ZERO AUDIO イヤホン・ヘッドホン ZIRCO NERO M-DX230-ZN
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は悪くない」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「mmcx端子がケーブル途中にある」
- 【3】音質「重厚なロック向きの低域音が光る」
- 【4】官能性「重厚感のあるロックサウンドを楽しめる」
- 【5】総評「1万円台でロック向きのイヤホンを探しているならオススメ」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は悪くない」
おすすめ度*1 |
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ASIN |
耳当たりは悪くない装着感。収まりもよいので遮音性は高く、音漏れも少なめ。
【2】外観・インターフェース・付属品「mmcx端子がケーブル途中にある」
付属品はイヤーピースの替え、キャリイングケース。ケーブル途中にmmcx端子があり、リケーブル可能。標準ケーブルはタッチノイズが少しある。
この独自仕様のMMCX端子は面白いが、問題なのは既存のリケーブル製品との相性があまり良くないところかな。
mmcxには端子部分の接合性に問題が生じやすいことは以前から指摘されており、たとえばそのためにaudio-technicaはA2DCという独自端子を開発した。これがハイエンドでオーテク製品をやや孤立させているところもあるけれども、音にこだわるとこの端子の問題点は見過ごせなくなってくる。
JVCはHA-FW10000でハウジングからmmcxを完全に分離し、音響をとことん突き詰めたハウジングを作り込んだ。同じようにこのZIRCO NEROもハウジングの音響を大事にしたと言えるかも知れない。それにワイヤレスレシーバー側に端子が来るというのもこの端子の特性を考えると合理的な発想で、この位置の方が、イヤホンのハウジングに端子がついている場合よりテンションがかかりにくいから、雑味は感じにくいはずである。
ただリケーブルにおいてオーディアマニアにとって重要なのは「ケーブルによる音質の違いを味わえる」ところにあると思われ、その意味ではこの構造ではmmcx端子までのケーブル素材は固定されるので、味の変化はたぶんほとんどなく、高級ケーブルに変える楽しみは減りそう。またケーブル途中にmmcx端子があることで、元々噛み合わせがよくないmmcx端子の欠点も出てしまっていて、端子部分に衝撃が加わると雑音が入りやすい。
結局、問題はこの仕様が一般的な傾向と異なり、audio-technicaのATH-CK100PROほど極端ではないにしても、同じように汎用性でいささか劣るという点だろう。
【3】音質「重厚なロック向きの低域音が光る」
音質的には黒みのある重厚な低域が強めのバランスになっており、ブーム感のある低域を中心に組み立てられた、コントラスト感のある音響を楽しめる。色合い的には高域の発色が悪いところはあり、暗く感じられるところはある。TWZ-1000といい、最近のZERO AUDIOはこの黒みのあるチューニング方向がお好みのようだ。
ジャンル的には正統派ロック向きで、ほかにR&B、ダンス系サウンド、JAZZなんか悪くない印象。中高域方向の発色はあまりよくないので、エレクトロ系の曲や明るいアイドル系の曲は暗めに聞こえやすいかも知れない。
[高音]:高域はやや暗い。そのせいかつややかさに若干欠ける印象があり、ドライな印象を受ける(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域も若干暗めな印象。
[低音]:重厚感と黒みのあるコントラスト感とブーム感を出す音でバランス良い印象。全体バランスとしてはこの太くて締まった低域が味わいの中心になる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:全体的に重みと黒みのある低域が空間の色味を決めやすいところがあって、ドライでロック向きな色合いで聞こえる。見通しはあまりよくないので、高い解像度感や鮮明感を感じづらいが、コントラスト感はそれなりにしっかりしているので、音像は印象ほど捉えにくい感じではない。スピード感は悪くなく、ロックのアタック感・メリハリ感はよく感じられる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムはバズンバズンと地熱感と重量感のある音。ハイハットはドライ(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルも若干ドライな印象を受け、女声ボーカルは少し暗い印象になりやすいかもしれない。
【4】官能性「重厚感のあるロックサウンドを楽しめる」
Falcom Sound Team jdk「 CORRIDOR OF THE LOST AGES」
音の特性をだいたい理解した後に、真っ先にこのイヤホンで聴いてみたいと思った曲がこれ。黒みのある重低感に満ちた低域がしっかり音場を引き締める。中高域はキラ味を抑えた鈍い光沢感のある重金属的なメタリック感を出し、渋カッコイイ。
昔からZERO AUDIOはFalcom系のゲームミュージックと相性が良い印象がある。それが私がZERO AUDIOを好んできた理由の一つ。
米津玄師「 灰色と青( +菅田将暉 )」
個人的にはこの曲は低域の黒みがしっかり出て、一定の重厚感もないと、あまり楽しめない。最近の中高域明るめの調整が多いイヤホンでは大抵明るすぎて、軽い感じで聞こえやすい気がする。そういう意味ではこのイヤホンの色合いはかなり合っていて、充分な黒みのある重く厚い低域が重厚な世界観を感じさせてくれて、ボーカルも明るすぎずに憂鬱さを含んで胸に歌詞を押し込んでくる。この曲のノスタルジーをよく表現している。
OxT「UNION」
ほどよい膨張感と地熱感のある低域ドラムと、黒みのあるベースがこの曲をしっかり聴かせる。ドラムなんか胴鳴りする残響感もしっかり出ている。ピアノやギターは少し暗めで渋い味付けになっているが、全体の色味バランスを考えると、これくらい発色が目立たない方がむしろボーカルや曲の雰囲気に集中できそう。
奥華子「カスミソウ」
本来はそんなに暗い印象を受ける曲じゃないけど、ちょうどイヤホンの発色のしかたによって印象が変わりやすいあたりの音階なのか、このイヤホンではボーカルはやや暗めに聞こえやすい。みずみずしさも感じづらいかな。ピアノにかなり濃厚さと重みがあって、それが少し支配的に出やすいのも曲を重たく感じさせる原因かも知れない。
Nulbarich「Super Sonic」
低域リズムに重厚感があってしっかり楽しめる。地鳴り感は出やすく、ややもっさりしやすいところはあるので、さわやかさは少し欠け、スタイリッシュさは若干減じているバランスになるので、好みを分けるとこはあるが、ドンドンズンズン、ブーム感を伴って聞こえてくる低域の味は好きな人には最高に聞こえるだろう。
澤野弘之「narrative」
低域のドラムキックにパンチ力あり。ギターのカッティングもかなり渋みのある金属光沢感が丁寧に出るうえ、ハイハットもドライで熱気がある。全体的にダークでドライかつパワフルで、この曲の世界観に合致している。
【5】総評「1万円台でロック向きのイヤホンを探しているならオススメ」
最近のZERO AUDIOは以前よりチューニングを重厚感に振っているのか、かなり正統派のロックサウンドを奏でるイヤホンを出している印象だけど、その筆頭格に当たるかも知れない機種。ロックらしいロックを楽しめる男のイヤホンって感じ。逆に言うと、今までの機種はもう少し中高域が明るい印象だったので、アニソンとかそれで楽しんでいた人には、ちょっと女声ボーカルが暗いかなって印象は受けるかも知れない。
独自のmmcx端子をセールスポイントにしているけど、個人的にこれは強みにはあまりならないんじゃないかなと思ってる。わからんけど。
ZERO AUDIO イヤホン・ヘッドホン ZIRCO NERO M-DX230-ZN
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。