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【平面磁界型ヘッドホン final D8000 レビュー】広さと奥行き感のある音場。生真面目な優等生に見えて、アタック感や低域の量感もあり、リスニング的な心地よさも実現している。おすすめ

ヘッドライン

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final D8000

final D8000

final D8000 FI-D8PAL 平面磁界型ヘッドホン

 

 

【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は重量感があるのが気になるが、側圧は自然で圧迫感はない」

おすすめ度*1

final D8000

ASIN

B076M3B85S

スペック・評価
再生周波数帯域 非公表
インピーダンス 60Ω
感度 98db
ドライバー構成

AFDS平面磁界型

音質傾向 重厚、どっしり、たっぷり、音場が広い、滑らか、シャリシャリ、音場が広い、モニター的、ほろほろ、ポロンポロン、ふんわり、ほっこり

 デザインは重厚で、装着するとどっしりとした重みを感じます。ケーブルも重いので、やや負担感が出やすいところはあります。

 

テスト環境

 今回のテストはAstell&Kern KANN CUBEHiby R6 ProCayin N6II/T01ONKYO GRANBEATで行っている。なおゲイン設定は設定上一番高いもので聴いています。www.ear-phone-review.com

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【2】外観・インターフェース・付属品「ケーブルは両出し」

 付属品は携行用のケースがついています。ケーブルは両出しです。

 

final D8000final D8000



【3】音質「音場が広いモニター的な分離感重視の音。高域では若干シャリシャリ感が派手気味で、アタック感もわずかに強い気がするが、基本的にはマイルドで聴き心地が安定している。低域のドカッも柔らかめだが、存在感たっぷり。生真面目でモニター的」

 音質的には誰でも気づきやすい特徴として、音場が広く、とくに奥行きでかなり奥まる印象があります。このおかげでどんな音楽でも距離感を取って俯瞰して眺めることが可能になっていて、モニター的に音の一つ一つの定位を広大なカンバスの上で隅々まで確認するように聞くことが出来ます。

 もう一つの特徴としては一つ一つの音の粒立ちがうまく強調されるようになっている点が挙げられます。全体として滑らかでほんのり暖かみを感じる空間の中に、シンバルや金管をやや強めに色づかせて手がかりを用意しながら、全体のシャープネスは強調せずに丸みのある音で少し色味をセーブしながら音を聴かせます。音の鮮やかさを適度に抑えていることは、第一印象でこのヘッドホンの音の印象を少し地味に感じさせる可能性がありますが、とくに眩しいキラキラした音や低域の重量感が音場で支配的になって邪魔する感じがないので、音色の変化が丁寧に感じられます。そのおかげでDAPを変えるとその変化がつぶさに把握できてしまうような、浸透性のある音響を実現しています。

 音場に適度な温もり感があり、音の広がりも良いので、音場は広めですが、あまりスカスカした印象は受けないはずです。それでもボーカルは少し遠く、少し抑揚を抑えて聞こえてくる印象はあるかも知れません。低域もドシッと強く出るよりはドカッと柔らかく広がる感じがあり、そういう意味で全体の音響は基本的に落ち着きのある温和なものになっています。音楽にアタック感や迫力といった外連味を求める人には、やや物足りない可能性はあるでしょう。表現の全体的な印象は、生真面目でモニター的です。

 

音質因子評価
音質因子 評価
鮮やかさ
(鮮やか/色味が薄い)
やや色味が薄い。中高域で艶やかさに少しの強調があるが、低域の出音はとくに地味で、全体像は若干地味めである。

鋭さ

(鋭い/鈍い)

やや鈍い。シンバルのエッジに少し細かな尖りを感じるが、全体的にはマイルドで柔らかい。
明るさ
(明るい/暗い)
やや明るい。中高域で少し艶やかさが強調され、そこがほの明るい感じになる。
派手さ
(派手/地味)
やや地味。中高域以外は色味を丁寧に抑えてあいる印象。
硬さ
(硬い/柔らかい)
やや柔らかい。中高域で少しパリッとした硬さを感じるが。基本的には柔らかい出音。
尖り
(尖っている/丸みがある)
丸みがある。基本的にシャープネスは抑えられている。
穏やかさ
(穏やか/騒々しい)
穏やか。アタック感は少しだけ強調されており、パンチも少しだけ前進している印象を受けるが、それ以上に広大で奥行き感のある音場が音が飛び出しすぎて騒々しくなるのを抑えている。
力強さ
(力強い/嫋やか)
やや力強い。低域は少しパンチが強いし、アタック感もやや強調されているので、音楽全体に躍動感がある。ただし音の尖りはマイルドになれているうえ音場も広いので、相当音量を上げないと圧迫感を感じないだろう。
豊かさ
(豊か/貧弱)

