この記事ではあくまで私の好みで選ぶ、関東でイヤホンをじっくり試聴するならここという店舗をランキング形式で紹介します。個人的にはこういう店舗批判みたいなことはできればしたくないのですが、最近イヤホンやヘッドホンの試聴環境について深く考えることがあり、皆様にも考えて欲しいと思ったので執筆致しました。
イヤホン試聴に理想的な環境とはどのようなところですか?
イヤホンの試聴に理想的な環境を考えるためには、まずイヤホンをどのように試聴するとよいかという点を明確にしなければいけません。音響心理学的には、人間は音を脳内で視覚で見える空間的なイメージに近いものに置き換えて理解しています。音を高い低い、明るい暗いという視覚的な言い方をし、音にこういう匂いがある、こういう味があるというようには普通は言いません(共感覚を持つ一部の人は違います)。
そういうわけで、イヤホン試聴時には当然視覚情報をよく制御する必要があることに気づかれると思います。なぜなら、イヤホンの音が脳内で視覚的イメージに置き換えられるということは、逆に言えば、音の印象はリアルタイムで見ている風景にも影響されるということだからです。イヤホンの音を丁寧に理解するためには、試聴環境はただ単に音響的に静かであるだけでなく、なるべく視覚的情報の刺激も少ない必要があるのです。
意図的に視覚情報を遮断する、つまり目を閉じると音の距離感がはっきりする体験は、たとえば下の動画を目を開けて聴くのと目を閉じて聴くのとで、音の臨場感に断然の差があるのを体感することによって、容易に理解することが出来ます。
したがって音を丁寧に聴くためには、視覚情報が適切に抑制されたしかるべき環境が必要になりますが、残念ながら現実的に存在する家電量販店やイヤホンショップは明るすぎて、基本的には音の深いところまで意識を持っていくことが出来ない環境にあることは事実であり、こと試聴環境に関する限り、日本のイヤホン愛好家は根本的に不利な環境に置かれてしまっていると言えるでしょう。それでも適切なパーソナルスペースと騒がしくない環境、不要な情報を抑えて、イヤホンの音をよく楽しんで選べるような良心的な店作りと接客をしている店舗はいくつかありますので、今日紹介したいと思います。
ちなみに基本的にここで言う試聴環境は、普通の家電量販店ではショーケースに入っているような高級機の試聴を考慮しています。
おすすめイヤホン試聴店ランキング
【1位】ヨドバシカメラマルチメディア新宿東口店
品数は必ずしも揃っていませんが、この店舗は店作りと接客にセンスが感じられ、居心地良くイヤホンを試聴できます。店内は広くなく、開放的すぎず、充分に見渡せる範囲に商品が並んでいます。ショーケースにない商品もヨドバシカメラのネットで確認して展示品在庫があれば、聴かせてくれます。
狭い店内ではありますが、下のツイートのような、素晴らしい試聴台に腰を落ち着けて、イヤホンを試聴することが出来ます。イヤピを替えたり、操作が分からなくても自力でマニュアルが確認できるようになっています。さらにこの店舗は店員さんの対応も親切で、私が長く試聴して返すときに、いつも「他のも聴きますか?」って声かけしてくれるのがたまらなく嬉しい店です。愛がある店舗と言えましょう。
店舗によっては言い方は悪いですが、乞食に対するような対応をされることがありますからね。おっと、口が滑りました。
一部界隈ではヨドバシカメラ新宿東口店と八王子店が地味にオーディオコーナーレベルアップしてることが話題になっています。見て、この試聴台。イヤピ試せるし、主要完全ワイヤレスイヤホンのマニュアル完備されてるし、ちょこっと置かれたイヤピの解説も見ていて楽しい! pic.twitter.com/tp4u9rFCi1
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) September 6, 2019
店舗設計的にも広すぎないスペースですから、新宿西口店に比べてごった返すことが少なく、比較的人目を気にすることなく、騒音も少ない状態で試聴できるのも良いです。試聴環境は適度に閉鎖的なほうが視覚情報も限られますので、私は試聴台はブース式にすべきだといつも考えておりますが、ブースに近い閉鎖感で音を聴くことが出来ます。不満がないわけではありませんが、非常に考えられている店舗で、店員さんが丁寧にイヤホンを売りたいという愛が滲み出ています。
おすすめです。
音をじっくり聴いて評価してもらいたいイヤホンメーカーさんもこの店舗に試聴機を積極的に出すのがよいと思います。店舗スペースが大きくないゆえに管理が行き届いており、丁寧に製品が映えるディスプレイ展示がされており、品数も多くないので、逆によく聴いてもらえます。変な旗艦店に試聴機を置くよりはよほど見栄えが良いでしょう。店舗によってはショーケース内のイヤホンが多少乱雑になっているところがありますが、この店舗は展示が丁寧で、センスがあります。もちろん個人的事情でも、この素晴らしい店舗に試聴機があると大変助かります。
