Tin HiFi T4 CNT Dynamic Driver InEar Earphones IEM Monitor MMCX Connector
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「軽量で着け心地は良い」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「mmcxリケーブル可能」
- 【3】音質「中高域でツヤツヤした音を少しアタックを出して聴かせる」
- 【4】官能性「艷やかでデジタル的な見通しの良いツルツルサウンド」
- 【5】総評「艶やかな音が好きならおすすめです」
- 【関連記事】
【1】装着感/遮音性/通信品質「軽量で着け心地は良い」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
B082NHF14W | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 10~40000Hz |
インピーダンス | 32Ω |
感度 | 102dB |
ドライバー |
10mm |
音質傾向 |
艶やか、ツルツル、デジタル的、滑らか、音場が広い、立体感がある |
シュア掛け可能で装着感は悪くありません。独特のデザインですが、軽量で耳に比較的良く収まります。遮音性もそこそこ良いです。
テスト環境
今回のテストはHiby R6 Pro、Cayin N6II/E01、ONKYO GRANBEATで行っています。ゲイン設定は基本的に「低」設定です。
【2】外観・インターフェース・付属品「mmcxリケーブル可能」
付属品はイヤーピースの替え(シリコン2種類+フォーム)とキャリングポーチです。
【3】音質「中高域でツヤツヤした音を少しアタックを出して聴かせる」
今回は標準イヤピの赤軸クリアのほうのLサイズを使ってレビューします。
さて、音を聴いた第一印象は、中高域の艶やかでツヤツヤした音と、少しシャリシャリしくらいの手がかりの多く出るシンバルあたりが特徴的です。アタックは少し強めではありますが、スネアは音がビシバシになるほど過酷には押し出すぎないバランスで、シンバルも金属光沢があまり輝かない適度な透明感があり、中高域のすぐ上ではマイルドになるような調整になっています。そのため多くの人にとって、比較的音量を上げても音がギスギスする感じは出にくいと思われます。低域は中域から少し離されて下の方で聞こえやすく、中域の透明感が意識されていて、ワイドレンジ感があります。立体感も意識されていて、奥行きと幅は少し広く、少し前方定位感があり、音もどちらかというと頭外定位的です。この味付けが大抵の音楽で優れた見晴らしの良さをもたらしてくれており、現代的な立体感のある味付けの音楽では適度な没入感をもたらしてくれます。
次に各音域を確認していきますと、まず低域ですが、モニター的なクリア系のサウンドになっています。バスドラキックは明瞭にドスドスと浮き上がって聞こえ、足踏みをしっかり追えます。ベースは深いところで黒く、少し暖かみがある形でグングンとしたアタック感も出しながらラインを丁寧に聴かせます。ドラムの胴の膨らみは抑えめで、鼓面の響きが下にまっすぐ降りるような、締まった感じで聞こえます。低域弦楽も透明度が高く、ドーンとした下に響く重みのある音を聴かせてくれます。豊満さはないので豊かではなく、躍動していますが、ビヨンビヨンした感じはあまり目立たせず、黒い音です。基本的に下でビターなコクのある深みのある渋い音に聞こえるでしょう。この低域は基本的に歪みを抑えたモニター的で、この価格帯ではなかなか味わえないディテール感のあるものとなっており、決して低域重視のモデルではありませんが、この価格でここまでのクリアな低域を実現しているイヤホンは多くないでしょう。レイヤー系の透明な低域が好きなら選択肢に入れてまず損はありません。
中域は下が清潔にされており、低域の熱気はほとんど滲んでおらず、透明でクリアです。音は基本的に音像の輪郭を強調するように、中域の奥から浮かび上がってくる印象で、中高域のツヤツヤ感とのびやかなボーカル、アタック感のあるスネア、少し透明ですがはっきり聞こえるシンバル、鮮やかなギターエッジをきれいに聴かせます。シンバルはわずかに目立ちやすく、またボーカルの子音は尖りやすいところはあるのでシャリシャリ感は若干出ます。ボーカルの下の空間は清潔で周囲はそれなりに整理されており、基本的に前面に出てくるバランスになっているので、ボーカルフォーカスは良いと思われます。ボーカルを聞こえにくくする要素があるとすれば低域よりも中高域音のほうで、シンバルや派手めのピアノ、ギターエッジなどがわずかにかかりやすいかもしれません。人によっては少しガチャガチャすると思う可能性はありますが、よく立体感を出して整理されているので、普通はうるさい感じはないはずです。