やや豊か。中域での音場の広さもあり、密度感は高くないが、音の広がりもよく、低域もドカッと量感のある感じなので豊かな音色に感じるだろう。

太さ
(太い/細い)
やや太い。ボーカルが中域でふっくらした甘味を出すところはあり、少し太めの印象を受ける。
手触り
(ざらざら/滑らか)
滑らか。全体的に尖りを抑えた感じで、最も尖りを感じるハイハットも清潔で少しだけシュリシュリしたような、シルキーな感じがある。
粒感
(きめの細かい/粗い)
ややきめの細かい。シンバルの粒感がとくに細かく感じられ、しかもそれが少し目立つような気がするので、その印象が少し強い。
清潔感
(澄んだ/濁った)
やや清潔。全体的に音場に配慮したどこかの音域を出し過ぎないようなバランスになっている。下の方は少しもっさり、上の方は若干派手さを出しつつも、全体を眺めてみると、大抵の曲で少しすっきりしているくらいになります。
潤い
(潤いのある/乾いた)
普通。潤い感のあるDAPや曲では充分に潤いを感じられる。
重さ
(重い/軽い)
やや重い。低域に少し重量感があり、音場全体の重心はやや下がって感じられる。

 

ボーカル因子評価
ボーカル因子 男声 女声
澄んでいるか
(澄んでいる/濁っている)
やや濁っている 普通

明るいか

(明るい/暗い)

普通 普通

伸びやかか

(伸びる、突き抜ける/天井感がある)

やや伸びやか やや伸びやか

潤っているか

(しっとりしている/乾いている)

ややしっとりしている 普通

太いか

(太い/細い)

やや太い やや太い

濃いか

(濃い/薄い)

普通 普通

子音が強調されるか

(目立つ/目立たない)

目立つ 目立つ

 

空間因子評価
ボーカル因子 評価
主に中域の密度
(ぎっしり/スカスカ)
普通
主に高域の高さ
(抜けが良い/天井感がある)
やや天井感がある
主に低域の深さ
(深掘り感がある/浮き上がりがよい)
深い
主に低域と中域の横幅
(広い/狭い)
広い
主に中域の奥行き感
(奥まる/前屈み)
奥まる

 

美点
  1. 暖かみのある聴き心地の安定した音
  2. 音場が広く、奥行きにも優れ、音が良く整理されて聞こえる
  3. 音を剥き出しにせず、適度に丸く温和な広がりを持って聞こえる
  4. 低域はほどよい存在感があり、深みと重みを音場に出す
欠点
  1. 奥行き感が強すぎ、音楽をやや俯瞰しすぎてしまう感じがある
  2. 音が温和で少しぼんやりした印象を受ける
  3. 外連味に欠ける

 

[高音]:高域の高いところに強調があるのか、シンバルのディテールは細かめで空気感少し多め、ボーカルの子音もややはっきりと刺激強めに聞こえる。しかし基本的にはマイルドカーブしている印象で、尖る感じは強くない。中高域に少し強調があり、艶やかさと強調され、アタック感も少し強く感じる。私の印象としては高域ではシンバルのディテールに少しフォーカスが集中している感じがある(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:中域はほどよく中庸にモニター的という感じで、ほどよく暖かみと広がりを感じつつ、奥行き感と広さを味わえる。とくにこの中域のレイヤー構造を感じる奥行き感の出し方はかなり感心する。しかし豊かという感じとは言い難く、場合によっては少しスカスカ感を感じるところもある。音の印象は膨らんだり細くなるというよりは平坦というほうが正確かも知れない。私がD8000の音に生真面目という印象を持ってしまうのは、おそらくこの中域の抑揚を抑えたような感じのせいかもしれない。

[低音]:100hz~40hzまで中庸で少しはっきりした感じのビーとブーの間くらいの振動。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域はモニター的で見通しが良く、タムがややふくよかにポポンと広がり、ベースやキックはややおとなしいかなといったバランスだが聞こえは良く、少し浮き上がりがよい感じがある。スピード感は良好。タムが膜を張るように弾ませる床面の下でさらに深さを感じるような印象になる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:奥行き感と広さを強調し、深さも感じさせる音場に、高さもそこそこ感じさせる。音場の雰囲気はやや温かめで温和(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:率直に言うと、かなり好みなドラムス表現。まず、上辺はパチパチ鼓面に弾ける感じとバシッという張りと粘りが丁寧に表現され、その衝撃感をフロアタムが少し膨らみながら丁寧に支えてクッションになる。キックはその下で少し地味めにしかし、横幅広くズドンを柔らかめに聴かせてくる感じ。少し深くて重い感じの樽形のバッツンバッツン。ハイハットはチンチンからシャリシャリまでかなり立体的に表現されるが、上で尖る感じはセーブされていて、耳当たりが良い。全体的にディテールが良く、リズムは満足度が高いだろう(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:男声ボーカルは普通くらいの濃さで、コクも少し出すが、上ではやや媚びた感じで伸びる。女声ボーカルはふっくらした甘味を出しつつ、上で少し媚びるが、基本的には温和傾向。20代から30代くらいのちょっと落ち着きのある印象を受ける。男声も女声も子音は強調気味になっており、ボーカル表現の細かなディテールが少し明確にされる感じがある。

 