【2位】ヨドバシカメラ八王子店
こちらも大きくない店舗です。この店舗の弱点は客が少ないせいもあって、店員がフロアにほとんどいないこともあり、店員さんがいつもどこかに電話をかけていたり、何かを調べている様子があって多忙そうな雰囲気があって、声をかけづらいことです。また店員さんによっては対応が投げやりに感じるかも知れません。
しかし、試聴する場所は椅子つきのテーブルで、レジ近くのちょっと隠れたこじんまりとしたスペースとなっており、人目にも付きにくく、しかもほどよいパーソナルスペースが用意されていて、居心地は良いので、腰を据えて試聴できます。
【3位】ヨドバシカメラマルチメディア町田店
こちらは規模が大きめの店舗です。人も少し多い店舗ですし、開放的な売り場設計なので、ややイヤホンを聴くには騒がしすぎる印象を受けるかも知れませんが、試聴を頼むとレジ横の静かな場所に案内されます。このスペースはほどよく閉じていて、ちょっと暗くなっているので気持ちを落ち着けて聴けます。またそれなりの広さがあるので、店員さんの作業を邪魔しないよう気をつければ、多少機器を広げることもできます。品揃えは上記2店舗よりよく、店の雰囲気も良くて、店員さんがよく丁寧に接客されているのを目撃しています。
店舗の隅々まで眺めると、どうしても大規模店らしい、やや管理が行き届いてない感じがあるかも知れませんが、丁寧な売り場設計でイヤーピースなど付属品についても売り方に配慮が見られ、センスを感じる店舗です。
【参考】eイヤホン秋葉原店
品数は多いですが、単純に開放的すぎ、新品試聴台はパーソナルスペースの確保が困難で、店内は明るすぎ、イヤホンについての情報のポップが多すぎて、イヤホンの音を聴く前に変な聴きぐせがついてしまいそうな騒々しさがあります。
試聴の自由度が高く、コンビニ感覚で高級機が楽しめる、非常に貴重な店舗ではありますが、まさにコンビニ的なのが欠点で、不要な視覚情報が多すぎて音に集中できません。店舗設計に根本的なセンスが感じられません。素晴らしい価値のある店舗ですが、逆に言うと、話題性だけでイヤホンが売れる今のおかしな風潮を作ったのも、SNSの普及だけでなく、このコンビニイヤホン屋のせいとも言えるでしょう。功罪ともに、業の深い店舗です。
そう言いつつ、私はお世話になっているので、大変感謝もしており、迂闊なことは言えませんが、ここが一番売り方を改善してくれないと、高級イヤホンはいつまでたっても、メインカルチャーにはなれないのではないでしょうか。
【参考】フジヤエービック
ちょっとごみごみしい場所にあって、人も多い場所でなんか落ち着かないのが最大の欠点ですが、このお店はセンスがあります。ただし、人混みが多く、うるさいのが嫌いな私にとって、この店舗にたどり着くのは至難の業で、よほどの事情がない限り利用する気になりません。この店舗の立地自体が私の趣味に合わないので、残念ながら語るほど利用したことがありません。
私が考える理想のイヤホン販売店
今理想のイヤホン販売店とは何かということについて考え、ブログを書いておりますが、私の考える入場料を払ってでも行きたい理想的なイヤホン販売店とはたとえば次のような店です。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
ワンドリンクチップ制みたいな料金システムで、入場料を払って店内に入ると、そこは薄暗がりぐらいで刺激を抑えた穏やかなJAZZがわずかに聞こえるような空間になっています。案内されて席に着くと、必ずひとりコンセルジュがつき、メニューを見せてくれます。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
毎日5本程度の高級イヤホンの名前・ドライバー構成・だいたいの価格帯がメニューに記載されています。場合によって一言コメントぐらいはあっても良いかもしれませんが、必要ありません。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
なぜなら、聞きたいことは基本的にコンセルジュの人が丁寧に教えてくれます。とりあえずどれか一つ選ぶと、奥からイヤホンを出してくれます。目の前にイヤピの入ったボックスを出してくれ、丁寧に選ばせてくれます。一緒に外装や正規付属品について、写真の入ったカタログも渡してもらえます。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
