DENON ヘッドホン オーバーイヤー/ハイレゾ音源対応/ウッドハウジング/3ボタンリモコン・マイク付き 木目 AH-MM400
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「ややかっつりした装着感」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「割愛」
- 【3】音質「ややボリューミーな低域が中域を暖かく支える中、音が中域に向かってゆるやかに前傾するナチュラルな甘味を重視したサウンド。ボーカルフォーカスが良い」
- 【4】官能性「中域の濃厚感を丁寧に聴かせる、丁寧な透明感が低域と高域に存在する」
- 【5】総評「豊かに中域を聴かせる、ナチュラル系のサウンドが素晴らしい」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「ややかっつりした装着感」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 10hz~40000hz |
インピーダンス | 32Ω |
感度 | 96dB |
ドライバー |
ダイナミック型 |
音質傾向 |
つややか、コクがある、透明感がある、ボーカルフォーカスが良い、濃厚感がある、重厚、ビター、深煎り、落ち着きがある、安心感がある、調和的、低域弦楽と管楽がきれい |
一部に金属を用いているので、サイズの割に少しだけ重い感じがあるかも知れません。それでも側圧は強くなく、装着感は悪くありません。
テスト環境
今回のテストはCayin N6II/A01とAstell&Kern KANN CUBE、ONKYO GRANBEATで行っています。またゲイン設定は高設定です。
【2】外観・インターフェース・付属品「割愛」
ONZOのサブスク版なので付属品は割愛します。ONZOのサービスについて興味がある方は以下を確認下さい。
【3】音質「ややボリューミーな低域が中域を暖かく支える中、音が中域に向かってゆるやかに前傾するナチュラルな甘味を重視したサウンド。ボーカルフォーカスが良い」
音質的な印象としては、ややボリューミーに床面を形成する低域がまず目立ちます。ほどよく膨らみをもたらされて、重みも適度にあり、音場を温かめながら厚みを出して支えますが、音圧は適度に調整されて押し出し感は調整されており、ボーカルを邪魔しないよう配慮されています。音場の中心点はボーカルに設けられていて、中域の真ん中か少し上くらいにあります。そのため一般にボーカルは充分に甘味を出しながら、前に聞こえてきます。楽器音はやや濃いめに艶やかさを出しながらも、輝きは強すぎないように調整されており、高域方向に向かうと清潔になって閉じていくようなバランスになっています。音質設計的には中域に丁寧にフォーカスを合わせ、ディテール感を強調しすぎない、ナチュラルな音の質感が求められていることが分かります。そのため輪郭感は強くなく、音の端は一般に空間に滑らかに溶け込んでいく印象があるはずです。
さて、まず低域ですが、ボリューム感はかなりあります。ベース音は少し膨らみ、ブンブン地熱が強い印象を受けます。ドラムキックもボンボン膨らみ気味に聞こえるので、やや下の方で音が沈殿するような濁りがあります。一方で中域近くでドラムがボディを強調して膨らむ感じは強くなく、地熱のある低域に向かって、ドラム音は素直に降りていくような印象があります。同様のことは低域弦楽にもいえ、上辺は比較的透明度が高いながら、底辺の方ではドンという重みが太く出るふくよかさが感じられ、下で膨らむような重厚な深掘り感が出ます。JAZZなどで空間に適度な濃厚感と重みを求めつつ、透明感も少し欲しいという人にはなかなか興味深い音に聞こえると思われます。ドラムキックとベースの分離はもやがかりやすい印象を受けるので、明瞭という感じではありませんが、低域弦楽や低域管楽では透明感と音の沈み、重厚感のバランスが良く、精彩が良い印象を受けます。そのためより上の中域から中低域のあたりで高度なディテール感が感じられる印象があります。一方で、現代的なロックやアニソン、ポップスでは好みにもよりますが、重厚感と地熱感は少し強くて、下の方がもやもやしすぎている感じが出るかも知れません。少なくとも浮き上がりが良い明るい感じではありません。
中域は最もフォーカスされています。ボーカルは前面に出てきて、充分に甘味を出しながら、ディテールをかなり詳細に聞かせてくれるでしょう。ボーカルは中高域に向かっての解放感は強くなく、どちらかというと低域に沈んでいく重力感があるので、明るめのアイドルソングやアニソンでは暗めのボーカル表現に感じることはありそうです。しかし中域の真ん中では適度な口の運び、甘味、吐息が感じられ、少し大人びてはいますが、コクもあって充分濃く聴かせてくれます。楽器音も全体的に太く、中域で横の広がりを出して地平線を形成するような安定感があります。アコースティックギターも濃い小麦色に近い金色の音で、濃厚感重視で、エレキギターも黒みが強めです。
高域に向かって伸びる感じは若干セーブされた、地に足付いた表現になりやすいので、ドラム音も重くなりがちなロックは、人によってはもっさりして聞こえるかも知れません。たとえばこのヘッドホンで聞くafterglow「ON YOUR MARK」はドラム表現もシックで明るさがなく黒みが強い重厚系の音で、ギターも黒々としており、ボーカルも伸びやかさを抑えてコクを強めに聴かせる感じなので、私の好みからはだいぶ重すぎる感じになります。
そうした濃厚な中域を抜けて高域方向に向かうと、透明感を重視した空間が広がっています。艶やかさを出しつつも光沢感を抑えた深みを重視した表現になっており、音が透明に沈みこんで感じられる透明度が維持されており、派手さは丁寧に抑えられていますが、弦楽音は高域に向かって少し筋立ちを強調して明るく浮かび上がります。シンバルも同様に少し清潔に透明度の高い空間に白く浮かび上がる高さがあります。中域の濃厚感を邪魔しないよう配慮されつつも、高さに関わる音要素は透明な中でもしっかり感じられる配慮がされており、必ずしも明るい高域ではありませんが、適度な立体感があります。