高域は中高域の艶やかさを意識して、やや早めに減衰しているようです。おそらくサ行の刺さりも意識したと思われます。そのためハイハットの穂先は高さをあまり強調せず、抜けている感じはそれほどでもないので、少し滞留します。弦楽や木管を聴いてみても、一番艶やかな部分が豊かですが、若干伸びきらず、派手なアタックの割に上でおとなしい印象を受けるかも知れません。一方でその調整によって中高域の音像が滞留してよく聞こえる感じがあり、くっきり感は確かなものになっています。
総合すると透明感のある空間に適度なアタックで中高域音を色づかせ、しかもくっきりとよく聴かせる工夫が凝らされた機種で、つややかな音が好きなら文句なくオススメできます。金管が華やいで聞こえ、弦楽も筋立ちを強調しつつも、透明感を忘れない、そういう華麗で楽しい音が好きなら考慮に値します。
たとえば下のような曲を明るく適度なノリに浸りながら、透明度重視で少し吸い込まれるくらいの没入感で浸って聴きたい場合にとても魅力的に思える気がします。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
鮮やか。中高域で丁寧にくっきり音像を聴かせる解像感があり、音は艶やかに聞こえる。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
やや鋭い。ボーカルのツ音はわずかに尖りやすく、曲によってはシンバルも少しシャープかもしれない。 |
明るさ (明るい/暗い) |
明るい。基本的に空間は見通しよく、中高域が十分に艶やかなので明るい。 |
派手さ (派手/地味) |
やや派手。中高域がしっかり出るという意味で派手めではあるが、輝きはほどよく抑えめ。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
やや硬い。音は中高域で手がかりが多く、パリパリするところがある。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや尖る。ボーカルのツ音やシンバルが曲にもよるが少し尖る。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや騒々しい。透明感があり、中高域で音数が多い感じで曲によって少しガチャガチャする感じがある。基本的には音像が聞きやすい。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。中高域でアタックを出すので少し手応えがある。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
普通。中域が透明系で少しスカスカしやすい印象を受けるが、中高域で音数的な情報量は多い。 |
太さ (太い/細い) |
やや細い。どちらかというと緻密系で細い。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
やや滑らか。ツヤ立ち感があり、高域への抜けもマイルドでツルッとした感じがある。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
ややきめの細かい。粒立ちは細かめ。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
澄んだ。「風通しが良い」ではなく、「見通しが良い」系統の透明感がある。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや潤いのある。シンバルのあたりはどちらかというと乾いているようだが、ピアノ音やギター音にそれなりの潤い感が感じられる。 |
重さ (重い/軽い) |
やや軽い。基本的に浮揚感があり、軽やか。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
澄んでいる |
澄んでいる |
明るいか (明るい/暗い) |
明るい | 明るい |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
伸びやか |
伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
やや潤っている | やや潤っている |
太いか (太い/細い) |
やや細い | やや細い |
濃いか (濃い/薄い) |
やや薄い | やや薄い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
やや目立つ | やや目立つ |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ややスカスカ |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