店内は薄暗がりで充分なパーソナルスペースが用意されており、コンセルジュの方もついてくれるので、オーディオ機器を遠慮なく並べても問題ないですし、店内は静かなので、気持ちが落ち着き、音に沈潜することが出来ます。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
基本的に現在の多くのオーディオショップは不要に明るすぎ、イヤホンが詰め込まれすぎていて、音もうるさく、人も多すぎて静かに聞けなくて、多くの製品の第一印象しかわからず、深いところの音を理解するのに役に立たないという欲求不満は、この静かな空間には存在しません。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
音を聴きながら疑問に思ったことはなんでもコンセルジュの方が教えてくれます。ドリンクもオーダーできるので、ゆっくり時間を過ごせますし、聴き急がされる感覚は丁寧に排除されています。音に集中できるようイヤーマフも用意されています。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
1本目を聞き終わると、コンセルジュが「もう1本お聞きになりますか?」と尋ねてきます。ここは思案のしどころです。なぜならこのお店ではイヤホン試聴のおかわりには追加料金がかかるからです。時間と相談する必要もあるでしょう。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
このお店ではほぼ毎日メニューが変わるので、何度でも行きたくなります。行く度に発見がありそうです。同じイヤホンでもコンセルジュの方が違うと解釈が異なるかも知れません。あるいは気に入ったコンセルジュの方がいれば指名できますが、ちょっとばかり指名料を取られます。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
しかしこの指名料はチップで、店側ではなく、ちゃんとコンセルジュの方に直接支払われるシステムになっています。コンセルジュの方もお客様がより深くイヤホンを理解できるよう、そして自分の収入も上がるよう、毎日のメニューに挙げられたイヤホンについてよく勉強されて語ってくれます。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
イヤホンを売っている側と聞く側が、音が十分理解できる空間で丁寧につながれる、そういう試聴環境を私はずっと求めています🤔
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
おそらくそこには「どのイヤホンが最強か」とか「これを聴くならこれだ!」「○○ランキング」「新製品登場!」「あの人のおすすめ!」みたいな陳腐でくだらない情報は排除されています。そんなものはイヤホンの音を丁寧に聴くためには不要でしかないからです🤔
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
結局、私が一番言いたいのは、最近のイヤホンは高くなってきていますが、高いものを売るからには、なぜそれが高いのかを丁寧に理解させる工夫が店側に求められているのではないかと言うことです。今のような、高い物をとにかくスピード感で売っていけみたいな風潮は結局大衆には理解されないでしょう🤔
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
それはただ単に漫然と高いイヤホンを並べ、自由に聴けるというだけでは、実現することは出来ません。高額な音を理解するには、なにかもっと深く時間をかけて理解できる場が必要なのです🤔
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
もう一つ大事なことは、現在のひたすらに売り急ぐ販売姿勢を販売店側が続けていくと、一聴して分かりづらい、本当に良い音を鳴らす製品が売れなくなるということです。わかりやすく刺激の強いものが売れやすくなり、限定商法が横行し、時間をかけて本当に丁寧な音作りをしているメーカーは衰退します。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
本当に音のよい製品は本来不朽に語られるべきですが、今のようなじっくり音を聴かせない、ある意味消費者の表面的な嗜好心だけを煽る販売姿勢では、本来後世に残されるべき大切な音が失われることになりかねません🤔
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) December 21, 2019
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