- 【1】装着感/遮音性/通信品質「コンパクトで滑らか。耳当たりの良い装着感」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「充電ケーブルがTypeC」
- 【3】音質「やや暗めで中低域に寄ったなめらかサウンド。手応えが緩く、音のまろみを強調する」
- 【4】官能性「黒めのゆったりした曲を選んで聴くと、実に良く浸れる」
- 【5】総評「個人的には、夜の公園でビールを飲みながらボーッと音楽を聴くには最高だなあ、という印象です。」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「コンパクトで滑らか。耳当たりの良い装着感」
おすすめ度*1 |
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ASIN |
かなり滑らかにツルツル加工された流滴型のハウジングは耳にスルッと収まる。装着感は良好。遮音性そこそこ。音漏れ少し。
SBC/AAC対応。通信品質は価格帯では安定している方で、距離的には5m離れても途絶がなく、10m程度で一端ブチッと来るが、その後もスムーズに曲が聞こえる。いつも通り、自室の机の上にプレーヤーを置いて、階段を降り、トイレに篭もってドアを閉めるテストをしてみたが、途切れない。かなり接続は強いと言える。
この機種の期間限定クーポンが提供されています
【2】外観・インターフェース・付属品「充電ケーブルがTypeC」
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル(Type-C)、専用充電ケース、説明書。
連続再生時間は最大4時間。ケース込みで最大24時間。また防水性能はIPX4。
【3】音質「やや暗めで中低域に寄ったなめらかサウンド。手応えが緩く、音のまろみを強調する」
音質的には一言目から厳しいことを言うと、おそらく流行のEDMやテンポの速い明るめの曲を聴くと、篭もっていると判断される可能性が高い。今回は比較対象としてほぼ同価格で比較的素直なフラットサウンドに思えるTaoTronics TT-BH053を選んだが、それと比べてみる感じ、高域から中域にかけての発色が全体的に抑えめである。
低域を豊かに押し出しつつ、中域を自然にマイルドな感じで聴かせていると肯定的に評価することもでき、実際音に圧迫感がないので聞き疲れはしないが、シンバルや高域の煌めき感に大きく劣るため、最近のハイファイなサウンドには弱い。高域が目立たない分、一番高くなって聞こえやすいボーカルだけはかなり豊かに聞こえる印象なのは人によって評価点になるかも知れない。音は全体に尖りを抑えられるので、リズム感は一般に緩く聞こえやすく、メリハリに欠けると判断される可能性があるのと、ギターのエッジもゆるく浅く聞こえるので、スピード感のある曲ではエレキギターは濁っていると感じられる場面が多いだろう点が、このイヤホンの立ち位置を難しくしている。万能でないことは確かだ。
標準イヤーピースもあまりよくないらしく、音の濁りを助長している印象を受けたから、大きさを全部試したがどれもだめだったので、別のイヤピをいろいろ試した。個人的にはRadius deep mountで中域に被さりがちな低域の重心を下げてやると、全体的に音が締まって聞こえが格段に良くなった。とはいえ、以下のレビューはいつも通り標準イヤーピースで行っている。
しかし、こういうぼーっとした感じの音のイヤホンは第一印象は良くないが、耳慣れすると解像度が上がって感じられ、意外と心地よくなる可能性はある。
[高音]:暗い。シンバルはかなり発色が悪く、ハイハットは濁って聞こえやすい。ヴァイオリンは伸びずにゆるやかに上に吸い込まれるくらいの音で存在感は抑えめになる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、菅野よう子「Power Of the Light」でテスト)
[中音]:曲によって低域に干渉されやすいところがある。激しいロックではエレキギターに濁りを感じやすい。音はまろやかな感じなので、ややゆったり系の曲やアコースティックなサウンドの方が相性が良い。
