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【コラム】無駄に高い出費をさせられるオーディオ情弱にならないために知っておきたいこと

ヘッドライン

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この記事では自分に合った本当に必要な機器を探すために障害となる固定観念によって、無駄な出費を強いられるオーディオ情報弱者を脱するためのポイントを解説します。

 

 

オーディオ情報弱者とは何ですか?

オーディオ趣味を始めると、多くの人はすぐに困難にぶち当たります。オーディオにはさまざまなスペック情報があり、初心者にはわかりづらいものです。オーディオ製品を適切に選ぶにはさまざまな知識が必要ですが、そういった必要知識を学ぶ場は多くありません。

 

結果として、オーディオ界隈はとくに知識の少ない情報弱者があふれています。こうした情報弱者は情報を適切に処理できないので、以下のようなものに頼ってオーディオ製品を選ぶ傾向にあります。

 

  • 値段(情報弱者は価値判断の基準が少ないので、値段を尺度にしがちですが、オーディオでは値段で選ぶことは基本的に良い製品から遠ざかることです。オーディオ機器を値段で判断している人は基本的に信頼できません。これについては詳しく後述します)
  • Philewebなどのオーディオ情報サイトやオーディオ雑誌
  • SNSなどの口コミ
  • 自分が権威があると思う人、インフルエンサーの言動

 

オーディオ雑誌やオーディオ情報サイトのレビューは基本的に当てになりません

PhileWebやStereoSoundといった媒体に掲載されたレビューを読んで商品を買うことは危険です。職業ライターは基本的に「いいこと」しか言いません(彼らが基本的にメーカーからの宣伝料で記事を書いていることを忘れずに)。そして、レビューの根拠となる客観的なデータが載っていることは稀です。

 

たとえばPhilewebの以下の文章を読んでみてください。

 

肝心のサウンドを確認すべく、A級動作モードにしてイヤホンfinal「A8000」を接続してみる。なんと、自然なサウンドだろう。エネルギッシュでキレのよい、印象的な表現でありながら、音に厚みがあり心地よい。歪み感のない、とても良質なサウンドだ。おかげで、女性ボーカルはとてもリアルな歌声に感じられるし、ピアノの音もヌケのよい伸びやかな音色に感じられる。


HIFIMAN「Edition XS」でヘッドホンとの相性も試してみたが、こちらもなかなか。S/N感のよいクリアネスな表現のおかげで、スムーズな音場表現と実体感のある力強い演奏とが巧みに両立されている。


正直、DAP直でここまで幅広い製品、特に高級イヤホン・ヘッドホンに対応できる製品はそうそうない。A級動作アンプの面目躍如といったところか、「R5 Gen2」はエントリークラスDAPとは思えない格別のサウンドを持ち合わせているのは確かだ。

https://www.phileweb.com/review/article/202206/10/4740_2.html

 

何を言ってるかわかりますか?「自然なサウンド」とはそもそもどういう意味でしょう?人間が音を自然と感じるための要素はいくつかあります。中域の質感の正確性、歪みの少なさ、倍音表現のつながりのよさ、定位感の正確性、位相の一貫性などがありますが、それに関するデータが一つも示されていません。

 

「相性」とは何でしょう?インピーダンスのマッチングが適切という意味でしょうか?

 

「S/N感の良いクリアネスな表現」とは何でしょう?S/N比のスペックについて言ってるのでしょうか。実は違います。S/N感というのは最近はやりの謎オーディオワードの一つで、単純に言えば「クリアに感じられる」ということをかっこよく言うための枕詞のようなものです。

 

R5 Gen2はA級動作アンプモードでもエコノミーモードでも聴感上感知できると科学的に言われているノイズを大幅に下回っているため、ここを「S/N比」で表現すると厳密性が求められるので、科学的には問題が出てきます。なので、客観的裏付けの必要のない「S/N感」という謎ワードを持ちだし、「スペック上は聴覚で差が感じられるレベルではないが、気持ち的によくなったと思う」ということを説明しているのです。

 

「正直、DAP直でここまで幅広い製品、特に高級イヤホン・ヘッドホンに対応できる製品はそうそうない。」という部分について、本当にそうだと思いますか?同じ価格帯にはiBasso DX160という名機がありますが、幅広くヘッドホンやIEMを駆動できる優秀な製品として知られています。というより、DAPというのは高級イヤホンやヘッドホンを駆動するために設計されており、最近のDAPは出力インピーダンスが非常に低く、アンプ部も強力なものが搭載されていることが多いので、どれを使っても適正音量であれば高級イヤホン・ヘッドホンに概ね対応できます。R5 Gen2のスペックを確認すれば、むしろiBasso DX160のほうが優れていると思うでしょう。

 

下にそれぞれのスペックを示しますが、少なくともスペック上はどっちがより優れていそうかすぐわかります。「正直、DAP直でここまで幅広い製品、特に高級イヤホン・ヘッドホンに対応できる製品はそうそうない。」という文言に客観的な裏付けはなく、これは感想を元にした単なる宣伝文句です。ちょっとでもDAPに詳しい人はすぐに客観的事実とは言えないということはわかるでしょう。

