- 装着感が快適
- 解像感があり、輪郭のしっかりしたサウンド
- ビルドクオリティとスペックが安定している
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良好」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「ケースは旧版から手が入れられ、より洗練されたデザインになった。モバイルバッテリー機能あり」
- 【3】音質「ドンシャリ的ではあるが、パンチ力も少し強調があるので音に厚みをそこそこ出してくれる。中域で一定の濃さも感じられ、低域は少し深いところで重みも出す」
- 【4】官能性「スピード感に乗って聞こえてくる、艶やかな音色とタイトで重い低域」
- 【5】総評「開放的でリズミカルなサウンドを楽しみたいならおすすめ」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良好」
おすすめ度*1 | |
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ASIN | |
B083918MJ6 |
この機種は以前紹介したArbily F7のバージョンアップ版です。イヤホンのハウジング自体は手が加えられていないようで、装着感に旧型との差はありません。
個人的に装着感は良好で遮音性も悪くないと思っていますが、付け心地はJabra Elite 75tなんかに近い傾向です。ああいう装着性が苦手な人には、もしかすると向かないかもしれません。
接続性については、新型コロナウィルスのために人混みは避けてるので、確実ではありませんが、良好です。Airoha A1532ってチップには過去の搭載機種の安定度の高さから個人的に信頼を置いているんですが、この機種も接続性では不満を感じることはあまりない気がします。
5mくらいまでは普通にシームレスに繋がってますし、通信の乱れみたいなものも、少なくとも家庭内では、ほとんどありません。
テスト環境
今回のテストはFiiO M15、Galaxy A30、ONKYO GRANBEAT、Shanling M6、FiiO M11 Pro SSで行っています。
装着サンプル
【2】外観・インターフェース・付属品「ケースは旧版から手が入れられ、より洗練されたデザインになった。モバイルバッテリー機能あり」
付属品はイヤーピースの替え、充電ケーブル(Type-C)、専用充電ケース、説明書です。インターフェースは物理式。反応は少し遅延する程度で比較的良好です。モバイルバッテリー機能もあります。
旧版との違い
旧版からは通信チップが変更され、Airoha A1532が搭載されたようです。AAC接続に対応しました。それに伴ってガイダンス音声が日本語対応になりました。また連続再生時間も向上して12時間になっています。
音質的には少し低域が減って高域でくっきりし、濃厚感は少し減ったものの明瞭感が増した気がしますが、ほぼ旧版と同等です。
スペック情報
- Bluetoothバージョン:5.0
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 連続再生時間/最大再生時間:12時間/210時間
- 防水性能:IPX7
【3】音質「ドンシャリ的ではあるが、パンチ力も少し強調があるので音に厚みをそこそこ出してくれる。中域で一定の濃さも感じられ、低域は少し深いところで重みも出す」
標準イヤーピースのLサイズでレビューいたします。
周波数特性イメージ(試験運用中)
※周波数特性イメージはあくまでレビューの便宜上、個人的に周波数分布のだいたいのイメージを掴むための参考情報で、測定方法も測定されたデータも非常にアバウトで厳密な信頼性や正確性に欠けます。いずれ勉強を深めて信頼性を高めていきたいとは思いますが、本ブログは周波数特性の測定をメインとしていませんので、期待しないで下さい。私自身も聴感上の音像印象の解釈の補助として利用しているだけで、この周波数特性イメージを全面的に信頼し、依拠しているわけではありません。
※またイヤホンの周波数特性イメージはヘッドホンの測定値との互換性を持たせるために、外耳道を疑似的に再現した環境で測定されています。
レコーディングシグネチャー(試験運用中)
レコーディングシグネチャーはバイノーラル録音されていますが、品質は良くありません。人工的に外耳道に近い環境を作って録音していますので、それなりに自然に近い音になっているとは思いますが、聴いたそのままの音質とは異なりますので、あくまで参考情報ということでお願いします。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
