- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良い。通信品質も良好」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「デザイン高級感があります」
- 【3】音質「透明感と清潔感のある、奥行き感に優れた前方定位を充分に意識したクリアサウンド」
- 【4】官能性「透視図的で構築的な音楽表現」
- 【5】総評「NUARLは期待を裏切りませんでした」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良い。通信品質も良好」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
11h/55h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | aptX/AAC/SBC |
防水性能 |
IPX4 |
音質傾向 |
立体感がある、奥行きがある、音場が広い、分解能が高い、のびやか、明るい、透明感がある、清潔感がある、解像度が高い、アタック感がある |
イヤーフックで固定するタイプのデザインになっており、装着感は良いです。遮音性もそこそこ悪くありません。
通信チップはQCC3020を搭載しています。対応コーデックはaptX/AAC/SBC。ONKYO GRANBEATとHiby R6 Proにつなぎ、関東の某ターミナル駅周辺でテストしました。
駅の改札近くから、バスターミナル付近まで行き来しましたが、かなり安定度は高めです。バスターミナル付近ではプチプチする感じが出ましたが、総じて性能は高いように思われます。
QCC3020の特性なのか、接続当初はプチプチとポップ音のようなものが聞こえるのが気になるかも知れません。私の個体の場合、数曲聴いたくらいで落ち着きますが、個体差はあるかも知れません。
テスト環境
今回のテストはONKYO GRANBEAT、Hiby R6 Proで行っています。
【2】外観・インターフェース・付属品「デザイン高級感があります」
付属品はイヤーピースの換え(2種類)、イヤーループの換え、充電用USBケーブル(Type-C)、説明書です。
【3】音質「透明感と清潔感のある、奥行き感に優れた前方定位を充分に意識したクリアサウンド」
レコーディングシグネチャー(試験運用中)
レコーディングシグネチャーはバイノーラル録音されていますが、品質は良くありません。低域は抜けやすくなるので、イコライザーで低域を持ち上げていますが、それでも充分出ていません。したがって聴いたそのままの音質とは異なりますので、あくまで参考情報ということでお願いします。
原曲
銀の意志 Silver Will / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
今回は標準イヤピの中で、Spinfit CP360 Lサイズを使ってレビューします。
まず音質的な全体像を確認すると、奥行き感があり、透明感のある中域が特徴的なのがわかります。音はしっかり奥から伸びてくる感覚があり、前方定位感が意識されています。また高域方向でも弦楽やハイハットがしっかり高さを出して広がるので、空間に開放感があります。少し細かに粒立ちさせる緻密で細い感じは気になるかもしれません。低域は基本的に透明で、あまり厚みを出さないタイト系の音で、やや空間が多めで人によっては量感的な物足りなさを感じるかもしれません。重みもなく、あまり深い印象も受けないかもしれません。明るい立体感重視の音場が広いのが持ち味のイヤホンのようです。
個別に音域を確認していくと、まず低域は分離感が意識されています。ベース音は明るめですが、かなりはっきりと聞こえ、温かみをあまり出さないクリアな音に聞こえます。バスドラムキックのドンも締まりがよく、一点を押し込む感じですが、重みは抑えています。胴鳴り感や床鳴り感は適度に抑制されていて、リズムコントロールは俊敏です。低域弦楽も透明度が高く、厚みは抑えてやや明るめにビヨンという弦のしなりを聞かせながら潜る感じがあります。深堀り感よりはむしろ浮き上がりのある反発力重視のように聞こえ、躍動感は高いですが、重厚感には欠けるでしょう。基本的にノリがよい音に聞こえると思います。
中域は前傾的でかなり清潔にされています。基本的に奥行きを重視するこの中域から中高域の味付けによって前方定位感は高くされており、楽器のアタックも強めで、ボーカルの子音ははっきりと明瞭になっています。音の分離感も強調されて聞こえ、低域と高域は分断されて聞こえやすいです。いわゆる分解能が高い音という系統なので、その意味で解像度は高く感じられるでしょう。中域で豊かというよりはもう少し上で音が響く感じがあり、むしろ中域は音の響きわたる空間として透明なまま確保されているように感じでしょう。
高域は高いところまで詳細な印象を受けるはずです。やや音が細く、緻密で派手さも強いところがあり、最初は音が細く、シャリシャリして刺激が強い印象を受けるかもしれませんが、ハイハットの光沢感はわずかにセーブされていて、派手ではありますが、どちらかいえば清潔に抜けるように意識されています。そのため見た目の派手な感じの割に耳にしつこく残る感じはありません。それでも、ボーカルのサ行は少し刺さりやすく、子音は露骨に強調されるところがありますので、人によってはやや攻撃的に聞こえるかもしれませんが、メリハリよくハキハキと聞かせます。元気が良く力強く伸びる声色に聞こえるでしょう。
総合すると、最大の魅力はスピーカー的な前方定位感を意識した立体感のある音響です。下のような立体的な効果が考えられた曲ではとくに奥行きが丁寧に感じられ、音が飛び出してくるように感じられると思います。
したがって、明らかに現代的な立体効果のある曲と相性が良い感じですが、どんな曲でも音を整理してレイヤー感のある奥行きを出してくれるので、分解能は高く感じられ、音数が多く聞こえてくる印象があるでしょう。緻密な味わいが好きな人にはかなり魅力的に映るはずです。一方で音楽の音数的な情報量は多く、単純に音の多さからくる目まぐるしい感じが出るので、人によっては落ち着けない感じはあるかもしれません。前にも言いましたが、分解能が高く立体感に優れた構築的な高解像度系サウンドで、音楽を設計図通りに展開するような緻密さがあります。
