- 【1】装着感/遮音性/通信品質「完全ワイヤレスでは珍しいインイヤー型。通信品質はそこそこ安定している」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「充電ケーブルはType-Cです」
- 【3】音質「低域はかなり厚みと重みを出し、温かみもあるが、インイヤー型のせいか篭もる感じは強くない。中域が濃くて実体感のある音楽が魅力。高域のディテールは一般に抑制的」
- 【4】官能性「重力が感じられる、生々しいライブ感のある音が好きならおすすめ」
- 【5】総評「ライブ感のある音を求めているなら、検討に値します」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「完全ワイヤレスでは珍しいインイヤー型。通信品質はそこそこ安定している」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
6h/24h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | aptX/AAC/SBC |
防水性能 |
IPX5 |
音質傾向 |
ドラムが楽しい、温もり感がある、中域が濃厚、ウォーム、調和的、音場に一体感がある、ボーカルフォーカスも良い、ライブ感がある、厚みがある、空気感がある、豊か、高域は暗い、マイルド、ボンボン |
ハウジングデザインはIEMのようにカッコイイデザインになっていますが、カナル型ではなく、インイヤー型です。遮音性はカナル型に比べると低めです。
対応コーデックはaptX/AAC/SBC。ONKYO GRANBEATとHiby R6 Proで交互に繋ぎながら接続品質をみました。テストしたのは新宿駅周辺です。駅構内の改札付近などではほとんど途切れはありませんでしたが、新宿くらいの繁華街を歩いているとかなり途切れます。バスターミナル付近でもかなり途切れます。
QCC3020を搭載している機種で、私の環境の場合接続当初などに通信の乱れが見られます。時間が経つと通信品質が安定してきます。
この機種はQCC3020搭載の機種としては通信品質は普通かやや劣るくらいに思います。価格帯全体では標準くらいでしょう。
テスト環境
今回のテストはHiby R6 ProとONKYO GRANBEAT、Cayin B6II/A01で行っています。
【2】外観・インターフェース・付属品「充電ケーブルはType-Cです」
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル(Type-C)、専用充電ケース、説明書です。
Sabbat X12 UltraとMIFO O5。今日はこの2つをロケテストしてきます。あとはKXXSとTri-i3の聞き比べをしてくる予定。O5はHACRAY W1との比較もしたいですな🤔 pic.twitter.com/LpUJJLoJcd
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) November 13, 2019
【3】音質「低域はかなり厚みと重みを出し、温かみもあるが、インイヤー型のせいか篭もる感じは強くない。中域が濃くて実体感のある音楽が魅力。高域のディテールは一般に抑制的」
音質はまず、低域にかなり量感が持たせられており、ドラムサウンドはかなり分厚く、重く、ブーム感もある音になります。バランス的には支配力が強いですが、インイヤー型のせいか低域音が中域以上に滲み出る感じは強くなく、低域の量感の割には中域は清潔です。しかし、中域は清潔系とは言いづらく、人によっては低域の支配力の強さから篭もっている印象を受けるかも知れません。一方、ロックやJAZZ、クラシックにライブ感を求める人には楽器音の胴鳴りや部屋鳴りが適度に感じられて、音に生々しさを感じると思われます。
さて、その低域が支える中域に意識を移すと、こちらは高域方向がインイヤー型独特の空間に溶け込む感じがあるために、フォーカスが当てられて濃いコクのある音が聞こえてくるのが分かります。低域との繋がりもよいので音に深みがあり、実体感が感じられ、音像の底辺が安定感のある形で描き出されていることが分かります。発色は強めで音は濃いですが、輪郭は適度に溶け込むように表現されるので、個々の音が全体像の中に調和的に収まる形になっています。ソフトタッチなところはありますが、音がぼやける感じはあまりなく、艶やかな中高域が低域に沈んでいくリアルな空間表現があり、音が空間に浮き上がるようなデジタル的な音響ではありません。音に孤立感のないナチュラルな表現を愛する人にはなかなか魅力的なイヤホンに映るでしょう。たとえばピアノは中高域で艶やかな透明感をキンキンさせずに出した後、その余韻が重力に従って空間に溶け込みながら、下に沈み込んでいくリアリティが感じられます。
