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【ANC搭載ワイヤレスヘッドホン Parrot Zik3 レビュー】音質とノイキャン品質、機能性の高さを考えると異様にコスパは良いが、デザイン面でいろいろ問題がある

ヘッドライン

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Parrot Zik3

Parrot Zik3

Parrot Zik 3 密閉型 ワイヤレスヘッドホン ノイズキャンセリング Bluetooth NFC Qiワイヤレス充電 Apple Watch対応 Black Grain PF562032 【国内正規品】

 

 

【1】装着感/遮音性/通信品質「ノイキャンは優秀。装着感はややきつい」

おすすめ度*1

Parrot Zik3

ASIN

B01ARR168K

 2月号の『家電批評』で、お値打ち買い物特集というのがあって、その中で紹介されていた製品の1つがこれ。たしかに2019年1月現在、1万円台前半で売られており、底値付近にあるようなので、手に入れてみた。音質的には2016年時点ではかなり高品質なDACを搭載しているらしく、音質の評価はそれなりに高いことは調査済み。私の普段のメインヘッドホンの一角を占める、SENNHEISER HD599JVC HA-SW01とほぼ同世代なので、充分現役の音だろうことは想定していた。そもそもそれよりはるかに古いbeyerdynamic DT880 PROさえ現役で使っている。DT880 PROは販売店を選べば、2万円以下の激安で手に入る恐るべき高コスパ機だ。

 プロオーディオ批評家でさえ「SENNHEISER MOMENTUM True Wirelessを手に入れてB&W P5 Wirelessを卒業しました」とか言っちゃうくらい完全ワイヤレス全盛の時代になってきたので、種類が多すぎて購買層が拡散する上に、かさばるヘッドホンは物を選べば高音質の名機がかなり割安で手に入るという便利な時期が来ている。実にありがたい。

 気掛かりだったのはワイヤレス仕様面で古いので、通信品質上の使い勝手だけだった(厳密には他にも細かい懸念があったが、興味が勝った)。

 

 付け心地はそれほど重くなく、軽い部類。ハウジングは耳の大きさぎりぎりくらいで、多くの人にとってすっぽり覆うほどではないので、場合によって滑りやすい。側圧は少しきつめなほうではある。音は聞き疲れしないのでいつまでも聴いていられるが、耳は1時間も着けていればすぐ痛くなる。

 アクティブノイズキャンセリングはかなり優秀で、BOSE QC35Ⅱと比べても遜色はないので、価格差を考えるとかなり素晴らしい。

 aptXには対応しない。やや古い機種であり、Bluetoothのバージョンは3.0。そのため通信品質はあまりよくないかと思ったが、安定性は悪くなく、途絶や遅延はない。ただし仕様の限界か、距離による途絶や遅延はすぐ見られ、音源から3mも離れれば不安定になる。遮蔽物にも弱い。

 この機種はあとで説明するように外出時使用にはあまり向かないところがあるのだが、通信品質的にも外出時に使用するのはやや心許ない。

 

【2】外観・インターフェース・付属品「何かと多機能。ワイヤレス充電まで可能」

 付属品は充電・音声入力用USBケーブル、AUXケーブル、携行ポーチ、説明書。

 

 大抵の頭の大きさだと、ヘッドバンドがかなり広がってほぼ平たくなるので、少しかっこ悪く思えるかも知れない。また構造的にテンションに対応する余裕があまりないのか、破損報告は結構多いため、外出時使用にはあまり向かない。

 バッテリーを右耳部分に格納するようになっているが、このバッテリーの部分の蓋はマグネット式で固定が悪く、手で開けようとすればすぐ取れる。混雑で人に当たったりすると衝撃で取れることもありそうで、かなり心許ないのも外出時使用にあまり向かない理由だ。

 私は買ったばかりなのでまだわからないが、バッテリー持ちも悪いと言われている。バッテリーは残念ながら日本国内では2019年現在入手困難で、amazon.comから輸入することになりそうだ

 

 さて、この機種の特徴としては優れたアクティブノイズキャンセリング性能と、高機能なタッチインターフェースで操作が快適に行えることが挙げられる。指先でドラッグするだけで音量調整できたりするのは大変便利で気持ちいい。Qi規格のワイヤレス充電にも対応しており、これもかなり便利。もはや全部乗せに近い。

 が、それ以上に面白く、話題になったのが、高性能DACを搭載して高音質を実現しているばかりでなく、USB-DACとして動作させることも可能という点。そのせいか密閉型ノイキャンヘッドホンにも関わらず、音場は少し広めで、音になめらかさもあって耳当たり良く、発色は透明感が少し強調されて、高域弦楽などが浮き上がって聞こえるコントラスト感を少し増した調整になっている。

 ぶっちゃけ音質的にはいくらNUARL NT01AXが立体感に優れるとか、SENNHEISER MOMENTUM True Wireless(MTW)が音場に優れているとか言っても、現状の完全ワイヤレスイヤホンではこのヘッドホンに立体感でも音場でも敵わない。たとえばKOKIA「本当の音」を聴けばその違いはすぐにわかるので、語るまでもない。

 


moment

 

 私はB&W P7は持っているが、P5は持っていないので、冒頭に紹介したプロ批評家がなんでMTWでP5WIを卒業できると思ったのかは謎だが、P5WIより実売価格は安いこの1万円台前半クラスのヘッドホンとMTWですでに勝負にならない。そして私の試聴した範囲では、P5WIはそんな悪い音じゃなかったはずだが、おそらく弘法も筆の誤りというやつで、つい筆を滑らせてしまったのだろう。

ascii.jp

 

 

Parrot Zik3Parrot Zik3

 

 