【4】官能性「総合すると正統的なモニターサウンド」

沼倉愛美「叫べ!」

叫べ

叫べ

【Hiby R6 Proで鑑賞】この曲を聴くとわかりますが、全体的に温和なようでいて、アタック感は意外とよく出ます。ギターは結構エッジをのびやかに出して威嚇しますし、タムも重みと広がりを出してランブルしてくれます。ボーカルはちょっと子音が強調され、動きのベクトルで解析されるように方向感を明瞭に感じさせつつ、サビでは地平線から一気に上に持ち上がっていくような力学的な動きが見える印象があります。そして音場に奥行き感と広さがあり、力強い音のそれぞれが混濁する感じが全くありません。弦楽はなめらかで色味を強調せずに伸びますが、意外とヒステリックで躍動的です。こうしてエネルギーに満ちている感じはありますが、一方で全体を見回すと、それぞれが充分に己のエネルギーを放射してなお空間が余っている印象があるほどに、音空間に余裕が持たされています。

 


My LIVE(通常盤)

 

OERSAMA「OPEN THE WORLDS」

OPEN THE WORLDS

OPEN THE WORLDS

【KANN CUBEで鑑賞】まず個人的な感想から言わせてもらいますと、KANN CUBEも音場広めに真面目に音を分離させて分析的に聴かせる感じがあるので、D8000と組み合わせると音楽表現が全体的に分離重視でかっつりした、非常に真面目な表現をしているような印象を受けます。もともとD8000は空間的余裕がある感じでしたが、KANN CUBEと組み合わせるとさらに余裕があって、音は充分にパワフルなのに圧迫感がありません。たとえば低音の出し方はドカッと出すにしても、充分に重みを出しつつ、音場にあまり影響力が出ないような、それ単体でドカッと完結して他の音を引っ張らないような、モニター的な分離感があります。

 そのため全体を眺めると、音の出し方が武骨で、たしかに音楽の隅々まできれいに透明に感じ取られるのですが、それぞれの音を愚直にかっつりかっつり、目立たせすぎず、しかし精密に仕上げている感じがあって、全体像は案外工業製品的で淡泊という印象を受けます。個人的にはこういう音には、なんとなく入り込めない感じがあるんですが、一方で音の一つ一つを描き分ける分離感は素晴らしく、聴き心地も安定していて、そつがありません。

 


TVアニメ『叛逆性ミリオンアーサー』第2シーズンOP主題歌「OPEN THE WORLDS」(特典なし)

 

Endorfin.「Sincuvate」

Sincuvate

Sincuvate

【Cayin N6II/T01で鑑賞】奥行き感があるので音が良く整理されているのと、中域がほどよく清潔なせいか、床面が非常にはっきり見えます。うるさくズチャズチャしません。しっかりドコドコ、パワフルな感じがありますが、それでいて中域以上をほとんどマスキングしません。全体的に広く余裕を持たせながらも、アタック感も良好で、色合い的には案外地味かなと思うんですが、電子音にあまりチャリ付く感じがなく、どちらかというと少しカッツリめに締まりよく聴かせます。ボーカル表現なんかは一見媚びた感じは少なく、ほっこり温和でありながら、子音は明確なので、口の形は明瞭です。リズムにもキレが良い感じがあるので、メリハリが良く、よく見ると眉毛から目の辺りが切れ長でキリッとしているような、イケメン風醤油顔な雰囲気の音響です。アタック感は少し高めで圧迫感は若干ありますが、混濁感はありません。

 


Sincuvate

 

Marker Starling「All I See」

All I See

All I See

【Cayin N6II/T01で鑑賞】この曲の低域の重みはしっかり出ます。ただし、少し地熱感が強く出過ぎ、パンチも強すぎるのか篭もる感じが出てしまうところはあり、透明感には欠けるかもしれません。少なくとも私はちょっとノイジーかなという印象を受けました。ただこの曲はちょっと難しいところがあって、わざと騒々しい音を聴かせている構成になっているので、少しでも低域で膨らみが強すぎるとうるさくなりやすい感じがあります。そのため、ボーカルも少し低域の影響を受けるのか、深みが強すぎて低域の重力から逃れきれず、透明感が若干足りないようです。こうして聴いてみると、万能に思えるD8000ですが、意外と低域の強い曲はうるさい感じが出やすいところはあるかも知れません。この唸る感じはKANN CUBEで聴いても出てきます。

 


TVアニメ「キャロル&チューズデイ」VOCAL COLLECTION Vol.2

 

【5】総評「若干唸りやすい低域が気になるが、総合的にはよく出来たモニターヘッドホン」

 さすがfinalのフラグシップといった感じで、実によくできたモニターヘッドホンです。広い音場表現と聴き心地の安定感をよく両立させています。完全なモニターを目指すには少しだけ低域がうるさい気がしますし、アタック感もやや強い気がしますが、そうしたリスニング的な味付けも楽しめるようになっているのが愛される所以でしょう。

 

まとめ
  • 広く、奥行き感もある音場表現
  • 音の広がりも良く、よく整理されていて、しかもアタック感とパンチもそこそこ感じられる
  • 完璧なモニターからすると、わずかに低域がうるさい

 

final D8000

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final D8000 FI-D8PAL 平面磁界型ヘッドホン

 

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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。

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