「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる製品はEnacFire G20です。EnacFireはわりと低域を重視するモデルを展開しているメーカーで、中には例外もありますが、基本的に重厚なサウンドが好きな人にとってはSoundPeatsと並んで好みの可能性が高いブランドです。
EnacFire G20は一見すると、どこかのJLab JBuds Air Executiveをリスペクトしたデザインになっており、コンパクトで持ち運びやすいのが魅力的な機種です。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:8h/48h
- 防水性能:IPX7
- 対応コーデック:aptX/AAC/SBC
- 技適番号:217-190007
パッケージ
イヤホンのパッケージはこの価格帯ではわりと上質です。付属品はイヤーピースの替え、充電ケーブル(Micro-B)、専用充電ケース、説明書などです。
本体のビルドクオリティは5000円くらいの完全ワイヤレスイヤホンとしてはかなり上質です。充電ケースはレザー調でおしゃれで、チープな感じはありません。
装着サンプル
コンパクトな耳うどんタイプです。軽量で装着感は良好です。
接続品質
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯ではかなり優秀です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では良好です。距離耐性も優秀らしく、5m離れてもほぼシームレスで少しくらいしか乱れはありません。ただし遮蔽物があると時々プチプチするくらいにはわずかな乱れが出ます。
またホワイトノイズはほんのわずかにありますが、かなり敏感な人でないと気にならないのではないかと思います。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 S装着時]左右別
- [AET07 S装着時]左右平均
- [AET07 S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時]左右別
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時 ]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Sサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
サウンドシグネチャーはいわゆるドンシャリタイプで低域が若干パワーバランスで優位になっています。なだらかなV字型あるいはやや谷の深いU字型という形をしています。個人的にこのバランスはドンシャリの中ではわりと好きな感じなのですが、このチューニングはEnacFireのハウスサウンドとでも言うべきもののようです。私がわりとEnacFire好きなのはそのせいかもしれません。
低域は重みと太さがあり、床鳴り感もわりとしっかりしていて、地熱もほどほどにありライブ感がありますが、ノイジーになりすぎません。適度な膨張感もあるので、ドラムはキックは明確でありながら、パンチに弾力感もあります。それでいて、トランジェントがわりと良好なので輪郭にはタイトさも持ち合わせており、活き活きしているリズム感のある低域です。エレキベースは少し黒く適度に濁っていて熱気がありますが、厚みはそれほどありません。
中域は低域との関係性の上ではつながりがわりと自然なので、自然なウォーム感を持っています。しかし元々量感の割に熱気は強くない低域であるので、中域に熱気はあまり上がってきません。ボーカルは少し奥にいて、周囲も清潔ではなく、適度に楽器音に囲まれていて、その意味では少し埋没的ですが、上側に静寂感があるので、ニュアンスはかなりはっきり聞こえるためにフォーカス感は悪くありません。
高域は比較的単純な構造をしており、中高域はナチュラルよりはギラツキが強く、手がかりは少し強調され、少し派手な印象ですが、中域との間にはしっかりと分離感があります。また適度な傾斜によってトランジェントが強調される傾向にあり、音の輪郭はわりとしっかりしていてパリッと明瞭なだけでなく、アタック感も良好です。高域の抜けは良く、風通しがあり、高さが感じられ、ボーカルやバイオリンはわりとのびやかです。
EnacFire F1との比較
わりと値段も近いEnacFire F1と比較してみます。以下のグラフはEnacFire G20とEnacFire F1の自由音場補正済み周波数特性の比較になります。下側のグラフは1khz以上を拡大したものです。
率直に言ってほとんど音質差がなく両者はよく似ています。聴感上はF1のほうが静寂感が強く、引き締まってギラつきが少なく、よりハイハットの清潔感が強く聞こえます。逆にG20のほうは少しギラつきが強く、抜けもわずかに良くなっていますが、ほとんど差はありません。
そういうわけで見た目やスペックなどにこだわりがないならば、安い方を買うのが良いかも知れません。
音源比較
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピースのSサイズ、コーデックはaptXです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
重厚感とパワフルさを兼ね備えた低域、引き締まった中域に抜けが良く、適度に賑やかな高域、良好なトランジェントと、この価格帯ではなかなかおすすめできるイヤホンです。全体的にリズムは明瞭ですが、とくに低域のリズム感は活き活きとしていて、ロックやEDM、ヒップホップ、ポップスで良好なグルーヴ感が感じられるはずです。
使い勝手も良く、通信品質も良好でスペック的にも価格帯上位機種です。
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