- 【1】装着感/遮音性/通信品質「安定感のある通信品質と装着感は健在」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「ヒアスルー性能が優秀」
- 【3】音質「FREE Xに比べるとややドンシャリに寄せたロックなイヤホン」
- 【4】官能性「低域の重厚感と高域の開放感を共存させている」
- 【5】総評「ロックでパワフルなサウンドと多機能を共存させたコスパの良い機種」
- 【6】このイヤホン向きの曲
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【1】装着感/遮音性/通信品質「安定感のある通信品質と装着感は健在」
おすすめ度*1 |
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ASIN |
イヤーフックが耳に合えば装着感はしっかりしており、よく耳に固定される。遮音性は結構高めで音漏れも少ない印象。
通信は安定している。遅延・途絶はない。
AACコーデック対応状況について
対応コーデックは公式サイトや取扱説明書でSBC/AACに対応しているとされているが、実際にはAACには対応していないかも知れないという情報があり、私は自分で試せなかったのでJBLの問い合わせ窓口であるハーマン日本のカスタマーサポートに情報源のサイトやアメリカのjbl.comの情報などを示して、詳しく問い合わせをした。JBL側は問題を把握していなかったようだが、カスタマーサポートでテストを実施してくれることを約束してくれ、誠実に対応してくれた。
その結果、カスタマーサポートでのテスト機ではAAC接続が確認できなかったことを教えてくれ、JBL本社に詳しい技術情報と対応策を問い合わせ中で、これには少し時間がかかると思われるので返事の時期は見通しが立たないという丁寧な説明を頂いた。
そういうわけなので、AACについては対応状況がはっきりせず、おそらく正常動作しないのではないかと思われるので、AAC目的でこの機種を考えている人は必ず店頭で自分のスマホなりタブレットなりとAAC接続できるか確認してから購入した方が良い。
ちなみに店員によく話を聞くとわかるが、とくにSONYはじめ日本メーカーの完全ワイヤレス店頭サンプルは試聴専用のものを使っていることが多く、実際の製品と微妙に異なる仕様だったりして細かい動作精度のテストでは当てにならないところがあるが、JBLの店頭サンプルはたぶん実機と変わらないと思う。私が以前FREE Xを買うときにYCで試聴をお願いしたところ、なんと目の前で新品から箱出しして聴かせてくれた。JBLの販売員さんがたまたまいたので製品についてあれこれ詳しく話を聞いていたからかもしれないが。JBLは一流メーカーらしく、こういう太っ腹なところがあって、個人的にはかなり好感を持っている(ので、評価はちょっと甘いかも知れない)。
この問題についてはいずれJBL側から公式なアナウンスがあるんじゃないかと思う。
【2】外観・インターフェース・付属品「ヒアスルー性能が優秀」
付属品はイヤーピースの替え、イヤーフック(スタビライザー)の替え、充電用USBケーブル、専用充電ケース、説明書。
アンダーアーマー社とのコラボ特典として、スポーツアプリ「Map My Run by Under Armour」の1年分ライセンスが付属する。
充電ケースは少し大きめで、コンパクトとは言い難い。ケースの開閉はスムーズで、イヤホンの取り出しも楽。
連続再生時間はイヤホン単体で5時間と標準クラスの性能を満たし、ケース込みの最大再生時間は25時間とこちらも充分。
防水性能はIPX7。水没させても動作する防水品質でスポーツ用途に充分耐える。
さて、この機種のオススメポイントは最近流行のヒアスルー(外音取り込み)機能を備えていること。しかも二段階で調整できるようになっており、用途に合わせて使い分けが出来るようになっている。
まず左側のイヤホンを1回押し込むと「トークスルーモード」となり、音楽音をだいぶ下げて会話音を取り込むモードになる。「トークスルー」という名前から、話し声だけに集中するモードかと思いきや、音楽の音量も大分下がるので、周囲の状況確認や会話をはっきり聞き取る必要がある時に使うと便利。
もう一つは、左側イヤホンを2回押すと「アンビエントアウェアモード」になる。これはトークスルーに比べて音楽の聞こえがよく、音楽と人の話し声が半々くらい。会話をすると言うよりは音楽に耳を傾けつつ、周囲の音も取り込む感じで、トークスルーほどではないが、話し声も結構聞こえる。屋内で音楽を楽しみながらテレビを見るなんて使い方にはこちらのほうがいいと思う。
流行のヒアスルー機能だが、ヒアスルー機能のバランスは機種ごとに異なり、人によっても使い勝手が異なるところがある。このイヤホンのようにヒアスルーの段階調整ができると自分の使い方に合った方を選べるので、結構便利だ。
【3】音質「FREE Xに比べるとややドンシャリに寄せたロックなイヤホン」
同じJBLの人気機種FREE Xに比べると、低域の存在感が少し強まって、中低域付近の密度を下げて締まった音に感じさせる調整になっている。全体的に濃厚な傾向は変わらないが、音のメリハリ感が増したことで、どちらかといえばロックやダンスサウンドのような元気な音楽をより楽しみやすい印象だ。
