- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良好で遮音性も高い」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「2pinリケーブル可能」
- 【3】音質「カリッパリッとした輪郭、細やかな繊細さをしっかり出しながら、一方でマイルドな聴き心地も実現している、水晶のような透明感のある音色」
- 【4】官能性「優しい聴き心地でありながらパワフルさも秘めている」
- 【5】総評「暖かな透明感。懐の深いたっぷりとした曲から、アタック感のある曲も比較的万能にこなせます」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良好で遮音性も高い」
おすすめ度*1 | |
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ASIN | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 20~40000Hz |
インピーダンス | 14-18Ω(スイッチにより可変) |
感度 | 115db |
ドライバー |
バランスドアーマチュア型(BA×3 3Way) |
音質傾向 |
フラット、ほっこり、ふんわり、バチバチ、ウォーム、透明感がある、キラキラ、光沢感がある、ポロポロ、潤いがある、ギラギラ |
SIMGOTのEKシリーズは以前レビューしたEM2の属するEMシリーズに比べると、最近のIEM的なシェルデザインをより忠実に取り入れています。そのため、EM2よりはより安定した装着感が感じられ、遮音性も高まっているように思われます。
テスト環境
今回のテストはHiby R6 Pro、ONKYO GRANBEATで行っています。ゲイン設定は低設定です。
【2】外観・インターフェース・付属品「2pinリケーブル可能」
付属品はイヤーピースの替え、キャリイングケース。リケーブル時のコネクタは2pinになります。
【3】音質「カリッパリッとした輪郭、細やかな繊細さをしっかり出しながら、一方でマイルドな聴き心地も実現している、水晶のような透明感のある音色」
この機種はそれぞれのイヤホンヘッドにトグルスイッチが2つずつ付いており、それによって音質変更が可能になっています。今回はスイッチ1をOFFにし、2をONにしたバランス音質でレビューしています。
音質的には水晶のような穏やかな透明感のある音色が特徴です。シンバルや弦楽、ギターにかなり刻みの良い金属光沢の乗った粒立ち感が出て手がかりを出してくれます。そのためギラギラした音やチャリチャリした音はかなり明瞭に感じられます。ピアノにはガラス質というよりはアクリル質というような少し深みのある光沢が乗ります。弦楽音はビヨーンとしたエッジを結構鮮やかに強調しながらも、音は深みのある感じで豊かに広がっていきます。
空間的にはほっこりした温かみがありながらも、中高域の光沢感が明るく音場を照らしている感覚があるので、音に明瞭感があります。中域での奥行き感の表現は良好で、音楽に吸い込まれるような誘引力がそこそこ感じられます。音の連なりを意識して聴いていると、自然に奥に引き込まれるくらいのレイヤー構造が実現されており、立体感に不足する感じもないでしょう。ボーカルは一般的に前に出てきており、とくに女声ボーカルへのフォーカス感は優れています。ボーカルには自然な暖かみと透明感があり、少し若々しい印象に聞こえます。
低域は一般的に量感は抑えめに感じるはずです。スイッチ1をONにし、スイッチ2をOFFにした低域重視のモードでも、量感的にはそれほど多いようには感じないと思われます。低域の質感は、ドライで見通しの良い感じで、やや明るめの印象を受けると思います。パンチも利いてアタックが感じられ、ベースやキックの浮き上がりも良くスピードコントロールは良好ですが、重みや深さはそれほど感じないと思います。しかし、深いところまで透明に聞こえるような解像度感のあるモニター的な低域になっているので、深さはレイヤーで丁寧に分離されて表現されるように感じるはずです。
総合すると、奥行きと深さのある音場に、少し温和な透明感で音がつぶらに瞬いて聞こえるような煌めき感があり、しかしその音色はマイルドなコクがあって深みを持って聞こえてくるような耳当たりの良い音質になります。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
鮮やか。全体的に色づきは良く、華やかに聞こえる。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
普通。シンバルが細かく、出音にやや派手な光沢感があり、少しギラつくが、音の広がりが良く、温和でマイルドな印象を受ける。 |
明るさ (明るい/暗い) |
やや明るい。中高域でやや明るい光沢感があるので、明るい印象を受ける。 |
派手さ (派手/地味) |
やや派手。中高域はやや緻密で光沢も強く、派手に聞こえる。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
