アストロテック バランスドアーマチュア密閉型カナルイヤホン(パープル×ブラック)Astrotec DELPHINUS5-PURPLE
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は悪くない。遮音性もほどほど」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「mmcxリケーブル対応」
- 【3】音質「元気いっぱいのタムとシンバルがガシガシ攻めてる中に、明るくのびやかなボーカルが聞こえるバランス。すげぇ活きが良いサウンド」
- 【4】官能性「元気で明るい押し出し強めの陽気で浮かれたイヤホン」
- 【5】総評「明るく元気なじゃじゃ馬イヤホン。やや聞き疲れやすいが、楽しい」
- 【プレミアムレビュー】
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【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は悪くない。遮音性もほどほど」
おすすめ度*1 | |
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ASIN | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 8~40000Hz |
インピーダンス | 16Ω |
感度 | 110db |
ドライバー構成 |
5ドライバー(BA×5) |
音質傾向 |
明るい、元気、爽快、中高域にフォーカス、ややギャンギャンしやすい、アタック良好、アグレッシブ、バチンバチン |
ハウジングはIEMタイプのデザインをしており、装着感は良好。遮音性もそこそこ高め。
テスト環境
今回のテストはCayin N6II/T01とAstell&Kern KANN CUBE、a&norma SR15で行っている。なおイヤーピースは個人的なレファレンスである、JVC スパイラルドット++のLサイズを使っている。
【2】外観・インターフェース・付属品「mmcxリケーブル対応」
付属品はイヤーピースの替え、専用キャリイングケース。
【3】音質「元気いっぱいのタムとシンバルがガシガシ攻めてる中に、明るくのびやかなボーカルが聞こえるバランス。すげぇ活きが良いサウンド」
e☆イヤホンのスタッフレビューに「じゃじゃ馬」ってあったけど、聴いた途端に「ああ、なるほどね」って音。中高域に強調点が設けられていて、明るめの女声ボーカルに明確にフォーカスされているんだけど、かなり前に出て、曲によってはギャンギャンするくらい。あとはタムとシンバルの明るい上辺が強調され、ギターも妙に浮かれてディストーション好きな感じで聞こえるので、全体的に妙に元気が良い。なんだろう、この感じ、どっかで……。って思い出したのが下の曲。
いや、もう音質が完全に「このすば」。あとは分島花音「RIGHT
LIGHT RISE」とかね。最近のアニソンの一部に多い、ちょっと元気で明るい浮かれた曲と相性抜群。
DAP相性
ここからは個人的な見解になるが、まず解像度高めのESS系DAC搭載KANN CUBEでは少しパワフルさが強調されるのと、中高域の華美な感じが浮き上がりやすいので、ややギャンギャンしやすい印象を受ける。ある意味このイヤホンの「じゃじゃ馬」らしさをよく表現してくれるともいえるが、迫力が出すぎている気がする。試してはいないが、同じ傾向のiBasso DX220やDX150でも人によっては少しうるさく感じるかも知れない。
そういう意味で中域で少し音が膨らむ、やわらかな感触のあるSR15はギャンギャン強く出やすい音をマイルドにしてくれるうえ、音にアコースティックな広がりを加えてくれるところがあり、より自然に聴かせてくれる感じがある。輪郭をちょっとふわっとさせてくれる感じがあるのが、このイヤホンの「じゃじゃ馬」な感じをうまく中和してくれる。同じような音質傾向のiBasso DX160やHiBy R5でも同様の調整が期待できると思う。
Cayin N6II/T01はSR15とは別の意味でよい。中高域でかっつりした手応えとドライな風味を加えるので、キラキラさせすぎずに元気な雰囲気を残したまま、うまくまとめてくれる印象を受ける。
レファレンス「EarSonics ES5」との聞き比べ
私のレファレンスイヤホンはEarSonics ES5である。で、ES5と聞き比べてみると、同じように中高域にフォーカス感があるとはいえ、ボーカル周りの音場の広さが明らかに違って、ES5のほうが音に窮屈感がないし、同じく明るめの女声ボーカルに強いとは言っても、質感的にはES5がツヤツヤみずみずしく甘味もたっぷりなのに比べると、Delphinus5のボーカルは直情的でやや素直な元気さを表現する感じに聞こえる。同じ5BAではあるが、価格なりの差はたしかにある。
個人的なおすすめイヤーピース
うるさくなりがちで剥き出しがちな中高域を調整するのに最適なのはおそらくePro Horn-Shaped Tipsだと思う。中高域の迫力感をうまく空間的な広がりに変えつつ、音の剥き出し感を抑えて聞きやすくしてくれるので、このイヤホンの魅力である没入感を維持したまま、音像を安定させて聞くことができるようになる。おすすめ。
美点
- 明るい女声へのボーカルフォーカス
- アタック感のあるパワフルな音楽