やや抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや深堀り感がある |
主に中域の奥行き感 (前進的/後傾的/前傾的/後退的) |
前傾的 |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
やや広い |
定位感 (頭内的/頭外的) |
やや頭外的 |
分離感 (拡散的/密集的) |
やや拡散的 |
美点
- 空間が透明
- 中高域が艶やかで鮮やか
- アタック感がある
- 緻密
- ほどよく濃い音
- 全体的にディテール感が良い
- 低域の見通しが良い
欠点
- 音が少し細い
- チャリチャリしやすい
- 開放感は抑えめ
- 厚みが不足気味
- ツルツルパリパリしたデジタルな質感
[高音]:意外と音場の開放感は抑えめで、高域への抜けはマイルドになっている。そのため中高域の色づきがくっきりと聞こえるようになっている。少し輪郭線を強めに描く、パリパリした感じで音が浮かび上がって聞こえるだろう。中域も透明感があるので艶やかな感じが十分に映える。アタックは強めではあるので、このあたりの音像の押し出し感もあり、ボーカルはツ音は少し尖りやすい。チャリチャリ感がある(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は清潔で透明感がある。低域からは分離されているので、音は基本的にこの中域から浮かび上がってくる感じがある。ボーカルは明るくのびやかに聞こえ、楽器音も基本的に浮かれて華やぐように聞こえる。奥行きがあり、やや前方定位的で、左右も少し頭外的に聞こえる程度でこの中域付近は十分に広く聞こえる。
[低音]:100hz~40hzまでやや太いボーッという音。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域は見通し感が良く、中域からよく分離されている。深いところの見通しがよく、ベース音のライン、ドラムのキックがクリアに見え、しかもより深い床鳴りは抑えて地熱感が出過ぎないように調整されている。そのため黒みは感じやすいし、キックもドスドス明瞭に聞こえる。スピード感は遅れる感じはない。低域弦楽はドーンと重量感のある音で、重量の割にやや機敏で躍動感もある(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:透明感を意識したワイドレンジ系で立体感も適度にある。奥行きと横幅と深さは優れており、高さだけ少し近く聞こえる。いわゆるくっきり系の輪郭の良い解像感がある。質感的にデジタルな印象を感じるかもしれない(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:スネアの鼓面はややアタックが強く、輝きは強くないのでバツガタッとした手応えの音で聞こえる。鼓面を叩く音はやや透明にまっすぐ落ちる感じがあり、ボディはあまり見えない。バスドラキックは聞こえやすく、基本的にドラムもクリアな印象を受ける。バツンバツン。ハイハットはチリチリしたあたりからシャンシャンくらいまで聞こえるが、穂先は高くない。少し輝きを抑えて透明な感じはあるが、白味はあり、粒も細かめでふんわりした浮揚感のある音に聞こえる。しかし繰り返すが、高いところまで広がらないので、風通しはそれほどでもない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルは質感的に男女ともにツルッとしている。基本的に下の空間が清潔で、やや浮かび上がった位置で聞こえ、中高域方向に伸びやか。スムースに上に伸びる感じでやや人工的な印象を受けるかもしれない。曲によって子音が少し尖りやすいが、サ行は基本的に刺さらない。基本的に媚びた声色になる。
【4】官能性「艷やかでデジタル的な見通しの良いツルツルサウンド」
富田美憂「Present Moment」(vs KBEAR HI7)
【GRANBEATで鑑賞】このイヤホンでこの曲を聞くと、スムースにのびていく艶のある弦楽音とアタックの強めのスネアが気持ちよく聞こえてきます。弦楽は筋立ちを出しますが、ツヤ成分が多いので透明感があり、ピアノ音にも艶のある光沢があって潤いがあります。スネアは鼓面を明るく弾けさせすぎないので、ピアノや弦楽の艶のある音をかき乱すことが少なく、むしろこれらの楽器音をよくリズムで支えているようなサウンドになります。シンバルも適度な透明感で刻みを丁寧に聞かせており、聞こえにくい感じがありません。なによりボーカルはしっかりと前面に出てきてくれます。そのボーカルはツルツルした感じでシームレスに伸びる感じがありますが、サビの頂点では遠ざかってサ行の刺さりを抑えます。この曲は元々頭でっかちなところがあるので、このイヤホンの場合、低域ベースはやや抑制的に中域から離れてラインを静かに聴かせます。この曲の場合、もうちょっと上に抜けて清潔感を出してもよいかと個人的には思いますが、十分に艶やかで魅惑的な音を鳴らしてくれます。
