- 【1】装着感/遮音性/通信品質「非常にコンパクトでダブルフランジ型のイヤピも耳当たり良し」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「とにかくコンパクト。スペックはちょっとショボい」
- 【3】音質「中高域に明確な強調がある、シャキシャキ系サウンドで電子系音楽と相性が良い」
- 【4】官能性「ギラギラ感がよく出る繊細系サウンド」
- 【5】総評「一言で言うとチャラい音ってなるけど、ハイファイ感のある現代的な印象を受ける音を鳴らす。スペックはちょっと物足りないね」
- 【6】同価格帯の実力派完全ワイヤレスイヤホンとの聞き比べ
- 【関連記事】
【1】装着感/遮音性/通信品質「非常にコンパクトでダブルフランジ型のイヤピも耳当たり良し」
おすすめ度*1 | |
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ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 | 3h/18h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | AAC/SBC |
防水性能 | 不明(おそらくIPX4相当) |
音質傾向 |
中高域重視、シャキシャキ、音圧抑えめ、開放的 |
Tribitっていうと、以前IC-BTS20っていうスピーカーをレビューした。このモバイルスピーカーは価格を考えると結構当たり機種で、実際amazonでの評価も高め。そのTribitから完全ワイヤレスイヤホンが出たというね。
ケースも含めてデザインはかなりコンパクト。イヤホンのイヤーピースはダブルフランジ型で耳にしっかり嵌まる。遮音性はそこそこかな。
対応コーデックはAAC/SBC。私がテストした範囲では通信安定性は高め。外出時に充分使える程度の性能はあり、移動中でもそれほど途切れない。カスタマーレビューにもあったけど、たしかに駅構内や電車の中だと途切れやすいかな。
相性かも知れないけど、AAC接続だとちょっと途切れが目立つ気がする。あとAAC接続時は最初だけ通信が乱れたけど、使っているうちに落ち着いた。
テスト環境
今回のテストはAAC接続をHiby R6 Proで、SBC接続をONKYO GRANBEATで行っている。
【2】外観・インターフェース・付属品「とにかくコンパクト。スペックはちょっとショボい」
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、専用充電ケース、説明書。インターフェースが物理式でクリックがしっかりできる。反応も良く、この点は良好。
ケースもコンパクトでTribitらしく、チープ感がないデザインなのはいいけど、連続再生時間は短めなのが気になるね。説明書にはイヤホン再生時間3時間、イヤホン充電時間2時間って書いてあるけど、後ろの方はケース充電時間の間違いだと思いたい。
【3】音質「中高域に明確な強調がある、シャキシャキ系サウンドで電子系音楽と相性が良い」
音質的には中高域あたりの女声ボーカルの少し上くらいに強調があって、そこらへんが一番シャキシャキに聞こえる。ギターなんかはかなり明るく刻みが強調されるし、ピアノも明るさ重視で厚みは抑えめかな。中域の下の方はクリーンになっていて、低域にも強調がないので、下は比較的すっきり。上の方も金属光沢感に強調があって少しギラギラする以外は案外すっきり抜ける。開放的だけど、音に高さを感じるって感じでもないかな。
どんな曲でもだいたい一番良く聞こえるのは、ギラギラしたギターとチラチラした感じのシンバル、そしてちょっと明るめの女声ボーカルってなりそう。印象で語ると、中域が聞こえるって意味でフラットかかまぼこだけど、金属系の音がよく聞こえるあたりはドンシャリっぽいとも言える。まあ経験上こういう聞こえ方の場合は、実際にはおそらくフラットに近い。
低域の支えが薄いのと、全体的に音が太くなく、濃くもないところはあって、印象的にはミニチュア的に聞こえやすいかな。見通しは良くて分離感もあるし、解像感はそこそこあるから、高域方向での立体感はそれなりにある。輪郭はあるけど音圧強めな方じゃないんで、人によってはぼやっとしてると言うかも知れないし、逆に開放的でいいって評価になる場合もありそう。価格を考えると悪くないんじゃないかな。
ちなみに低域は別に出ていないわけではなく、おそらく標準のダブルフランジ型イヤーピースで弱められているところがあり、実際低域が強調されるradius deepmountなんかにすれば、低域は濃く出てきて、中域で音の太さも充分に感じられるようになる。ただしレビューのルールとして標準イヤピで行うことを前提としているため、以下のレビュー内容は全て標準のダブルフランジ型を用いて行っている。
美点
- 明るめのギターサウンドに味わいがある