イヤーピース考察
基本的に音量を上げるほど立体感が増して聞こえると思います。立体感を重視するなら低域があまりしつこく出ないイヤーピースを選ぶと良いでしょう。おすすめは標準のCP360かePro Horn-Shaped eartipsです。final E Clearも悪くありませんが、私が聴いた感じどうも高域が落ち着き、音の広がりが良くないらしく普通のフラットサウンドに聞こえ、むしろ立体感が少し消えました。SednaEarfitのような低域の強いものは音を頭内的に感じさせやすいので、立体感的にはマイナスになりやすいと思われます。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
鮮やか。中高域は色づきもよく、しかも緻密で情報量が多く感じるだろう。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
鋭い。高域は人によってかなりエッジが鋭く聞こえるかもしれない。 |
明るさ (明るい/暗い) |
明るい。空間は非常に透明で、明るい。 |
派手さ (派手/地味) |
派手。基本的には細かく音を構築して細密な宝飾品的な音を感じさせる。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
硬い。エッジは鋭く、アタックも強く、音は基本的にやや固く感じるだろう。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
尖っている。高域は少し緻密に尖る感じがあり、ボーカルもやや上に細く伸びていく。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
騒々しい。曲にもよるが、とくに高域は非常に緻密になるので、人によって音数が多すぎる感じがあるかもしれない。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。低域はタイトに打ち込む感じの音になるので、衝撃感はあるが、マッスルに欠ける感じである。基本的にはアタック的な力強さが強く出るタイプ。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
やや豊か。情報量は多く、中高域の響きも広く聞こえるので、高解像度で広がりもよく思えるだろうが、全体的には音にか細い感じがあるので、人によってはあまり包容力を感じないだろう。 |
太さ (太い/細い) |
やや細い。低域は厚みがないし、中域以上も全体的に少し細身の音になる。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
ややざらざら。金属光沢は少し抑えたシルキーな感じではあるが、シンバルの粒感は細かく、サラサラした細かな粒が多めに聞こえるだろう。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
きめの細かい。基本的に粒立ちは細く、粒子的に響かせている感じがある。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
澄んでいる。高域の風通しの良さ、中域の透明感ともに高め。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや乾いた。全体的に音が尖って聞こえやすいので、潤い感には少し欠けるかもしれない。 |
重さ (重い/軽い) |
軽い。基本的には音場は浮揚力が強めで音が上に上がっていく感じがある。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
澄んでいる | 澄んでいる |
明るいか (明るい/暗い) |
明るい | 明るい |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
伸びやか | 伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
やや乾いている | やや乾いている |
太いか (太い/細い) |
細い | 細い |
濃いか (濃い/薄い) |
薄い | 薄い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
目立つ | 目立つ |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
スカスカ |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
浮き上がりが良い |
主に中域の奥行き感 (前進的/後傾的/前傾的/後退的) |
前傾的 |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
広い |
定位感 (頭内的/頭外的) |
頭外的 |
分離感 (拡散的/密集的) |
拡散的 |
美点
- 立体感に優れる
- 分解能が高い
- 音場が広い
- 前方定位感のあるスピーカー的音響
- スピード感のある音響
- 音の粒立ちが細かい
- 情報量が多い
欠点
- 音が細い
- 低域の厚みに欠ける
- 人によってアタックが強すぎるかもしれない
[高音]:高域は高いところまで出ており、高いハイハットの穂先が清潔感を出してくれる。しかし、相応に派手さも目立ちやすくなっており、人によってはハレーションを感じ、やや耳に焼き付く感じがあるかもしれない。弦楽も高さを十分に強調する。中高域付近は十分に透明になっていて、色づきの良い音が横にも上にもよく響く印象を受けるだろう。ボーカルのサ行やツ音は相応に尖りやすい感じはある(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、菅野よう子「Power Of the Light」でテスト)
