1万円台中華イヤホンの人気機種FiiO FH3
FiiO FH3をご存じでしょうか?これはおそらく今年最も話題を集めたイヤホンの一つです。今年FiiOはハイブリッドIEM FHシリーズに新たなメンバーとしてFiiO FH1sとFH3を加えました。FH1sは人気のFH1のリファインモデルで、こちらも好評を博しましたが、オーディオファンにより注目されたのはFiiO FH3のほうです。
FiiO FH5とFiiO FH7に加えて、FH3が加わったことで、FHシリーズのラインナップがようやくつながりましたが、FH5とFH7の名声にたがわず、FH3は高い完成度を持っています。それは私のお気に入りの中華イヤホンの一つであり、HiFiGOも2020のベスト中華イヤホンを数えた時に、真っ先に挙げたのがFH3でした。
今年を代表するイヤホンの一つと言ってもよいこのFiiO FH3について、この記事では海外のレビューをまとめ、改めてその完成度を振り返ってみたいと思います。
FiiOについて
2007年の創設以来、FiiOはトップブランドの1つになるために日夜努力を惜しんでいません。かつてはあまり知られていないブランドでしたが、イヤホン好きであれば、いまやFiiOの名を知らない人はいないでしょう。10年以上の懸命な努力を通じて、FiiOは自らのブランドの名前を不朽のものとしました。
FiiOは中国を代表するイヤホン製造メーカーであるだけでなく、アンプや、なによりデジタルオーディオプレーヤーでその名を知られています。2020年はFiiO M15とともに始まったことを覚えていますでしょうか?
FiiO FH3の技術仕様
- 周波数応答:10Hz – 40kHz
- ドライバー:10mmメッキDD、Knowles ED30262ミッドレンジドライバー、KnowlesRAD33518ツイーター
- インピーダンス:24Ω
- 感度:114dB
- 重量:イヤホンあたり7.3g
パッケージ内容
- FiiO FH3本体
- LC-3.5Bケーブル
- リジッドクリスタルペリカンケース
- ソフトポーチ
- 多数のイヤーピース
海外レビューまとめ
引用個所については例のごとく適度に超訳です。
everyday listening
長所
- 快適で分離性の高いハイブリッドデザイン
- 優れたビルドクオリティ
- クリーンでバランスの取れた中域
- ダイナミックでありながらコントロールの効いた低域
- 優れた質感で滑らかな低域
短所
- 重低域が影響して、音場は小さいように思える
短評
少し狭い音場と少し目立ちすぎる重低域を考慮してもなお、FH3は非常に魅力的な価値を持った優れたIEMです。
優れた開梱体験
興味深いS.TurboシステムやKnowles製ドライバーについて語った後、everyday listeningはFiiO FH3の素晴らしいパッケージに言及します。保管用の頑丈なペリカンケースや、携行用のソフトケースのほかに、11種類ものイヤーピースが付属することに読者の注意を向けます。実際のところ、FiiO FH3のパッケージは価格帯では非常に優れており、バランスケーブルが付属しない以外、欠点はないように思えます。
FiiO FH3のデザインはFH5やFH7と共通の波紋をイメージしたデザインになっている点に注目した後、レビューの関心はケーブルに向きます。FH3のケーブルは最もしなやかとは言えないまでも、頑丈さで優れることに言及した後、ケーブルでわずかに生じるマイクロフォニックノイズを指摘します。タッチノイズの問題を指摘しているのはeveryday listeningのみではないので、人によっては少し気になるかもしれません。
FiiO FH5より均整の取れた音質
everyday listeningはFiiO FH5を比較対象として音質を考察しています。総じてFH5よりフラットでバランスが取れている点を指摘した後、FH5より重低域が強化されていて、ライブ感が強い点を指摘しています。この点は私もTri Starseaのレビューで比較した時に簡単に触れましたが、FH3の低域は人によって少し強いと感じられる可能性があります。
