免責事項
- このレビューはShuoerから誠実な品質レビューを読者に伝えるために貸し出されたサンプルに基づいて書かれています。
- これを掲載することによる原稿料のような報酬または対価は一切受け取っておらず、個人的な試験での測定データや個人的見解に基づいて誠実に評価したものです。
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「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。フラッシュレビューの内容は完全なレビューの前の考察レビューであり、多くの場合、私の第一印象を語る内容です。
このレビューはより深い考察への入り口として、気軽な気持ちで書かれています。周波数特性を中心に基礎的なデータを示し、私は皆さんと第一印象を共有します。一緒にオーディオ製品をわくわくしながら楽しみましょう!
今回取り上げる製品は「Shuoer Tape Pro」です。
Shuoer Tape Proの概要
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~30kHz
- インピーダンス:16Ω
- 感度:105dB/mW
- ケーブルコネクタ:2pin 0.78mm
- 価格帯:10000円~20000円
Shuoerについて
Shuoer Acousticsは、高品質のインイヤーモニター、特にエントリーレベルの価格帯のEST(静電型)ドライバー採用IEMであるShuoer Tape Proで知られ、静電型IEMメーカーとしては業界で有名なブランドの1つです。しかし、このブランドの製品は低価格だけに限定されていません。
このメーカーは先進的なドライバー技術の設計・生産に長けた専門的な技術者集団を備えた確かな開発製造力を持っており、自社ブランド製品でハイエンド機種の製造においても卓越した能力を見せるだけでなく、他社ブランド製品の製造を丸ごと請け負ってもいます。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
機能的で粋なパッケージ
端的に言って、Shuoer Tape Proのパッケージは私を感動させました。それは外観の上で豪華というわけではなく、たとえば同じ価格帯でひときわ豪華なパッケージを持つReecho × Peacock Springのように華美ではありません。
しかし、必要なものがわかりやすく梱包されており、イヤホン製品としては珍しいことに製品カタログまで用意されています。カタログにはShuoerの製品が一つ一つ紹介されており、見ているだけで楽しくなります。一昔前は多くの製品に同じ会社の別製品を紹介するカタログが入っており、それを読みながら次は何を買おうかとワクワクする瞬間がありました。今、このカタログを見て、そのワクワクする気持ちがよみがえりました。粋な計らいです。
Shuoer Tape Proは標準で2.5mmバランスと3.5mmシングルエンド接続に両対応しています。ユーザーの要望を受け、耐久性の点から2pinコネクタが採用されたそうです。
Shuoerの製品カタログは読んでいて非常に楽しいです。
パッケージ内容
付属品に不足はありません。パッケージには以下のものが含まれています。
- イヤホン本体
- 2種類合計6つのシリコンイヤーピース(S/M/L)
- チューニングキット(ネジタイプ、予備部品が1種類ずつ、簡易ネジ回しが1個付属)
- クリーニングツール
- 予備用フィルターノズル
- 2.5mmバランス接続対応0.78mm 2pinケーブル
- 2.5mm→3.5mmSE変換アダプタ
- キャリイングケース
メンテナンス性が考慮されたビルドクオリティ
Shuoer Tape Proは廉価なエントリークラスモデルですが、Shuoerがこの製品を長く使ってもらいたいと思っていることは、そのビルドからすぐにわかります。
Tape Proは高級イヤホンのCampfire Audioの製品と同等に思えるくらい、精巧で頑丈に作られています。さらにメンテナンス性が考慮されており、ノズルフィルターが取り外し可能で、イヤホンの清掃も簡単にできます。ノズルフィルター部分のネジ切りはかなり精度が高く、イヤホン装着中にノズルフィルター部分が緩んでくることはないと思われます。