- ボーカルははっきり明るい感じだが、息感に強調はなく、尖りなくふんわり
- 高域方向の立体感は悪くない
- 開放的な音場
- 中高域のディテールが良い
欠点
- 低域は薄味
- 全体的に音圧控えめ
- 音が細い印象を受け、ミニチュア的
[高音]:シンバルの空気感に強調がある感じではなく、白味も強くないが、中高域のチリチリしたあたりがしっかり聞こえるせいか、高域の存在感はおそらく実際以上に感じられる。低域や中域で膨らむ音がないために、バランス的に高域の存在感が強めになっている。しかし高域は実際には強調は強くなく、シャープネスも強くないので、尖りはあまり感じず、意外とマイルドに聴ける。実際高さに強調はなく、普通は高域を強調すると出てくるボーカルのドライな感じはほとんどない(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中高域のギターやピアノ、ボーカルの上の方向に強調があり、少し音が伸びて聞こえる感じがある。中域の真ん中から下にかけての方向はすっきり見通しよくなっているため、人によってはスカスカと感じる可能性はある。
[低音]:100hz~40hzまでぼーっと鈍い振動。ちょっとふわふわ感がある。40hzで沈み、30hz以下ほぼ無音。低域は素直に薄味(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:低域が薄いため、中高域あたりが浮き上がって聞こえてくる感じはある。音は細く金属光沢感が出やすいため、繊細さを感じるが、その分ミニチュア的。風通しは良く、分離感もよい方だとは言えるので、解像度的には高めに感じるかもしれない。ただ個々の音に広がりや濃さがそれほどなく、若干チープな印象を受ける可能性はある(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムセットは、タム優位でパリパリしている。バスドラに重みが出にくいので、空気抜けするようなパスパスした感じはあるかも知れない。軽めのパシンパシン。シンバルは刻みがかなり目立ち、チリチリと濃いめに聞こえる(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルは薄味で、声質によってはちょっとボソボソしている印象を受けるかも知れない。女声ボーカルは明るめでハキハキした感じに聞こえる。息感に強調はなく、声質にドライなハスキーさは出ず、滑らかですらっとしている。
【4】官能性「ギラギラ感がよく出る繊細系サウンド」
YOHKO「向かい風」
【Hiby R6 Proで鑑賞】この曲の場合、ギターサウンドは明るめに非常に良く、チャリチャリギラギラに聞こえるけど、弦楽の厚みが中域で出ないので、上方向の伸びばかりで、スカスカに聞こえる。かなり音量を上げないと中域以下が出てこず、出てきたとしても金細工のようなギター音と明るく浮き上がるボーカルの印象が強く、繊細さが強い。ハイファイ感はあるけど、充実感には欠ける。ただし前述のように、イヤピを変えれば改善可能。
ワルキューレ「一度だけの恋なら」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】シャキシャキチャリチャリしている感じになるので、妙にキラキラして中毒的なところがあるが、ちょっと人工的に聞こえる。中高域に焦点が合い、高域のディテールもそれなりにきれいに聞こえるので、没入感はかなり高いが、個人的にはあまり音に親しみを感じない。まあ高域重視にMIDI曲っぽく聴きたい人にはいいかも。コンピュータサウンド的な解像度感は強く、デジタル音を多用するこの曲との相性は悪くない。
Roselia「R」
【Hiby R6 Proで鑑賞】個人的感想から言えば、ギターに黒みが足りなくて、軽いアイドルロックになってるのがどうかなって感じになるけど。ギターとシンバルは満足できるほど繊細に表現されるので、出足はすごくかっこいいし、ギターの伸びもよくてタムの躍動感もよく出るし、ボーカルもきれいに突き抜ける。そういう意味でかなり満足度は高いんだけど、妙にツルツルしてるんだよね。ハングリー感がないというか。個人的にはもっと黒さ出していこうぜって言いたい。結局低域不足ですなぁ。
繰り返すけど、それでもシンバルは最高にスパイシーでギターもキレてます。なんか上品だけどね。なんていうか重心が軽くて火力が足りず、放課後ティータイムの「Don't say lazy」くらい、重心が上向いている感じで、少しお気楽に聞こえる。つまりこの曲本来のベースとバスドラの重厚感が抜けてる。
そういうわけで「Don't say lazy」を聴いてみると、「そうそう、こんなちょっと軽いガールズロック曲に合うね」って思う。
FAUN「Federkleid」