やや柔らかい。中高域でやや硬質だが、リズム音はソフトタッチで、全体の印象は温和で柔らかく聞こえる。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや丸みがある。シャープネスはそれほど強調されず、基本的には温和。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや穏やか。中高域で派手だが、音の広がりがよく、奥行き感もあって、音がよく整理される印象があるので、騒々しく聴きづらい感じはない。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。楽器のアタック感は結構強く出る。ドラムもパンチが利いている。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
やや豊か。全体的に少し音が広がりよく、情報量も多い印象。 |
太さ (太い/細い) |
普通。音は全体的に中庸なバランスを維持している感じで、太すぎもせず細すぎもしない一定量の広がりを持っている。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
やや滑らか。中高域で少し手がかりを多く出すところがあるが、質感は全体的に滑らかである。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
やや細かい。低域も高域も分離感を重視している出音で輪郭が良く、粒立ちはやや緻密に聞こえる。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
普通。透明感は少し高めで奥行き感もあるが、少し暖色の空気感もつねに感じられる。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや潤いのある。音に深みがあるので、しっとりした感じは出やすい。 |
重さ (重い/軽い) |
普通。低域が深みとわずかの重みを感じさせるが、浮き上がりも良く、わずかに重心が低くなりやすい気もするが、ほぼ中庸なバランスに思える。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや澄んでいる | やや澄んでいる |
明るいか (明るい/暗い) |
やや明るい | やや明るい |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
やや伸びやか | やや伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
ややしっとりしている | ややしっとりしている |
太いか (太い/細い) |
普通 | 普通 |
濃いか (濃い/薄い) |
やや濃い | やや濃い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
普通 | 普通 |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
普通 |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
やや抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや深掘り感がある |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
やや広い |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
奥まる |
美点
- 暖かみに満ちたマイルドな聴き心地
- 中高域でディテールを丁寧に出す
- 甘味のあるボーカル表現
- アタック感はあるが、優しく穏やかに抜ける出音
- 透明感がある
- 潤い感がある
欠点
- 低域はモニター的でパワフルさにはやや劣る
- シャープネスは若干抑えめ
- 清潔感には若干欠ける
[高音]:高域ではシンバルの粒立ちなどに若干のシャープネスの強調を感じるが、それでも空気感は多くなく、基本的にはやや温かめでチンチンしたところが濃く、上で少しシャンシャンと少し清潔になるといった印象を受ける。さっぱりと風通しのよい感じもあるが、一方でやや派手さもあり、コクもある。少し深い色合いではあるが、光沢も少し強めに出すところがあり、ピアノはポロポロした音がやや輝き強めに、弦楽はビヨンとしたエッジをやや強調しながら聞こえる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域はやや清潔になっているが、基本的にはほどよく暖かい、少し豊かな低域に向かって、なだらかな広がりを感じさせてくれる。この音域では楽器音がほどよい濃厚感を出して、中高域の透明感に深みを加えて音に実体感を持たせているとともに、奥行きも感じさせて全体の音響に立体感も出すようになっている。ボーカルには充分なボディがあり、ふっくらした体温と弾力がありながら、上にのびると少し透けていくような生々しさがある。一般にSIMGOT製品はボーカル表現と中高域の艶やかさで高い評価を受けているが、このEK3もかなり甘美な声色を聴かせてくれ、楽器音も少し艶美である。