原曲①
ギンノイシ Silver Will / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
原曲②
淡い恋~Too full with love~ / Ys HEALING / Copyright © Nihon Falcom Corporation
原曲③
花と風のうた / Zwei!! Super Arrange Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
音域印象
ドンシャリ、パンチ力がある、重みがある、開放感がある、ボーカルフォーカスが良い、さわやか、リズミカル、清潔感がある、透明感がある
低域「タイト、重量感、クリア」
低域は重みがあり、パンチも感じられる音です。ドラムとエレキベースとのぶつかりは少し避けられているので、エレキベースはやや厚く黒く重く暖かいですが、そのラインの中にキックが埋没してしまうことはありません。リズムコントロールは良好でわりかしタイトに感じられるのではないでしょうか。
低域弦楽は弦の張りにトランジェントの良さが感じられるので、パリッとした躍動感があり、明るく透明感がある雰囲気を感じさせつつ、重みもしっかりしています。厚みは少し足りないかも知れません。
中域「透明、明るい、開放的」
中域は全体としては前傾しています。空間には透明感があり、ボーカルは少し上向きに明るい雰囲気で、歌い上がる雰囲気があります。ボーカルについては後述するので詳しくは述べませんが、下側の空間は透明感があり、浮き上がりが良い雰囲気でフォーカスは悪くありません。ただし、ギターや弦楽やピアノなど主要な楽器音がちょうど同じラインで強調される感じがあるので、ややボーカルラインに音数が集中している印象を受ける可能性があります。しかし、音はギラつきを抑え、輪郭が明瞭で透明感があるので音像の提示は丁寧です。楽器音の沈み込みがよい感じではないので、若干浮き上がり感があり、ガチャガチャした感じはありますが、手がかりが良いと考えることも出来るかも知れません。
一般に、楽しく媚びた明るい雰囲気で聞こえます。
高域「輪郭感、抜けの高さ、リズミカル」
もしリズムを重視する場合、このイヤホンは価格帯では魅力的な選択肢の一つになります。このイヤホンの高域には、とくにフレーズの細かさや輪郭感に影響するところに資源の集中が見られます。高域の高いところの煌めき感とより低いギラつき感を抑えつつ、ハイハットのアタック、スネアのスナッピー、ドラムのビーター、弦楽のアタックなどリズム要素を構成する主要部分への資源の集中が見られ、高域は歪みのない透明な雰囲気でありながら、手がかり多くくっきりと、リズムに乗って楽しげに聞こえてくるでしょう。
楽曲の雰囲気がデジタル的になりやすいところはありますが、高域は臭みがなく、適度な風通しの良さもあるので、開放感もあり、爽快感を感じさせてくれるはずです。
ボーカル「のびやか、媚び、子音」
ボーカルは比較的明るく、媚びが感じられ、ボディが強調されないために子音と息に少し強調があります。女声ボーカルの曲の一部ではボディの不足が、柱の不足を感じさせ、中高域近くで歌声を楽器の中に埋没させてしまう印象を受けるかも知れませんが、一般にはボーカルはとくに下の空間が清潔な中で聞こえるので、フォーカス感は悪くないはずです。ただし濃厚感には欠けます。男声ボーカルは深みが足りなく思う可能性があります。
音場「高さ、開放感、風通し」
音場は高さと下方向への深さ、つまり縦軸は良好です。高域は開放的ですが、中域上部の強調がやや押し出し感につながっており、横幅や奥行き感はそれほど強調されません。
全体印象
開放的なドンシャリで、床面に一定の深さとタイトさが備わっています。リズムコントロールは良好でビートを多用する音楽とは相性が良いでしょう。EDMはビートが活き活きと聞こえるので、ノリが非常に良く楽しげに聞こえるはずです。個人的なおすすめはしたがって、EDMやダンスミュージック、アニソン、ファンク、ヒップホップなどになります。しかし、ジャンルを問わず、透明感があり、ハイファイなサウンドを味わいたいなら、この価格帯ではおすすめしやすい機種です。
美点
- 見通しが良い
- すっきりしている
- 風通しが良い
- 音の粒立ちが良い
- のびやかなサウンド