【3】音質「低域はややぼんやり広大、高域は透明感少し強調」

 以下のレビューは一般的な使用状況を考慮して付属アプリのイコライザーなどはいじらず、箱出し設定のままワイヤレス接続して音質をテストしています。

 

 音質的には左右はそれなりに広く、低域は少し柔らかいウォームな味で、高域は透明感と残響感を強調して澄み切った風に音を感じさせる鳴らし方。金属光沢はあまり強調せず、音の尖ったところはかなり熱心に丸くして、全体としては調和的でウォームに鳴らす。表現の方向性としては開放型ヘッドホンに近い。

 聞こえ方としては高域にやや人工的な演出感があり、弦楽は高音が少し浮き上がって聞こえやすいところがある。女性ボーカルも透明感が強調される感じだが、細く尖る感じにはならない。全体的に圧迫感のない耳当たりの良いサウンドで聞き疲れはしにくい。

 

[高音]:やや透明感と残響感が強調される形で出る(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:かなりマージンをゆったり取り、音の角も取って丸く聴かせようという調整が入っており、開放型のような耳当たりの良い音を奏でる。音をまろやかに空間に溶かし込む鳴らし方。ピアノもキンキン成分は徹底的に取り、表面の透明感を出して下方向への重みは少し抑えたふんわりした鳴り方をしやすい。

[低音]:厚く重たい振動で100hz~40hzまでしっかり。30hzで急速に沈み、20hz以下ほぼ無音(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:広めに頭を覆っている。地平線から音が空間いっぱいに残響していく広がり方をする。どちらかというとローファイな鳴らし方で、残響や透明感を強調してコントラストや充実感を出そうとするところがあるので、こういう音が苦手な人には向かない(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:ドラムは表面がやわらかに弾け、肉厚さもゴム鞠のように弾む感じで出るので、非常に弾力感のあるバッツンバッツンというような音。印象的には明るく快活に聞こえる。金属光沢は結構抑えられているのでハイハットはあまり目立たない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:ボーカルは透明感が強調されて出るので女性ボーカルには向く。

 

【4】官能性「広大な空間表現に透明感と残響感をふりまく高域。スピード感は少し劣る」

TVアニメ「セインティア翔」OP「The Beautiful Brave」

  かなり空間が広く、音がマージンを取って響いてくる上に、角がとれた丸い音でアタック感もそれほどよくないところがあるので、低域のモワモワした地熱感も出ているのでもっさり聞こえやすいかも知れない。ライブ感はあるが、あまりスピード感はよくなく、この曲は個人的に少し重たく聞こえすぎる気がする。

 


「聖闘士星矢 セインティア翔」主題歌CD

 

joy「アイオライト」

 やはりロック曲を聴くには少しアタック感が足りず、煌めき感も出ないところがあって、ドラムも柔らかくて疾走感に欠け、少しもっさりした印象を受ける。ただ圧迫感はないウォームな色彩で、ボーカルの声色は囁くような甘味のある声で聞こえてきた後に、サビでは透明感を増してきれいに輝く。緻密感には欠けるが、コントラスト感のある構成に聞こえてくるところはあるので、それなりに悪くない。

 


アイオライト(期間生産限定アニメ盤)(DVD付)

 

TVアニメ「えんどろ~!」OP「えんどろ~る!」

 スピード感的にはこれくらいの曲がおそらくちょうどいい。曲調的にもこの曲の広さを重視する音場表現と相性が良くて、弦楽や低域が雄大なオーケストレーション感を出してくれる。ボーカルものびやかに透明感と空間への残響が強調されるので、上方向に澄んで突き抜ける。

 


TVアニメ「 えんどろ~! 」オープニングテーマ「 えんどろ~る! 」

 

坂本真綾「これから」

 このヘッドホンの充実感を感じるのはたとえばこの曲を聴いたとき。柔らかで調和的な音の鳴らし方、オーケストレーションサウンドを受け止めるだけの充分な空間、高域に向かうほど透き通って(やや過剰に)澄んでいくサウンド表現が、この曲の世界観に合っている。

 


これから

 

林原めぐみ「OUR GOOD DAY…僕らのGOOD DAY」

  スピード感的にもちょうどよく、透明感と残響感が乗りやすいデジタルシンセを多用した曲調なのもこのヘッドホン向き。ボーカルも元気で明るくよくのびるので透明感を思う存分味わえる。かなりいい。


OUR GOOD DAY…僕らのGOOD DAY

 

Vincent Ingala「Can't Stop Now」

 スピード感的にはJAZZに向く。また柔らかい調和的な鳴らし方をするので、こういう曲を厚みを持たせながら、温和なムードで聴かせるのがうまい。金管の音も残響感たっぷりに空間に広がるので、味わい深く、聞き惚れさせてくれる。

 


Can't Stop Now

 

【5】総評「コスパ最強クラスで多機能。欠点も多いが」

 とにかく空間表現に秀でた音質と多機能で使い勝手のよさを両立させているのが魅力的なイヤホン。付け心地がきつい、外出用には向かないなどいろいろ不満点は多いが、現状1万円台前半でANCと高性能DAC搭載のワイヤレスヘッドホンが手に入ることを考えれば、多少の欠点など見えなくなる。3万円も完全ワイヤレスイヤホンに出す前に、ちょっと考えてみてもいいくらいにはコスパ優秀な機種である。

Parrot Zik3

 

【6】このヘッドホン向きの曲

挾間美帆「マジャール・ダンス」

 空間表現と低域方向の濃度感の出し方がうまく、しかも開放的なサウンドかつ残響感を丁寧に出すので、JAZZ向き。ということで、私の大好きな挾間美帆のアルバム「ダンサー・イン・ノーホエア」から「マジャール・ダンス」を紹介する。

 


ダンサー・イン・ノーホエア

 

 

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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。

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