[低音]:100hz~40hzまではぼーっとした振動。30hzで沈む。音は全体的にゆるめになる。ベースはかなり輪郭を穏やかにしてウォームな温度感を強調して聴かせる。じわじわ感が強い(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:全体的に輪郭が穏やかで、手応えに乏しいところがある上に、締まりのあまり良くない低域が中域に被さってくる場合があるので、篭もっていると判断されやすく、解像度は優れているとは評価されないだろう。全体的に定位もゆるく聞こえやすく、ぼやっとした感じはある(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムは輪郭が緩く、モサモサした音になりやすい。シンバルはかなりソフト。全体的に柔らかいのでリズム感を目立たせる感じはない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルも手応えが柔らかいが、周りの楽器音の方がおとなしいので、大抵一番良く聞こえる。そういう意味では分離感が良いが、輪郭はゆるいので、息感なんかはほとんどなく、少しふわふわして聞こえる。
【4】官能性「黒めのゆったりした曲を選んで聴くと、実に良く浸れる」
菅野よう子「White Falcon」「Moon Flower」
何度か紹介しているが、この曲はオーケストラの派手目なところだけ味わえるので、実に手っ取り早くいろんな楽器の音色を確認できて楽。で、このイヤホンで聴くと弦楽や金管の高いところは伸びが悪く、全体的に下に向かって音が集まり、基本的に太鼓の音のあたりに一番密度がある。明るさが足りないので、終盤に「軍靴の記憶」のテーマが聞こえてきて春めいた穏やかな雰囲気を感じさせるところも、ほとんど風味がない。全体的にメリハリと盛り上がりに欠ける印象を受けるだろう。おそらくオーケストラは向かない。
同じサントラから採るなら、たとえば「Moon Flower」は高域の発色を抑えれば濃厚で叙情的な香りが強くなるから、こういう落ち着いた曲は浸って聴けると言えなくもないが、やはり高域の発色の悪さから来るメリハリの無さが影響して、クライマックスで弦楽がもう少し感情をえぐってくれないと少し物足りない気もする。
∀ガンダム オリジナル・サウンドトラック 2 ディアナ&キエル
鈴木雅之「帰りたくなったよ」
このイヤホンで聴くこの曲は異様に聴き応えがある。ボーカルがちょうどいいあたりの音域にいるらしく、やたらとフォーカスが当たって丁寧に聞こえてくるうえに、低域のドラムもウォームでベースはじわじわとした優しい温度感でムードを盛り上げる。この曲専用で聴くなら、低価格でかなり高く評価される可能性がある。
Nulbarich「Silent WonderWorld」
同じような温度感でこの曲も結構楽しめる。小音量だとほとんどドラムとボーカルしか聞こえないが、音量を上げていくと途端に立体的になる。ちょっと音量高めくらいでも音に圧迫感は出ないので、大音量で聴く系の人には悪くないだろう。適正音量くらいでも効果音がほどよくスパイシーな音を足しながら、全体として穏やかな世界観が意外と丁寧に聞こえてくるので、没入感がある。
私の経験上、低域の音が強いと没入感が高まるが、このイヤホンは没入を妨げる、うるさい高域もいないので、なおさら浸ってしまうところがある。
米津玄師「 灰色と青( +菅田将暉 )」
温度感や色味的にもこの曲向き。アコースティックギターは浮かれず、沈潜するような色合いを奏で、ボーカルも少し鬱っぽい下方向に向かう声色だが、この曲の世界観に妙に合っている。ドラムやベースも輪郭が柔らかいので低域に夢の中にいるような曖昧な感触があるのも雰囲気に合っている。ほどよい解像度が逆にかなりこの曲に浸らせてくれる。
森山浩二+山本剛トリオ「Day by Day」
落ち着いた感じのJAZZをゆったり聴くにはこのイヤホンはおすすめ。たとえばこの曲ね。男声ボーカルなのもこのイヤホン向きなのか、中低域に音が集まった濃厚サウンドで味わえる。全体的に太く、豊か。
Suchmos「MINT」
最近ハマってるのがこのSuchmosってバンドで、やっぱりamazon musicがおすすめしてきたんだけど、渋めの重厚な曲が多いので、このイヤホン向きかも知れない。この曲も、シンバルやキーボードの輝きを抑えて、しっとりした感じに聴かせてくれるし、ギターも黒くて少し輪郭ぼかしてる感じなのも妙にオシャレ。こういう浸れる系の曲向きのイヤホンかな。まあ音が若い感じではないことは確か。
【5】総評「個人的には、夜の公園でビールを飲みながらボーッと音楽を聴くには最高だなあ、という印象です。」
ちょっと黒いめの落ち着いた曲に浸れるイヤホンっていう意味では、夜の公園なんかで少し冷えたしっとりした空気を肌で感じながら、ボーッとビールを飲むのには良い感じかも知れない。そんな人、近所で見たことねぇけどな。
まあでも、夜にJAZZのしっとり系の曲に浸るには本当にいいイヤホンって感じかな。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。