- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感独特、通信品質は場合によって不安定」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「使い勝手は良い。ケースも防水仕様」
- 【3】音質「重厚な方向でHihiccup Hi-TWSとほぼ同じ味付けだが、音はより膨らみやすく、場合によって篭もっていると形容されやすい音」
- 【4】官能性「JAZZやロック、R&B向き。ベースラインが少し被さりやすいところはある」
- 【5】総評「無理して最大限の賛辞を考えるとすれば、低価格帯のSENNHEISER MOMENTUM True Wireless。欠点と強みは似ている」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感独特、通信品質は場合によって不安定」
おすすめ度*1 |
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ASIN |
ステムが出っ張った独特の構造をしており、装着感は好みを分けそう。イヤーピースをよく合わせないと安定感は出ないかも知れない。私は一番大きめの付属イヤーピースでようやく安定した感じ。
遮音性はあまり高くない。音漏れも少し目立つかも知れない。
コーデックはおそらくSBCのみ対応。通信は基本安定しているが、Hihiccup Hi-TWSと聞き比べしているときはあまり安定せず、Hihiccup Hi-TWSのほうが普通に再生出来ているのに、こちらは左右がプチプチ途切れていた。ちなみに接続先は両方ともNW-A55なので、接続相手に起因する相性の悪さが原因とは考えづらい。個体差の可能性もあるが、たぶんチップの差かもしれないと思っている。そのため、街中ではより途切れやすい可能性がある。
この機種はTouch Twoシリーズに属しており、Hihiccup Hi-TWS(別名Touch Two C3)とはおそらく親戚関係にある。たぶんTouch Two C3の2019年最新版という位置づけだと思うが、スペックや音質的にはHihiccup Hi-TWSに劣ると思われるところもあるし、販売価格帯も少し異なるので単純な置き換え機というわけでもないようだ。
【2】外観・インターフェース・付属品「使い勝手は良い。ケースも防水仕様」
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、専用充電ケース、説明書。
珍しいところでは音声ガイダンスが日本語対応している。
充電ケースは同価格帯ではデカイほうで、Hihiccup Hi-TWSやiKanzi X9と同じくらい大きい。イヤホンの取り出しはスムーズ。これらの先行する同じ系統のイヤホンとの違いは、ケースも防水対応しており、USB接続部にカバーが設けられていて、これで保護すればケースの防水性能はIPX5相当になる。またそのせいかケースカバーの噛み合わせが少し硬く、最初は開閉に手間取るかも知れない。
イヤホンの連続再生時間はスペック上4時間。ケースを含めると最大90時間まで再生可能になる。この充電ケースにはモバイルバッテリーもあり、付属の充電ケーブルを使ってスマホへの充電も可能だ。
イヤホンをケースから取り出すと自動でペアリング、接続モードになる。収納すればそのまま充電モードに。同じ系統と思われるHihiccup Hi-TWSが自動接続を充分に実現していたので大丈夫だとは思っていたが、この機種も問題なく実現していた。
操作はタッチパッド式。この点は少し好みじゃない。
防水性能はIPX8でつまりIPX規格上最強という位置づけ。水没させても大丈夫なレベルで、雨の中で使っても全然大丈夫という性能だ。
【3】音質「重厚な方向でHihiccup Hi-TWSとほぼ同じ味付けだが、音はより膨らみやすく、場合によって篭もっていると形容されやすい音」
音質的には重厚な低域が目立つ感じでHihiccup Hi-TWSに近い。おそらくドライバー部分にほとんど差は無いと思われる。
ただしハウジングの作りとステムの耳への入り方が異なるせいか、低域音がより柔らかく聞こえてくる傾向にあり、ボーカルの音像も少し空気に溶け込んだ感じが強くなる。こういう音を「篭もる」と表現する人も多いので、おそらく構造的な問題でHihiccup Hi-TWSよりぼやーっとした音だと感じる人は多いだろう。装着感がHihiccup Hi-TWSより安定しないので、装着感による音質の印象の差も大きく、しっかりイヤーピースを選ばないとクリアな感触は得られないと思われる。その影響は高域方向はそれほど大きくない印象を受けるが、中低域は影響を受けやすく、ベースラインと男性ボーカルが聞こえる音域で分離が悪く、特にもさっとした感じが出やすいところがある。
好みにもよるだろうが、全体的に劣化Hihiccup Hi-TWSという印象を受けやすいことは事実。
[高音]:突き抜け感はあまりない。自然な色味で煌めき感や透明感は普通(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:金属光沢はややドライに聞こえる。ピアノの色味も情緒が落ち着いていて、ほどよく透明感があるが浮き上がらない。やや下方向に音がまとまりやすい傾向があって、高域方向に向かうほど少し空疎な雰囲気がある。