- 透明感がある
- 明るい
- クリア
- タイト
- リズミカル
欠点
- 音の厚みが薄い
- 濃厚感に欠ける
- ボーカルが少し過酷になりやすい
音質特性(サウンドシグネチャー)
[高域]
- 抜けの高さ*2:A
- 金属光沢感:C
- クラッシュ:B
- アタック:A
- ツヤ:B
- ディテール:A
高域は透明感があり、輪郭が明瞭でリズミカルです。抜けも適度に高く、音に混雑する感じはありません。
[中域]
- 甘味:B
- 広がり:B
- 濃厚感:C
- コク:B
- 太さ:B
- ディテール:B
中域は適度な温かみがあり、ニュートラルに近い聴きやすい空間で、見通し感も良いです。ややスカスカした雰囲気があります。
[低域]
- 深さ:B
- 重さ:B
- パンチ:B
- 厚み:B
- 熱気:B
- 鳴動:B
- ディテール:A
低域は明るく少し見通し感が良いクリア系の音ですが、空間は適度に密度があって床が抜けるようなスカスカした感じはありません。深さもよく感じられ、レイヤー感があります。
[解像度・立体感]
輪郭が良くリズムも明確なので音像の明瞭感に優れています。しかし一方で中域の不足がボーカルの子音を少しだけ尖らせたり、音がボーカル付近に集まってしまっている印象を与えます。
[パーカッション・リズム]
- ドラムの雰囲気:ペチペチパシパシといったフレーズの細かさを重視して味わえます。スネアやドラムが鼓面だけで鳴っているような薄い雰囲気があるので、どちらかといえばビシバシしており、タイトです。明るいバチンバチンもしくはバシンバシンに近いでしょう。
- ハイハットの雰囲気:ハイハットはそれほど煌びやかでなく、存在感は少し透明ですが、アタックは強いのでクラッシュ感は存分に感じられ、リズム感も悪くありません。
- 弾け:A
- 粘り:C
- 重み:A
- 濃さ:B
- スピード感:A
パーカッションは一般にスピード感の遅れはありません。スネアの活きは良く、タイトに弾みを聴かせてくれます。一方でハイハットの方はリズミカルに疾走感を出す感じが強く、スネアとハイハットでうまく役割分担されている雰囲気があります。
[ボーカル傾向]
楽曲の構成要素において、リズム感とスピード感を重視しているなら、このイヤホンは充分に満足させてくれるでしょう。
【4】官能性「スピード感に乗って聞こえてくる、艶やかな音色とタイトで重い低域」
沼倉愛美「Climber's High!」(vs SKY-FREE H88)
【Shanling M6で鑑賞】タイトなリズム感とハイハットのアタックの良さ、エレキギターサウンドのエッジの色気を強調するこのイヤホンの傾向は、ロックと比較的相性が良いです。エレキベースとドラムのぶつかりが少なく、比較的低域の見通しが良いのも好ましく思えるかもしれません。個人的にはもうちょっとライブ感と音の厚みが欲しい気がしますが、ハイファイで聴きやすいです。
この曲をリズムと見通し感重視で爽快に聴きたい場合は、かなり魅力的です。風通しのよい雰囲気がありつつ、中域の甘味への配慮が見られる、比較的バランスの良い高域上部も基本的に好印象です。
だいたい同じ価格帯で、人気のある機種、Tuayoo SKY-FREEと聞き比べてみます。驚くべきことに、周波数特性イメージの上ではほとんど差がありません。全体の雰囲気は良く似ており、この両者はほぼ代替可能な選択肢と考えることが出来ます。標準イヤーピースの差もあるかもしれませんが、私にはわずかにSKY-FREEの方が音が濃く、中域でより濃厚に聴ける印象があります。ボーカルの子音の尖りも相対的に少なめに思えます。解像度の上ではZagzog F7 Plusのほうがわずかに良いように思われますが、大差はありません。
この2機種はほぼ入れ替え可能です。私にはわずかにSKY-FREEのほうがより万能に思われますが、音質差はほぼないと言って良く、価格やデザイン、スペックで選んで良いでしょう。
佐々木李子「Good Night」(vs AUKEY EP-T21)
【FiiO M15(Pure Music Mode)で鑑賞】個人的な好みから言えば、ボーカルのボディに不足を感じ、中域が低域とのつながりが悪く思えるのと音に厚みがないので、率直に言ってこの曲を深く楽しむには音がもう少し薄く迫力が不足しているように思えますが、アタックが不足しているというわけではないので、これは好みによるかも知れません。床面は重みが充分で、この曲のリズミカルな雰囲気もよく表現されます。きらびやかさだけは少し欠けますが、それと引き換えに中域の薄さがカバーされているところもありますし、むしろアコギなどがきらびやかすぎないで聞き取りやすいというところもあります。この曲を楽しむのに充分な安定感のある重量が感じられる中で、リズミカルに音楽が楽しめます。
