NUARL ハイレゾ対応カナル型ステレオイヤフォン NE110 ホワイト NE110WH
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良い」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「リケーブルできません」
- 【3】音質「中域に焦点がある。低域は浅く、高域も閉じている」
- 【4】官能性「ポップスやJAZZ曲、インストを情感豊かに楽しめます」
- 【5】総評「中域を豊かに楽しみたいならおすすめ」
- 【おまけ】音場改善イコライジング
- 【関連記事】
【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良い」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 5hz~70000hz |
インピーダンス | 32Ω |
感度 | 105dB |
ドライバー |
ダイナミック型 |
音質傾向 |
ボーカルフォーカスが良い、豊か、豊満、充実感がある、浮き上がりの良い低域、メロウ、ナチュラル、高域が暗い |
シュア掛けはできません。装着感は悪くなく、普通にしっかりはまります。遮音性も悪くありません。
テスト環境
今回のテストはCayin N6II/A01とONKYO GRANBEATで行っています。またゲイン設定は低設定です。
【2】外観・インターフェース・付属品「リケーブルできません」
付属品はイヤーピースの替え。
【3】音質「中域に焦点がある。低域は浅く、高域も閉じている」
音質的におそらくフラットな音を目指した印象を受けます。自然と中域に焦点が遭い、ボーカル周辺が豊かに感じられる音響設計です。ただし、中高域も少し明るく艶やかさを強調するのと、中域はあまり凹凸が付けられていない感じなので、ボーカルのすぐ近くにギターやピアノが陣取りやすく、ロック曲ではややボーカル周りが騒がしくなりやすいです。アコースティックギターは少し太い濃厚系の音で横幅も広く目立つので、ボーカルにかぶさる印象は強いかも知れません。ピアノ音も濃いめに艶やかさを出すので、中域は充実していますが、低域は重みや深みに乏しいので音の沈み込みがあまりなく、高域方向もあまり高さが感じられないので、やや中域に音が密集し、平坦な感じに聞こえます。
低域は暖かみがあるサウンドですが、深掘り感はあまりなく、緩い感じで少し明るく、低域弦楽あたりは少し浅めで厚みがあり、ドラムもバスドラキックが少し近い感じで低域は少し立体感が足りないように思います。そのためドラムキックとベースラインがもやもやしやすく、ベースのブンブン音の中にドラムキックが埋もれてしまう印象を受けます。
高域方向では中高域が少し明るい感じなのですが、高域に向かって早く減衰している感じで、アタックは抑制的で輝きも強くありません。どちらかといえば中域の厚みを大事にしたような鳴り方です。スネアの鼓面あたりは意外と明るく、浮き上がりが良いですが、キレは強くありません。シンバルはあまり高さを強調しない感じで、高域弦楽も高く伸びる感じではありません。
総合すると中域の充実感に集中している感じで、低域はその中域のために暖かみとライブ感のある厚みのある床面を、高域は閉じて中域の濃厚感を増しています。しかし立体感には乏しく、中域中心の音楽になるので、基本的にはかまぼこっぽい平坦な音質に聞こえると思われます。音場も奥行き感は少しありますが、左右はぎっしりしています。音も太めでふくよかな感じな上に中域は押し出しが強く、人によっては圧迫感が強く思うかも知れません。個人的な感想を言えば、充実感のある中域に対して低域が重みと深みの面でやや力不足で、大抵の曲で支えきれていない印象があります。ただし、私はどちらかというと低域ジャンキーなので、この評価には個人的趣向が反映されている可能性があります。
個人的にはポップスや落ち着いたJAZZをボーカル中心に聴くのにちょうど良い感じで、クラシックは低域は悪くないにしても、高域で金管や弦楽にのびやかさが少し足りない印象で人によってはもっさりして感じられそうですし、ロックもなんか低域はもたつきを感じ、高域でもドラムセットのアタックが強くない印象です。個人的にはアニソンももうちょっと明るく聴きたい感じなので、万能に聴けるように思えて器用貧乏で、意外と万能ではない気がします。
しかし一方で、あくまで経験上のことですが、変に高域盛ってたり低域がおかしなバランスのイヤホンより、中域に丁寧に焦点が合うイヤホンのほうが耳慣れもしやすく無難です。とはいえ、あまり面白くない音であることは事実なのでイコラジングしたくなるのですが、その際もこういう中域がしっかりしているイヤホンの方が大胆にイコライジングしても音楽の破綻が少なく、遊び甲斐があったりします。
実際のところこの機種はすでに入手困難なのですが、あくまで元値の5000円以下くらいで考えるなら、個人的には高域もより出ていて、低域がしっかりしているNOBYIN A2のほうがより中域に深みが感じられると思います。ただしA2は一方で低域がやや重低音の鳴動が強く出るところはあるので、重く深い低域が嫌いな人には向きません。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
鮮やか。中域で濃厚。中高域でもほどほど明るく、艶やかさはそこそこある。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
鈍い。全体的に音は丸く鋭さは強調しない。 |
明るさ (明るい/暗い) |
少し明るい。低域は明るめで浅く、浮き上がりが良い感じで、中高域付近も少し明るいので、音場はやや明るく感じる。 |
派手さ (派手/地味) |
普通。中域で音が豊かに聞こえる。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
柔らかい。音の輪郭はかなり柔らかく、とくに高域に向かってはマイルド。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
