- 【1】装着感/遮音性/通信品質「良好な装着感。通信品質は悪くない」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「充電ケーブルはType-Cです。ANC性能は実用性が高いです」
- 【3】音質「音が激しく陰キャ。基本的に暗いです」
- 【4】官能性「大人びた音で落ち着いて音楽を聴ける」
- 【5】総評「音質的には現代的とは言えないが、地味ながら落ち着いた音を楽しませてくれる」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「良好な装着感。通信品質は悪くない」
おすすめ度*1 | |
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ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
6h/90h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | AAC/SBC |
防水性能 |
IP67 |
音質傾向 |
厚みのある低域、熱気がある、濃厚、暗い、落ち着いている、大人びている、シック、品がある、陰キャ、憂鬱、立体感に乏しい、ボンボン |
IEMを意識したようなデザインで耳への収まりは悪くありません。遮音性もそこそこです。
対応コーデックはAAC/SBC。ONKYO GRANBEATとCayin B6II/A01で交互に繋ぎながら接続品質をみました。テストしたのは都内某駅周辺です。混雑する時間帯でなかったせいもありますが、駅の改札の通過、電車の乗り降り時の間もほとんど途切れる感じはありませんでした。AAC接続の時はちょっとわずかに途切れが出やすいかなと思いますが、全体的に見るとこの価格帯の標準くらいは充分にあり、充分に実用的に思えます。
テスト環境
今回のテストはONKYO GRANBEAT、Cayin B6II/A01で行っています。
【2】外観・インターフェース・付属品「充電ケーブルはType-Cです。ANC性能は実用性が高いです」
付属品はイヤーピースの替え2種類、充電用USBケーブル(Type-C)、専用充電ケース、説明書です。
イヤーピースが2種類
付属イヤーピースは2種類ついており、口径の広いシリコンタイプと低反発イヤーピース「i-Planet」が付属しています。
【3】音質「音が激しく陰キャ。基本的に暗いです」
今回は標準イヤピの中で、シリコンタイプのLサイズを使ってレビューします。
さて、まず全体の印象から確認してみると、低域が厚ぼったくドシッと胴鳴りを出しながら床に緩く乗っかかるような鈍い感じの低域と、妙に元気のない色づきの悪い中域があり、高域もおとなしめで、高域に対してはボーカルは優位ですが、低域が強いロックなんかではちょっと奥の方に位置しやすい、妙に落ち着いた空間が広がっています。ぶっちゃけ音の伸びやかさを抑制した非常にストイックな出音で躍動感に欠け、真顔で音楽を奏でている感じです。女声ボーカルも暗く、渋いので明らかに若い人にはあまり好まれなさそうな音です。どちらかというと、落ち着いた曲を暗めに静かに聴かせるイヤホンで、どう考えても音は玄人好みです。
個別の音域の印象を確認していくと、まず低域はベースがかなりぼさっとして聞こえ、暖かい感じです。バスドラキックものそっとした感じがありつつ、温かめにボンボンした音を聴かせます。床鳴りの深いところよりは胴鳴りのほうが成分が多い腹にこたえる感じの音で、ちょっと室内がもやもや篭もった感じで聞こえます。低域弦楽も厚みでボンと膨らむ音で柔らかみがあり、温和で豊満です。床にどっしりとした胴を持っており、床面への響きはそれに比べると抑制的で、音楽に豊穣な床面を提供します。基本的に低域は暖かみと厚みで攻めるところがあり、鈍重な感じが出やすく、ゆったりしています。基本的にはボディ重視で低域弦楽に豊かさが感じられますが、清潔感や透明感には欠けるように聞こえます。
中域に移ると、こちらもあまり明るい感じではありません。中高域方向は抑制的で中域はほどよく静寂な上に、下からは低域の熱気がもやもやと上がってきているので、その熱気の中で音楽を聴く感じが強いので、人によっては篭もっている印象を受けるでしょう。少なくとも大抵の曲で清潔な感じではありません。エレキギターの上方向へののびは、まっすぐから後退的に聞こえ、アタックは遠ざかる印象を受けやすいです。ボーカル周りにも空気感があり、濃密で温度感があります。そのボーカルは基本的に抑制的で大人びていて、甘味はありますが、子音はゆるめで大人びた温かみを感じさせてくれます。
高域もまたさらに抑制的で、ハイハットの空気感も中高域が清潔な分だけ少し白く出ますが、基本的には暗い感じです。あまり高さの強調が見られず、元気がある感じではありません。シックに落ち着いた感じで、どちらかといえば静寂感を大事にして聞こえます。
総合すると、基本的に低域の支配力が強く、その低域も豊満系の音でお世辞にもスピード感がある感じではなく、どんな曲も少しスローになる印象を受けやすいです。その厚みのある低域が中域から高域近くまでを支配していて、暖かみのある空気感を醸していますが、中域や高域もその熱気を突き抜けてくる感じではなく、むしろその温度感の中で聞こえる感じです。
