- 【1】装着感/遮音性/通信品質「金属ハウジングで頑丈。装着感は良好」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「mmcxリケーブル可能」
- 【3】音質「低域のパワフルさと、中域の見通しの良さと奥行き感・広がり、高域の透明感の三位一体モニターサウンド」
- 【4】官能性「丁寧に音像を描き出す上質なモニターサウンド」
- 【5】総評「デジタル的な音だが、価格を考えると魅力的なモニターサウンド」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「金属ハウジングで頑丈。装着感は良好」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 不明 |
インピーダンス | 不明 |
感度 | 不明 |
ドライバー |
ハイブリッド型(DD×1, 平面磁界型×1, BA×1) |
音質傾向 |
モニター的、ディテールが良い、音場が広い、パノラマ、低域が強い、ドンドコ、音像が明確、清潔、透明感がある、音の根立ちが良い、密度感がある、パワフル、分析的、輪郭が明瞭 |
ハウジングの材質はわからないのですが、軽量なのでおそらくアルミじゃないかと思います。
耳穴に向かって出っ張るようにノズルの根元が盛り上がっており、耳にしっかり嵌まります。遮音性は良好です。
テスト環境
今回のテストはHiby R6 Pro、ONKYO GRANBEAT、Astell&Kern KANN CUBEで行っています。ゲイン設定は高設定です。
スペックが不明なのですが、一般に平面磁界型ドライバーは鳴らしきるには、それなりのパワーが必要と言われています。
一般にDAPはバランス出力の方がパワーが出るため、音が曇って感じられたら、バランスケーブルへのリケーブルを検討して下さい。
【2】外観・インターフェース・付属品「mmcxリケーブル可能」
付属品はイヤーピースの替え、キャリイングケース。リケーブル時のコネクタはmmcxになります。梱包は簡素ですので、プレゼント用としてはやや豪華さが足りないと思われますが、本体はビルドクオリティが高いです。
【3】音質「低域のパワフルさと、中域の見通しの良さと奥行き感・広がり、高域の透明感の三位一体モニターサウンド」
音質的にはパワフルでアタックも良い、中低域の厚みもありながら重低音の聞こえも良い低域がまず印象的に映ると思います。量感は全体の中では多めで、支配力は少し強く、音場全体にかなりの重みを加えます。しかし、透明度の高い、クリアな沈み込みの良い低域なので、基本的には音場全体に深みと重みを加えてあまりうるさくなることはありませんが、ドラムが強いロックなんかは好みを分けそうです。そういう曲ではかなりパワフルに床面を主張してくれて気持ち良く感じる反面、質感はやや硬く、膨らみが弱いのでライブ感は抑えめなところと、やや押し出しが強くてボーカル近くに出張ってくる感じが気になるかも知れません。
中域は低域に比べて後退して奥行き感が演出されており、横幅の広がりも良いのでパノラマ感もあり、オーケストラサウンドを充分に表現できる広いステージングを感じます。ボーカルはフォーカスは悪くありませんが、低域に比べると後退しているので、曲によっては若干埋没しやすいかも知れません。とくにドラムが強いロックでは、音量を一定程度取らないと充分に出てきてくれない印象を受ける可能性はあります。
この中域は平面磁界型特有とも言える、音が太いのに音場が広く感じられるという独特の表現で聞こえてきます。ボリューム感があり、音が太く力強いので一聴した印象は解像度が高い感じではありませんが、実際には空間の透明度は高いです。中域の高低バランスは中庸で抑揚はそれほど強くなく、音が林立しているような、安定している印象がありますが、楽器音やボーカルのディテールは丁寧に感じられます。
男声ボーカルと女声ボーカルへのフォーカス感は均等に感じられますが、女声ボーカルは中高域で媚びる感じは強くなく、少し大人びた成熟した声色になります。歌詞は明瞭で口の運びもかなりはっきりして感じさせ、息遣いも不自然に強調しませんがしっかり感じ取れるモニター的なサウンドで詳細です。しかし、色味は抑えめで、Tri-i4の艶やかなボーカル表現を愛している人にはやや抑制的に聞こえるかも知れません。
高域方向に向かってもモニター的な落ち着きのある雰囲気は維持されています。音の艶やかさはほどよく抑え落ち着きのある聴き心地でありながらも、輪郭はくっきり緻密さを感じさせてくれます。ノリは若干セーブして、少し落ち着いて暖かみのある、安定した聴き心地の中で分析的に聴けるバランスになっています。
総合すると、低域でドライブ感を出しつつ、音が定位をしっかり持って林立しているように上から下までよく立ち上がっている広い音場を持つ、モニターイヤホンというよりはモニターヘッドホン的な音作りになっています。たとえばSONYのモニターヘッドホン、MDR-M1STに近い音響設計を感じます。輪郭感はしっかりしていながらもそれを意識させすぎない、聴き心地を考慮した音響思想は率直に言って魅力的で、優秀と言えます。
ノリが良くキレキレで楽しい感じの外連味の強い音を好む人には向きませんが、大抵の曲を分析的に深みを出しつつ、丁寧に聴かせる万能なモニター力を感じるので、楽器音とボーカルを均等に味わいつつ、音楽に浸りたいユーザーには魅力的に思えるはずです。音の立ち上がりと、実体感、そして粒立ちは良く感じられるはずです。
Tri Starlightとの比較
以下の記事を参照してください。
音場の広さをそのままにもっとボーカルフォーカスして聴きたい!