丸みがある。音に尖る感じはない。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
穏やか。アタック感は抑えめで低域も高域も温和。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。低域は力不足だが、中域では充分に豊かで押し出し感がある。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
やや豊か。中域は量もあり、前進的で豊かだが、低域はやや力不足を感じ、高域のディテール感は抑えめで分解能的な情報量が多い感じでもない。 |
太さ (太い/細い) |
太い。音は全体的に太め。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
滑らか。全体的に音はマイルド。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
粗い。基本的に緻密な音ではない。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
濁っている。低域は暖かみ重視でライブ感はあるが、もやもやしやすく、中域も豊満系の音で空間に清潔感がない。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや乾いた。普通に近いと思う。中域が豊かなので実際のところ、そこそこ潤い感を感じられるが、問題は低域で妙にもさもさしやすく、その熱気で個人的には音場がなんとなく乾いて聞こえる。ただし、これは曲にもよるところがあって、個人差がありそうな気がする。 |
重さ (重い/軽い) |
普通。高域に向かって開放的じゃないので安定感があるが、低域もなんとなく重みが足りないので、音楽全体はポップスに向くような、少し軽い印象を受ける。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
濁っている | 濁っている |
明るいか (明るい/暗い) |
普通 | やや暗い |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
普通 |
やや天井感がある |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
やや潤っている | やや潤っている |
太いか (太い/細い) |
太い | 太い |
濃いか (濃い/薄い) |
濃い | 濃い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
やや目立たない | やや目立たない |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ぎっしり |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
やや天井感がある |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
浮き上がりが良い |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
狭い |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
前屈み |
美点
- 濃度感があり、音に自然な太さがある
- ボーカルフォーカスが良い
- 低域は明るめでライブ感がある
- 高域がマイルド
- 楽器音が充分に前進的
- 聞き疲れしにくい
欠点
- ややもっさりしやすい
- 中域と低域の境目が曖昧になりやすい
- 低域に深みと重みが足りず、もやもやしやすい
- 全体的にディテールが甘い
- 音場が狭く、平面的
[高音]:高域は基本的に閉じている。ディテール感はあまりよくなく、高さも感じられない。中高域はわずかにピアノに煌びやかさがあって相対的に少し明るい気がするが、その煌びやかさもギターを充分に輝かせるほど高くはない。総じて高域は立体感や清潔感に欠ける印象を受ける。
おそらくイヤピで改善できるレベルではないので、メリハリに不足を感じたら、イコライザーで4khz~8khzを盛ると、音に煌めき感が出る上、ギターのアタックが改善され、リズム面でもスネアにスナップが利くようになり、キレが増し、途端に精彩が良くなるように思う。中域が充分に豊かなので、高域を大胆に盛っても音楽全体に破綻が出ないはず。個人的な感想を言えば、高域方向を充分に開放してやることで、風通しもよくなり、低域の熱気が強い感じも減るので、このイヤホンは劇的に改善される。ただしこれはあくまで私の好みの話なので、個人差を考えると適度に微調整が必要と思われる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域はやや平坦で中域の真ん中に焦点がある。中域は充分に前進的で奥行きはそこそこあり、最も活き活きして聞こえる。充分にギター音は艶やかだし、ピアノ音もとろみのある艶やかな音だが、低域は少し浅いので、人によっては沈み込みが足りないと思う可能性はある。しかし、私の聴いている感じだと縦軸では相対的に高域の不足感が大きいので、低域を改善するよりは高域を改善する方が手っ取り早い。そもそも低域のディテールも高域に影響されるところがあるので、このイヤホンの場合、低域を改善しても低域の見通しの悪さ自体はあまり変化して感じられない可能性が高い。