濃密感を出すのはうまいので、JAZZ向きに思います。クラシックは濃厚感高めで高域は抑制的なため響きが伸びてくる感じがなく、ちょっと遠くで音が鳴っている感じになります。フルオーケストラを俯瞰して遠くから聴いている感じになるので好みは分かれそうです。しかも床の鳴動があまりないので、おそらく2階席から聴いている感じです。現代的な曲はかなり選びます。おとなしいポップス曲の方が味わい深いとは思います。
私がとりあえず流し聴きでよいと思ったのは、(K)NoW_NAME「Freesia」、鹿乃「光の道標」のようなちょっと落ち着いた温かみのある曲です。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
やや色味が薄い。音は地味めである。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
鈍い。基本的にアタックは強調せず、音は全体的に太く穏やか。 |
明るさ (明るい/暗い) |
やや暗い。基本的に明るさは抑制的。 |
派手さ (派手/地味) |
地味。外連味みたいなものはほとんどない、おとなしい感じの表現。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
柔らかい。低域も厚ぼったく、中高域にも硬さがない。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
丸みがある。基本的に穏やかで音が尖らない。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
穏やか。全体的に温和。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
普通。低域の厚みがあり、量感のある床面が少し力強い。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
豊か。量感的に豊満である。 |
太さ (太い/細い) |
太め。低域が太い。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
滑らか。全体的に音は滑らかである。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
粗い。緻密さには欠ける。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
濁っている。低域の熱気が多く、人によっては篭もっていると思うだろう。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
普通。中高域の発色が強くないので強く音のみずみずしさは出ないが、濃密な空気感は潤いを感じさせる。 |
重さ (重い/軽い) |
重い。厚みのある低域が音場全体を重く感じさせる。高域はおとなしく浮揚力に欠ける |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや濁っている | やや濁っている |
明るいか (明るい/暗い) |
暗い | 暗い |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
やや天井感がある | 天井感がある |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
普通 | 普通 |
太いか (太い/細い) |
太い | 太い |
濃いか (濃い/薄い) |
濃い | 濃い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
目立たない | 目立たない |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ぎっしり |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
天井感がある |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや深掘り感がある |
主に中域の奥行き感 (前進的/後傾的/前傾的/後退的) |
後傾的 |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
狭い |
定位感 (頭内的/頭外的) |
頭内的 |
分離感 (拡散的/密集的) |
密集的 |
美点
- ボーカルフォーカスがそこそこ良い
- 暖かみと厚みのある低域
- 音が前進的で抱擁感がある
- マイルドで聴き疲れしない音質
- 濃密で味わい深い
欠点
- ダイナミクスに欠ける
- 高域の高さが足りない
- 立体感に欠ける
- 篭もって聞こえやすい
[高音]:高域は基本的に静かで、音数的にもあまり多く出ないので拡散的ではなく、緻密ではない。ハイハットの穂先は大抵ちょっと低く、中高域の色味も落ち着いているので、あまり立体感がないが、その中ではハイハットやギターの金物に少しだけ派手さが出やすいところはある(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、菅野よう子「Power Of the Light」でテスト)