- スネア、タムとシンバルに力強さがある
- 浮かれ気味に伸びるギターや弦楽、外連味いっぱい
- 高域はマイルドカーブになっていて尖りは抑えられている
欠点
- 低域は存在感薄め
- 中高域でギャンギャンガチャガチャしやすい
- アグレッシブな音楽表現になるので聞き疲れしやすい
[高音]:高域は中高域より後退していて、輝きや金属的なキラキラ感、シャープネス、空気感は抑えられており、明るい印象とはうらはらにロールオフははやめ。そのため高域であまり派手さが強調されず、ボーカルが埋没せずに適切にフォーカスされるように調整されている。見た目の明るさの割に臭みやギスギス感がないのも高域の適切な調整のおかげである(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中高域にやや過剰なフォーカスがされているため、とにかく浮かれた感じで女声ボーカルが明るく伸びてくる。ギターも浮かれ気味にディストーションする感じで妙に快活。スネア、タムやシンバル、シンセ、ピアノも明るくキラキラシャキシャキしており、中高域で最も華美。アニソンやアイドルソングの元気いっぱいサウンドを気持ち良く聴かせる。
[低音]:100hz~40hzまでボーッとした暗い振動。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域の存在感は抑えめで、かなり下におとなしく聞こえる感じになりやすい。ワイドレンジ感はあるが、低域の存在感を重視する人にはスカスカに感じるかもしれない(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:露骨な中高域重視で、立体感も明るい女声ボーカルに極端にフォーカスした前屈みな空間表現になっている。中域でかなり傾斜が設けられているので、奥行き感は感じられるが、低域と高域が抑えめなため、縦軸はやや抑制的に感じられることが多いだろう。横幅の広がりはよい(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:タムやスネアが目立つバランスで、その音はパシパシとした爆発力重視の力強い音になる。パンチも強い。バスドラはややおとなしめでキックは広がりを強調せず、深さだけを出す感じに聞こえる。パシンパシンパチンパチンといった感じ。シンバルは少し派手めにチンチンして聞こえる。白味は必ずしも強くない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルはややツルツルして中性的。渋みや深みのある声色ではないが、意外と濃くしっかり聞こえる。女声ボーカルは明るく上気した感じで元気いっぱいに聞こえる。
【4】官能性「元気で明るい押し出し強めの陽気で浮かれたイヤホン」
藍井エイル「月を追う真夜中」
【SR15/KANN CUBEで鑑賞】KANN CUBEだと少し中高域で音がアグレッシブすぎてギャンギャンする印象を受けるが、SR15だと良い意味で音のアタック感にセーブがかかり、少し尖りをならしたような広がりがあるため、弦楽によりふわっとしたアコースティックな雰囲気が出て、ボーカルも落ち着きと甘味を少し増して安定して聞こえる。SR15は声DAPなんて言われるが、場合によってギャンギャンしやすいこのイヤホンと組み合わせたときのボーカル制御のうまさは、なるほどその評価に恥じない。ぶっちゃけこの曲をこのイヤホンで聴く場合、私は圧倒的にSR15のほうをおすすめしたい。SR15のタムの、厚みのあるドシッとした出し方もじつに良い。
SR15はこのイヤホンのじゃじゃ馬なパワフルさをうまく滑らかにして火力だけうまく取り出していて、自然な味付けにまとめあげており、じつにうまい乗りこなし方を見せてくれる。
月を追う真夜中 (期間生産限定盤) (DVD付) (特典なし)
Snail's House「FUSION」
【Cayin N6II/KANN CUBEで鑑賞】かなり中高域まわりに音数が多い曲なので、解像度の高いKANN CUBEだとやっぱりちょっと音を細かく出し過ぎて、それがこのイヤホンのパワフルさで増幅される感じがあるので、結構圧迫感が出る。そのため、個人的には、Cayin N6IIくらいのちょっと厚みを加えてドライに派手さを抑制した鳴らし方の方が安心感がある。どちらにせよ、ややうるさいくらいに中高域の緻密さを思う存分味わわせてくれる。
【5】総評「明るく元気なじゃじゃ馬イヤホン。やや聞き疲れやすいが、楽しい」
中高域の明るく元気な女声ボーカルによくフォーカスされている。音の傾向ははっきりめで外連味も強めにガツガツした感じで力強く聴かせてくれるのが魅力。明るいアニソンやアイドルソングは本当に楽しい。一方でたとえばJAZZを聴いてみると、なんとなく同じ価格帯のAcoustune hs1650cuに近いような感じで聴かせてくれる感じはあるが、より元気というか、前屈みに迫ってくるので、なんていうか、妙に押し出しが強く、ギターや金管は少し浮ついて聞こえるので、若干ロック味が強めでアグレッシブすぎると感じるかも知れない。少なくとも音に落ち着きはあんまりない。
アストロテック バランスドアーマチュア密閉型カナルイヤホン(パープル×ブラック)Astrotec DELPHINUS5-PURPLE
【プレミアムレビュー】
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。