DTMerにとって最も基本的な投資対象がオーディオインターフェースです。それにより、ラップトップのようなシンプルなPC環境を使ったホーム・ユース・レベルで作曲をするDTMerは、必要なホーム・スタジオ・セットアップを手に入れることができます。
ミュージシャン、DJ、ビートメイカーなど、レコーディングやプロダクションを始めたばかりの人でも、オーディオインターフェースは最初に購入すべきものの一つです。
つまり、DTMerをはじめとした音楽制作者にとって最初に問題となるのは、楽器を録音し、スタジオのヘッドホンで作品をモニターし、スタジオのモニターで作品を再生するという、インターフェースの基本的なメリットをすべて実現できる製品を、価格を考慮しながら見つけることです。
さて、当ブログでは以前、エントリーレベルのDTMerのためにおすすめのオーディオインターフェースを3機種、シンプルに紹介しました。今回の記事はその続きです。
この記事では入門者よりはもう少し知識のある初級クラスのDTMerから中級・上級クラスのDTMerを対象として、長く使えるスペックの良いオーディオインターフェースを紹介します。
Audient iD4mkⅡ
できるだけ物事を安く、シンプルに仕上げたいが、品質面で妥協するつもりはまったくない、そんな徹底的なコストバリュー重視のDTMerにとって最も注目すべき製品が「Audient iD4mkⅡ」です。
Audientがこの製品で成し遂げたことは明快です。とにかく安く、コンパクトでありながら、スタジオレベルに十分匹敵する環境を提供することです。その結果としてAudient iD4mkⅡは25,000円程度の、オーディオインターフェースとして廉価な価格に抑えながら、スペック的にはハイエンドクラスに匹敵するレコーディングスペックを実現しました。
作り込んだのは録音部だけではありません。極めてコンパクトなデザインでありながら、iD4mkⅡはクラスをリードするヘッドホンアンプを搭載しており、スタジオモニターヘッドホンを十分に駆動できるパワフルで低ノイズなヘッドホン出力を実現しています。シンプルでありながら、スタジオクオリティを完全にホームオーディオに持ち込むことができるiD4mkⅡは最も手頃な値段で上級レベルのDTMerを満足させることができる製品です。
美点
- コスパに優れた録音品質
- スタジオモニターヘッドホンを駆動できる出力部
- スペックに対して非常に安い
欠点
- ch数が少ない
- IEMの駆動に向かない
- シンプルすぎる外観
MOTU M2
MOTUは品質の高いオーディオインターフェースを作っており、多くのサウンドエンジニアから注目されているブランドです。M2は多くのプロオーディオライターや現場のエンジニアを驚かせ、低価格でありながらハイエンド並みの音質を持っていると絶賛されました。
実際のレコーディングスペックやヘッドホンアンプのパワーはAudient iD4mkⅡのほうが優れていますが、IEMさえも駆動できる非常に低い出力インピーダンスや高度にバランスの取れたスペック構成、そしてグラフィカルなモニターを備えている点で、MOTU M2はAudientより使い勝手で勝ります。スタジオ並みのヘッドホン駆動力とレコーディングスペックを重視するならiD4mkⅡに分がありますが、バランス感覚と万能性ではMOTU製品に軍配が上がるでしょう。スタジオクラスの高インピーダンスのモニターヘッドホンを使うなら、Audientが向きますが、イヤホンや一般的なヘッドホン中心に作曲している人にはMOTUのほうが最適です。とくにオーディオ測定の用途ではMOTUのほうが全般的に優れています。
美点
- コスパに優れた録音品質
- IEMを駆動できる出力部
- スペックに対して非常に安い
- グラフィカルでわかりやすいインターフェース
欠点
- ch数が少ない
- 600Ωクラスのスタジオモニターヘッドホンを駆動するにはわずかに不足するアンプパワー
Audient iD14mkⅡ
Audient iD14mkⅡはiD4mkⅡの上位機種で、魅力的なスペックはほぼそのままに4chライン出力に対応したモデルです。ノイズフロアはiD4mkⅡよりわずかに低くなっており、数十万円クラスのハイエンドオーディオインターフェース並みのクリーンな録音が可能です。
その他の特徴もiD4mkⅡと似ており、コンパクトな筐体でありながら、大食らいのスタジオモニターヘッドホンを問題なく駆動でき、スタジオの環境をそのままホームオーディオに持ち込むことができるというコンセプトが貫かれています。この機種も性能に対して廉価に抑えられているので、iD4mkⅡのch数で物足りない場合は、こちらを検討するのが良いでしょう。
美点
- コスパに優れた録音品質
- スタジオモニターヘッドホンを駆動できる出力部
- スペックに対して非常に安い
欠点
- IEMの駆動に向かない
- シンプルすぎる外観
Antelope Audio Zen Go Synergy Core
オーディオインターフェース界隈で今最も注目を集めるブランドの一つがAntelope Audioです。Antelope製品はだいたい10万円以上するので、DTMerが気軽に使えるという機種は少ないですが、Zen Go Synergy Coreは数少ない例外です。Antelope Audioが携帯可能なオーディオインターフェースとして発売したこのエントリーモデルは、コンパクトな筐体に評判の良いAntelope Audioの上位機種並みの性能を収めています。
ヘッドホン駆動力などは強力ではないので、据え置きとして考えると、Audient iD14mkⅡのほうがスペック的には優れていますが、Antelope Audio自慢の多数の無料エフェクトが同梱されており、サードパーティーメーカー製のプラグインを拡張することもできます。Antelopeサウンドの入門機として本格的な作曲に必要なプラグインを備えており、スタジオなどにも気軽に持ち運べる大きさも魅力です。モバイルバッテリーからも動作できるUSBバスパワー対応機種なので、外出先で電源を気にせず気軽に使えます。こうした点でサブオーディオインターフェースとしての使い勝手にも優れているので、初心者が長く使える製品です。
美点
- コスパに優れた録音品質
- 上位機種並みの豊富なプラグイン
- 携行性が高い
欠点
- 強力ではないアンプ部
- Audient iD14mkⅡに比べると性能に劣る
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