「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる機種はAUKEY EP-N33です。AUKEYはモバイルバッテリーやUSB充電器を主力製品とする中国のブランドで、この分野ではANKERやRAVPowerの競合企業です。ANKERと同様ワイヤレスオーディオにも早くから進出し、amazonで展開していました。とはいえ、オーディオ分野では当初はANKERやSoundPEATS、QCYなどの競合ブランドに比べて、使い勝手や音質面でやや後れを取っており、個人的に注目度の低いブランドでした。しかし、2019年ごろからオーディオ分野で本格展開を開始し、この前後で明らかに製品の品質が一段上がり、ここ最近は積極的にアクティブノイズキャンセリング技術を導入するなどガジェットオーディオではむしろ最先端に近いブランドになりつつあります。
このEP-N33も既存機種のEP-B33をブラッシュアップしてアクティブノイズキャンセリング機能を付属したモデルになります。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続再生時間:8h
- 防水性能:IPX6
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号:208-190068
パッケージ
イヤホンのパッケージ全体はこの価格帯では標準クラスか少し上等です。付属品はイヤーピース、充電用ケーブル(Type-C)、キャリイングポーチ、説明書などです。
本体のビルドクオリティは良好で満足できるでしょう。
装着サンプル
個人的には装着感は良好です。丸っこい形をしていて、付け心地は滑らかで、小さな耳でも収まると思います。
接続品質
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯ではかなり良好です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では良好です。距離耐性も優秀らしく、5m離れてもほぼシームレスで乱れはありません。遮蔽物があるとほんのわずか乱れますが、ほぼ完全にシームレスです。
またホワイトノイズはほんのわずかにありますが、かなり敏感な人でないと気にならないのではないかと思います。
ただし、手持ち機種で確認した範囲ではONKYO系DAPと相性問題があり、音楽再生速度が安定せず、操作に時差があるなど満足に使用することが不可能です。
ヒアスルー&ANC性能
ヒアスルーは比較的ナチュラルですが、同時にあまり精度が高いとも言えません。精度の割にホワイトノイズが結構目立つヒアスルーなので、人によっては逆にうるさくなるだけで必要性が薄いと思うかも知れません。
ANCの効果はイヤホンサイズの機種としてもあまり効果が体感できません。下はヘッドホン(beyerdynamic DT990 Edition 2005 600Ω)から基準ノイズを流して測定し、その後標準イヤーピース Sサイズをつけ、ANCをONにして、もう一度ヘッドホンから基準ノイズを流し、このイヤホンの遮音性能を1/6オクターブごとに測定したものです。今回の測定では、基準ノイズに対し、20hz~20khzの可聴域での平均遮音性能は12.78dBくらいありました。
高域のノイズカットに大きな効果があるようです。
アクティブノイズキャンセリング体験
ここでは録音されたアクティブノイズキャンセリングを体感できます。
録音はOneAudio A9のアクティブノイズキャンセリングをONにして各環境音源を再生したものが最初に録音されています。次に、ANC機能をONにした1more EHD9001BAを装着した上から、同様にOneAudio A9から各環境音源を再生したものが続いています。装着感などにより、実際は微妙に異なるとは思いますが、参考としてお楽しみください。
なお環境音源は効果音ラボさんの音源を利用しています。
電車内
基準環境音
ANC
大通り
基準環境音
ANC(強)
飛行機内
基準環境音
ANC(強)
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 S装着時 ANCあり]左右別
- [AET07 S装着時 ANCあり]左右平均
- [AET07 S装着時 ANCあり]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 S装着時 ANCあり]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時 ANCあり]左右別
- [標準イヤーピース S装着時 ANCあり]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時 ANCあり]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時 ANCあり]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし]左右別
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし/ムービー]左右別
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし/ムービー]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし/ムービー]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし/ムービー]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし/クラシック]左右別
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし/クラシック]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし/クラシック]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時 ANCなし/クラシック]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース/イコライザー効果比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース/イコライザー効果比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Mサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
上のグラフはAAC接続時のものです。ANCのON/OFFでおそらく音質変化は感じないと思われます。サウンドシグネチャーの全体は重低域が隆起し、高域にピークがあるU字型という形をしています。パワーバランス的にはわりと釣り合っているバランスの良いサウンドになります。
イコライザーがノーマル状態の場合、低域は重み重視に聞こえますが、全体のパワーバランスは高域の方が少し強いので、音場は全体的には少し清潔です。低域は比較的輪郭がしっかりしており、明るくレイヤリングはそれなりに良く、太く厚みが適度にありながらも基本的には輪郭はタイト傾向に聞こえます。キックは踏み込みが良くはっきりと聞こえますが、重みはそれほどなくむしろ厚く太い音に聞こえる傾向があります。個人的にはエレキベース音も少し明るく聞こえます。低域に熱気と存在感が欲しい場合はイコライザーで「ムービー」モードにしましょう。より低域が活き活きしたドンシャリなサウンドが楽しめます。
中域は清潔でドライで見通しは良いです。中高域から高域にかけての傾斜によって、音場は奥行きがあり、アタックとキレが強調されたサクサクしたクリスプなサウンドを実現しています。ソリッド感が強く、充実感よりは手がかりを重視したシャープかつくっきり系のサウンドで音像をコントラストとシャープネス強めにはっきり明瞭に聞きたい人向けです。ボーカルはニュアンスがよく、息の伸びと子音に適度な強調があり、ボディは適度にありますが基本的に清潔な声色に聞こえます。
やや中高域が派手で音がガチャガチャしますが、中域の風通しは非常に良く抜けの良いサウンドが好きな人にお勧めできます。イコライザーで「クラシック」モードにすると中域はより前面に出てきて透明感の高いサウンドを聴かせてくれるようになりますが、ややキンキンシャリシャリ派手さも増します。エレキギターは浮かれ気味でディストーションがウキウキして聞こえます。ピアノも走るように明るく歌います。
高域は伸びやかで手がかりも多く、分析的で抜けの良い空間になっており、音の粒は細かめです。スネアは適度にスナッピーでスピード感もあります。この高域はこのイヤホン全体のサウンドにハイファイ感をもたらすことに大きく貢献しています。
明るい元気で勢いのあるアニソンを低域の重みを適度に感じつつ、緻密かつスピードとキレ重視で聴きたい場合、このイヤホンはなかなかに魅力的で、赤き誓い「スマイルスキル=スキスキル!」やライフリング4「Let's go! ライフリング4!!!!」、Run Girls, Run!「ダイヤモンドスマイル」、TVアニメ「ガヴリールドロップアウト」OP主題歌「ガヴリールドロップキック 」、かめりあ&ななひら「ごーいん! [Explicit]」などは個人的に満足度が高いです。
全体的に明るいサウンドを好む場合、このイヤホンはかなり楽しめるでしょう。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。AACで接続し、ANC機能をONにしたうえ、イコライザーは「ノーマル」設定で標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
ANC性能やヒアスルーはないよりはマシといった程度で、その効果を期待して購入する場合、少しがっかりするでしょう。しかし、イコライザーは面白く、音質はバランスが取れてていて、重みと適度な清潔感、そしてキレがあり、なかなか魅力的に映るイヤホンに思えます。通信品質は一般に充分だと思われますが、通信相性があることには注意が必要です。
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