- 【1】装着感/遮音性/通信品質「IEMを意識したようなデザインで装着感は良い」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「スペックは優秀」
- 【3】音質「中高域あたりをよく聴かせ、低域は抑えめの、すっきりはっきり系サウンド。歯切れが良い」
- 【4】官能性「明るめでバランスが良いが、外連味に乏しい、すっきり系のフラットサウンド」
- 【5】総評「やや平坦だが、みずみずしさがほどよく感じられる見通しの良いフラットサウンドが魅力」
- 【6】同価格帯の実力派完全ワイヤレスイヤホンとの聞き比べ
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【1】装着感/遮音性/通信品質「IEMを意識したようなデザインで装着感は良い」
おすすめ度*1 | |
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ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 | 7.5h/250h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | AAC/SBC |
防水性能 | IPX7 |
音質傾向 |
フラット、はっきり、見通しが良い、パリパリ、みずみずしい |
イヤホンハウジングのデザインは少しだけIEMを意識しており、出っ張りがある。耳の形に合わせて装着が可能で、装着感は悪くはない。遮音性はそこそこ。
対応コーデックはAAC/SBC。接続安定性は高めで、家の中ではまず途切れを感じない。私のテスト環境だとAAC接続時のほうが遮蔽物などに弱く、距離を取ると通信品質が不安定になりやすいが、この機種も例外ではない。
AAC接続時は3m程度でも遮蔽物があると途切れが少し出てくる。SEC接続では5m程度までシームレス。
外出時の通信品質は価格帯では標準以上くらいの品質があり、街中でもそれほど途切れることはない。駅ではホームなどで少し途切れを感じる。
テスト環境
今回のテストはAAC接続をHiby R6 Proで、SBC接続をONKYO GRANBEATで行っている。
【2】外観・インターフェース・付属品「スペックは優秀」
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、専用充電ケース、説明書。充電ケースはモバイルバッテリーとして利用可能。
操作インターフェースはタッチ式。反応は悪くない。
【3】音質「中高域あたりをよく聴かせ、低域は抑えめの、すっきりはっきり系サウンド。歯切れが良い」
音質はフラットに近く、低域に強調はなく、高域も光沢や空気感を強調する感じはなく、中域からなめらかに自然につながっている。さらっと手触りのスムーズなシームレス感のある音質というのが適当と思え、ボーカル付近に若干の強調を感じ、ギターサウンドやピアノの光沢にツヤッとした感触があるが、基本的にはシルキーである。
基本的に見通しが良く、明るい音場を持っているが、光沢感や尖る感じは強調されず、どちらかといえば凹凸はあまり感じない。そのため立体感という面ではやや抑制的な印象を受ける。質感的にはタムやギターの輪郭にパリッとした感触があるが、煌めきを強くしたり輪郭感はあるものの、それを強く出す感じではない。音質傾向としてはデジタル寄りではあると思うが、デジタルな感じはあまり感じない。色温度としてもニュートラルに近く、クールでもウォームでもない感じである。
ボーカルは膨らみがあまり強調されず、自然な太さで、わずかに高域方向に向かって伸びを感じるため、女声ボーカル寄りではあるだろうが、やはりそれほど寄せている感じはない。ボーカルフォーカスはそれほど強調されず、わずかに楽器より前かなといった程度。
全体としてややはっきりした輪郭を持つすっきり味の明るいサウンドといった感じで、微炭酸感のあるサウンドを持ち味にしているように感じる。その意味で演出感はあまりないので万能に感じる一方、外連味も少なく、面白味に欠ける印象があるのは事実かも知れない。とにかくすっきり臭みがない感じである。解像度的には価格を考えると充分な表現力があると思うが、フラットな音質のせいか、のぺーっと平坦な印象を受けるので、個人的には特別感動するところはない。
美点
- バランスが良く見通しの良いフラットサウンド
- ボーカルやギターに少し強調を感じるが、基本的には平坦でフォーカスのバランスはよく分散されているため、万能に感じる
- すっきりした音で圧迫感がなく、聞き疲れはしにくい
- パリッとした輪郭はあり、音は比較的はっきり聞こえる
- デジタル的な傾向の音ではあるが、無機質感があまりない
欠点
- ディテールは立体感に欠ける感じがあり、解像度が高い印象ではない
- 凹凸に乏しく、素直だが面白味にはやや欠ける