背面のネジは取り外して付け替えることができます。ネジを付け替えることで音導管の内部圧力が変化し、音質が変化します。ネジの色は本体色によって違います。
この銀色モデルの場合、銀色のネジが標準です。青色を付けると低域が増すようです。
ノズルフィルターは本体に標準で装着されているものだけでなく、予備に2つ用意されています。
装着サンプル
金属製で尖っている感じがあるため、少し硬い装着感がありますが、小さな耳でも収まりの良いサイズです。
音質
周波数特性
すでに述べたようにShuoer Tape Proはフェイスプレートのネジを交換することで音質が変化します。デフォルトと逆のネジ配置にすると低域が少し拡張され、高域が少し後退しておとなしくなるようです。
測定グラフは上から
- 銀色ネジの左右測定値
- 銀色ネジの左右平均
- 青色ネジの左右測定値
- 青色ネジの左右平均
- 銀と青のネジの音質比較(自由音場補正済み)
THD特性
上は60dBSPL@1kHz時の周波数帯域ベースのTHD特性、下は1kHzでの音量レベルTHD特性(30dBSPL~70dBSPL;適正音量レベル)です。THD特性は1%以下で、満足できる品質です。
音質解説
Shuoer Tape Proのサウンドは光沢感のあるサウンドを聴かせるモニターサウンドを持っています。ハリのある音でアコースティックギターに色気を感じますが、マイクロディテールに少し欠けるように思えるので、高域の色味がやや鈍く、鮮明感に欠けて聞こえる印象を受けるのが気になります。明度は高いのに、輝度が伴ってないので、高域の音はどことなく朧気です。
聴き心地が安定しているところはあり、マイルドでピアノやアコースティックギター、エレキギター、ボーカルの色気があるあたりにフォーカスされて聞こえるので、全体的に艶やかで気持ち良いサウンドですが、抜けがよくなく、どこか窮屈に聞こえます。たとえばパワフルな女声ボーカルのいきものがかりの曲を聴くと、ギャンギャン吠えて聞こえやすく、少しがなり立てているように、私には聞こえます。またシンバルはかなり細かく聞こえますが、音の抜けが高くなくシツシツ、チッチッとした点のような音に聞こえがちです。
ボーカルの聴かせ方が独特で、少し鼻にかかって媚びているのにのびやかさは抑えめで、私にはやや横長に聞こえます。中域と中高域の間に音が詰め込まれている感じがあり、このあたりに情報量が集中し、やや混濁しやすい印象を受けます。ボーカル周辺に音が集まって稠密に聞こえるので、モニター的に聴くには悪くありませんが、私には少し静寂感が足りず、密度感が高すぎる気がします。
一方で、音の艶は印象的で、ハリはきれいに聞こえるので、電子音の多い曲はわりと妙味を感じます。テクノのようなジャンルとは相性が悪くないと思います。イワクラコマキの「魔法少女と活字」シリーズのような、シンプルで静かなジャズハウスとは相性が良い気がしますね。やや輝度が低く、少し暗い雰囲気に思えますが、それがシックでかっこよく聞こえます。
ナナヲアカリ「パスポート」もわりと私の好きな雰囲気で聴かせてくれます。
音質のまとめ
長所
- ハリのあるサウンド
- 色気がある
- 比較的稠密に聞こえる中域
- マイルドな聞き心地
短所
- 輝度に欠け、抜けが悪い
- 快活さに欠ける
- ボーカル周辺に音が集まりやすい
総評
Shuoer Tape Proは艶やかな音を奏でるフラットモニター系サウンドです。聴き心地は安定しており、ギターは鮮やかに聞こえますが、全体の雰囲気はどこか暗く、快活さに欠けるところがあります。それがしみじみと音楽を聴かせるところがあり、味わい深いところもありますが、中域のステージングがやや窮屈でボーカルの周辺に音が集まりやすいのが気になります。
また、このレビューでは詳しく触れませんが、このイヤホンは基本的に出力インピーダンスが0Ωに近い高品質なDAPでの駆動が推奨されます。スマートフォンで聴くと、落ち着き気味の高域がさらに緩く聞こえやすく、大抵かまぼこになりやすいでしょう。このあたりについては完全版のレビューでもう少し掘り下げる予定です。
このイヤホンの最大の魅力はそのビルドクオリティの高さです。メンテナンス性の高さも考えると、かなり長く使えそうな頑強さがありそうです。
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