一方で高域音はディテールの強調は抑えめになります。EDMやテクノなどのデジタルな音楽を楽しむ場合、高域はおとなしすぎると感じるかも知れません。一方で光沢はほどよく、シャープネスはかなり抑えて透明度を重視した音響になっているので、中域の充実感を好むリスナーには温和で聴き心地の良い高域音で、自然な奥行き感を感じることが出来ると思います。この高域は中域に自然なコクと温度感を閉じ込めるように閉じて聞こえるので、どちらかといえばアコースティック系のサウンド表現と相性が良いでしょう。
総合すると、まず低域の量感が多めなので、低域が強い感じが苦手な人には向かない可能性があります。また音の輪郭は緩く、空間に濃厚感が出るので、清潔な音を好む人にもやや濃すぎる音に聞こえるでしょう。高域のディテール感も抑えめで、高域音に高さや爽やかさ、シャープネスを求める人にも向きません。どちらかといえばJAZZやクラシック音楽をホールで聴くような自然な立体感を求める人向きで、EDMやロックも楽しいですが、どちらかといえばライブ感重視になります。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
鮮やか。中域は濃厚で、低域も厚みがあり、活き活きしている。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
鈍い。一般的に音に鋭い感じはない。 |
明るさ (明るい/暗い) |
普通。中域が華やかで、自然光くらいの明るさがある。 |
派手さ (派手/地味) |
やや派手。高域で輝きを強調されないが、中域に濃厚感があり、音に自然な華やかさがあり、色味も少し濃い。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
柔らかい。基本的にソフトタッチな出音である。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
丸みがある。音は丸く、空間に溶け込むように聞こえ、調和的。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
普通。音像は丸みがあり、自然な重力感もあるので安定感が強いが、中域は発色が濃く、やや派手で音の密度は高く思えるかも知れない。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。音に充実感があり、密度感は充分。アタックで押し込んでくる感じではないが、腰を据えて音をじりじり押し込むようなパワフルさのある音響。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
豊か。中域の情報量と音の広がりがよく、低域も充分に豊満でありながら、インイヤー型独特の抜けの良さがあるせいか、ボワつきは少なめ。 |
太さ (太い/細い) |
やや太い。全体的に音が太め。とくに低域は豊満に感じる。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
滑らか。全体的に音の質感は滑らかに感じる。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
やや粗い。輪郭は溶け込みながら聞こえるので、粒が細かい感じではない。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
濁っている。空気感が強め。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
潤いのある。潤い感は強め。 |
重さ (重い/軽い) |
重い。低域の重みは強めなので、重心は低く感じるだろう。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや濁っている | やや濁っている |
明るいか (明るい/暗い) |
普通 | 普通 |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
普通 | やや天井感がある |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
しっとりしている | しっとりしている |
太いか (太い/細い) |
やや太い | やや太い |
濃いか (濃い/薄い) |
濃い | 濃い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
やや目立たない | やや目立たない |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ぎっしり |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
