- 【1】装着感/遮音性/通信品質「良好な装着感。通信品質は悪くない」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「割愛します」
- 【3】音質「コントラスト感があり、モニター的で丁寧な音。少し大人びて音楽が聞こえる」
- 【4】官能性「適度な透明感と静寂のある、落ち着いた空間で、モニター的に丁寧に音を味わえる」
- 【5】総評「機能性は高く、音も聞きやすいです」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「良好な装着感。通信品質は悪くない」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
7.5h/28h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | AAC/SBC |
防水性能 |
IP55 |
音質傾向 |
解像度が高い、透明感がある、鮮やか、落ち着いている、静寂感がある、大人びている、コントラスト感がある |
耳への収まりも良く、固定も良い感じです。Elite 65tシリーズに比べて小型になった分安定感も増した印象です。遮音性はわずかに下がったかも知れませんが、外れにくくなりました。
対応コーデックはAAC/SBC。ONKYO GRANBEATとHiby R6 Proにつなぎ、店頭にてテストしました。通信品質は基本的に安定しており、比較的無線の飛んでいる店内でしたが、途切れる感じはありませんでした。2台までのマルチポイントに対応しており、切り替えもスムーズです。
テスト環境
今回のテストはONKYO GRANBEAT、Hiby R6 Pro、SONY NW-105で行っています。
【2】外観・インターフェース・付属品「割愛します」
店頭試聴のため、付属品は割愛します。
【3】音質「コントラスト感があり、モニター的で丁寧な音。少し大人びて音楽が聞こえる」
今回は標準イヤピの中で、Lサイズを使ってレビューします。
まず全体像を確認してみますと、第一印象はJabra Elite 65tの音を洗練したような、コントラスト感を高めて透明感を増した、静寂感をより丁寧に出している雰囲気を感じます。どちらかというと低域の響きがより丁寧になり、中高域でも立体感を少し意識した印象を受け、わずかに前方定位を意識したような奥行きの強調はありますが、基本的にはモニター的に響きを落ち着かせ、音像に集中させて味わわせようという意図が感じられます。ぶっちゃけ個人的にはJabraの音作りはあまり好みではないし、自然な印象を受けないということをこれまでも何度か言ってきましたが、一方で決して音が悪いと片付けることはできません。聴き込んでみると大人びた雰囲気の中で楽器音の色づきを丁寧に聞かせるところがあり、センスは良いと思います。
個別に音域を確認すると、まず低域はElite 65tと同じように、少しべたっと厚みを出す感じがあり、たとえばバスドラキックは少し膨らみながら、ボスボスと足踏みする感じがあります。ベース音の黒みは強くなく、胴の重みよりはより深い下のウンウンする鳴動感を重視しているようです。とはいえ、音場全体に強く鳴動を感じさせるような床鳴り重視という音作りではなく、どちらかといえば、温かみを感じさせるためと音場のコントラスト感を高めるために、このような味付けになっている印象を受けます。そのためドラムサウンドを聴いてみますと、一定の深みと重みを感じさせ、それなりに胴鳴りも感じさせながら、どこかドライに輪郭感を重視したような粒立ち感が低域にも感じられ、音の印象は暖かく深いですが、あまり情熱的な音には聞こえません。どちらかというと理性的なように思えます。この独特な感じはElite 65tのころから引き継がれており、特にロックではドラムのディテールが丁寧で、情熱的ではありませんが洗練された、締まった感じの音を聞くことができます。しかし、私の聴いている感じでは、低域ではどちらかというと弦楽のほうにより魅力を感じるかもしれません。弦の響きに胴の厚みが十分乗り、かつ沈み込みも良い、コクのたっぷり感じられる濃厚感のある音が聞こえ、JAZZなんかでは音楽の底辺に雰囲気が凝縮されて感じられやすいです。この深さと厚みの十分にある低域は、音楽全体の静寂感の源泉にもなっており、音楽の背景はしっかり黒く、そのおかげでコントラスト感的なメリハリには優れています。それが一方で音の印象をくっきりさせすぎて、少しデジタル的に聴かせてしまう感じを出しているのかなとも思いますが、音像の描写力にはプラスの効果があることは間違いないでしょう。
