- 基本スペック
- パッケージ
- 装着サンプル
- 音質
- レコーディングシグネチャー
- 録音機材
- GENS D'ARMES(ロック系)
- Sophisticated Fight(ロック系)
- TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
- 白き魔女(クラシック系)
- 小さな英雄(クラシック系)
- 淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
- FEENA(EDM系)
- The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- Sophisticated Fight(JAZZ系)
- ケノーピ火山(JAZZ系)
- 浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- QUATERA WOODS(OST系)
- 幻の大地 セルペンティナ(OST系)
- 愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
- 魔王ヴェスパー(OST系)
- 花と風のうた(JAZZ系)
- 総評
- 【関連記事】
「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
KZ Acousticsは、オーディオファンの間で非常によく知られているブランドです。彼らはお財布に優しい価格で多くの見事なインイヤーモニター(IEM)を製造していますが、今回、最新のインイヤーモニターモデル、KZ ZAXを発表しました。KZ ZAXは、強力な8ドライバーハイブリッドセットアップを両側に備えており、デュアルマグネティックサーキットコンポジットダイナミックドライバーユニットと、正確に調整された7基のバランスドアーマチュアドライバーユニットが組み合わされた両側合計16ドライバーセットアップを備えています。パワフルなドライバーセットアップだけでなく、光沢のある亜鉛合金のフェイスパネルデザインで上品でリッチな外観を備えています。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 周波数特性:10Hz~40kHz
- インピーダンス:24Ω
- 感度:113dB
- ケーブルコネクタ:0.75mm 2pin
パッケージ
パッケージは1万円以下としてはわりと普通ですが、外箱は少し厚みがあるので比較的頑丈になってます。蓋を開けると、ウレタンシートにイヤホンとKZのブランドプレートがあって、わりと高級感が感じられます。個人的にはこの価格ならイヤホンポーチくらいつけてもよかったかもしれないと思いますが。
本体のビルドクオリティは価格の標準以上で、ケーブルも少しチープな気がしますが、悪くないビルドクオリティのように思われます。ただFiiO FD1とかQoA Vesperとか同じ価格帯のメジャー中華イヤホンに比べて全体的にチープなことは否めません。
装着サンプル
耳への収まりは良く、遮音性も良好です。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [標準イヤーピース S装着時]左右別
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
※当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
正直言うと、測定前に音聴いた段階で、私の知っているKZらしからぬ上品な透明感のある音がしたんで、「あれ?」と思ったんですが、測定してみると実にバランスの良いフラットモニター系のサウンドになっています。低域は深く、高域も高くてレンジ感が良く、中域は適度に前進しています。
「え?KZらしさ消えちゃったの?面白くない」って人もいるかもしれませんが、ご安心あれ!
KZらしさはギザギザしてる高域にあって、ここらへんでいつもの妙にギラギラしたディテールの濃ゆいKZサウンドが味わえるようになっています。個人的にはこの不自然なギラギラ感を一番なんとかしてほしいと思ってるんだけどw
ただ以前のKZはとりあえずギラギラをドーンと押し出して聞かせてましたが、KZ ZAXはバランス感覚が良く、中域によく配慮されているので、不自然さがほとんどなく、中域の透明感もよく維持されています。
低域はタイトで見通しが良く、深いところまでレイヤリングが比較的良好で、いつもの下品な低域どうした?ってくらい、わりとクレバーでモニター的です。深いところで熱気は少し引き出されるのでエレキベースにじんじんした火照りを感じますが、わりと音自体は明るくそれほど黒くないかなといった印象です。バスドラムキックもそれほど重さを強調せず、軽快というほどではありませんが、わりとトントンと後を引かないサウンドで聞こえます。低域弦楽は少し重みは多めに思いますが、基本的にポロンとした音で透明感があります。低域の熱気はちゃんと音域内で適切に消化されており、岸田教団&THE明星ロケッツ「GATE Ⅱ 〜世界を超えて〜」のようなかなり低域の熱気の強いロックサウンドを聴いても、中域のボーカルが濁る感じはありません。ん?これほんとにKZか?
中域は少しドライで思ったより甘味がないように思いますが、私の聴感上はボーカルの上辺くらいは少し濡れて聞こえます。ボーカルと楽器音とのパワーバランスはほとんど50:50ですが、場合によってとくに低域に対して少し埋没して聞こえる可能性があります。私にはわりとモニター的に聞こえる中域で、適度な清潔感があります。KZのくせに子音に荒々しさがほとんどなく、ほとんどシャウティにもならないので、わりと聞き心地が良いです。
KZ ZAXのKZらしさが感じられるのは妙にギラギラした高域です。低域、中域のバランスが良く、わりと丁寧にモニターサウンドを作り込んできただけに、妙にカサカサギラギラシャコシャコした感じの高域は目立ちます。EDMを聴くとシンセ音がわりとピキパキしてちょっとクラック入ってる感じに聞こえる気がしますし、クラシック音楽を聴くと、バイオリンが少しヒスってのこぎりのようにギシギシしているように聞こえるので、音が不自然でデジタルに感じられ、ピークをもうちょっと絞った方がいい気がしますが、ディテール感はくっきりするので、人によっては楽しいでしょうし、場合によって解像度が高いと感じる可能性があります。ロックはわりとハイハットやギターエッジに情報量が多く、楽しめそうな気がします。
私の個人的な見解を言わせてもらうと、この価格帯ではQoA Vesperのほうがはるかに自然なホールのような音場で豊かに聞かせてくれるので、とくにクラシックの場合はそちらを選んだほうがよいでしょう。そもそもビルドクオリティとパッケージングでもVesperのほうが優れていますし。ただ一昔前のKZのようにこのあたりを下品にガチャガチャもてあそぶ感じがなくなっていて、わりとこういう音もありかなと思えるくらいには自然に近づけており、悪くない気がします。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースはJVCスパイラルドット++ Mサイズを使い、ゲインは高設定です。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(ロック系)
Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
小さな英雄(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 小さな英雄 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
淡い恋 ~Too full with love~ / イース・ヒーリング / Copyright © Nihon Falcom Corporation
FEENA(EDM系)
FEENA / PROVINCIALISM Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ケノーピ火山(JAZZ系)
ケノーピ火山 / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
QUATERA WOODS(OST系)
QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
幻の大地 セルペンティナ(OST系)
幻の大地 セルペンティナ / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
愛を感じていたい「終焉」 / オリジナル・サウンドトラック 「海の檻歌」~後編~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
魔王ヴェスパー(OST系)
魔王ヴェスパー / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
花と風のうた(JAZZ系)
花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
驚くべきことに、KZ ZAXには私が想像していた最近のKZの演出過剰な、ひどく歪な変なドンシャリの音の感じは全くありません。そこにあるのは、むしろ丁寧にディテール感を作り込んだややデジタル的なモニターサウンドで、一瞬、CCAの製品と間違えてレビューしてたかと思ったくらいです。それでいて、KZらしいギラツキ感のあるメタリックサウンドは維持されています。KZのイヤホンをこれまで愛好していた人にとって、ZAXはまさに新境地のサウンドだと思われますし、KZのイヤホンでどれが一番いいかと訊かれたら、私はたぶんZAXを迷いなくあげるでしょう。それでもより自然で音楽的な音を愛する場合、QoA Vesperのほうがあなたを満足させるかもしれないことは忘れない方がいいかもしれません。
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