 

HiBy R5 Gen2

HiBy R5 Gen2のスペック

iBasso DX160のスペック

iBasso DX160のスペック

 

データを示さず、聴感で判断しているレビューは当てになりません

youtubeやブログ、SNSでもオーディオレビューは溢れていますが、基本的に聴感レビューは当てになりません。音量によって音の聞こえ方は異なり、個人ごとの快適音量も異なり、個人間で音の好みや音の聞こえ方に差があります。年齢や若年性難聴などによっても聴覚は変化します。つまり、個人個人が聞いている音は異なります。そのため、他人の聴感の印象をそのまま聴いたり読んだりしても、それはほとんど当てになりません。

 

この記事にあるように、訓練を行うことにより、こうした聴感差に関係なく良い音を判別することができるようになります。ところで、この記事では聴感に関して「オーディオレビュアーのパフォーマンスが低い」「販売店員のパフォーマンスが良い」と書かれていますね。海外の例なので日本でも状況が全く同じとは思われませんが、おおむね当たっているのではないでしょうか。

 

つまり聴感に関していえば、オーディオレビュアーは一般人と変わらず、ほとんど当てにならないので、聴感だけでレビューしている人の言葉は基本的に信頼できません。聴感の印象を聴くなら「勤務年数の長い」販売店員(40代以上くらい?)に聴いたほうがいいかもしれませんね。

 

適切な測定器を使っていない人のレビューは当てになりません

イヤホンやヘッドホンの周波数特性カーブなどを見ることがあるでしょう。これらは信頼できますか?

 

さて、知識のない人が周波数特性を見ることはむしろ危険です。なぜなら、周波数特性は測定器具を用いて測定されるのですが、そもそも測定器具に関する知識がなければ、その測定データが正しいかわかりません。基本事項としてその周波数特性が711カプラーで測定されているか確認しましょう。

 

さらにたとえば711カプラーのような測定器具であっても、挿入位置によって測定結果が変わりますが、適切な挿入位置で測定するためには、あらかじめその挿入位置を特定する測定が必要です。これには人の頭部を模した測定用のダミーヘッドによる測定が必要不可欠ですが、個人でそれを揃えている人は稀でしょう。

 

次に、711カプラーの測定値にも問題があります。イヤホンの音には実際には耳介の影響や一部の骨伝導の影響があります。一般的な711カプラーは耳の内部のインピーダンス特性を比較的忠実に再現しますが、耳介の影響や気導音ではない骨伝導を再現できません。したがって、より正確な周波数特性を得るためにこれらを再現している器具を使用する必要があります。当ブログで有料で公開している測定結果は専門の測定器具を用いた、耳介や骨伝導の影響を含めた人の聴感にさらに忠実な測定値になっています。もちろん無料で公開しているカプラーの測定値もその測定値に基づいて正規化されています。

 

さて、肝心なことです。こうした測定結果は個人の聴覚特性と完全に一致するわけではありません。ときどき浅い知識で「だから周波数特性の測定結果を見ても意味がない」という人がいます。しかし、そのような見解は完全な誤りです。711カプラーの測定は規格化されており、音を表現する国際共通言語のようなものです。個人の聴覚が異なっていても(むしろ異なっているからこそ)、規格化されている測定器具を用いることによって初めて、共通にオーディオ製品の音を理解することができます。

 

したがって、711カプラーによる周波数特性を載せているサイトは基本的にはオーディオの共通言語を理解している人間が運営していると判断できるため、信頼性は相対的に高くなります。つまりしかるべき最低限の測定結果のないサイトは運営者のオーディオリテラシーがそもそも不足していることは明らかなのですから、信頼するなんて論外です。

 

しかし、注意しなければいけないのは周波数特性が載っているだけで信頼性が高いわけではないということです。専門的な器具を使って測定されていない周波数特性を載せているサイトはむしろ信頼性は低い可能性が高いと言えるでしょう。なぜなら、もし専門的な器具を使わずに周波数特性を測っているとしたら、それは測定値の重要性を軽視していることと同義だからです。もちろん専門的な器具を使っていても様々な要因により測定結果は多少異なりますから、実際に周波数特性を読むためには、そのレビュアーがどのように測定しているかも含めて推察して読み解く必要があり、訓練と知識が要求されます。

 

したがって初心者は、711カプラーを使って測定しているサイトはそれ以外のサイトとは比較にならないくらい信頼性が高いということだけを理解すれば問題ありません。測定結果のないサイトは聴感だけで判断しており、客観的に裏付けをしていないのですから、レビューサイトとは厳密には言いません。前節で確認したように、レビュアーの聴感は基本的に当てになりません。

 

オーディオは値段で判断してはいけません

まずこの事実を科学的に理解するために、過去に行われた検証を確認してみましょう。

 