[中音]:中域はしっかり前傾しており、中高域に向かって奥から楽器音が伸びてくる立体感がある。低域とのつながりは分離的で、中高域音と低域は少し離れて感じられるところはあり、天井と床面に分かれている立体感重視のワイドレンジサウンドである。ボーカルは正面に位置する感じで音場は前方定位感を意識した、やや腰高気味のものとなっている。
[低音]:100hz~40hzまでやや細いが、重みのあるビーからボーに変わっていくような振動の音。30hzでほぼ無音。低域全体の印象はタイト系で空間成分が多く、清潔に感じられるだろう。ベースはやや明るくラインを明瞭に出し、バスドラキックは重みはそこそこでやや浅いスピード感のあるトントンに近い感じに聞こえやすい。低域弦楽も明るめにビヨンと躍動する弦のしなりが持ち味に聞こえる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:奥行き感があり、レイヤー状の音の重なりを感じさせる分解能が高い音場を持つ。立体感の表現に優れており、前方定位感は強い(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:スネアのアタックは強く、パシパシと攻撃的に弾ける感じがある。バスドラキックのほうは少しタッチが軽い感じがあるので、ドラムセット全体はスネア主導で疾走していく感じが強い。明るめのパツンパツン、ないしパシンパシン。ハイハットはチリチリからシャンシャンまでよく感じられる立体感があり、高いシャーンの広がりも広いので、空間全体に細かく霧散するような塩振り感があるので、スネアの疾走感の上にさらに吹き上がるように広がり、浮揚感を出してくれる(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルは男女ともに少し透ける感じがある。子音の強調が強めで、サ行もやや尖っていて、伸びの強い細い感じがある。そのため男声ボーカルは少し中性的に聞こえやすい。女声ボーカルは伸びやかで爽やかさと伸びやかさ、透明感を併せ持ったような、やや上ずった感じのある声色で聞こえる。ボーカルフォーカスは一般的に悪くないが、曲によっては弦楽やギターのほうが全面に出てくる感じがある。
【4】官能性「透視図的で構築的な音楽表現」
安月名莉子「Glow at the Velocity of Light」
【GRANBEATで鑑賞】打ち込み的な、構築感のあるこういう曲に対しては、このイヤホンはかなり丁寧に楽しませてくれてパフォーマンスを感じさせてくれるでしょう。音が立体感を伴って、あらゆる方向から聞こえて空間を感じさせるように構築されているこの曲の音が走り回るような感覚は、アタック感を伴いながらスピードよく気持ちよく聞こえるはずです。最初から最後まで息をつかせぬような切迫感を非常に強く意識されて、この曲の主題である満たされない心の慌ただしさみたいな味わいは十分に聞こえるでしょう。一方で、人によっては、たとえばドラム表現の薄い感じが気になって、その「慌ただしさ」の部分が強調されすぎている気はするかもしれず、浅い感じになっていて、この曲の渇望感みたいな深い情感はいまいち表現されきっていないと考えるかもしれません。実際ボーカルは少し上ずっていて、熱に浮かされた感じであり、冷静に気持ちを整理して歌いきれていないような感じがすることは事実です。非常にスピード感があって音場が拡散的で目まぐるしいですが、それが曲全体にうわ滑っている印象を与えることはありそうです。
TVアニメ 「 彼方のアストラ 」 エンディングテーマ 「 Glow at the Velocity of Light 」
TVアニメ「とらドラ!」OP主題歌「プレパレード」
【Hiby R6 Proで鑑賞】この曲はかなり立体音響的演出が強い曲なので、このイヤホンとの相性は基本的に良いです。音が空間に適度に響いて奥行き感を十分に感じさせてくれるので、とくにボーカルのエコー表現が生々しく空間を感じさせてくれて、没入感が高く、中毒的と思えるでしょう。アタックが利いているので、音がスナッピーに機敏さを出して、音のキレも非常によく感じられると思います。音の粒立ち感にも立体感が乗っているので、空間全体に音が浮遊しているような感覚も十分に味わえるでしょう。
Galileo Galilei「サークルゲーム」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】この曲も立体音響効果が加えられているので、このイヤホンで聴くと、出だしから音の定位感がかなり生々しい感じに聞こえると思います。ボーカルをはじめ、音楽的要素は空間効果が十分に再現されて、立体的に広がるので、音楽に包まれている感覚が味わえるでしょう。目を閉じてみると、音楽の空間に浮遊しているような楽しさが存分に味わえるはずです。ぜひ店頭試聴で聴いてみてください。このイヤホンの魅力がすぐに理解できるでしょう。
【5】総評「NUARLは期待を裏切りませんでした」
個人的にこのイヤホンには聴いた途端に驚きしかありませんでした。ちゃんと音場を意識して立体的に聞こえるように音が設計されており、現代的な音楽を没入感高めに楽しめるよう丁寧に音作りされています。音響設計は有線イヤホンを含めても高い完成度で、立体音響を聞かせるように質の高いチューニングが実現されています。少なくとも音質的には完全ワイヤレスイヤホンが同価格帯の有線イヤホンを凌ぐレベルのものを実現しているという証明を、このイヤホン自身が体現しています。
QCC3020由来と思われる、通信品質に由来するポップ音が多いなどの欠点はありますが、有線イヤホンでもなかなか実現できない分解能の高い音は、聴いておいて損がないはずです。
まとめ
- 分解能と立体感がよく、解像度が高い
- 透明感と清潔感があり、音場が広い
- できればもっと高品質なチップを使ってほしかった
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。