everyday listeningもその可能性を十分に考慮に入れつつ、しかし、過度に感じるほどではない適切な範囲に収まっていると判断したようです。そして、低域の構造について、中低域への傾斜を適切に解説し、それが「色調をあまり変えずに深みと豊かさを提供」することに言及します。いくつかのレビューで何度か私も言及したことがありますが、これは最近の中華イヤホンで流行している低域の形で、フラットに近い自然な質感と聞き心地を維持しつつ、階層性を強調し、熱気も引き出して深さと臨場感を意識させて、ダイナミックに聴かせることができるという利点があります。
everyday listeningのレビューを読んでいて、私が特に気に入ったフレーズが「パーカッションや鋭いアタックよりもボディとテクスチャーに重点が置かれている」という一言です。これはFiiO FH3のサウンドの一面を良く捉えているように思われます。FiiO FH3の中域は滑らかで、私にも、強いアタックより、のびやかさと繊細さにより重点を置いているように思われます。スネアよりはシンバルの方に重点が向きやすい音に思えますが、この点もeveryday listeningがハイハットの魅力的な煌めきに注目しているのを読むのは我が意を得たりという気持ちになります。
いくつかの印象的な比較レビュー - Moondrop Starfield, BQEYZ Spring 2, FiiO FH5
everyday listeningはFH3といくつかのイヤホンを比較しています。
Moondrop Starfieldとの比較ではほぼ同等に思えるバランスの良さを指摘しつつも、Starfieldの音がより直線的でフラットに近く、レファレンス性が高いことを指摘しながら、それでもFH3がよりクリーンで明瞭性に優れていると述べています。
BQEYZ Spring 2との比較では、Spring 2のより暖かい中域表現と鋭い高域に注目し、ディテールの点でSpring 2が優れているであろうことを示唆します。私の印象でもBQEYZ Spring 2のボーカルはより濃厚で甘く、エッジはより鋭く聞こえますが、低域のリラックスした雰囲気が全体の印象を調和的に感じさせます。everyday listeningは音の分離感でFH3に軍配を上げていますが、私もこれには素直に賛成します。
FH3がFH5よりバランスが取れているというeveryday listeningの指摘は興味深いところです。FH5はFH3より中域で豊かですが、高域のディテールで劣ると述べています。それでもFH5の音場の方が広く、豊かでリッチなサウンドを聞かせてくれると述べています。
Prime Audio Reviews
長所
- 素晴らしいビルドクオリティ
- 良いアクセサリーバンドル
- 取り外し可能なケーブル
- ナチュラル、適切なノート、広い音場
- クラス最高のオーディオ品質
- コストパフォーマンス
短所
- ケーブルは重く、マイクロフォニック(タッチノイズ)がある
箱出しから印象の良い音
開梱体験の楽しさや付属品、ビルドクオリティについて語った後、Prime Audio Reviewsはいよいよ音質について語ります。Prime Audio Reviewsにとって、FiiO FH3の印象は箱出しから良好で、最初はウォームで聴き心地の良いサウンドに思えたようですが、聴いていくうちに評価は劇的に変わったと述べています。とにかくPrime Audio ReviewsにとってFiiO FH3はお気に入りのようで、非常に褒めています。
FH3は有機的で調和的、自然な音楽を聞かせますが、それでいて優れた分離感とディテールを持っており、解像度に優れていると述べています。さらに音量レベルを上下させても音のバランスが良い点を挙げ、快適なリスニング環境を提供することを説明します。
Prime Audio Reviewsにとって、FH3とは何かといえば、それはおそらくバランスの良いサウンドの結晶というべきものなのでしょう。自然、均一、こうした言葉によってFH3のサウンドの堅実で均整の取れた側面を形容します。そしてやはりPrime Audio ReviewsもFiiO FH3の安定感のある深い低域に着目し、存在感があり、鳴動が確かなことを語らずにはいられません。
Prime Audio ReviewsはFH3の音場を広いと感じたようです。それは価格帯で抜群ではありませんが、十分な音場を提供すると述べています。私の印象ではFH3は音場の高さはあまり高くないように思いますが、奥行きは少し優れていると思われます。
いくつかの比較レビュー - Moondrop Starfield, IKKO OH1