同じように音像重視系の味付けを持つKBEAR HI7と聴き比べてみます。まずHI7は開放型のため、音の抜けはより高く、清潔感があり爽快です。ツヤ成分はT4よりは減っていて、またアタックはT4より強くなっています。輝きが増えて少しだけギャンギャンギシギシする感じが出やすくなっていて、ボーカルのツ音もより尖っていますが、抜けが良いおかげで尖っているのにあまり痛い感じがありません。弦楽はより高く筋立ちを見せるようになり、ややヒステリックです。ベース音の存在感はT4よりもうちょっと希薄かもしれません。すっきり感はT4より向上しており、音も元気にアタックする感じが増していますが、やや毛羽立つ感じが出ていて、人によってはうるさげかもしれません。
個人的にはこの曲の場合、T4のほうが聞きやすい感じがあります。HI7も悪くありませんが、ややアタックが過剰で高域で音が毛羽立って聞き苦しいように思います。しかし一方で爽やかな感じが増しており、高域のちょっとシャリつく感じを好む人にはT4より魅力的に思えるかもしれません。HI7のほうが音は元気です。
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(K)NoW_NAME「Knew Day」(vs SIMGOT EM2)
【Cayin N6II/E01(A)で鑑賞】比較的中高域で暴れる感じのある曲ですが、輪郭感よく解像感を出して聞かせてくれます。音がツルツルスムースな感じでやや手がかりが少ない気もしますが、のびやかでツヤも多く、聞き苦しい感じがありません。よく聴いてみるとやはり見た目より音が抜けてないかなという印象はありますが、メリハリよく、適度にアタックを出しつつ、流れるようにこの曲を聞かせてくれます。かなりガチャリやすいところもある曲ですが、聞き疲れ感は出にくいでしょう。
同じようにどちらかといえばスムースな表現のSIMGOT EM2と聴き比べてみます。すぐ気づくのはEM2のほうが低域がより出ており、中域にもより濃厚感があって、音に甘味が感じられることです。ボーカルはツルツルだったT4に比べるともう少しボディがあるので起伏が感じられるようになっており、甘い吐息が感じられます。空間の透明感は減っていますが、高域方向の印象はほとんど似ており、ツヤ感があります。またギターやハイハットにドライなエッジが乗る感じは増えたので、手がかりは増え、ややノイジーな印象を受けるかもしれません。音を聞き分けやすいのはT4のほうですが、生々しいディテール感という面ではEM2のほうが優れていると言えそうです。
個人的にはEM2のほうがリアルなロックの雰囲気があるので好きですが、聞き心地が良いのはT4の滑らかな感じかもしれません。
TVアニメ『灰と幻想のグリムガル』オープニング・テーマ 「Knew day」
Matt Bianco「Hifi Bossanova」(vs TRI AUDIO Tri-I4)
【Hiby R6 Proで鑑賞】この曲をほんとにハイファイ感を出して明るくデジタル的に聴かせます。最初から最後までなめらかな感じで、ノリをほどよく出しながら流れるように聴かせてくれます。シンバルやスネアはちょっとパリパリ気味、ボーカルはツルツル、ピアノは透明感のあるツヤツヤサウンドで、空間は透明です。
この曲をTRI Audio Tri-i4と聞き比べてみます。音場は明らかにTri-i4のほうが狭い感じで、音が全体的に迫って聞こえます。適度な密度感があり、これくらいの距離感のほうが落ち着くという人もいそうです。音はより筋立ちを強調する感じがあり、T4の妙にツルツルした感じは抜けて、手がかりが増えており、Tri-i4は低域も結構出ているので、下で響く感じも増しており、音としてはより実体感のある、自然に聞こえる感じがあります。
音場感が全く異なるので一概に比較しづらいですが、頭内的に聴きたいならTri-i4、もうちょっと頭外的に広く聴きたいならT4という選び方で第一段階は良いでしょう。音の実体感という面では、デジタルなT4の音よりはTri-i4のほうが生々しい感じがあると思います。個人的な好みはTri-i4です。
【5】総評「艶やかな音が好きならおすすめです」
高解像度で音場も広めに聴きたい人にとって、このイヤホンは価格帯では最良の選択肢の一つかも知れません。とにかく聞き苦しい感じがほとんどなく、どんな曲も流れるようなスムーズ感で聴けます。ビルドクオリティも高く、装着感もよいのでずっと音楽を聴いてられるような気がします。おすすめです。
- 中高域が艶やか
- ツルツル滑らか
- デジタルで人工的に聞こえる
Tin HiFi T4 CNT Dynamic Driver InEar Earphones IEM Monitor MMCX Connector
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。