[高音]:高域は開放感があるものの、シャープネスや光沢に強調がほとんどなく、抜けは悪くないが、明るさは自然で強調がない。たとえばシンバルの発色にほとんど白味がなく、なめらかで空気感は抑えめ。弦楽も透明でヒステリックな感じがないツルッとした手応えのあまりない質感で滑らか。必ずしも暗い印象は受けず、抜けは良いが発色は穏やかでナチュラルな音色感がある(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域はまろやかさがわずかに強調されていて、ピアノ音やボーカルの発声にみずみずしさや湿っぽさが混じるため生々しさがあるが、ふっくらした甘味の強調はあまりなく、太さ的にも細くなく、太くなくといった中庸感がある。ギターは暖かさを多少感じるくらいには温もり感があるが、刻みもよく、ウォーム感は強調されないニュートラルサウンドに感じる。輝きにも強調がないので、ギラギラもせず、ジャランジャランといった感じで抑制的にさえ思えるほど、落ち着きを感じる。
[低音]:100hz~40hzまで、少し張りのある太さもほどよい振動。30hz以下ほぼ無音。低域の存在感に強調はあまりなく、自然に中域からつながっている。中低域での膨らみもなく、暖かさもあまり感じないニュートラルで見通しは悪くない低域だが、重低音もあまり濃くなく深さや重さを強調する感じでもなく、むしろ軽い印象さえあるので、やや没個性的に聞こえる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:フラットでボーカル周りに強調を感じるが、全体的に抑揚や凹凸をあまり感じない。見通し感は良く、聞き疲れしない音だが、ダイナミクスはやや感じづらく、表現としては静的な印象を受ける(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムは率直に言って薄味。タムやスネアにパリパリした輪郭感があるが、音圧はやや優しく、はっきりと強調する感じではない。バスドラのキックは少しボツボツと柔らかく軽いため、明るくきれいに聞こえはするが、重厚感や濃さに欠ける。パツンパツンとした軽めの音。ハイハットも薄味傾向で刻みは悪くなく、シャリシャリとした手応えはあるが、存在感は強くない。チンチンとした少し低めの音がよく聞こえる(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルは明るめ。女声ボーカルが少し伸びやかで、ツヤもある。
【4】官能性「明るめでバランスが良いが、外連味に乏しい、すっきり系のフラットサウンド」
山崎あおい「花火のあと」
【Hiby R6 Proで鑑賞】Hiby R6 Proで山崎あおい「花火のあと」を聴いてみると、ボーカルとギターに適切なフォーカスがあり、それぞれややハスキーな声色とニュートラルで刻みのよい音色でみずみずしさも素直に感じられる青春の味。息感の抜ける感じに不自然さもなく、自然な太さを維持したまま、ふーっと自然に消えていくため、開放的。一方で弦楽がおとなしめなせいもあって、サビで情感を突き上げてくる感じがなく、曲の展開はやや平坦である。サビの前もサビもその後も、ボーカルがほとんど同じ濃さと音色で、抑揚に乏しく展開のメリハリがあまりない。
全体的にディテールはよく分散していて、みずみずしい感じなんかうまく聴かせている印象なんだけど、無難に聴かせているところがあって、面白味はあまり感じず、個人的には胸に訴えかけられるところもあまりない。ギターとボーカルがきれいだねぇってありきたりのことしか言えない感じ。
Snail's House「なつまつり」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】この曲はGRANBEATで試したんだけど、悪くなくて、全体的に見通しよく聞こえるんだけど、いまいち立体感に乏しくて奥行きあまりなく、全部聞こえてくる感じがある。本来この曲ってもうちょっと奥行き感を味わえる感じがあって、実際イコライザーで低域を盛り、高域にも強調を加えて明るさや空気感、シャープネスを足してやると、途端に活き活きと頭を囲い込んでくる。聞き心地は良くて安心感があるんだけど、やはりフラットすぎるかな。
大原ゆい子「星を辿れば」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】この曲ではボーカルフォーカスも良くて、シンバルもシルキーに品があって、弦楽の伸びもちょっとしとやかな透明感があって意外と良いんだけど、個人的には低域の沈み込みがもうちょっと欲しいかな。ほどよくゆるくて、輪郭の出し方とか結構完璧に近い気がするんだけど、せめてもうちょっと下で深みがあった方が上下の抑揚感が改善されてもっと味わい深くなる気がする。やはりちょっと平坦に感じるかな。
星を辿れば(アニメ盤) TVアニメ『リトルウィッチアカデミア』エンディングテーマ
清浦夏実「風さがし(full-colored samba mix)」