[低音]:100hz~40hzまで少し筋のあるビーッとジーッの間くらいの振動音。30hzで沈み、20hzでほぼ無音だが、ややビリビリしている。低域は透明で深いところまで比較的素直に落ち込む感じがあり、ベースとキックがかなり明瞭。低域弦楽は少し厚みを抑えて透明重視で深掘りを意識しているように聞こえる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:全体的なバランスはどこかの帯域が変に盛り上がる感じがなく、フラットに近い印象を受ける。強いて言えば、中高域が少し前傾している。音場には奥行き感がしっかりと感じられ、左右の広がりもよく、深さも本当に深いところまでは到達しないものの、深みは素直に出やすい。高さも基本的に天井感はない(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:タムやスネアは表面で少しパリパリ感を出しつつ、粘りも強く、バッツリした革張り感も出る。アタック感は良好に出る。中域から中低域にかけてのボディは少し清潔で、膨らむ感じは少しあるが、タイトな輪郭感も維持されている。キックは少しまとまりよくドシンと出る。全体を見るとバチンバチンかバッツンバッツンといった感じ。シンバルはチリチリしたあたりをメインに出すが、シャンシャンとした空気感も少しあり、高さが一定程度表現される。全体的な印象は少しタイトな感じが強いかも知れない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルは少し明るめで濃さはそこそこよい。わずかに中性的に感じられるかも知れない。ボディはそれなりにしっかりしている。女声ボーカルは少し甘味を出しつつ、上にものびやかで媚びた感じを出しつつ、伸び上がる。突き抜けるというよりはのびやかに浮揚していく感じに聞こえる。
【4】官能性「優しい聴き心地でありながらパワフルさも秘めている」
沼倉愛美「Climber's High!」
【GRANBEATで鑑賞】全体的にはソフトタッチな出音というような説明をして来ましたが、アタック感は意外と強く、パンチを利かせるところもあって、実際のところ曲によってはパワフルさは結構感じられます。たとえばこの曲を聴くと、ドラムにかなりの粘りがあってバチバチしており、かなり手応えがあってパワフルな火力を感じます。キックも重く、ズドンははっきり出ます。またギターも結構上でギラつく感じがあって攻撃的に聞こえます。ボーカルもコシが少し強く、サビでは突き抜けると言うほど吹っ切れてはいきませんが、のびやかで高く浮揚する感じがあります。少なくともボーカルは充分に高さを出してくれ、一方で中域でほっこり吐息を吐く感じもあるので甘美な印象を受けます。
音場はライブ感があるといえるほど濃厚ではなく、基本的には透明ではありますが、それでもほんのりと熱気の乗った空気感が感じられます。
澤野弘之「MAIN THEME<ver.0>」
【Hiby R6 Proで鑑賞】管弦の楽器音に生々しさを感じるほどには実体感があり、艶やかな弦楽音や金管音には上辺だけでなく深みがあって、音の沈み込む空間が感じられます。中高域の光沢感は強く、ホログラマティックな光彩感を出しますが、その音色は軟質な水晶質の柔らかみがあり、温もり感があって豊かです。
奥行き感もかなり丁寧に再現され、サビではしっかり奥から音が伸びてきてくれるので、吸い込まれるような没入感があります。さらに低域弦楽は下辺を丁寧にえぐって聴かせるような透明感のある深掘りを出す音で、音場の深さを明瞭に表現してくれます。全体像を捉えようとすると、縦軸の充分にあるワイドレンジ感があり、背景の奥行きもある、かなり立体的な音響が認識できます。
機神大戦ギガンティック・フォーミュラ オリジナルサウンドトラック
中島美嘉「FIND THE WAY」
【Hiby R6 Proで鑑賞】水晶質の温もりのある、深みのある透明感はこの曲みたいなメロウな曲でも十分に魅力的に聴かせてくれます。ボーカルや楽器音はたっぷりとした懐と高さ、奥行きのある空間に余裕を持って広がるので、全体的に余韻が豊かに感じられます。音の粒はポロポロと優しい光沢を持ち、じんわりしたみずみずしさに満ちながら、低域が深いので、やや浮游して奥から流れてくるように聞こえてきます。弦楽とボーカルがゆったりとボレロを踊りながら聞こえてくるような、優雅な充実感があります。
【5】総評「暖かな透明感。懐の深いたっぷりとした曲から、アタック感のある曲も比較的万能にこなせます」
スピード感のある曲から豊かなたっぷりしたメロウな曲まで比較的万能にこなせるところがあります。透明感やや強めで全体を見るとモニター的ではありますが、一方でどの音域でも一定の広がりが感じられ、抱擁感があるので、聴き心地は高度に安定しています。奥行きも良好で没入感もあるので、音楽に充分浸って聴くことが出来ます。
- モニター的な分離感がありながら、抱擁感もある万能サウンド
- スピード感のある曲も、ゆったりした曲も比較的良好に対応できる
- 奥行き感もあって、音が良く整理されて聞こえる
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。