たとえばAimer「April Showers」のようなピアノや弦楽主体の曲では、しっとりしたコクと濃厚感を中域から低域で感じつつ、透明な空間に弦楽がヒステリックさもわずかにありながらも品格のある高さを表現する、豊かでナチュラルな空間表現を味わうことが出来ます。
総合すると、中域から低域の上の方にかけて濃厚感と透明感の点で、バランス感覚に優れた丁寧な音場表現が実現されており、室内楽やJAZZ、しっとりとしたポップス曲なんかに高い満足度を感じます。ボーカルフォーカスは非常に良く、やや大人びた濃厚系のセクシーボイスになりがちですが、ディテール感のある生々しい声を近くでしっかり聴かせてくれます。Susan Wongのボイスなんかおそらく相性良く思えるでしょう。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
鮮やか。輝きは強調しないが、中域で充分な濃厚感があり、音の広がりも良く、発色が良い。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
普通。弦楽は高域で少し尖る感じはあるが、全体的に鋭さを強調する感じは少なめ。 |
明るさ (明るい/暗い) |
やや明るい。中域で充分に明るく、自然光よりはもう少し明るめの音場に感じる。 |
派手さ (派手/地味) |
やや派手。中高域でディテールを強調する感じは強くなく、全体的に落ち着いた品の良い沈みの良い音だが、高域でシンバルや弦楽は結構派手に出る。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
やや柔らかい。低域や中域で広がり重視の音に感じ、輪郭は強調しすぎない。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや丸みがある。輪郭を強調せず、音の端は一般的に丸みを帯びている。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや穏やか。音楽の重心は低めで安定感があり、高域は透明度が高い。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。低域は重量感がある。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
豊か。中域から低域にかけて、音が豊かな実体感を持って感じられる。 |
太さ (太い/細い) |
やや太い。低域はやや膨らみ、中域でも音の広がりが良い。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
やや滑らか。全体的に音はマイルド。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
普通。ディテールを強調する感じは少ない。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
普通。高域方向で透明度は高く感じるが、低域方向はやや濃厚。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
普通。中高域の光沢はやや少ない気がするので、潤いに不足感はないが、それを強調する感じではない。 |
重さ (重い/軽い) |
やや重い。重心は低い。量感的には重すぎる感じにはならない。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
普通 | 普通 |
明るいか (明るい/暗い) |
普通 | 普通 |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
普通 |
やや天井感がある |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
普通 | 普通 |
太いか (太い/細い) |
普通 | やや太い |
濃いか (濃い/薄い) |
濃い | 濃い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
やや目立つ | やや目立つ |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ややぎっしり |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
普通 |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
深掘り感がある |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
普通 |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
前屈み |
美点
- 適度に濃厚感があり、音が濃い
- ボーカルフォーカスが良い
- ディテール感をほどよく抑えたナチュラル系サウンド
- 低域に重量感がある
- 高域方向は透明感がある
- 音の沈み込みが良い
- 低域弦楽と管楽が活き活きしている
欠点
- ややもっさりしやすい
- ボーカルが明るさに欠ける
- ディテールが少し甘い
[高音]:高域は少し高いところのサーサーした清潔なあたりは出やすく、ハイハットの高いあたりを少し白く浮き上がらせ、弦楽も少し筋立ちを強調するようなところがある。キラキラ感は抑えめで透明度が高く、音はマイルドで硬い感じを強く出さないので、中高域でディテールを高く緻密に感じさせるような音ではない(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は前進的で、とくにボーカルフォーカスが良い。音は艶やかさを適度に出しつつ、中域で少し膨らんで広がりを出し、低域への沈み込みもよいような、自然な重力を持った実体感がある。音が少し下に重くなる感じがあるので、曲によっては少しもっさりしやすい。また上辺の明るさも抑えめで中域真ん中の濃厚感を大事にしている。