広い音場表現そのままに、よりボーカルにフォーカスして聴きたい場合はTONEKING BL1がおすすめです。楽器音にツヤが出て、よりみずみずしいリスニング向きの音を奏でてくれます。ボーカルのツ音は尖りやすくなりますが、ピアノや弦楽などの楽器音のグルーヴ感は増して聞こえるでしょう。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
やや鮮やか。音の派手さは適度に抑えられており、光沢は必ずしも強くないが、輪郭が丁寧で自然な色づきがある。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
やや鋭い。輪郭感はやや強く、ギター音やシンバルにやや緻密な印象を受ける。また低域や中域でも音に広がりはあるが、音が膨らむ感じではなく、むしろまとまりがよいので、音のエッジが鈍くなる感じはない。 |
明るさ (明るい/暗い) |
やや明るい。明るさを強調する感じは強くないにも関わらず、音場に自然光的な明るさと透明感がある。 |
派手さ (派手/地味) |
やや派手。鮮やかさは強調しないものの、中高域はじめ、音の手がかりは多く、少し派手である。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
やや硬い。音に膨らむ感じはなく輪郭がくっきりめなので、どちらかといえばデジタル的に感じられる。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや尖る。中高域などで緻密さはあり金属的なエッジは少し強調されやすいが、基本的に強く尖る感じはほとんどない。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや騒々しい。モニター的で全音域で音に明瞭感を持たせる味付けになっているので、フォーカスはやや拡散されやすく、音楽の焦点を掴みづらいところがあるかもしれない。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。低域はかなりパワフルである。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
やや豊か。モニター的なのでリスニング的な抱擁感はほどほどだが、情報量は全体的に多い。 |
太さ (太い/細い) |
やや太い。低域と中域で音がしっかり太く聞こえる。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
普通。粒立ちは良いが、シャープネスを強調しすぎず、ハイハットはシルキーだし、光沢も明瞭だが角を立たせすぎない。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
細かい。音の粒立ち感は明瞭。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
やや澄んでいる。音場全体の鮮やかさはモニター的にコントロールされており、色づきが強すぎないよう、全音域で適度な透明感が感じられるよう調整されている。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや乾いている。音はややドライに感じられる。 |
重さ (重い/軽い) |
重い。低域の存在感は強く、重みは強い。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや澄んでいる | やや澄んでいる |
明るいか (明るい/暗い) |
やや明るい | やや明るい |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
やや伸びやか |
普通 |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
やや乾いている | やや乾いている |
太いか (太い/細い) |
普通 | 普通 |
濃いか (濃い/薄い) |
普通 | 普通 |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
普通 | 普通 |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ややぎっしり |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
やや抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや深掘り感がある |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
広い |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
やや奥まる |
美点
- 沈み込みも良く、重みもある活きの良い低域
- モニター的で丁寧に聴かせる分析的なサウンド
- 中域の奥行き感と広さに優れ、オーケストラも充分楽しめる
- 鮮やかさを適度に抑え、音像の描き出しに集中している
- 音の立ち上がりが良く、定位感に優れる
欠点
- 分析的でグルーヴ感は抑えめ
- ドライで潤い感には少し欠ける
- やや無愛想な音質
- 低域の支配力が強め
[高音]:高域は派手な光沢が抑えられているが、シンバルの空気感は結構あり、高いところまで伸びている。基本的には清潔系で、鮮やかさを抑えて輪郭と刻みを丁寧に描きだし、粒立ち感に集中するような音像重視のディテールサウンドで緻密(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は低域に比べると後退しているが、充分に前進して聞こえてくる。音は根立ちもよく、林立するようにはっきりとしており、楽器音が高域から低域までしっかりつながっている感覚がある。ボーカルは男声と女声に均等にバランスよくフォーカスされる。密度感があるが、横幅も広い空間で奥行きもほどよくあり、圧迫感はあまりない。
