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【5BAイヤホン EarSonics ES5 レビュー】「原音忠実」の極致。懐の広い万能サウンドを持つ名機。女性ボーカルの再現が詳細を究め、デリカシーのあるサウンドが異様にセクシー。ES3より色味が濃くなって味わいは増したが、相変わらず分離は良い

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EarSonics ES5

EarSonics ES5

EarSonics ES5 イヤホン インイヤーモニター

 

 

【0】これまでのあらすじ

 EarSonics ES3を求めて冒険の旅に出た私は、海を渡った北米大陸のamazonの倉庫にEarSonics ES5が$449という破格の値段で眠っているのを発見したのだった。一抹の不安を感じながらも震える手でポチった私の手許に届いたのは、本物にしか見えないEarSonics ES5。イヤーピースの収納が乱雑な感じまで本物そっくりだった。

www.ear-phone-review.com

 

 しかし、あまりの安値に疑いを拭いきれない私は、東京近郊でも数少ないEarSonicsイヤホンが試聴できる2店舗を回り、聞き比べ、販売店員さんにもチェックしてもらって本物だということを確認したのだった……。

 

EarSonics ES5

 

海外レビューのまとめはこちら

 なお海外レビューなどの引用記事があります。

www.ear-phone-review.com

 

【1】装着感/遮音性/通信品質「見た目がダサい?気にすんな」

おすすめ度*1

EarSonics ES5

ASIN

B079BVDZT1

 個人的にEarSonicsに言いたいことがあるとすれば、ちょっと見た目がダサいのだけ気になります。装着感はよいので文句ないんですけど、最近の1万円くらいの中華製イヤホンと比べても見た目は地味。まあ今となってはその装飾感の無さもかわいく思えてくるんですけどね。遮音性は高く、音漏れも目立ちません。

 

【2】外観・インターフェース・付属品「2pinリケーブル可能」

 付属品はイヤーピースの替え、変換プラグ、キャリングポーチ。ケーブルのタッチノイズはない。2pinリケーブル対応。

 

おすすめイヤーピース

 EarSonicsはノズルの作りも独特で、ツルツルプラスチックなんで、イヤーピースは若干相性があります。音質相性などを考慮して勝手に選んだのが、下のイヤーピース。

  1. Spinfit CP360
  2. Acoustune AET08
  3. final Eタイプ Clear
  4. final Eタイプ Violet
  5. SpinFit CP100

 個人的なオススメ順です。普段ならスパイラルドット++かSednaearfitあたりを真っ先に検討すべきって意見になりますけど、このイヤホンには口径が大きすぎます。

 

EarSonics ES5EarSonics ES5

 

【3】音質「分離感がよいモニター系サウンドの王道を行くが、色味は濃く鮮やかツヤツヤ。女性ボーカルには神がかったディテールを発揮する」

 このイヤホンについて言うことはほとんどなくて、個人的には「女性ボーカルのディテールが神」。それで終わりなんだけど、それじゃレビューにならないので少し詳しく述べます。

 元々予算的なこともあって、EarSonics ES3を検討してたんですが、ES3は全体的にすっきりしている分離の良い音場に、女性ボーカルだけがディテール良く聞こえてくる感じで、女性ボーカルの浮き上がりが良い、まさに「ザ・女性ボーカルイヤホン」って仕上がりです。

 それに対し、ES5はその楽器音に鮮やかな色味が追加されて、より発色が良くなったので、ボーカルの浮き上がりはやや目立たなくなりますが、それでもディテール感の衰えないボーカルはくっきり見えます。ES3と比べると、刻みはそのままにシンバルの色味が濃くなり、低域も若干濃さを増し、そして個人的には、弦楽に格段のレベルアップを感じます。弦楽の伸びが非常にきれいで美しく、詳細なディテールを持って聞こえるので、劇伴系サントラ曲なんか聴き応え充分です。ES3はどちらかというと高域は少し発色を抑えているところがあって、ドライな傾向があり、ロック系やポップス系一辺倒な印象がありましたが、ES5は高域方向でつややかさが強調されるようになったので、アコースティックな曲も充分聴き応えがあります。

