発力、高域に鮮明感と緻密感と役割分担が明確で、多ドラのおかげで音も全体的に発色良く近めに聞こえるので、密度的にスカスカしたところがない。ボーカルも低域の厚みのある雲をしっかり抜けた高空の位置にあるので、気持ちよく聴ける。

 


~TRΛNSMISSION~【通常盤】(CD)

 

a-chi・a-chi「STEP」

 難解さのない、低域と高域で素直な役割分担されているこういう80~90年代のアニソンは比較的得意分野。この曲もパワフルで厚い低域と、すっきりした見通しの良い高域の役割分担が明確で、このイヤホンの多ドラによる均等な音圧表現の恩恵を受けやすい。力関係としては少し高域が引っ張る展開になるが、その分高域のクリア感が増して印象としては解像度感が高く感じられるようになる。少し剥き出しに音を鳴らす傾向はあって、この曲だとエレクトロダンス色が強めになる。

 


「魔神英雄伝ワタル」シングル・コレクション1988メイ~1993セプテンバー

 

池田綾子「motto motto」

 池田綾子の楽曲は初期はだいぶEDM色の強いものが多いが、その代表格がこの曲。このイヤホンは中低域から高域まで比較的均等な密度感と音圧感と遠近感があるので、全体的にぎっしりしたと味わいで楽しみやすい。大抵の1ドライバーイヤホンより高域が近めに聞こえるので、音量小さめでもはっきり聴きやすく、外出時なんかの相対的に騒音が多い環境では聞こえが良い。多ドラの優位性の一つは騒音環境下での聞こえの良さにもあるかも知れないと最近思う。一方で家でリラックスして聴くには全体的には音が剥き出しで近すぎて感じられるところもあり、圧迫感を感じるかも知れない。

 


water colors

 

安月名莉子「君にふれて」

 高域メインで、近めに緻密感を出すので、この曲は結構聴き応えがある。意外とこの曲は大抵のイヤホンで低域強めに出過ぎちゃうバランスの気がしていて、低域が目立ちすぎてしまうと高域が隠れて見通しが悪いが、高域と低域を分離していて、もう一つの焦点を高域に作るようなこのイヤホンだと、低域の重厚感はそのままに高域の煌めき感も楽しめる。ほかのイヤホンでありがちな、高域を目立たせるために音に透明感の強調や尖りを出す傾向もなく、比較的なめらかに聴けるのもいい。

 


TVアニメ「 やがて君になる 」オープニングテーマ「 君にふれて 」

 

Matt Bianco「Ordinary Day」

 最近の流行のグラフェン系イヤホンと同じように、JAZZを聴くには妙に明るすぎるところがあって、たとえばこの「Ordinary Day」なんかやたらボーカルの声色は明るくて渋みが抜けて若々しすぎるし、濃厚な空気感はほとんどなくて、妙に浮かれた調子の明るい曲になっている。全体的に歯が浮いてニヤニヤ笑っているかのような軽薄な曲調になっており、雰囲気もへったくれもない。なんかGypsy Kingsの曲を聴いているみたい。というか、むしろGypsy Kingsの「インスピレーション」なんかいい案配で聴けるので、Matt Biancoでももっとダンス色のあるエレクトロラテンJAZZ系の明るい感じの曲が向くと思う。たとえば「Gypsy Lady」とか「Lost in You」、「Sunshine Day」ね。

 


Matt's Mood

 

【5】総評「原石のような可能性を秘めているが、玄人向き。現状ではノズルシステムは致命的に必要性が薄いどころか危険。金ノズルがオススメ」

 はっきり言って、個人的には調整不足をいろいろ感じて情緒不安定なイヤホン。とにかく全てのドライバーが出力全開で音を鳴らし、お互いの関係性をあまり考慮しないところがあり、アナログ系の曲では、空気感に決定的に欠ける。一方で、メーカーの調整が最低限で、しかも尖りだけはよく取って聞き疲れしにくい感じに仕上がっているために、それぞれの音を自分好みにイコライジングして楽しむような使い方にはかなり向きそうではあり、イヤホンの音をそのまま楽しむというよりは調整ありきで、原石のように無加工なところから手を加えてやらないといけないところはあるだろう。そのままの音はかなり平面的で高域の存在感が出過ぎている印象。

 注意点というか、もはや問題点でしかないのがノズルシステム。レビューテスト中に数度すっぽぬけて耳穴にノズルだけ残ることがあり、怖くて使えたもんじゃないと思わせてくれた。これはBGVP DMGも同じ問題点を抱えている。レビュー時は頻繁に聞き比べをしたので、耳から着脱する頻度が多かったからこのようなことになったのだと思うが、長時間使用で緩んでくる場合もあったので、結局固定機構がしっかりしていないということには変わりはない。ノズルの違いも大して効果がないので、何のためについているのかわからないレベルで、音味もほとんど変わらない感じなので、わざわざノズルを使っている意味がわからない。一部の中華イヤホンやMarshall Mode EQが採用しているようなスイッチ切り替えでの安全な音質変更機構をなぜ採用していないのか謎。HA-FD01SPくらい本格的に音が変わるならノズルじゃなきゃだめだよねってなるけど、このレベルならノズル切り替えなんて面倒なだけで百害しかない。

 ノズルの中では低域強調という金ノズルで聴いたときが最も音のコントラスト感が増すので、引き締まった感じが出る。自己主張がやや強く出張りすぎな高域も収まるので、バランス的にもこのノズルが一番だろう。ノズルが取れると危険なので、金ノズルを接着剤で本体にくっつけてしまうのがいいかもしれない。元々高域の出張る感じがあるので、高域の銀色ノズルの効果はシンバルのシャリ味が必要以上に増して鼻につく感じになる以外有益な点はほとんどない。個人的にはシャリ味の目立ちはあまり好きじゃないので、なくても全く問題ないノズルだが、金属光沢感が好きな人には逆に必須アイテムかも知れない。

 どちらにせよ個人的な意見としてはドライバー数にせよノズルにせよ必要性は薄いのに水増ししてつけて、見た目上のお得感を出している感があり、どちらも必要性があって、ほんとに楽しめる理想的な実装をしているとは言い難く、やっつけ仕事で増やしている感がハンパない。こんな無駄なことをするなら、その分仕様を減らしてコストを減らした機種を出した方がよい。結局「この価格で6ドラ、3ノズル」とかっていうわかりやすい宣伝文句のために無駄が多いだけで、本当の意味で価値のあるスペックではない。つまり現状15000円でこの音なら、同等の音は1万円ちょうどくらいで充分実現できるはずだというわけだ。そして私の実際の印象もせいぜいそんなところだろうなといったあたり。

 どちらにせよ、これを買うならBGVP DMGを買った方が良い。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51pjK8r8vXL._SL1000_.jpg

 

【6】このイヤホン向きの曲

藍井エイル「アイリス」

 何度か述べたが、こういう高域まで密度感のあるアニソンロック的な曲には強いので、この曲もかなり満足して聴けると思う。

 


アイリス(初回生産限定盤)(DVD付)

 

 

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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。

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