【Hiby R6 Proで鑑賞】じゃあどういう曲を聴こう?って話になるけど、低域がやっぱ足りないんじゃないかとは思うけど、たとえばこういうハイファイ系フォークロックなんてかなり楽しめる。この曲なんか低域に派手さはないから、別に演出上それほど出なくても違和感ないし、音が細めによく伸びる感じは相性が良く、とくにピッコロやタンバリンの音が活き活きしているし、ボーカルの絡みなんかもきれいに出る。
【5】総評「一言で言うとチャラい音ってなるけど、ハイファイ感のある現代的な印象を受ける音を鳴らす。スペックはちょっと物足りないね」
スペックは物足りない。音もちょっとチャラくて軽薄な感じがあるのが個人的には少しどうかなと思うところだけど、むしろデジタルな曲には強い印象を受けるし、解像度感は高く感じられるかも。繊細さがあるから、こういう音をヴェールが取れたって表現する人はいるしね。実際高域寄りで開放的だけど高域に不自然な強調はないから、聞き心地は悪くない。
そして標準イヤピ以外に変えたら普通に低域は改善されるんで、なんだかんだいって不満は少ない。スペックは気掛かりだけど、価格も安めだし、コンパクトで持ち運びやすい機種を探している人にはおすすめできる。
【6】同価格帯の実力派完全ワイヤレスイヤホンとの聞き比べ
vs wewow X11(nonoc「star*frost」)
同じ価格帯で同じく解像感が高い音っていうと、たとえばwewow X11が思いつく。そういうわけで聞き比べて見るけど、wewow X11の音はX1よりは粒感が強いというか、ドライでシャリシャリした感じがあるね。パリパリした張りもあって、この曲だと結構パーカッションにかっつりしたソリッド感がある。
それに比べるとX1の音はもうちょっとチャリチャリした金属的な光沢感がある音かな。少なくともシンバルはより濃い。ボーカルフォーカスという面でもX1のほうが優れている印象はあって、より前面にみずみずしく聞こえる。
一方で全体像としては低域の存在感の差もあるかもしれないけど、X11のほうが奥行き感はより優れているように私には聞こえる。音場も横幅の面でより広く感じられる。
TVアニメ 「 彼方のアストラ 」 オープニングテーマ 「 star*frost 」
vs EnacFIre E18 Plus(TVアニメ「ひとりぼっちの○○生活」オープニングテーマ「ひとりぼっちのモノローグ」)
音にどことなくチャラい感じがあるという意味では同じ括りに入るかもしれないEnacFire E18 PlusとX1。どっちもチャラい曲は結構得意。たとえばTVアニメ「ひとりぼっちの◯◯生活」OP主題歌「ひとりぼっちのモノローグ」みたいなね。実際X1で聴いてみると、その表現はキラキラ感も充分にあるし、明るく見通しが良く、ボーカルも透明感があって非常に快活で楽しい。
ただ、個人的にはE18 Plusのほうがよりフラットで音に自然な膨らみが感じられるかな。金管なんかもしっかり下の方の濃い感じが出るし、バスドラムが躍動的に聞こえるし、何よりボーカルに甘味がある。音が濃いからこの曲で多用される劇伴的な効果音も生きていて、ドラマチックな感じがあるしね。この曲に関する限り、E18 Plus推し。
ていうか、最初にチャラいなんて言っちゃったけど、この曲聴く限り、E18 Plus全然チャラくないね。音にしっかり広がりがあって、色味が乗っている。少なくともミニチュア的じゃない。
TVアニメ 「 ひとりぼっちの○○生活 」 オープニングテーマ 「 ひとりぼっちのモノローグ 」
vs KOMODO U10(Porter Robinson「Sad Machine」)
繊細で刻みの良い音というと同価格帯で思いつくのは、たとえばKOMODO U10。グラフェン系サウンドそのままっていう感じの刻みが良い高解像度な音を鳴らします。X1と聞き比べて見ると、どちらも発色は良いけど、より輪郭がはっきりして透明感があるのはU10。X1の音は発色は良いにしても手応えが若干優しくてメリハリに欠けるかなという印象を持つ。そのためU10のほうが奥行き感の点でもよりはっきりした感じがある。光沢感とつややかさでU10が明らかに上位で、この曲を聴く限り、私はU10推しかな。
vs MEBUYZ E18(時瀬高校箏曲部「龍星群」)
同価格帯でX1と同じく中高域あたりに強調があるのがMEBUYZ E18 。琴のキラキラした音はどちらもきれいに色づけて聴かせてくれる。ただまあ予想通りというか、どちらも華やかに聴かせてくれるんだけど、X1のほうは低域方向がややゆるめで音に深みが出ない。X1を聴いていたときはきれいだなって思ってたけど、E18のほうを聴くと音の濃さが断然違って、音に広がりと深みがある。そのせいか弦の色合いにもより風格というか渋みもあって、ただ華やかなだけのX1とは段違い。ちょっとX1の音には物足りなさを感じる。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。