中域では、低域の熱気が下方にわずかに滲んで聞こえ、人肌くらいの暖かさを感じますが、背景にしっかりとした黒さがあるので、上方向に向かうにつれ、透明感が高まっていきます。中域音はなだらかに前傾しているようで、上方向に少し伸びていく鳴り方です。低域がどちらかというと重い味付けになっていますから、中域に低域音が浮き上がってくる感じはなく、むしろ中域からワイドレンジに離れて深みを出して響きの場を演出しているようになっています。結果として、たとえばEDMトラックではアタックがそれほど強くないにも関わらず、ボーカルや電子音が自然と浮き上がって色づいて聞こえますし、ギターサウンドではディストーションの伸びはあまり強調せず、黒い静寂感と大人びたシックな雰囲気を出しつつも、エッジは丁寧に色づかせて聞かせる感じになります。コントラスト感がしっかりしているので、無理に音を前進させなくてもしっかり聞こえるのです。このような静寂感のある音は落ち着いて聞けますから、聞き疲れもしにくいです。
高域は丁寧に閉じており、マイルドに感じられます。シンバルの空気感の高さは必ずしも強く強調しませんが、上方はかなり透明感があるので、たとえば弦楽のボーイングのエッジは色味を抑えて筋立ちを強調しませんから、ヒステリックさがありません。それでいて、しっかりと立ち上がってスーッと伸びて聞こえるので、透明感のあるガラス質の音に聞こえます。明るい女声ボーカルも適度な透明感があり、サビでの自然な伸びの先に息が強調されて伸びていくような臭みがなく、むしろ自然な高さを意識して空間に丁寧に抜けていく立体感があります。アイドル系あるいは声優系の曲は第一印象的に声色が少し暗く感じられる可能性がありますが、少し聞き慣れると、子音が尖らず、ギャンギャン吠える感じもなく、適度な落ち着きの中で、透明感を意識した伸びを味わわせてくれるので、とても聞きやすいと思うでしょう。またこの透明な空間の中ではシンバルの粒立ちは比較的丁寧に表現されます。
総合すると、立体感には必ずしも優れませんが、コントラスト感に丁寧に配慮されたややデジタル的なくっきり感のある音像を重視したサウンドを持っており、モニター的な音が好きな人にはかなり好ましく思えるでしょう。
美点
- 中高域が鮮やか
- 聞き疲れしにくい
- 大人びた品のある音
- ドライでビター
欠点
- 雰囲気がやや暗め
- 音の豊かさに少し欠ける
- モニター的でどこかよそよそしい音
[高音]:高域は中高域よりは後退しており、中高域の楽器音の色づきを邪魔しない程度の透明感がある。中高域の手がかりは少し多めで、少し緻密な印象を受けるが、アタックは強すぎない程度に落ち着いた聞かせ方で、音像の描き出しが丁寧なので、ガチャガチャする感じはほとんどない(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、菅野よう子「Power Of the Light」でテスト)
[中音]:中域はわずかに前傾しており、ボーカルに少し上方向の伸びを感じる。中域下と低域上あたりに少し清潔な空間が設けられており、低域の熱気が滲みすぎないよう配慮されている。空間は適度な静寂感があり、少し中高域で楽器音が浮かび上がってくる浮揚感がある。どちらかというとモニター的に音の分離感を重視した味付けになっていると思うが、音楽性の手がかりになる程度の立体感がある。
[低音]:100hz~40hzまで重く締まった、ビーとブーの間くらいの音。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。ベース音は少し床鳴り感が強い深みのある音で、黒みも十分だが、地熱感はやや強めで少しぼんやりしている。バスドラキックもボスボスとした重みを少し抑えた鳴り方で、あまり強く自己主張しない。一方で、低域弦楽は魅力的に思えるかもしれない。厚みと黒み、重みのバランスが私の好みというのもあるだろうが、ボヨンとした厚みのる胴を持ち、さらにその下にドンと重く広がる床鳴りに十分な濃厚感と重量感を感じられる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:立体感的には中域から中高域にかけてやや奥行き感を、低域で深みを重視した感じがあるが、それぞれ傾斜は強すぎず、厚みを意識して極端に深堀り感を出しすぎずという配慮が見られる。