Campfire Audio バランスドアーマチュア型イヤホン IO 【CAM-5324】
- 【0】免責事項
- 【1】装着感/遮音性/通信品質/ビルドクオリティ
- 【2】イヤーピース考察
- 【3】音質
- 【4】官能性
- 【総評】一聴すると、ものすごく個性的で濃いキャラクターだが、全体として見るとバランスは整えられていて、説得力がある。
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【0】免責事項
このレビューは販売店舗さんのご厚意で試聴させていただいた範囲内で作成しております。ケーブルは標準付属品のはずですが、セッティングは販売店舗さんにより異なる場合があります。イヤーピースは手持ちのものを使える場合は、それを用いてテストしております。レファレンスはJVC スパイラルドット++ Lサイズですが、機種によって使えない場合もあるかもしれません。使えない場合どうするかはその都度。
テスト機は基本的にAstell & Kern KANN CUBEを用いていますが、音質の特徴を捉えるために副次的にONKYO GRANBEATなど別のDAPも使っております。
一応解像度とかの比較用にイヤホンのレファレンスを定めていて、EarSonics ES5です。
【1】装着感/遮音性/通信品質/ビルドクオリティ
装着感
装着感は良好。耳当たりも良い。
遮音性
耳をしっかり覆うので、遮音性はそこそこ高い。
ビルドクオリティ
ビルドクオリティはさすがCampfire Audioといった感じで、塗装ムラもないし、しっかりした高級感がある。
【2】イヤーピース考察
この機種のノズルの太さは普通。比較的万能にイヤーピースを合わせやすい。
- AZLA SednaEarfitは少し濃い感じが出すぎるところはあり、場合によってサ行の刺さりを助長するところはあるけど、相変わらずコントラスト感高めに聴きたいなら、悪くない選択肢。
- JVC スパイラルドットは素直に分離を良くして聴かせてくれる感じがあるので、おすすめできる。
- JVC スパイラルドット++は全体的に音を整理しつつ、空気感を加えて聴かせてくれる。おすすめ。
- final E Clearは中高域を整理してくれる感じ。ボーカルの分離は元々良いけど、さらにくっきり聴かせてくれる。
- 中高域の派手さが気になったら、Acoutune AET08でマイルドにするとよいかも。低域のウォーム感が強調されて全体的に聞き心地が安定する。サ行の刺さりも抑制される。
- 相変わらず楽しいDeep Mount。もっと中高域の密度感を楽しみたいならこれ。低域はタイトになって床面の存在感が増す。
【3】音質
総合:23/30
高域:8/10
確かな手応えと厚み。ビバ!濃厚感!
- 質感:硬質、濃厚、ニュートラル
- 明るさ:明るい
- 拡張性:かなり良い
- 派手さ:派手
- 緻密さ:緻密
中高域~高域あたりの金属音を中心に手がかりが多く、やや硬質に濃くはっきりとシンバルの音、タムやスネアの鼓面を強調し、ドラムセットが明瞭に活き活きと聞こえるバランスになっている。ヴァイオリンも太く濃く力強く上まで伸びて濃厚。尖りはあまりないが、ボーカルのサ行にシビランス(刺さり)がわずかに出やすい。
中域:7/10
ボーカルの分離が良い。清潔感と温度感を適度に感じさせてくれる良質なクッション
- 質感:ウォーム
- 明るさ:明るめ
- 横幅:普通
- 奥行き:やや広い
- ボーカル:手前、分離が良い、濃い
中高域が非常に濃く鮮やかで個性的。かなり硬めに濃い音を聴かせてくれるが、温度感は暖かく、はっきりしている密度があるわりにギスギス感はない。ただし密度が高く、エッジの際立ちが強い感じがあるため、長時間聴いていると疲れやすい。中域は一定の清潔感を持たせられて中高域を派手めにしっかり聴かせるが、一定の温かみもあってクリーンすぎる感じではない。高域の個性を一定程度マイルドにするクッション性もある。
低域:8/10
高域の主張の強さを中和するような、温かみのある低域
- 質感:ウォーム
- 明るさ:普通
- 重心:低い
- 重み:重い
- 重低音:深く、地熱感少しあり
100hz~30hzまでブオッという震えのある振動。20hzはほぼ無音。