【Hiby R6 Proで鑑賞】TVアニメ「スケッチブック〜full color's〜」のOP曲。南国風のぬくい感じに浸れる曲で個人的に好きな曲。Hiby R6 Proで聴いた。
ボーカルにちょっと甘味を感じさせつつ、湿っぽい感じもきれいに出る。ギターの音色もみずみずしく、弦楽やライドシンバルの明るさを強調しない透明な色合いが、風の清涼感を感じさせる。音場には見通しの良い適度な明るさがあり、ほどよい軽やかさのあるJAZZ味を感じさせながら、温度感を感じるほどには濃厚感も出して聴かせてくれる。
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十九色
【5】総評「やや平坦だが、みずみずしさがほどよく感じられる見通しの良いフラットサウンドが魅力」
見通し感が良く、音にほどよい透明感とツヤがあって、みずみずしい感じで楽しめるが、抑揚や派手さは少し抑えめ。フラットで万能ではあるが、立体感でやや劣るので、ロックやEDMでは人によっては少し面白味が足りなく感じることも多そう。結局ボサノヴァやカントリーなんかが一番合いそうな雰囲気。通信品質やスペックも悪くなさそうだが、特筆するほど魅力的かは個人的には微妙なライン。装着感なども含め要求水準は充分満たしているし、音質のバランス感覚は良さそうなのでおすすめではあるけど、推しの度合いはあまり高くない。
【6】同価格帯の実力派完全ワイヤレスイヤホンとの聞き比べ
vs EnacFire Future Plus(ヨルシカ「心に穴が空いた」)
まずEnacFire Future Plusと聞き比べてみる。ドラムやベース、ギターの黒みはFuture Plusのほうがしっかりしていて、重厚感がある。ただこの曲だとFuture Plusではピアノの光沢感はやや抑えめで、ボーカルも少し暗めであり、ちょっと鬱屈感が強く感じられる。
それに対し、HJF-01の音はピアノがもう少し明るく軽妙でJAZZ味があり、ギターがもう少し明るい。ボーカルももう少しみずみずしく若々しい。一方でバスドラムやベースは抑制的で、全体的にJAZZ風の味わいになっている。ちょっと軽妙でオシャレな感じだが、一方で高域の明るさは抑制的で透明感重視で大人びた雰囲気がある。
vs EnacFIre E18 Plus(田中理恵「Fields of hope」)
ボーカルの透明感やみずみずしさでは同じく定評のあるEnacFire E18 Plusと比較してみる。はっきり言ってどちらもボーカルのみずみずしさをよく表現してくれるが、E18 Plusのほうが高域でのシャープネスやのびやかさでやや勝り、立体感がある。中域のふっくら感というか、湿っぽさではHJF-01のほうが優れており、ギターもみずみずしいが、個人的にはE18 Plusのほうにより奥行き感や深みを感じる。ただHJF-01のみずみずしいボーカルに比べると、E18 plusのボーカルはわずかにドライでちょっとカサカサした質感を感じる。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY ORIGINAL SOUNDTRACK I
vs Hiyoo A66(A8-C5)(中瀬聡美「銀色Horizon」)
Hiyoo A66と聞き比べると、ボーカルの厚みや温度感はA66のほうがよく、低域に深みがある分だけ重厚感もある。だが、見通し感では明らかにHJF-01のほうが優れており、中高域から高域にかけての透明感が素晴らしく、そこにツヤツヤとみずみずしいボーカルが展開される。率直に言ってこの曲ではA66はもっさりしすぎており、鈍重に感じる。それに比べてHJE-01の音には適度な開放感があり、みずみずしさと清涼感があって満足度が高い。金管の音も初芽に似た若々しい息吹を感じる。
vs TaoTronics SOUNDLIBERTY 53(La Nef「Ainsi malheureuse suis」)
同価格帯で同じくフラットなサウンドのTaoTronics SOUNDLIBERTY 53と聞き比べてみる。全体的な音の濃さではSOUNDLIBERTY 53が勝り、たとえば高域木管の音の音色はよく聞こえ、全体的に深さとメリハリ感がある。ただ、質感の風味というか、みずみずしい感じはHJF-01のほうが勝っており、すっきり淡い感じながらも湿っぽさはわずかに勝る。高域木管もより生々しさがある。
それでもSOUNDLIBERTY 53のほうが声にしっかりしたコシがあるので、より輪郭もはっきりと明瞭感と懐のある抱擁感が出るところもあり、甲乙付けがたい。少なくともコントラスト感はSOUNDLIBERTY 53が明確に勝る。
Bergeron, S.: Perceval La Quete Du Graal (The Quest for the Grail, Vol. 1) (La Nef)
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。