同じ価格帯くらいの人気機種AUKEY EP-T21と聞き比べてみます。すぐに気づくのは低域の重みがEP-T21では失われているので、雰囲気的にはもう少しスムースジャズに近い軽妙さでこの曲を楽しめることです。中域から高域にかけての雰囲気は似ていますが、低域の重量感の違いと、音場により開放的な雰囲気があるために、AUKEY EP-T21のほうがよりすっきりと音場を見通せます。一般に低域の重量感を好まないリスナーにとって、AUKEY EP-T21のすっきりした音はF7 Plusより好ましく思えるはずです。ただしAUKEY EP-T20は高域のピークをわずかに押し上げて聴かせているので、F7 Plusにあったわずかな混雑感は解消されていますが、手がかりの点ではよりさらっとしていて、リズム面ではF7 Plusほどの楽しさがないと思うかも知れません。
どちらかといえばより万人向きなのはAUKEY EP-T21だと思われますが、より情熱的でノリの良いリズミカルな音を求めているなら、F7 Plusを選びましょう。ただし、低域の重みが気にならなければの話ですが。
梶浦由記「a fighter-girl from east」(vs MUSON MOVE)
【FiiO M11 Pro SS(Pure Music Mode)で鑑賞】重みとリズム感を両立させた活きの良い床面を楽しみたい場合、このイヤホンは充分におすすめできます。このイヤホンで曲を聴いてみれば、波打つ気持ちの良いランブルが充分に音場を揺らしてくれるのがわかります。木管は軽やかでのびやかな雰囲気で高くまで伸びてくれますが、スッキリ系で音の厚みには欠けるかもしれません。ただこのイヤホンの場合、低域ドラムが充分重みを出して支えてくれますから、逆にのびやかな雰囲気を比較的前面に押し出した木管でも音楽全体に安定感の不足は出ませんし、むしろ味わいの面ではより楽しいくらいです。
同じ価格帯くらいの人気機種MUSON MOVEと聞き比べてみます。MUSON MOVEはよりドンシャリであり、音のギラつきがF7 Plusよりも多く、よりシャリシャリしたハイハットの金属的な存在感が強調されます。濃厚感と硬さも増して聞こえます。木管はより手がかりが多く、活き活きと感じられるでしょう。一方でリズム面ではF7 Plusのほうがのびやかで高いところできれいに走っている感じがあるので、スピード感ではMOVEはF7 Plusに劣ります。また音場の開放感もいまいちに思うかも知れません。
この曲の走る感じを楽しみたいならF7 Plusはよいお供です。主役の木管の音に情熱を感じながら聴きたいという場合は、MOVEのほうがより楽しいでしょう。ただし、MOVEの音はギラつくので、音楽に清潔感を求めている人はF7 Plusの方が合っているはずです。
TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』オリジナルサウンドトラック
【5】総評「開放的でリズミカルなサウンドを楽しみたいならおすすめ」
充分な重みのある低域、リズミカルで開放的な音楽表現が魅力の機種です。この価格帯ではビルドクオリティとデザインも洗練されている部類に入り、スペック的にも優秀なので比較的死角がありません。低域の重みが少し強いのが好みを分けるかもしれませんが、比較的万人におすすめできそうな機種です。
- 見通しの良い音場
- 重く安定感のある低域
- 派手さは不足気味
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。
*2:全般的に言えることですが、この評価は主観的であり、しかも音はバランスと好みが大事だということに留意して下さい。Aのほうがその分野では優れていると判断していますが、たとえばシャリ付きが苦手な人はクラッシュがAの評価のイヤホンは避けるべきです。あと稀にSが出てくると思いますが、Sは「やりすぎ」という意味で、必ずしも良い評価とは限りません。ただしその音質特性が好きな人には良いでしょう。
*3:価格帯を考慮した相対評価です。
*4:価格帯を考慮した相対評価です。
*5:価格帯を考慮した相対評価です。
*6:主にサ行が刺さるかどうかです。スーハーしている感じが強いかです。
*7:主にツ音が尖るかどうかです。Aに行くほど尖ります。