[高音]:自然で伸びやか。金属光沢は少し強めに出やすい(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は少し引っ込む。ややドンシャリ。音の傾向は全体的に明るめ。透明感はよく出るのでつややか。
[低音]:太く厚い振動。100hz~30hzまでしっかりした減衰。20hzでも振動感が残る(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:解像度感は高く、音圧も充分でパワフル。やや音が近め(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:地熱感と爆発力、そして重みとどれもバランスが取れている印象でかなり好み。膨張感そこそこ。バズンバズンと腹に響く。ハイハットは粒感がよく埋没しない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:自然な太さがあり、ふっくらしているが、色味はややドライに聞こえやすい。
【4】官能性「低域の重厚感と高域の開放感を共存させている」
fhána「星屑のインターリュード(Acappella with Strings)」
中高域の発色感を確認したかったので、この曲を聴いてみた。「星屑のインターリュード」はTVアニメ「天体のメソッド」のED主題歌だが、こちらはイメージアルバムに収録されているアレンジ版になる。
このイヤホンは低域のパワフルさばかりに目が行きがちだが、この曲を聴くと、FREE Xと同じように高域の表現力もしっかりしていることがわかる。音の輪郭感と透明感は価格を考えると高レベルで、弦楽の伸びも少しヒステリックに感じるくらい、細身でよくのびる。透明感がしっかり出ているので、ボーカルにもみずみずしさが感じられ、中高域の表現力は価格帯標準以上のパフォーマンスがあることがわかり、充分に満足できるものであることが確認できる。
Ed Sheeran「Castle On The Hill」
こういう曲は得意。重厚感のある低域には厚みと深みも充分に感じられ、そのボリューム感のある音が作り出す躍動感が曲全体をよりリズミカルに、壮大にする。音の厚みとメリハリ感のバランスが良く、ビターなギターテイストと疾走感が共存した最高のロックサウンドを奏でてくれる。この曲を聴かせる充実感は価格帯ではかなり上位で、素晴らしい。
TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」挿入歌「One Step」
この曲の煌めき感を演出する金属光沢と透明感の強いグロウ表現はしっかり出る。ハイハットはシャープで粒感も細かく繊細だが、それにも増して音場全体を支配するドラムが厚みと爆発力を出して元気に弾む。スマッシュの利かせ方も弾けと重みのバランスが良く、きれいに決まってメリハリ感を出してくれて楽しい。そして自然で温和でふっくらしながら透明感も充分の瑞々しいボーカルが唱和してくるのがとにかく快活。
TVアニメ「 宇宙よりも遠い場所 」エンディングテーマ「 ここから、ここから 」
TVアニメ「少女終末紀行」OP「動く、動く」
このイヤホンは結構シャープ感を強調するようで、この曲だとだいぶメリハリ感が増してキレよい感じ。輪郭感もよくてこの曲の緻密感も結構うまく出ているが、シャープなエッジ感があるのにシャリシャリ刺さる感じがなく、なめらかに聴けるので結構驚いた。いいね。
TVアニメ「 少女終末旅行 」オープニングテーマ「 動く、動く 」
Rie fu「ツキアカリ」
この曲って結構中高域発色悪いと暗く聞こえるんだが、このイヤホンは低域しっかり聴かせながら、中高域も透明感があって発色に優れ、視界良好。厚みのある低域は曲全体をボリューミーにくるむように支えていて、曲調を調和的にしていて、しかも重みを加えて安定感も出している。ボーカルは少しドライな印象を受けるがよく伸びる。
【5】総評「ロックでパワフルなサウンドと多機能を共存させたコスパの良い機種」
スペックではAACコーデックへの対応だけやや不明瞭で問題を抱えているが、全体的な使い勝手と音質は価格帯最強に近い高コスパイヤホン。通信品質も安定しており、音圧のあるパワフルな音質が好きな人なら、有力な選択肢になるだろう。
高い防水性能と2段階のヒアスルー機能を備え、スポーツ向けとしてもよく練られた機種であり、イヤーウィングの固定力も高いため、コスパの良いスポーツモデルを求めている人には特におすすめしたい。
スポーツモデルの宿命なのか、スポーツ系イヤホンはなぜだかケースがデカイのが多いが、この機種もケースはややかさばる。スティック型で細長いのでそれほど邪魔にはならないと思うけれども、コンパクトなケースの機種のだいたい2個分の大きさくらい。
JBL製品はamazonでもセール対象になることが多く、販売店にも潤沢に在庫があるようで手に入りやすく、高値掴みもしにくいところもいい。
【6】このイヤホン向きの曲
DAOKO「終わらない世界で」
全体的に音が締まって輪郭感も良いのと、低域の厚みが充分にあって迫力も出るので、この曲なんかよく楽しめる。透明感もしっかり出てエッジもシャープなおかげで解像度感も高く、聴き応えがある。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。