[低音]:100hz~40hzまで輪郭の良い厚みあるビボーッとした振動音。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域はベースに黒みと厚みがあり、キックも明瞭で重低音の地熱も感じられる。中域近くの膨らみは強くなく、どちらかといえば下で広がる、透明度の高い音に感じられるはず。暖かみはほどほどでほの暖かいくらい。低域弦楽は透明度が高く、下でコクを出してくれる。リズムコントロールも良い(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:低域がやや張り出し、中域は奥行きと広さがあって低域より少し後退するがフラットで押し出しも良く包み込んできて、高域は鮮やかさを抑えて透明感に配慮された音像重視のサウンド。ほぼほぼフラット的なサウンドに感じる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:スネアやタムのアタック感はよく、バチバチした鼓面は結構丁寧に描き出され、粘りも感じられて躍動感がある。バスドラキックも重く、フロアタムの一定の厚みがあるので、床面も隠されずに浮き上がりがよく、立体的である。やや重たげなバツンバツン。ハイハットはややシルキーでシンシンした清潔系の音になる。低域が重いのでやや下で火力を主張する足踏みの強いリズム表現になる(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男女ともに輪郭が良く、ほどよく明るくよく浮き上がる。歌詞は聞き取りやすく、息遣いも強調されないのに明確。甘味はほどよくあるが、媚びた感じがなく意外と冷静な歌声に聞こえ、情熱には欠けるかもしれない。
【4】官能性「丁寧に音像を描き出す上質なモニターサウンド」
Machico「TOMORROW」
【KANN CUBEで鑑賞】ドラムがノリノリです。ギターエッジの少し上くらいにわずかにノイズ感があるような気がするのが気になるんですが、シンバルも清潔でシルキーなのに浮き上がりが良くて、ボーカルも輪郭が明確で、中域での楽器音の音像も明確で、音場も広い、実に安定感のあるモニターサウンドです。低域から高域まで全体的に音像をまぶして聴かせるところもあり、さらに楽器とボーカルのパワーバランスもほぼ50:50くらいなので、モニターサウンド独特の音の焦点が合わせづらいところはありますが、音楽の全体像は手に取るように分かる感じです。
TVアニメ『この素晴らしい世界に祝福を! 2』オープニング・テーマ「TOMORROW」
Void_Chords feat. LIO「FLARE」
【Hiby R6 Proで鑑賞】この曲も透明感強めに上から下まで丁寧に聴かせる感じがあります。音場は自然な明るさで、中高域を露骨に強調する感じがなく、清潔で落ち着きがあります。しかし低域は深みがあり、パワフルで意外と情熱的に盛り上げてくれるので、下の方からエネルギーが立ち上がって、上に流れていくような明確な流れのある音楽表現になっています。また中域の幅と奥行き感も感じることができます。
色味は全体的に抑えめで金管は鮮やかではありませんが、輪郭は良く、ピアノも全くキンキンしませんが、薄味ながらも透明感のある輪郭が感じられます。なんていうか派手さがなく、大人びているんですが、全体像を見ると大胆でダイナミックな感じがあります。
TVアニメ『ありふれた職業で世界最強』OP主題歌「FLARE」
Endorfin.「Sincuvate」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】EDMはとくにおすすめです。音像重視でしつこくキラキラさせないので、緻密な表現のすべてを味わい尽くせるかのような見通し感があります。しかも床面は情熱的で、ほどよくタイトで、手応えがあって躍動的です。ボーカルにフォーカスが強く当たる感じがないので、楽器の一つと化している感じで、楽器音と一体的に浮き上がりすぎずに包まれて聞こえてくるのもEDM的な世界観と親和的に思えます。DTMのモニターイヤホンとしても充分オススメできそうです。
fripSide「only my railgun」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】こういう曲も楽器音がかなり立ち上がり良く聞こえるのですが、くどく煌めきを強調しないので、手がかりは多いにも関わらず、聴き心地は安定しており、緻密な感じがそのまま味わえます。元々ボーカルがやや細い感じのこの曲だと、このイヤホンでは明らかに楽器音のパワーバランスが強く、清潔系のボーカルが楽器音に埋没するバランスになってしまいますが、それでも歌詞が明瞭です。低域の床面が明確で音場に深みがあり、音がしっかり沈みこむ感触と静寂感も表現されるのがなかなかきれいです。
only my railgun TVアニメ「とある科学の超電磁砲」OPテーマ
【5】総評「デジタル的な音だが、価格を考えると魅力的なモニターサウンド」
音像を緻密に味わいたい人には非常に魅力的なモニターイヤホンに感じられるはずです。鮮やかさを抑え、ディテールを満遍なく分散させてバランス良く全音域で音像を描き出してくれます。音には一定の太さもあり、細くなりすぎて尖る感じもなく、音場の透明感は高く、奥行きと広がりも感じられます。低域には明らかな強調があるので、人によって重みが強くなりやすい感じが気になるかも知れませんが、その低音も透明度が高く、膨らんでマスキングしてしまう感じはほとんどありません。
- 清潔でほどよく緻密、ディテール感の高いモニターサウンド
- 低域は重みと深みがある
- ややデジタル的でノリが悪く感じられ、ボーカルにも感情が乗りにくいところがある
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。