 私の好みとしては低域の黒みが強めで、タイトでなくても良いですがディテール感高めでドラムのボディが見え、できれば重低音の地熱感が出て、高域はシャリシャリ系じゃなくて、つややか系かシルキー系のまろやかな発色が好きなので自然シャープネス系よりはコントラスト高めのイヤホンが好みになってくるんですが、ES5は手持ちの中では、qdc 3SHには劣りますが、それに後れを取らないくらいの充分なコントラスト感があります。ES3だと色味はもうちょっと薄味なので、その点が買おうかどうかイマイチ迷っていたところなんですが、ES5なら文句の付けようがありません。

 各種レビューが指摘するとおり、実際はややV字のフラットで音味もニュートラルに近いサウンドのはずですが、低域や高域に充分なスピード感があり、ディテールも良いので、ドンシャリに聞き間違うほど明るく楽しいサウンドを奏でます。

 中域の低い部分だけ引っ込められていますが、この調整はボーカル周りのメリハリ感に貢献することが多いので、私の好きなイヤホンではよく見られますし、私自身イコライザーでこのあたりを凹ませることがあります。こういう調整を加えられると、場合によって男声ボーカルに埋没感が出る場合がありますが、ES5はコントラスト感が充分にあるので、男声ボーカルに適度な濃さがあり、女声ボーカルに比べると楽器に近く思えるものの、目立った埋没感がありません。

 

[高音]:高域はかなり高くまですっきり伸びているように聞こえます。高域付近ではシンバル周りに少し強調が加えられているようで、発色は少し目立ち、シャリシャリではありませんがシャラシャラくらいの金属感を出します。

 個人的には弦楽や管楽の根元の濃いところから、露骨に芯を見せずに自然な膨らみを持ったままスリムに抜けていく中高域の連携の良いシームレス感にもっとも感動します。

 バランスドアーマチュアドライバーのイヤホンでは緻密さを強調するとドライな音になっていくものがありますが、ES5は一定の緻密感がありつつも、色合いはあくまでみずみずしい色彩を保っており、ドライな成分はシンバルくらいにしかありません。緻密感も丁寧に整えられていて、高域・中域・低域のそれぞれが同様の鮮明さで聞こえるようになっており、どこかの音域に目を奪われて他が見えないということはありません。モニターイヤホンとしての設計は非常に質が高いです。

 高域は充分に明るい感じがしますが、全体としてはニュートラルで自然に聞こえ、明るさが強調されている印象を受けません。よく考えると中域の高いところから高域の低いあたりはボーカル傾向を考えても強調されているはずなんですが、それを感じさせないほどに自然に中域とつながっています(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:中域は高域に向かってなめらかに前屈みです。弦楽はやや暗い中低域付近からのびやかに立ち上がりますし、ピアノも低域に向かって穏やかに沈んでいく深さを感じさせます。ピアノには一定の光沢感と濃厚感がありますが、主張は強くなく、厚みを出し過ぎて中域を支配する感じはありません。ここでの主役はあくまでボーカルという姿勢が貫かれています。

 中域の下の方ではややウォームになり、音が太くなってボーカルを包み込んでくる印象があるので、男声ボーカルは楽器に接近しますが、それでも埋没はしません。

[低音]:100hz~40hzまで振動幅と輪郭のしっかりした振動です。30hzで沈み、20hzはわずかな振動感を残します。こういう振動幅に明瞭感がある低域音は大抵クリアな印象を受けるんですが、このイヤホンの低域も例外ではありません。