Prime Audio ReviewsもMoondrop Starfieldを取り上げずにはいられないようです。今年の初めに最も注目された中華イヤホンですから、当然のことでしょう。Prime Audio Reviewsは中域のクリア感でFH3が勝っていることを指摘し、解像度ではStarfieldより高いと述べています。everyday listeningも同じようなことを述べていましたね。
IKKO OH1との比較では、OH1がFiiO FH3に比べてよりV字型(ドンシャリ)に傾いていることを指摘し、低域はほぼ同等にしても、高域でOH1がより金属的な響きを持っていることを指摘します。総じてFH3のほうが音が自然だと述べています。
Moonstar reviews
長所
- 深く、コントロールの良い重低域
- シルキーでスムースな高域
- 全体的な音色
- 美しいデザイン、優れた快適性、堅牢なビルドクオリティ
- 豊富なアクセサリーパッケージ
短所
- 低音域でのわずかなロールオフ
- サウンドステージの幅
- ケーブルは少し硬い
制御された低域、情緒に満ちた中域、絹のような高域
Moonstar reviewsも中低域より重低域が強調された深みとコントロールの効いたFiiO FH3のローエンドには注目せざるを得ないようです。ベリリウムコーティングされたダイナミックドライバーの作り出す低域は、重低域を支配的に感じさせるほど強力に印象付け、深くまで到達する拡張性を実現させていると述べます。この点に関しては私のレビューを含め、ここまでの文脈で何度も取り上げました。こうした深く拡張された低域構造によって、EDMからメタルミュージック、JAZZにいたるまで、あらゆる音楽で効果的に感じられる低域が形成されると述べています。
Moonstar reviewsによれば、FiiO FH3の中域は中低域に対して少し後退的なので、温かく情緒的な雰囲気を持っており、ボーカルを印象的に聴かせます。滑らかでディテールがありますが、聞き疲れや歯擦音の刺さりとは無縁だと述べています。楽器の定位は自然に感じられたようですが、Moonstar reviewsは重低域の存在感が気になり、中域が埋没的に思えたようです。重低域のせいで分離はそれほど高くないと述べています。
Moonstar reviewsはFiiO FH3の高域を柔らかく滑らかなものに感じており、風通しの良さと輝きが良好で、絹のようだと述べています。
音場は幅は適度なレベルで、奥行きはやや優れていると述べています。
IKKO OH1との比較
Moonstar reviewsもIKKO OH1との比較を載せています。男声ボーカルはOH1が優れており、女声ボーカルならFH3のほうがいいだろうというのは明確でわかりやすいですね。実際、中低域はOH1のほうが豊かなので、より深みのある音がします。
まとめ
私の良く読むHeadfoniaとHeadfonicsのレビューについては今回取り上げていませんが、言っていることはほとんど一緒なので省略しました。省略したレビューも含めてレビュアー皆が指摘しているFiiO FH3のチャームポイントは結局何だったのでしょう?整理してみましょう。
まず第一のポイントは音質のバランスの良さです。FiiO FH3はW字型と言えるようなサウンドシグネチャーを持っており、高域と低域が中域から離れるように聞こえるようになっていて、全体の拡張性、つまりレンジ感が良い印象を与えます。そしてそれぞれの音のパワーバランスはよく均衡するようにチューニングされているので過不足がありません。
第二のポイントはライブ感のある重低域です。FiiO FH3はバランスが良い音質を持っていると言いましたが、重低域は少し強めに聞こえるようになっており、深いところで鳴動する力強い音を感じることができます。それはほとんどの場合、音楽全体を濁らせるほどには支配的にならないとは思いますが、人によっては気になるかもしれません。
第三のポイントはパッケージクオリティの高さです。付属品には誰もが満足しています。
こうしたポイントを踏まえて、レビュアーは皆、FiiO FH3のコスパの良さを称賛しています。2万円以下でイヤホンを選ぶ場合、誰もがとりあえずFiiO FH3は候補に入れておいた方がいいかもしれないと助言することでしょう。
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