[低音]:100hz~40hzまで少し重く沈み込みの強いボーッという振動音。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域は中域近くは比較的膨らみが抑えられているが、弦楽や管楽の下の方から濃度感を増して重さを出すようになっており、バスドラやベースのあたりはかなりもやもやとした地熱感を感じる。そのため低域は深煎り感のあるビターなサウンドになりやすい。音の浮き上がりは強くなく、どちらかといえばブーミーな音になるので、リズムコントロールの面では少しゆったりして感じられやすい(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:中域にフォーカス感があり、少し深煎りの低域がしっかりと重力を発生させて音に自然な沈み込みを感じさせてくれる。高域は透明度が高く、基本的にJAZZや室内楽に向きそうな、下に広い、ナチュラルな音場を形成している(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムスはバスドラキックがかなり重く目立ちやすく、重量感が高い。タムやスネアの上辺は明るさが抑えられており、全体的にビターなテイストがある。重めのバズンバズン。ハイハットは少し白味を強めにシンシンと高く聞こえる(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男女ともにボーカルは濃く、近め。女声ボーカルは上で明るくならず、媚びる感じが少ないので、やや大人びて聞こえる。また明るい声色では上辺でボディの透明度が増す関係か、子音の輪郭がやや尖り、ツ音が少し目立つ感じに聞こえる。男声ボーカルは少しホットさのある、吐息が甘い感じのコクのあるボイスになる。
【4】官能性「中域の濃厚感を丁寧に聴かせる、丁寧な透明感が低域と高域に存在する」
浅野真澄「雨のmusique」
【Cayin N6/A01で鑑賞】この曲はJAZZ風のポップスです。低域は深掘りして中域との間にレンジを作って透明感を出しつつも、下では地熱をしっかり太めに出して濃厚に深煎りする弦楽音がコクのある床面を作っています。同じく高域も透明度が高く、JAZZピアノは光沢を強調しすぎず、透明に沈みますし、アコーディオンもギラつきが適度に抑えられており、シンバルも清潔にシンシンと高さを出します。全体的にムード感を適度に出しながらも透明感を重視した、こうした楽器音のおかげで、大人びた少し憂いのあるボーカル表現が濃く、吐息もはっきりとコクを感じさせて聞こえてきます。落ち着いたJAZZ風味の楽曲は一般に満足度が高いと思われます。
(K)NoW_NAME「Stampede」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】低域が重く、沈み込みが強いので、下方向で地熱が感じられ、深煎り感があります。タムやスネアも黒めで、ギターも音が太めで黒みを強調するので、全体的にビターな味になっており、ボーカルもかなり渋く深みがある感じが聞こえます。白いのはシンバルだけといった感じですが、そのシンバルも鮮やかさは抑えている清潔系の音なので、目立つ感じはなく、マッチョな世界観が素直に味わえます。
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妹S「変わらない宝物」
【KANN CUBEで鑑賞】低域にかなり暖かみと重量感があり、音場全体はかなり安定感があります。アコースティックギターもかなり濃い小麦色の暖かみの強いサウンドで耳に優しく、ピアノ音にも調和的な深みのある透明感があります。ボーカルはかなり甘味があって濃く、少しほっこりと落ち着いた安心感のある声色になっていて、聞き込める抱擁感があります。エレキギターの音色も黒く、温かみと深みがあって親しみやすく、しんみりとした情感表現を台無しにせずに盛り上げます。
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フランシュシュ「To my Dearest」
【KANN CUBEで鑑賞】この曲でも低域にコクが感じられ、暖かみのある床面が中域音の鮮やかを引き立たせ、深みを感じさせてくれます。高域は透明傾向で煌めき感を強調しすぎず、中域で豊かに沈みながら広がる感じがあるので、ボーカルも楽器音にしっかり支えられて表現に自然な厚みを感じさせて聞こえてきます。ボーカルは高域方向では少し暗く、自然にしっとりと落ち着いて聞こえてきますが、それがこの曲のテーマである穏やかな愛情とよくマッチしていて、ナチュラルで真心の篭もったものに感じられます。
(初回盤)ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best
【5】総評「豊かに中域を聴かせる、ナチュラル系のサウンドが素晴らしい」
ボーカルフォーカスが良く、中域をしっかり自然な重力のある実体感を持たせて聴かせてくれるので、とくにJAZZや室内楽は満足度が高そうです。落ち着いたポップスもゆったりとコクを出して聴かせてくれるでしょう。一方で、低域の下の方はもやもやしやすく、高域方向でも煌めき感を抑えて外連味がほとんど強調されない感じがあるので、ロックやEDM、アニソンなんかはちょっともっさりしやすく、好みにもよりますがやや物足りなく思えるかも知れません。
- 低域は深みと重み、コクがある
- 中域で濃厚かつボーカルフォーカスが良い
- 高域は透明で品があるが、高さも適度に感じさせてくれる
DENON ヘッドホン オーバーイヤー/ハイレゾ音源対応/ウッドハウジング/3ボタンリモコン・マイク付き 木目 AH-MM400
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。