「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる機種はAKIKI A3です。
AKIKIはShenzhen City Meilianfa Technologyのブランドです。OKIMO、Pasonomiなそも同じメーカーのブランドになります。わりとamazonではたくさん商品を売っているEC専門っぽいメーカーですが、規模はそれほど大きくなさそうです。創業は2012年らしいです。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:4h/60h
- 防水性能:IPX8?
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号:210-140516
パッケージ
パッケージは価格帯では標準的か少し豪華です。付属品はイヤーピースの替え、充電用ケース、充電用ケーブル(Type-C)、説明書です。
本体のビルドクオリティもわりと良好で、マットブラックのシンプルなケースと同じくマットブラック基調でエレガントです。AirPods Proのテカテカ具合にうんざりしている人にはわりといいんじゃないでしょうか。
装着サンプル
この機種はAirPods Proの忠実度の高いパチモンなのでを丁寧にリスペクトしてるので、イヤホン本体の形状も耳によくフィットし、装着感は良好です。アクティブノイズキャンセリング?そんなものはありません。
接続品質
通信チップはAB1536Uを搭載しています。
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では優秀な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では安定しています。距離耐性は優秀で、5m離れてもシームレスにつながっています。遮蔽物があっても接続に問題は生じません。
ホワイトノイズはわずかにあるかもしれませんが、おそらくほとんどの人が気になりません。
AKIKI A3用のおすすめイヤーピース
標準イヤーピースがわりといい加減なので、AKIKI A3の魅力的な低域を引き出してくれるイヤーピースを紹介する記事を書きました。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [標準イヤーピース S装着時]左右別
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
※当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
明らかに脳汁とろける頭のおかしい低域をしています。サウンドシグネチャーを見ただけで、このイヤホンをチューニングした人物が低域に異常なこだわりがあるのがわかります。全体は低域がやや強めのU字型あるいは穏やかなV字型といった感じで、ドンシャリタイプのサウンドです。
低域は低価格とは思えないくらいリアリズムと躍動感に満ちています。明らかに重みを重視したチューニング設計がされていますが、重低域は適度にセーブされてノイズ感が出ないようにされており、リアルな胴鳴り感と適度な床鳴りによってローエンドにはスタジオ的な自然な反響感のある床面が実現されています。キックは重み重視ですが、厚みも維持されています。それでいて中低域から中域の丁寧な傾斜のつけ方と高域のシャープネスによって、輪郭はタイトで引き締まっています。ベースとキックのぶつかりは丁寧に避けられており、低域に熱気は適度にありますが、混濁感はありません。エレキベースは重みのリアリズムを感じさせる胴鳴りとエッジのブリブリ感まで含めて生々しく表現され、とても低価格のイヤホンとは思えません。コントラバスも重みと厚みのバランスがよく、適度に甘みと透明感もあり、低域の設計には明らかに異常な情熱が注ぎ込まれています。このイヤホンはサウンド資源の4割をエレキベース、3割をバスドラムキック、2割をコントラバスに振り分けてると思えるくらい、低域のリアリズムを徹底的に追及しています。
中域は低域に比べれば後退的ですが、中低域からのなだらかなカーブによって熱気はうまく調整されており、低域の存在感のわりに濁りが中域に上ってこないように慎重に調整されています。ボーカルは少し暗いところにいますが、周囲はわりと清潔なのでフォーカス感は悪くありません。中域の質感は引き締まっていますが、ドライではなくみずみずしさを感じます。
ボーカルはボディが十分にあるので甘みがあり、それでいて息が伸びるので、少し上下に伸びる感覚があります。ナチュラルよりは少し媚びた感じに聞こえますが、落ち着いていてシャウティになりません。
中高域の静寂感と滑らかに伸びる高域のクラッシュのコンビネーションはきれいで、空気感が感じられますが、ほとんど静かで低域と中域の生き生きしたサウンドを引き立てています。高域の素直なピークは自然な抜けを形成し、高域には荒い感触はありません。
音場は奥行きと深さ、高さがあり、縦軸のレンジがよく、やや前方定位的で適度に広いです。
JAZZで床面に生録音的なリアルさを求める人、ダンスミュージックや重厚なロックを愛する人にはこのイヤホンはかなり魅力的に映るはずです。少なくとも私にとってこのイヤホンは価格帯最強のイヤホンの一つです。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使い、コーデックはSBCです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
これまで感心したり、好きだ、面白いと思うイヤホンはわりと多かったですが、久しぶりに個人的に興奮したイヤホンです。低域での徹底したリアリズムの追求は私の好きな方向性のサウンドで、このイヤホンの存在を同価格帯で特別なものとしています。低域ジャンキーを満足させるために作られたとしか思えないその低域を、わりと手ごろな価格で味わえるのは驚異としか思えません。
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