[中音]:中域はボーカルフォーカスは悪くない。中高域に向かっての傾きが足りないのか、楽器音とボーカルはのびやかではなく、少し真面目な感じに聞こえる。中域は低域の熱気を受けやすく、大抵の曲では清潔ではないので、ちょっと篭もって感じられやすいところもある。
[低音]:100hz~40hzまで太くおとなしめのボーッとした振動。30hzでほぼ無音。低域は胴が太めに出やすく、ベースは黒みよりは少し薄味で厚ぼったい感じで温かみがある音でぼさっとした感じがある。バスドラキックもそれほど深くなく重さもそれほどではない。低域弦楽も豊満にボボンとした音を出してくれ、アコースティックな曲では低域に充分に濃密な厚みが感じられる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:低域の厚みが強く、暖かみも上に滲むので、中域はやや清潔感が足りない感じになりやすい。高域も高さをあまり出さないので、全体的に下方向に重い、安定感重視で立体感では抑制的な音場表現になっている(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムは胴鳴りが強く、重くドシッとした膨らみが感じられるが、バスドラキックの深いところはそれほど主張しない。スネアの鼓面の張りは意外と強く、バツッと強めに感じられる。少し下に重いバツンバツン。ハイハットはドラムに比べるとやや弱いが、チリチリした感じはあり、白味も少し感じるので、おとなしめではあるが意外と派手に浮かび上がって聞こえるかも知れない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男女ともにボーカルは明るさは抑えめでコクのある大人びた声色になりやすい。のびやかさに欠ける感じになり、天井感があるが、濃い感じで甘みがあり、子音に強調はあまりない。
【4】官能性「大人びた音で落ち着いて音楽を聴ける」
清浦夏実「悲しいほど青く」
【GRANBEATで鑑賞】落ち着きのあるこの曲の大人びた雰囲気にはこのイヤホンの抑制的な雰囲気は比較的マッチします。ベースがどしっと厚みを出してくれるので空間に濃密感も出て、豊かに音が広がる感じに深みが出ています。部屋鳴り感は適切に抑えられているので、重すぎる感じられており、大人びた雰囲気を出すほどには重いですが、深く沈みすぎる感じもありません。ボーカルは明るくならないので、充分に物静かな雰囲気の中で甘味を出してくれます。
ASCA「凛」
【GRANBEATで鑑賞】ちょっと好みを分けそうですが、この曲をシックな感じでクラシックよりに聴かせてくれます。中高域が少しおとなしめでギラつく感じが減ってガチャガチャしなくなった分だけ、弦楽が透明に響く感じが目立ちやすくなっており、低域でもドラムが攻撃力を抑えながらボンという厚みだけを出してくれるので、全体的にマイルドに味わえる感じになっており、どちらかというとこの曲の優雅なところ中心で味わう感じになります。ギターよりも弦楽、ピアノ中心になるのでロック色が抑えられている分だけゴシック的な味わいが丁寧に感じられるかも知れません。ボーカルは突き抜けを抑えて理性的に聞こえるので、ビターでかっこいいところもあります。
百歌繚乱(初回生産限定盤A)(Blu-ray Disc付)(特典なし)
Matt Bianco「Hifi Bossanova」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】この曲は明るさを抑えてかなり大人びた感じに聞こえます。たぶん大抵のイヤホンで聴くとあるような、上でシンバルが明るくチンチンする感じは丁寧に抑制されていて、ツンツンくらいの静けさで聞こえてきます。スネアもほどほど明るくはありますが、静寂感を大切にするようにおとなしめに音を響かせるので、コクのあるボーカルが映えて、ダンディな色気を充分に味わわせてくれます。ギターも抑制的で渋く、床面も量感はしっかりしていますが、躍動的すぎない落ち着きがあって品があります。全体的に丁寧な静寂感を意識していて、それでいて重くない感じがエレガントです。
【5】総評「音質的には現代的とは言えないが、地味ながら落ち着いた音を楽しませてくれる」
基本的には大人びた音を鳴らす感じで、しかも低域の暖かみが滲みやすく、篭もって聞こえやすいという欠点も抱えています。リズムも少しゆったりめに出やすく、なかなか面白味を感じづらいイヤホンです。しかし、JAZZやゆったりめのポップスなどではなかなか面白味を感じさせてくれるところもあり、落ち着いた雰囲気で音楽を楽しみたい人には需要があるかも知れません。個人的にはなかなか好みの音で悪くないのでおすすめしたくもなりますが、ちょっと万人向きとは言い難いので、我慢ですね。
まとめ
- 厚みのある低域
- 派手さを抑えた落ち着きのある音
- 篭もって聞こえやすい
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。