[低音]:100hz~40hzまで濃い太い振動。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。ベースはボディの鳴りが強く、少しブンブンしている。キックと被りやすい感じがあり、やや分離が明瞭でない。低域自体は少し浅く聞こえ、やや明るめに感じる。鳴動は強くない。一方で低域弦楽は厚みが少しあり、張りを少し感じる。好みにもよるが、個人的にはどちらかといえばクラシックやJAZZなんかの低域弦楽主体の音楽は楽しめると思う(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:中域にフォーカス感がある。低域は浅く、暖かみがある。高域はマイルドに閉じている(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:スネアは少し明るく聞こえるが、アタックは強くなく、ビシバシ感はあまりない。バツバツとした乾いた感じの音に聞こえる。ドラムは基本的に胴鳴りが強くボディがはっきりしているが、中域から低域まで豊満につながっている感じがあり、人によってはメリハリ感がやや足りないと思うかも知れない。バスドラキックは広がりは悪くなく、単体では温かめで柔らかめながら活きが良く存在感があるが、曲によってベースと被りやすい。全体としては重めのバッツンバッツン。シンバルはあまり高さがなく、チンチンしたあたりが濃いようだが、ディテールが甘く後ろで聞こえやすいので、ドラムに埋没しやすい(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルはほぼ最前列にいるが、ギター・スネア・ピアノなどが同程度にフォーカスされやすく、ボーカル周りはあまり清潔でないために、フォーカス感は曲によっては曖昧に感じるかも知れない。男声ボーカルは濃いめにしっかり聞こえるが、女声ボーカルはギターサウンドに近くなりやすく、やや混濁して聞こえるかも知れない。ボーカルは大抵ちょっと豊満で音場が広くないところに幅を占有する感じに聞こえる。声色は息感は抑えめでふっくらしており、暖かい甘味が強い。
【4】官能性「ポップスやJAZZ曲、インストを情感豊かに楽しめます」
森口博子「水の星へ愛をこめて」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】ぶっちゃけドラムもちょっと浅いし、ポップス向きの浮き上がりの良い感じだったんで、ポップス狙いで聴いてみましたが、この曲がなかなかいい感じでした。ちょっと古い曲で中域にあんまり音数が多くなく、ドラムの床面、シンセや弦楽の背景、真ん中にボーカルとわかりやすく、ボーカルが太くてもとくに周りに邪魔するものもないので、うるさくなりません。むしろボーカルが太い分だけ空間が埋まってスカスカにならないので、押し出しの強い感じもあって満腹感が感じられます。床面ドラムも極端に言えばポンポコに近い、上で弾みの良い感じなので、少し腰高に音場を押し上げているのが、ボーカルにエネルギーを与えていて、この曲では気持ち良く聞こえます。
久石譲「Porco a Bella」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】動画はオーケストラ版ですが、私が聴いたのはアルバム収録版です。動画は参考用です。
さて、このイヤホンは中域を結構丁寧に聴かせてくれるので、この曲のように弦楽とピアノが主体で、高さをあまり強調せずにゆったりと広がりを味わえる曲とは相性は良いです。高域は派手さがなく、やや暗めに閉じていくので、中域が充分に濃厚に感じられ、また低域も低域弦楽に厚みがしっかり出てドシッとした重みを出しつつ、それが深くなりすぎずに明るく浮かび上がってきてくれるので、中域に音が集まってくるしっかりした組み立てで聴けます。弦楽やピアノは中域で滞留するので、充分な濃厚感が味わえます。
中島愛「髪飾りの天使」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】かなり中域に濃厚感を出してくれ、ドラムもあまり深掘りしすぎずに浅いところで厚みを出してくれるので、この曲なんか密度感は高くなって満腹感があります。ボーカル含めて音が近い感じで、楽器音も太めで広がりがよく豊かに聞こえます。楽器音は色づきよく、懐もあってしかも濃厚に滞留して聞こえるので、ちょっと圧迫感を感じるくらいですが、ボディが豊かに味わえます。
【5】総評「中域を豊かに楽しみたいならおすすめ」
ぶっちゃけ多くの人にかまぼこに聞こえると思いますし、音場も広くないので、最近の流行からは外れる音なんじゃないかと思います。実際アニソンなんかもポップス寄りの落ち着いた曲じゃないと、いまいちもっさりしてしまう気がしますし、高域のディテールは良くないので、緻密な感じはありません。ただライブ感のある浅めで浮き上がりの良い低域はポップスやダンスの床面とは相性が良さそうで、明るめに音場を押し上げてくれます。低域弦楽もそれなりに良い感じで聴かせるので、JAZZやクラシックも悪くないかも知れませんが、音場は広くないのでフルオーケストラは物足りないかも知れません。室内楽が良いのかな。
- 濃厚で豊満な音を楽しめる
- 中域が豊かで、ボーカルフォーカスも良い
- 高域が暗く、音場は狭めで分離感や清潔感に欠ける
【おまけ】音場改善イコライジング
この機種の高域が足りないという指摘をレビュー中でしましたが、中域はしっかりしているので、高域を改善したら結構よくなるんじゃないかといろいろ試行錯誤してできたイコライジングがなかなかよかったので紹介します。
主な設定数値は以下になります。これには一応元ネタがあって、自由音場と拡散音場というのがあり、拡散音場の波形を参照しています。高域で足りない感じをイコライジングで改善してたら、なんとなく「波形が拡散音場っぽくない?」って思って、「いっそ拡散音場風のイコライジング設定作っちゃえ」とやってみると、なかなか音場が広く感じられる良設定でした。個人差はあると思いますが、手持ちのいろいろなイヤホンで試したところ、音場は大なり小なり改善される傾向があったので、おまけで紹介します。
主な設定数値
- 32k:-12dB
- 16k:+4dB
- 8k:+9dB
- 4k:+12dB
- 2k:+10dB
- 1k:+4dB
- 0.5K:+1dB
NUARL ハイレゾ対応カナル型ステレオイヤフォン NE110 ホワイト NE110WH
【関連記事】
*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。