天井感がある |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
深掘り感がある |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
広い |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
前屈み |
美点
- 全体的に温度感が高い
- 低域に重量感があり、温度感も高めでライブ感がある
- ギターサウンドがきれい
- ドラムサウンドが楽しい
- 中域にコクと甘味があり、発色も濃い
- 高域は空間に溶け込むように閉じており、マイルド
- 潤い感がある
欠点
- クリア感に欠ける
- 篭もっていると感じられる可能性がある
- 低域支配力が強い
- 女声ボーカルは少し暗い
[高音]:高域はインイヤー型独特の空間に溶け込むような抜け方をしており、丁寧に閉じられているため、中域によりフォーカスされやすくなっている。中域に充分な濃さとコクが感じられる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、菅野よう子「Power Of the Light」でテスト)
[中音]:中域はやや太く、ボーカルは中域の真ん中で充分に近く、甘味もある。中域はやや低域の空気感が滲み出しており、空間は清潔というよりは濃厚で、ギターには黒みのある熱気が乗り、ドラムサウンドも胴鳴りがしっかりしているのでボディに実体感があり、低域まで音がつながっている立体感がある。人によっては楽器音がややぼんやりとして感じられる可能性はあるが、音は充分に濃い。
[低音]:100hz~40hzまでややビーッとボーッの間くらいの厚みのある振動。30hzで沈み、20hz以下でほぼ無音。低域はベースやフロアタム、バスドラキックが重く広がる感じがあり、ブンブンしたブーム感は感じやすいはず。ベース音は暖かみが強い。ドラムの胴鳴りも明確で、音が沈むリアリティを求める人には好ましいだろう音。低域弦楽はボヨンと弾力と広がりのある音を鳴らし、音場にかなりの深みと重み、沈み込みをもたらす。全体の中では低域のリアリティが重視されている(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:重みと空気感のある低域が全体の音場を下支えし、中域は濃厚、高域は閉じている感じの、ホールのような音響を実現している(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムは胴鳴り感がやや強めで、タムやスネアの上辺は粘って下に沈んでいくような革張り感が出て、バツバツしている。下方向に重量感が感じられる生々しい音で、バスドラは充分にズドンズドンしてくれる。重めのバズンバズン。ハイハットはチンチンしたあたりを少し角を取ってマイルドに聴かせる、耳に優しい音(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルは男女ともにコクがあって濃い。男声ボーカルは深みもあって、渋みも充分に感じられる。中域でも力強くフルボディでしっかり聞こえてきて、ディテール感が良い。女声ボーカルは高域方向で閉じていく感じがあるので、媚びはやや抑えられ、若干暗く聞こえるかも知れないが、中域でドシッと重みを出して聞こえくるので、まっすぐこちらにメッセージを伝えてくるような力強さがある。コブシの利きは良い。子音はあまり強調されないが、ボーカルは近いので一般に歌詞は明瞭である。
【4】官能性「重力が感じられる、生々しいライブ感のある音が好きならおすすめ」
KANA-BOON「まっさら」(vs SoundPEATS Truengine SE)
【GRANBEATで鑑賞】この曲みたいなロックをドラムとギターの熱気中心にライブ感重視でたのしむならおすすめです。ギターはしっかり胴鳴りして音に黒みを出しつつ、エッジもジュワジュワとみずみずしい感じで実体感と生気感があり、バスドラムも温かみのあるベースとともに熱気の篭もった床面を作ります。ボーカルはやや熱に浮かされた感じがあり、コクも感じさせてくれるので、ボーカルがやや薄味気味のこの曲でも充分に埋没しません。
さて、同じ価格帯の人気機種、SoundPEATS Truengine SEと聞き比べてみます。まず高域が閉じた感じがあり、低域にライブ感もあるのも似ていますが、明らかにSabbat X12 Ultraのほうが低域に量感があるので、音の実体感で勝る感じがあり、ドラムやギターの音の沈み込みや重力のリアリティは高く感じられます。一方で、SoundPEATS Truengine SEのほうが輪郭がしっかりしている感じがあり、音はより緻密に丁寧に聴かせてくれる感覚があります。またこの曲のやや薄味なボーカルはSabbat X12 Ultraでは埋没気味に聞こえましたが、Truengine SEではディテールがより明瞭に聞こえます。
