「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる機種はRademax T12です。
Rademaxというブランドについては以前製品をレビューしたことはありますが、ぶっちゃけよく知りません。しかし、どっかで聞いたことあると思ってました。そこでググりながら思い出してみると、以前Qiワイヤレス充電対応でQCC3020搭載、デュアルドライバー構成という、なかなか魅力的な完全ワイヤレスイヤホンであるRademax LEORademax LEOなる機種をクラウドファンディングしていたのを思い出しました。
Rademax(https://www.rademax.jp/)は、テクノロジー企業「Otium」のハイエンドブランドです。
Otiumは、ケンブリッジ大学を卒業した元BlackBerryエンジニアのエリックが2012年に創立したテクノロジー企業で、オーディオ機器の開発と製造、デジタル周辺製品の設計と販売を行なっています。Otiumは米国市場におけるBluetoothイヤホンの販売を6年間以上前から展開しており、多くのユーザーから支持を得ています。直近では、米国市場単体で年間35億円を超える販売実績を達成しました。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Recommended」として、比較的多数の人にとって買って損がないオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:3h/30h
- 防水性能:IPX5
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号:210-140516
パッケージ
パッケージは価格帯では標準的です。付属品は充電用ケース、充電用ケーブル(Micro-B)、説明書です。
イヤホン本体はファンシーな色合いになっていて、チャーミングな感じです。わりとビルドクオリティは悪くないと思いますが、際立ってかっこいいとかいうわけでもありません。
なおインターフェースは物理式ですが、面積が少なく、押下感がしっかりしていて圧迫感が出にくいタイプで、結構使い心地がよいです。
装着サンプル
インナーイヤー型で、いわゆる「耳うどん型」をしています。耳への収まりは良好です。首を振っても落ちないので、脱落はほとんどしないと思います。
接続品質
技適情報に依拠すると、通信チップはairoha AB1532だと思われます。airohaはSONYの完全ワイヤレスイヤホン用の通信チップを製造していることでも知られ、AB1532はMCSync機能によって左右イヤホンに同時にワイヤレスオーディオ通信することで途切れにくく、安定的な接続を保つことができます。
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯ではわりと優秀な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では安定しています。距離耐性は優秀で、5m離れてもシームレスにつながっています。ただし、遮蔽物があると通信が不安定になります。
インナーイヤー型独特の外環境音が聞こえるタイプのせいか、ホワイトノイズは感じません。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- 左右別
- 左右平均
- 左右別(自由音場補正済み)
- 左右平均(自由音場補正済み)
※当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
御覧の通り、インナーイヤー型独特の低域のロールオフが見られるサウンドシグネチャーをしています。全体像は中域が充実したブライトサウンドというべき音で、かなり明るく、透明感がある、わりと開放的なサウンドをしています。すっきりと見晴らしがよく、澄み切った空気感のようなものが感じられます。高域にピークがあるので高さはありますが、わりとかまぼこに聞こえやすいです。
低域は中域から素直に落ち込んでいくように聞こえます。深いところはあまり聞こえないので、わりと床面が抜けているような感覚を受けると思います。低域は明るく、厚みがあります。低域弦楽は豊かでポロポロとした優しいサウンドで朗らかに感じられます。躍動感も少しあり、弾力のある床面を形成します。バスドラムはパンチにパワー感はありますが、キックはトントンというよりはポンポンくらいでスピード感はありますが、少し浅く膜を張るように感じますし、エレキベースはわりと明るくやや淡いです。
中域は鮮やかかつボーカルが前面に出てきます。ピアノラインとボーカルラインは華やかで生き生きと明るく、元気で色づきもよいです。ボディに不足は感じませんが、中域下部はそれほど充実していないので、みずみずしさは思ったほどでもありませんが、それでも十分みずみずしく艶やかに聞こえます。スネアのパワー感もあり、中域はかなり前かがみで押し出し感がありますが、充実していて楽しいです。
中域上部から中高域にかけては大きく後退し、高域でピークを形成します。中域はかなり印象付けられますが、高域の高いピークと超高域の低いピークが抜けの高さを感じさせてくれるので、わりと風通しは良いです。
このイヤホンの良いところは小音量やわりとうるさいところでもボーカルを中心とした中域がはっきりよく聞こえやすいところで、静かなところでじっくり聞くには低域の不足とかが気になってきて面白くないかもしれませんが、外出時の移動中や作業中などに音量を下げたりして音楽を聴くにはよく、また動画などのナレーションも聞き取りやすいのでテレワーク・ミーティングの相手の声を聞き取るには便利そうということです。インナーイヤー型で開放的なので外環境音が適度に聞こえるのもそういった用途に向くでしょう。
わりとこのイヤホンで楽しかったのはたとえばORESAMA「OPEN THE WORLDS」のようなピアノとボーカルライン中心で組み立てられたポップスで、低域がわりとラフというか力を抜いた優しい感じになっているので、全体的にマイルドに肩の力を抜いて楽しめる感じがあります。わりと音に厚みがあってボリューム感が出やすいサウンドですが、聞き疲れもしません。低域は物足りないかもしれませんが、中域以上は奥行き感と高さがあり、ホールのような雰囲気があるのでクラシックも比較的豪華に楽しめます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使い、コーデックはSBCです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
中域が充実したサウンドを持っており、聞き心地がよく、小音量でもボーカルを中心に音楽の中心要素がしっかりと味わえるリスニングライクなモデルです。連続再生時間だけかなり物足りないのが難点ですが、通信品質も悪くなく、わりと使い勝手は良いです。適度な音量で「ながら聞き」にはよさそうなアイテムですし、開放的なインナーイヤー型は耳をふさがないので風通しがよく、夏場でも快適に使えます。
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