低域は高域の硬質で場合によってきつく感じられやすい個性を中和するかのように暖かく、膨張感があって、聞き心地がマイルド。バスドラムには一定の厚みがあり、キックも重く、ベースも黒めにジンジンした温もりのある音を出す。重低音には一定の地熱感もあり、ロックを聴くのに充分な熱気のある音でライブ感を演出する。
【4】官能性
ヨルシカ「爆弾魔」
ドラムセットが素晴らしい。シンバルの輪郭と刻みははっきり聞こえ、音も濃く、前面に出てきてリアルに聞こえる。ギターのディストーションもキレキレで、はっきりとエッジ感を出して歪む。下では黒みもしっかり。
こうしたやや派手めの中高域以上に対し、低域はしっかり重厚感を出し、温かみも感じさせて聞き心地を調整している。この低域も決して聴き応えがないわけでなく、重みはドンと強く出るし、ベースの地熱感も充分。聴き応えと聞き心地のバランスを出しつつ、一番聴いて欲しい中高域にディテールをうまく集約しているあたりに説得力を感じる。
ずっと真夜中でいいのに。「勘冴えて悔しいわ」
この曲が凄く楽しめて、一気にこのイヤホン好きになった。ドラムの火力がディテール乗って気持ちよく聞こえてくるのとピアノが濃いめに太く聞こえてくる感じに充実感があって、これだけ中高域濃厚で密度高めなのに、ボーカルが一歩手前でしっかり分離して聞こえてくる。
ドラムはバスの方が下でもドンドンしっかり重みを出し、一定の膨張感もあって、音場を豊かに支えるから、中高域の発色が少しきわどい感じがあるのに、全体としてはあんまりきつい印象を受けない。ボーカルも自然な声色で温かみがあってライブ感あり。
東山奈央「イマココ」
すげぇレベル高い。ボーカル周りに適切な清潔感があって、意外とすっきり。それでいて、ほどよくウォームな温かみが音場全体に適度に広がっている。
低域ドラムの膨張感に豊かさを感じ、ベースにも温かみがあり、ボーカルは心地よいウォームなふっくら感とつややかさを持っている。それでいて声の輪郭は適度に強調されて息感にリアリズムがあり、上では透けるように伸びてきれいに上方空間に吸い込まれていく。サ行だけわずかに尖りやすいかも知れない。
勇者パーティー「えんどろ~る!」
ボーカルに自然な甘味がありつつ、上ではコケティッシュに明るく伸びる。中域には清潔感がありつつ、一定のウォーム感があって聞き心地が良い。低域ドラムには適度な膨張感があって温かみを出し……って「イマココ」とおんなじことしか言ってないな。
まあつまり、基本的に声優系の声に強い気がする。
TVアニメ「 えんどろ~! 」オープニングテーマ「 えんどろ~る! 」
藤田麻衣子「ねぇ」
これもレベル高く感じた。ボーカル周りに適切な清潔感があり、それでいて温度感は失われない。藤田麻衣子の曲は低域の利きが意外に大事な気がするけど、このイヤホンはそこらへんもしっかりしていて、ドラムが膨張感を出しつつも、ベースラインはきれいに温かみを持って聞こえてくる。
しかし、やはりこの曲ではボーカルの聴き応えに一番の満足感があって、上では透けるように伸びながら、中域真っ正面ではふっくらと柔らかく甘味がある。息感もディテールが細かく、メリハリが利いている。やっぱりサ行だけは少し尖る感じは強く、人によって刺さって聞こえるかも知れない。
中孝介「君ノカケラ feat. 宮本笑里」
最初聴いたとき、ちょっとヴァイオリン派手すぎかなって思ったけど、聴き込んでみると、「ありかな」って思った曲。ベースやドラムに温かみがあり、シンバルも刻みがきれいで、音色は全体的にまろやかで濃厚。ヴァイオリンは最初は既述のように派手さに少しびびったが、全体像を捉えてみると、華やかさの味付けとして「ありかな、むしろカッコイイかもしれん」と思い直した。なんだかんだいって、聞き惚れた。
【総評】一聴すると、ものすごく個性的で濃いキャラクターだが、全体として見るとバランスは整えられていて、説得力がある。
最初は中高域のインパクトにびっくりさせられて、「なんじゃこりゃ?」って思ったけど、聴き込んでみたら、むしろ楽しくてハマリました。これは個人的に「あり」です。
一番いいなって思ったのはやっぱりロックかな。ただボーカル周りの清潔感と濃厚感の出し方が意外とうまいんで、アニソンとかバラードとかR&BとかJAZZとか、案外悪くないなっていうか、これはこれで万能な音質かもしれないと思えるくらいにはちゃんと聞き心地を考えて作られています。妙な説得力があることは確か。
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