音の質感としてはとくにギターサウンドを聴けば、X12 Ultraにはみずみずしさがあり、ボーカルも若々しい感じが強いですが、Truengine SEは全体的にドライで潤い感に欠ける印象は受けるかも知れません。
で、この曲に関する限り、私の好みなのはSabbat X12 Ultraのほうです。よりライブ感が高く聞こえます。また私は一般的に潤い感のある音を好みます。
藍井エイル「月を追う真夜中」(vs AUKEY EP-T10)
【Hiby R6 Proで鑑賞】まずこの曲の躍動的なドラムサウンドに量感もたっぷりによくフォーカスされるので、熱気のあるパワフルなドラムサウンドを楽しみたいなら有力候補です。低域支配力は強く、ボーカル近くまでその熱気がせりあがってきている感じはあるので、人によってはやや圧迫感を感じる可能性はありますが、そのボーカルにも良くフォーカスされ、声色も充分にみずみずしくて若々しく、コクもあるので、埋没感はありません。ギターや弦楽は潤い感のある音で根立ち良く上に向かって力強く、高さを強調しすぎないので、その風味が飛んでしまう感じもなく、自然に空間に充満する雰囲気があります。音の密度感は高めでやや聞き疲れしやすいところはありますが、ライブ感のある音はなかなか説得的です。
さて、同じようにロックな音を奏でるAUKEY EP-T10と聞き比べてみます。まず音響バランス的にはEP-T10はドラムよりはギターとボーカルによりフォーカスを当てており、同じように躍動的で熱気のあるドラムを聴かせてくれるにしても、そのパワーはやや抑えめで、どちらかといえばギターの伸びのほうが明瞭です。高域の閉じた感じは似ていますが、中高域がより前面に出ているために、ハイハットはより刻みを強調して前に出てきますし、ボーカルも少し媚びて伸びていきます。Truengine SEの時とは異なり、EP-T10はみずみずしさもそれなりに出してくれるので、潤い感に不足を感じることはないでしょう。全体的にX12 Ultraよりはもう少し明るい感じになっています。
ドラムの重量感は抑えられるので、より中域以上のシンバルとギターにフォーカスして聴きたい場合、EP-T10は比較的魅力的な選択肢になり得ます。ドラムを量感強めにしっかり聴きたいなら、X12 Ultraのほうが満足度が高いでしょう。
月を追う真夜中 (期間生産限定盤) (DVD付) (特典なし)
ALL THAT JAZZ「となりのトトロ」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】JAZZをちょっと濃厚感を感じながら聴きたいならおすすめできます。まず低域ですが弦楽がしっかり重みを出して沈み込んでくれるので、床面がしっかりブンブン熱気を感じさせてくれ、充実感があります。ピアノ音は明るさを出しながらキンキンせず、音に深みがあり、シンバルも温かみがあって調和的です。何よりボーカルが甘くコクを出して聞こえてきます。低域弦楽の活きの良さが音楽空間全体を暖め、躍動的にし、楽しませてくれます。
sora tob sakana「ささやかな祝祭」(vs Klipsch T5)
【Cayin N6II/A01で鑑賞】低域の床面に厚みとリアルな胴鳴り表現があって充実感に満ちており、こういう曲もスカスカせずに楽しめます。ぶっちゃけこの曲は金管音と弦楽音、ドラム音に幅が出ないと個人的には楽しめないので、このイヤホンの音がどストライクに近いです。
たとえば同じように温かみのある音で、よりバランスの良い感じのKlipsch T5だと雰囲気は悪くない感じがありますが、いまいち低域に厚みが足りず、ちょっと中域が間延びした感じで聞こえてきて、悪くはないけど、足場にちょっと物足りない感じがあります。ムード感自体は悪くないですし、中高域音のディテールはT5はきれいに聴かせてくれますが、X12 Ultraの表現に比べてライブ感に乏しく、臨場感に欠け、ライブ中継かなんかで楽しんでいるくらいの距離感を感じます。
【5】総評「ライブ感のある音を求めているなら、検討に値します」
インイヤー型なので遮音性は高くありませんが、デザインや使い勝手は良く、所有欲を満たしてくれるところがあります。カラーリングも豊富です。音質は低域強めですが、半開放で音の圧力は適度に抜けて輪郭も優しく自然に聞こえるので、音の聞こえ方に生々しい感じがあります。ライブ感重視の人には魅力的に映るのではないでしょうか。スペック的にも充分です。
まとめ
- 低域が深く重く力強い
- 濃厚感のあるサウンド
- インイヤー型
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。