「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる機種はSoundPEATS Truengine 3SEです。SoundPEATSはまだまだ日本で知名度が高いとは言えないかも知れませんが、ワイヤレスイヤホン市場では中華ブランドの中で最も成功したブランドの一つと言え、その高品質製品で多くのファンを獲得しています。低価格で変な中華ブランドを買うよりはSoundPEATS製品を買った方がサポートも品質も満足できるはずです。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:6.5h/30h
- 防水性能:おそらく最低限かほとんどありません
- 対応コーデック:aptX/AAC/SBC
- 技適番号:018-190268
パッケージ
イヤホンのパッケージ全体はこの価格帯では標準以上でわりと豪華です。付属品はイヤーピース(コンプライ含む)、充電用ケーブル(Type-C)、説明書などです。
装着サンプル
少し独特のノズルの形をしているので、装着感は人によって少し緩い感じもあるかも知れませんが、一般的には良好だと思われます。
接続品質
aptXでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では優秀です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では接続は良好です。距離耐性も優秀で、5mくらい離れてもシームレスに繋がります。遮蔽物があっても乱れません。
ホワイトノイズは少しありますが、おそらく多くの人にとって、それほど気にならないと思います。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 S装着時]左右別
- [AET07 S装着時]左右平均
- [AET07 S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時]左右別
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時 ]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Sサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
サウンドシグネチャーを全体的に確認すると、わりとフラットに近いウォームで穏やかなU字型サウンドといった形をしており、低域にやや多めに比重が置かれる形になっています。安定感がありますが、高域方向はわりとダイナミックに音が立ち上がるようになっていて、決して退屈な音ではありません。
低域は重みと深みがあり、EDMはデジタルドラムが、ロックではバスドラムキックが腹に応えるサウンドを活き活きと聴かせてくれます。地熱があってライブ感がありますが、丁寧に調整されているので、見通し感も悪くなく、個人的にはかなり良質に思えます。ベースとドラムのぶつかりは適度に避けられていて熱気のある割にクリアな印象を受け、音の厚みは自然なレベルを維持しており、ウッドベース系のコントラバスの鳴りも豊かで、中域に対する支えも良いです。
中域は低域の熱気が滲みすぎないよう調整されており、清潔感の点では少し熱気が強めですが、曇る感じはなく、適度な暖かみの中で聞こえます。中域は凹んでいることは事実なので、少しドライに聞こえますが、引き締まっていて黒みと静寂感があります。ボーカルは少し暗い位置におり、落ち着いていて理性的ですが、息遣いに甘い吐息感があり、少しふっくらとして聞こえます。少し地味ですが、ニュアンスが適度にあり、温度感のある甘いボーカルが好きならおすすめです。
中高域は色味を抑えながらも艶やかさが少し強調されます。高域方向は少し静寂感を意識したような落ち着いた感じですが、ハイハットのギラつきにメタリック感があり、粒立ちがわりとくっきり見える味付けになっています。静かな中に少し明るさを抑えてキラキラッとピアノの光沢やギターエッジやシンバルが聞こえるシックな空間は個人的にとても好みです。超高域は割と高い位置にピークがあるので、風通しも良いです。
さて、前世代のTruengine SEが好みであったこともあるので、私のレビューが好意的な方向に傾きすぎていないか心配ですが、ベリリウムコーティングされたドライバーが貢献し、この価格帯では優秀な解像度を実現していることは事実です。適度な静寂感と引き締まったドライな落ち着きがありながらも、レンジ感が良く確かなダイナミズムのある空間はロックをはじめ、EDM、クラシック、JAZZでも好ましく思えるはずで、大人びたサウンドが好きな場合、Truengine 3SEは高いコストパフォーマンスを発揮し、きっと満足させてくれるでしょう。
SoundPEATS TrueShift2との比較
わりと価格が近いSoundPEATS TrueShift2と比較します。以下のグラフはAET07をイヤーピースとして使用して測定し、自由音場補正を加え、1khz付近で交差するように調整された両機種の周波数特性比較グラフです。下のグラフは1khz以上を拡大したものです。
先に全体像から述べると、一般に充実感が高く、贅沢で高級な雰囲気がするのはTrueshift2の音だと思います。Truengine 3SEの低域が重み重視なのに対し、TrueShiftはより厚みがある低域構造をしているために、中域の充実感が高く感じられます。高域はTruengine 3SEがよりシックで静寂な雰囲気があるのに対し、TrueShift2はより優雅で華やかなサウンドを持っています。
静寂感の高い静かな黒みのある、大人びた音楽が好きならTruengie 3SEを、もう少し華やかな雰囲気でゆったりした音楽を聴きたいならTrueShift2を選ぶと良いでしょう。
音源比較
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。aptXで接続し、標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
重厚で引き締まった大人びたかっこいいサウンドデザインが施されていて、わりと聞き心地も良く聞き疲れもしにくいです。解像度も高く、性能的にもこの価格帯の完全ワイヤレスイヤホンの中では優秀なレベルを維持しており、1万円以下で完全ワイヤレスイヤホンを選ぶなら真っ先に選択肢に入る機種の1つであることは間違いありません。
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