 30hz以下は抑えられているので、地熱感は強調されず、ドラムのボディは明確です。透明度が高く、キックの輪郭がかなり明瞭に出ます。深掘り感もクリアに感じることができるはずです。この低域の明瞭性については官能性テストで詳しく語りたいと思います(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:奥行きと幅のバランスが良い音場を持っています。サウンドステージは広めではありますが、手持ちのイヤホンの中で一番ではありません(一番はTONEKING BL1)。官能性で後述しますが、音のディテール感は全体的に良く、とくに女性ボーカルについてはその詳細さは驚きに値します(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:ドラムは表面に弾ける音の粒が見えるほど繊細です。ドラムのボディはやや鼓面を強調する感じで表現されるので、下の方の鳴動感はほとんど感じません。概ねバッツンバッツン系です。シンバルは前述したように、金属的な輝きを強調しながらも少しシルキーさも兼ね備えたシャラシャラした色合いで、若干ドライさも強めに聞こえます(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:男声ボーカルも自然で分離感が良いですが、とくに女性ボーカルの息感とつややかさのバランスが際立っており、かなりディテールに優れます。

 

【4】官能性「低域のクリア感、高域の伸びしろ、女性ボーカルが神がかっている。クリアで分離はしっかりしていて緻密なのでデジタルな曲にも強いが、豊かな表情を持っているので、アコースティックで芳醇なメロウサウンドを奏でることもできる」

ヨルシカ「藍二乗」

 この曲に関しては全体的にドラムセットとギターのディテール感が凄いんで感心しきりだったんですけど、やばかったのは3:21くらいからのラストスパート。「ただ夜を泳ぐように」のラストフレーズの完成度が恐ろしい。最初に息を飲むところ、ふわっと浮揚するボーカルの息の抜き方、最後の「ように」の抜けからギターが入ってくるまでの一瞬間の静謐感の出し方、すべてがディテールがかってて神レベル。

 手持ちでは匹敵するディテール感を出せたのはWestone W40くらいかな。それでもW40はディテールと引き換えにちょっと声色がカサカサしちゃってて、潤いはES5に負けていましたから、女声ボーカルのディテールに関しては細部のレベルの高さを文句なく感じさせてくれます。普通はここ、女声ボーカルは細い感じか太い感じかのどちらかで統一されるんですけど、ES5は下で太く、上で少しふわっと軽くスリムに抑揚をちゃんと付けてて、微妙なニュアンス感なんですけど、非常にセクシーに聞こえます。これはやべぇ。

 こういう抑揚のあるセクシーボイスはqdc 3SHも味わわせてくれるんですけど、どうもそのくびれるところの閾値が違っていて、3SHのほうはもうちょっと上まで太いのか、この曲では3SHは太い感じがあまり変わらず、ER5のような妙味はここでは味わえません。

 


だから僕は音楽を辞めた

 

Jess Glynne「Home」

 いろいろレビューを読んでいると、低域にディテールなどはないという意見も結構見ます。とくに海外のイヤホンレビューで。日本人はあんまり低域のディテールとかって言いませんよね。タイトかブーミーかの二元論で済ませやすい感じ。まあその二元論に立てばES5の低域はタイトな音って分類になることはおそらく衆目一致と思われます。

 ただ私は元低域ジャンキーでもあるので、低域の明瞭性とか透明感、重低域の地熱感、黒味みたいなものにもこだわります。そんなとき重宝しているのが私の大好きなJess Glynneの「Home」って曲。低域ジャンキー必聴の中毒性が高い曲です。あとはperfume「Dream Fighter」とかね。

 で、この「Home」を聞けば一目瞭然、ES5の低域が異様に澄んでいることがわかります。量感的にはそうでもない印象なんだけど、とにかく音が濃くて深くまでクリアに輪郭が感じられる音でディテール感に優れているから、量感以上に存在感は充分。しかも中域から適度に離れてて、混濁する感じがありません。音の定位の正確性と個々の音の分離感が低域でも全く崩れません。むしろ低域の方がクリアに思うくらい。

