「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる機種はBOMAKER SiFi 2です。BOMAKERという企業は2015年に設立された若い企業「广东省宏博伟智技术有限公司」のブランドで、日本ではあまり知られていませんが、プロジェクターを中心に電子機器/AV機器を開発販売しています。amazonに出品しているメーカーとしては比較的大規模な販売主体になります。
そのBOMAKERの名を一躍有名にしたのがBOMAKER SiFiで、低価格ながら当時の最新チップであるQCC3020をいち早く採用し、しかも音質が良好だということで海外で話題になり、国内でも高い評価を受けている機種です。
BOMAKER SiFi 2はそのSiFiの後継モデルに当たりますが、デザインやチップ構成は大幅に見直されており、音質にも変更が加えられたので、マイナーチェンジではなく、ほとんど別機種と言えるイヤホンに仕上がっています。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:6.5h/30h
- 防水性能:IPX8
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号:214-107433
パッケージ
パッケージは価格帯の標準レベル以上です。付属品はイヤーピース(2種類)、充電用ケース、充電用ケーブル(Type-C)、説明書です。
本体のビルドクオリティは特別優れているというわけではありませんが、充分な品質を実現しています。
装着サンプル
少し厚みのあるデザインになっていますが、耳への収まりは良好です。ただし、耳が小さい人は少し窮屈な付け心地に思うかも知れません。
接続品質
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯ではわりと上等な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内ではそこそこ良いです。距離耐性はそれなりに良好で、5m離れても充分繋がっており、ほとんどシームレスですが、距離に応じて少しの途絶が出る場合があります。遮蔽物があると通信が不安定になります。
またホワイトノイズはわずかにありますが、敏感な人でないと気にならないのではないかと思います。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 S装着時]左右別
- [AET07 S装着時]左右平均
- [AET07 S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(厚型) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(厚型) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(厚型) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(厚型) S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(薄型) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(薄型) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(薄型) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(薄型) S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Sサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
全体を見るとわりとフラットに近い、穏やかなU字型と言えるサウンドシグネチャーをしています。低域は緩やかに隆起していてウォームなサウンドを実現し、高域に高いピークがあって中域に風通しをもたらしています。
低域は重みの強調がありますが、熱気はそれほど強くなく、見通しが良くレイヤリングが良好です。ドラムキックは輪郭感がはっきりしており、膨らみが少なく、音像が引き締まっていて、スピード感があります。エレキベースとドラムキックの描き分けは良好ですが、エレキベースは少し厚みが抑えめで、黒みも強くなく、低域の重厚感を重視する人には明るめのサウンドに思えるかも知れません。低域弦楽は少し重みがありますが、透明感のあるサウンドで、躍動的に聞こえます。
中域から中高域にかけては非常にフラットに近くチューニングされています。明るく見通し感が良く透明感があります。光沢感もあって艶やかな色合いをしていて、音像はくっきりと描き出されますが、ボーカルと楽器音は近めです。ボーカルは語尾が少し伸び、息も高く伸びるので、キラキラした楽器音に少し突っ込んで聞こえるかも知れません。高域と中域は分離的ではないので、人によっては音が静寂感に欠ける印象を持つかも知れません。質感は硬めでピアノ音がキンキン聞こえるという場合もあるでしょう。
たとえば(K)NoW_NAME「seeds」を聴くと、楽器は色づきよく、ピアノは硬く明るめで、リズムは良好なトランジェントによってスナッピーでキレよく聞こえるので、わりと元気な曲調に聞こえます。後ほど比較しますが、この曲はSiFiのほうがボーカル帯域の上に静寂感があるので、個人的には落ち着いて、よりしみじみと甘味も増して聞こえ、好みに近いです。
一方で明るい曲、たとえば三月のパンタシア「ピンクレモネード」のような曲ではSiFi 2のほうがリズミカルで明るく光沢感や透明感のある聴かせ方をするので、より楽しく聞こえます。ボーカルも少し媚びて聞こえます。SiFiのほうがもう少しパワフルで安定感のあるサウンドに聞こえますが、一方でボーカル周辺の分離感は良好でフォーカス感が良く、ボーカルの声質ももう少し落ち着きがあるということが言えます。
高域の高いピークは音場全体に風通しをもたらしていますが、一方でハイハットの粒立ちを目立たせてシルキーに聴かせ、バイオリンのエクステンションを強調し、トランジェントを強くしています。音場は伸びやかで音楽は全体が少し上向きに引っ張られて聞こえやすいです。
初代SiFiとの比較
さて、ここでは初代SiFiとの比較になりますが、まず外観や機能面では以下のような大きな変更点があります。
- 外観が大きく変更されました(下の写真参考)
- SiFi 2はaptXに対応しません
- SiFi 2は防水性能がIPX8になっています
- 充電ケーブル用のUSB端子がSiFiではMicro-Bでしたが、SiFi 2ではType-Cになっています
次に音質面での違いですが、以下のグラフはSiFi 2とSiFiの自由音場補正済み周波数特性の比較になります。下側のグラフは1khz以上を拡大したものです。イヤーピースはどちらもAET07で比較しています。コーデックはSiFi 2がAAC、SiFiがaptXでの接続になります。
さて、大まかな全体のバランスには変更がないように思われますが、中域上部から中高域にかけて目立った変更点があることがわかります。簡単に言えば、SiFiでは中域上部に凹みがあって静寂感と奥行きを出して、高域と中域に分離感が出されてましたが、SiFi 2ではフラットなバランスになり、つながりがよくなっています。そのためSiFi 2はボーカルフォーカスの点ではSiFiに劣るかわりに、明るく、さらにくっきりして音像が聞こえるようになりました。より若者向きの元気な音になったとも言えますが、ボーカル周辺の音数が増え、ややボーカルが埋没しやすくなっています。
SiFi 2は単純にSiFiの上位機種というわけではなく、とくに聞き心地の点ではSiFiが優れていると思われます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは薄型の標準イヤーピース Sサイズを使い、コーデックはSBCです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
SiFi 2は初代SiFiの美点を残しつつ、しかし単純なアップグレードモデルでない別機種と言って良いものに仕上がっています。よりフラットに近い音質になったり、初代が対応していたaptXに対応しないなど音質面や機能面でいろいろと差があります。とくにボーカルフォーカスを重視する場合、SiFiのほうが好ましいと思われます。一方でより原音忠実的なモニターサウンドを求めているならば、SiFi 2のほうが好ましく思えるでしょう。
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