結論を見ればわかる通り、イヤホンに高い値段を払えば払うほど、平均的なパフォーマンスはむしろわずかに悪化します。結論はイヤホンの価格と音質には相関関係がないというものです。

 

実はこれは私のこれまでのレビュー結果ともおおむね一致します。私はいくつかの測定値に基づいてオーディオスペックやサウンドバランスの良し悪しを算出していますが、それに基づけばイヤホンに数万円以上払う必要は基本的にありません。いまのところ1万円台くらいでむしろ最も平均パフォーマンスが良くなります。面白いことに、オリーブ博士も最もパフォーマンスの良い機種を$100(約1万円)で見つけました。

www.ear-phone-review.com

 

この点について、別の研究でも周波数特性を音質の根幹と考える場合、価格は全く考慮するに値しないという結果が報告されています。

 

これまで科学的に行われた調査によると、消費者がどのモデルを購入するかという選択に影響を与える要因は、主にワイヤレス機能と形状、デザイン、快適性などの属性に基づいていることが示されています。興味深いことに、音質は購入の意思決定の主要な属性ではないようです。

今回の私たちの調査では測定された周波数特性レスポンスとヘッドホンの小売価格との間に相関は観察されませんでした。

 

 

上記の研究では、消費者は購入に際して実際には音質をほとんど考慮していないという先行研究も紹介されています。

 

実際のイヤホンやヘッドホンを調査した科学的にまともな研究では、今のところ、イヤホンやヘッドホンの価格と音質の良し悪しに相関関係はないという結果しかありません。

 

次に厳密に測定してデータを公開しているAudioScienceReviewの評価値を見てみましょう。

 

https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/burson-soloist-3xp-review-headphone-amp.34353/

https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/burson-soloist-3xp-review-headphone-amp.34353/から引用

 

ヘッドホンアンプの評価ランキングですが、最も優秀とされるTopping L30は¥15,000です。2位のTopping L50は¥22,900です。少なくともスペックでは最も優秀なヘッドホンアンプ機器は数万円台で手に入ります。

 

もちろんオーディオ製品は単純にスペックや音質がすべてではありません。音楽を聴く体験として総合的に判断すれば見た目なども重要です。しかし、誠実なオーディオレビュアーは音楽をきれいに聴くためであれば、大多数の人は高級機種を買う必要がない(むしろ高い値段を払うほど単純な音質の平均パフォーマンスは悪化する)ということを必ず指摘するでしょう。

souzouno-yakata.com

 

ではなぜ、多くの人はオーディオでは値段が高いものほど良いと思っているのでしょうか?

gigazine.net

 

それは単純にオーディオを判断するためのスペック情報が多すぎて、整理して理解できる人が少ないために、わかりやすい「見た目」とか「価格」という指標でしか判断できない人が多いというだけです。高い製品ほど外観などに高級な素材を使っていて「見た目」が良いことも多いため、音で判断することができない人は、なおさら高品質に思います。値段が高いほど「音が良い」ということを言ってる人がいたら、基本的には知識が怪しいと疑った方がいいでしょう。

商品知識がないとき、私たちは「高いモノならいいモノに違いない」と思ってしまいがちです。しかしながら、「情報の非対称性」について学ぶと「高いモノが、必ずしもいいモノであるとは限らない」ということが理解できるでしょう。

 

 

もちろん「音が良いこと」と総合的に「製品として良いこと」とは別次元の話です。実際にはSINADは多くの人にとって120も必要ありません(科学的にはそのレベルのSINADは必要ありませんし、イヤホンやヘッドホンの制約を受けます)。それに、スペックが悪いからと言って悪い製品であるわけではありません。求める音は人によって様々です。高い値段でそれが見つかることもあるし、安い値段で見つかることもあるでしょう。

 

つまり結論としてはスペックを求めるにせよ、自分好みの音を求めるにせよ、オーディオ製品では価格は音質の判断材料に全くならないということです。むしろ高い値段ほど良いという先入見に支配されていると、必要だったり自分好みのオーディオ機器から遠ざかる可能性が高いとも言えるでしょう。高級オーディオ機器にはステータスの象徴としての側面もありますから、そういうものを重視している人にはもちろん高い値段を払うことに意義はあるでしょうけれども。

 

結論

さて、このコラムの結論をまとめます。オーディオ情報弱者を脱出する方法は簡単です。

 

  • オーディオ機器を値段で判断する悪癖をなくしましょう
  • オーディオ雑誌やオーディオサイトのレビューを当てにするのをやめましょう
  • 測定値のない聴感レビューを当てにするのをやめましょう
  • 測定値が正しく測定されているか確認しましょう
  • SNSでの評価は簡単に操作されます。当てになりません。口コミを見たら、客観的根拠があるか確認しましょう
  • 知識に自信がない場合は1万円台まででイヤホンを選びましょう。平均的パフォーマンスが良く、ハズレが少ないです。良い音の製品が多いので、初心者が良い音を理解するのにも最適です。自然と良い音とは何かわかるでしょう。

 

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