 手持ちだと、たとえばqdc 3SHはより締まって黒い音を出すけど、音場がもっと狭いから中域と接近して密度感が出ちゃって、パワフルさは増すのはいいにしても、かなり窮屈になります。あと分離感は必然的に劣る印象を受けますよね。一方でJVC HA-FX1100とかっていう神イヤホンがいますが、こちらはディテールが高いっていっても、完全に別方向の音で、より鳴動感や反響感を出して情報量を増やした、いわゆる空気感って類いのディテール感だから濃密さはあっても透明感を感じる低域じゃありません。まあこの曲聴くなら、一番のおすすめはこのHA-FX1100の神がかった低域なんだけど。

 


I CRY WHEN I LAUGH

 

羊毛とおはな「世界は踊るよ、君と。」

 カップリング曲の東山奈央「ここからはじまる物語」のボーカルの再現度もすごくて、「イマココ」や「月がきれい」、「Hello Alone -Yui Ballade-」なんかを聞いても、もはや東山奈央御用達なイヤホンだけど、それを述べたいわけじゃないので、とりあえず置いておきます。

 ここではむしろ、あんまり濃密さを出し過ぎない分離感と定位感を重視した音響にも拘わらず、この曲で充分なメロウ感を出してまろやかに聞かせてくれるというこのイヤホンの神がかりっぷりに注目しましょう。普通、空間に透明感が出てくると、それに伴って霧が晴れてくるので濃密さは失われるようにように思われますが、そんなことはありません。

 私はこの曲はqdc 3SHだとかHA-FX1100とか密度の高い音響のイヤホンで聴くことが多いんですが、ES5はそれらに比べて明らかに音場が広く、音も細い感じですっきり整理されちゃってるんですけど、濃密さで遜色を感じません。たしかに満足感で言うと、これらと比べてちょっとボリュームに劣るのでイマイチ感がありますから、この曲を聴くならHA-FX1100とかのほうが好みなんですけど、ES5の音のディテール感と色の濃さの再現度はかなり迫真を感じるので、晴れやかでクリーンな清潔感があるのに、空気感が感じられるという相矛盾した感覚を覚えます。まあ一言で言うと、モニターとしての原音忠実度がすげぇ。このイヤホンを手に入れて初めて、原音忠実の真の意味を知った気がします。

 


「異国迷路のクロワーゼ The Animation」主題歌 世界は踊るよ、君と。/ここからはじまる物語

 

 ほんとはもっといろいろ書こうと思ってましたが、最近レビューが長すぎるという声もちらほら聞くので、レビューのダイエット化を図っています。だいたいエッセンスは語り尽くしたと思いますので、3曲だけの紹介ですが、官能性の要点については充分伝えられたと思うので、ご寛恕いただければと思います。

 

【5】総評「女声ボーカル好きなら、ANDROMEDAに飛びつく前に一度は聴いておいたほうがいいかもしれない」

 世にはCampfire Audio ANDROMEDAとかいうやつがいて、女性ボーカル最強イヤホンの名をほしいままにしています。両方買うことは予算的に厳しいからできないんだけど、買う気もないのに店頭試聴で一週間に一回くらいのペースでANDROMEDA聴きまくってる私の意見としては、ES5のほうが、より自然でメロウな音を出してくれる可能性が高いです。低域のディテール感の良さを考えると、実は万能性はこちらのほうが良好な可能性が高いですし。高域の鮮烈さでANDROMEDAには負ける感じはありますが。むしろ問題はANDROMEDAと違って、試聴機の取り扱いが少なくて、どこでも聴けるってわけではないところですかね。

 どちらにせよ私には分不相応な製品であることは確かです。レビューのために手持ちイヤホンで音質比較しようにも、匹敵するのは一つもないって状態なんですから。

 

EarSonics ES5

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EarSonics ES5 イヤホン インイヤーモニター

 

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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。

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