[低音]:はっきりした太い振動で100hz~40hzまでしっかり。30hzでも少し振動を感じ、20hzはほぼ無音。太いベース音で深掘り感もある。構造のせいか、少しぼわっと広がる感じがあり、同じ音質傾向のHihiccup Hi-TWSに比べると音像にふやけたところを感じる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:音の太さの割に音場は少し広めであまり圧迫感を感じない。大抵の完全ワイヤレスイヤホンは音が近いので、そういう音場表現に圧迫感を感じている人は、密度感と広さのバランスが良く感じられるかも知れない(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムは膨張感が強めで、地熱感も強いためボボンボボンという感じでやや空間に広がりやすい音。ハイハットは色味がドライで浮き上がる感じがない。粒感は結構良く、ライドシンバルなんか結構締まっている印象。どちらかというとパーカッションは暗い方向ではあるので、大人びて聞こえるかも知れない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルやや太め。やはりHihiccup Hi-TWSに比べて若干音像が緩い形で聞こえやすい。高域は少し天井感があり、色味は抑えめではあるが、暗い感じでもなく、意外と自然な色合いでバランスは良い。
【4】官能性「JAZZやロック、R&B向き。ベースラインが少し被さりやすいところはある」
早見沙織「ブルーアワーに祈りを」
Hihiccup Hi-TWSと聞き比べた際の、低域の膨張感(≒締まり具合)や音のクリア感の違いは、この曲を聴くとよくわかる。Hihiccup Hi-TWSではサビの部分で低域が強く印象づける場面でも中域方向に音があふれ出す感じがなく、分離感がスッキリしていて床面として感じられる。それに対し、このイヤホンでは低域が膨張して中域音と混濁してモサモサした感じが出てしまう。また高域ボーカルもその低域音に影響されるのかすっきりと伸びてくれず、高い部分の発色が悪くて突き抜け感に乏しく、結果として暗くつややかさに欠ける印象を受ける。Hihiccup Hi-TWSはパーカッション周りの発色も異なり、よりキラ味がきれいに出るほか、弦楽もすっきり伸びて背景を作るのでダイナミックさでも勝る。
もちろん好みによってこちらの音が良いと思えるところもあり、調和的でウォームな雰囲気は強くなるので、中域のふくよかさはこちらのほうが充実感を感じやすいところがある。
Pharrell Williams「Raspy Shit」
HONDAのCMで流れる「Happy」って曲が好きで個人的にハマっているPharrell Williams。この曲をHihiccup Hi-TWSと聞き比べると、低域周りの膨張感の違いが明確で、よりすっきり分離して聞こえるのは明らかにHihiccup Hi-TWS。ただこのイヤホンの若干篭もった印象を受ける低域の膨張感も悪くなく、ボリューム感では勝るところがある。しかし、ラップはどちらかというと歌詞の語感的な味わいが大切で、ボーカルのキレが最も重視されやすい傾向にあることが多いと思うので、口の動きが明瞭に聞こえる印象が強いHihiccup Hi-TWSのほうがラップ向きなんじゃないかということは言えそう。
三月のパンタシア「ピンクレモネード」
三月のパンタシアの曲でも私の好きな曲の一つ。実際のところこのイヤホンではHihiccup Hi-TWSに比べてやや低域の音が支配的で、ピアノとギター音が少し低域ドラムとベースに埋もれて聞こえてくるくらいのバランスになる。充実感はあるが、クリーンな空間が少ないので、スッキリした酸味を感じさせるレモネード感はない。
ドラム表面の張りがかなり異なり、Hihiccup Hi-TWSではバスバスと反発力を感じるのに対し、このイヤホンのドラムはボンボンとした感じで曲から受ける快活さでだいぶ差がある。ロック向きで重厚感が出やすいのは共通にしても、個人的にはHihiccup Hi-TWSの聞こえの方が解像度感を感じやすいので、おすすめしたい気がする。ギターのエッジ感に差があるし。
田中あいみ「かくしん的☆めたまるふぉ〜ぜっ!」
最近のエレクトロ色の強いダンスロックみたいな曲では、このイヤホンの高域の発色の悪さが気になる。正直言って、この曲に関してはドラム周りの熱気がこちらのほうがやや勝るものの、Hihiccup Hi-TWSに比べて発色と輪郭の悪い中高域のせいで、さわやかさに大きく欠ける。そのせいでこの曲の明るくキラキラした楽しいサウンドがほとんど死んでしまっていて、残念な印象を受ける。この曲を聴くならHihiccup Hi-TWSのほうが個人的には断然おすすめ。
「かくしん的☆めたまるふぉ〜ぜっ!」TVアニメ『干物妹!うまるちゃん』オープニングテーマ
Elephant Revival「Don't Drift Too Far」
一方でウォームで膨張感のある低域表現とやや暗めで中域充実の音質がふさわしいと思えたのがこの曲。Hihiccup Hi-TWSだと高域が少し明るすぎるのと低域の膨張感がうまく出なくてベースラインがすっきりしすぎ、濃厚な空気感が感じられない。そう考えるとこのイヤホンの本領はJAZZやフォークで発揮されるのかも知れない。これくらいの音数だと音の混濁感もない。
ただ弦楽の発色はもう少し良いと楽しい気がするけど、一方でムード感を考えるとこれくらい落ち着いているほうがむしろ良いという人もいるだろうし、ここらへんは最終的に好みになりそう。
【5】総評「無理して最大限の賛辞を考えるとすれば、低価格帯のSENNHEISER MOMENTUM True Wireless。欠点と強みは似ている」
というわけで音質の面ではやや中低域の厚みが強く出やすく、ウォーム。分離感がいまいちよくないところがあるので、音数が多い曲はかなり苦しいかも知れない。表現の雰囲気としてはJAZZ向きで濃厚な感じが出るので、無理矢理感がハンパないが、敢えて興味を引くような言い方をすると「低価格帯の分離感の悪いSENNHEISER MOMENTUM True Wireless」とでも言っておきたい。いや音の解像度とか雲泥の差があるけどね。でも高域の少しおとなしい感じ、地平線付近に音が厚い感じ、音場が少し下向きな印象を受ける感じは似ている。
いろいろ不満はあるけど、5000円以下の価格帯では案外スペック的にも隙が無いし悪くないところがあり、結構コスパは良いかもしれない。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。