そのため印象的にはドンとシャリが少し目立つという意味でドンシャリに聞こえるが、実際のバランスはフラットを意識していると思われる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:スネアの鼓面は明るめだが、音の透明感も意識されていて、パスッとした音の「スッ」のほうが目立ちすぎて後を引かないようになっているので、聞きやすい。ドラムのボディの方は適度に厚みを出しつつ、下の方までよく聞こえる透明感が意識されており、鼓面・ボディのパンチの鳴り・キックの三要素はどちらかといえば分離的で、ディテール感を重視しているようである。重めのバツンバツンないしバチンバチンくらいか。ハイハットはチリチリしたあたりに強調点があり、高さも少しあるが、透明感があり、ロックではスネアに少し押され気味に聞こえるかもしれない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルは濃いめでやや深みのあるコクが感じられる。一方で大人びていながらも上方向にも少し伸びる感じがあり、軸もしっかり立っている。女声ボーカルはやや大人びて暗い感じであり、また声質は基本的にドライで潤いは抑えめのロックに合いそうな渋い声である。しかし、中高域方向では透明感を伴った伸びも見られ、落ち着いた感じの中でボーカルは丁寧に聞こえる。息感や子音の強調は少なく、基本的に滑らかである。
【4】官能性「適度な透明感と静寂のある、落ち着いた空間で、モニター的に丁寧に音を味わえる」
Minako 'mooki' Obata「There'll Never Be Goodbye」
【SONY NW-A105で鑑賞】低域弦楽の沈み込みと厚み、重みの出し方にディテールが十分にあるので、JAZZの濃厚感が豊かに表現されます。中高域の鮮やかなあたりもアタックを抑えて静寂感を乱さないようにしつつ、丁寧に味わえる感じがあり、さらに弦楽や管楽、ピアノの上辺は透明感を意識されて表現されます。そのため、弦楽の高い音にヒステリックさがなく、透明なボーイングを味わえます。またこの曲のような落ち着いた曲では、シンバルも埋もれることなく、適度な冷静さのあるチリチリした音を丁寧に聞かせてくれます。
THERE’LL NEVER BE GOOD-BYE~THE THEME OF METROPOLIS~
Vincent Ingala「Can't Stop Now」
【SONY NW-A105で鑑賞】ちょっと雰囲気を変えて、もうちょっとスムース系のJAZZですが、こういう曲でも空間に大人びた品が十分にあるので味わい深いです。床面は深みを出しつつも、ほどよく締まっていて、熱気を出しすぎない冷静な感じがあり、エレガントな雰囲気を感じます。メインの金管も透明感重視で明るくなりすぎず、渋みとコクが失われることはありません。基本的に深い感じの音楽表現であるにも関わらず、コントラストがちゃんと利いているので、中高域で艶やかさが自然と出て、音場は程よく明るいです。
ずっと真夜中でいいのに。「秒針を噛む」
【Hiby R6 Proで鑑賞】適度にアタックを抑えてノリを出しすぎない、シックな感じを出しつつ、ほどよく中高域が色づくので、この曲のロック的な要素よりは、JAZZ的な成分を中心に味わえる感じがあります。ギターやドラムは少し大人びた感じで冷静に黒い感じがあるので、メロディーラインの基本はピアノが担っているように聞こえ、ギターも遊びすぎず、ピアノラインと歩調を合わせることを十分に意識しているような理知的な雰囲気があります。ボーカルも少し大人びた声色です。
【5】総評「機能性は高く、音も聞きやすいです」
音質的には65tシリーズがさらに洗練されたような、コントラスト感のしっかりした音を鳴らしてくれます。個人的にはちょっとデジタル的で相変わらず好みとは言い難いのですが、なんだかんだ言って、解像感は高く丁寧に聴かせてくれます。それ以上に機能性の面で優れており、完全ワイヤレスイヤホンではほぼほぼ他に類例がない、マルチポイントに対応していたり、ヒアスルーが優秀で、使い勝手の面で素晴らしいです。
まとめ
- 解像度が高い
- コントラストが高く音が聞きやすい
- 機能性は抜群で唯一に近い
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。