重要
Audiosense DT600について重大事実が判明したので、次の節以下に掲載されていた以前のインプレッションの内容は当てになりません。
なんと、Audiosense DT600は出力インピーダンスの高いヘッドホン用のアンプ向けに設計されていることが判明しました。とりあえず実際の周波数測定値を掲載しますが、高インピーダンスのヘッドホンアンプで駆動したそのサウンド(黄色の線:出力インピーダンス85Ω設定)は間違いなくAudiosense史上最高レベルであるだけでなく、高域の伸びは過去のどのIEMに勝る可能性のある画期的機種です過去最高レベルに匹敵します(←よく考えたら、Prisma Audio Azulをはじめ、「高域の伸び」のライバルはいます)。しかもサウンドバランスも非常に良い、神機種です(←この1文を書いたあと、よく考えたら、このイヤホンの最適インピーダンス設定をこれから探さなければいけないことに気づいたので、修正します。85Ω設定のサウンドで十分驚かされましたが、インピーダンス設定のどこかでもっと素晴らしいサウンドがあるかもしれませんし、このイヤホンに興奮して少し良く書きすぎた可能性があります。驚くような機種に出会ったときは本当にそれにふさわしいか、時間をかけた熟慮が必要です。ただ、公式ターゲットカーブが85Ω設定時に近いことは確認済みです)。レビューなどを書き直す必要が出てきたので、続報は追って報告します。
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元記事(以下の内容は古いので無視して構いません。DAPで鳴らしたときの平凡なDT600のサウンドについての内容です)
Audiosenseの新作、DT600のレビューを今、わりと必死で書いているところですが、その前にファーストインプレッションをお届けしたいと思います。今回はメーカーに印象を述べたメールがあるので、その日本語訳を掲載することにしました。
なんで今回はこんな感じにしたかと言うと、一部の人にはこのほうがDT600のイメージがより具体的にわかりやすいかもしれないと思ったからです。
というわけで以下、メール内容です。
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まず、DT600の美しいシェルを十分に堪能してから、音を聴いてみました。少し聴いただけで、AudioSenseがDT600で実現したかったことが分かったような気がします。
中音域がとてもきれいで、Susan Wongの癒し系の歌を聴いてみると、とてもリアルで生々しく、聴き取りやすく、明るいけれどうるさくなく、落ち着いた大人の女性の声が聞こえてきました。低音と中音のつながりがよく、ほぼすべての音楽で中域下部ににムードあるステージを作ることに成功しているように思われます。中低域がやや強いと感じる人もいるかもしれませんが、音楽的に聴かせるために十分な配慮がなされていると考えています。
問題は高音域にあると思います。伸びやかさが足りないとは思いませんが、高域が静かで、躍動感に欠け、時に繊細さに欠けます。もちろん、ここから高域をいじるのはちょっと冒険で、せっかく構築された中域の滑らかさを犠牲にするかもしれませんし、イヤホンを普段あまり使わない人にとっては、このように高域が抑えられている方が自然に聞こえる可能性があります(普段、高性能なスピーカーを使わない人は、高域が減衰した音に慣れています)。
私にはこのイヤホンの音場の限界が見えてしまうので、高域がもっと広がっていたほうがよいと欲が出てきますし、ボーカルの中心点が存在する少し上の中高域あたりで急に窮屈になって聴きづらくなるところがあるので、スムーズさに若干の難があるのを苦々しく感じますが、一方で、甘くにじむ音像に懐かしみを感じるので好きな音でもあります。
ボーカルの声はとてもチャーミングで可愛らしく、音楽の中心に大きく豊かな音像を感じさせてくれます。ボーカルは、明るいブラス、落ち着きがありながらも艶のあるピアノやギターとともに、明るく生き生きとした音を聴かせてくれます。AudioSenseが、音楽的で充実した響きを持つ美しい中域を作るために、多くの努力をしていることは明らかです。
私が言えることは、この音をより多くの人に楽しんでもらいたいということであり、Audiosenseも同じ気持ちではないでしょうか。
次に基礎的なレポートをお送りします。基本的には、DT600の将来の後継機種をより魅力的なものにするために、何をすべきかに焦点を当てるものです。
次のグラフは、私のHATSとアナライザーソフトで得られたDT600のサンプルの周波数応答データです。緑の点線は、私が受け取ったサンプルのRAW測定値です。参考までにHarman Target IEM 2017(2019年版よりも信頼している)と自由音場補正データがありますが、今回は重要ではないので無視して構いません。
重要なデータは以下のグラフです。
簡単に言うと、このグラフは、イヤホンを快適なリスニングボリュームで聴くことを前提に、音楽の全体像をきれいに把握したいときに、どの部分が余分で、どの部分が足りないのかを示しています。グラフの中には無視できる部分もあります。ベースヘッドを相手にしない限り、100Hz以下の低域にそれほど神経質になる必要はないし、10kHz以上の高域は個人の聴覚に委ねられる部分が大きいところです。
1kHz以下の中域下部に若干の膨張がありますが、音楽的なリスナーはこの膨張を好むかもしれませんし、DT600の音を聴いたとき、この膨張はDT600のサウンドキャラクターの中でうまく利用するために設けられているように思われたので、この部分を気にする必要はないと思います。何より、この膨張によって日本語の母音がよりクリアに聴こえるようになるので、日本のリスナーにも気に入ってもらえる可能性が高まります。手を加える必要はないと思います。モニターライクな音を好む人の中には、低域の聞こえが良くないと不満を持つ人もいるかもしれませんが、ボーカルや多くの楽器の音に豊かな土台を与えてくれます。中音域の印象的な質の高さが、低域の物足りなさを覆い隠してくれるでしょう。
個人的に非常に気になっていて、DT600のさらなる完成度を高めるために提案したいことが1つだけあります。それは、1kHzからの緩やかなロールオフを調整して、8kHzまでできるだけ水平に保つことです。2kHzで+2dB、4kHzで+2dB、8kHzで+10dBを目指してみてください。(イコライザーで効果を簡単に確認できます。)ボーカルの声がクリアになり、子音や口の形が聞き取れるようになれば成功です。
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Audiosense DT600は率直に言うと、イメージングにムラがあり、オーディオマニアにとって優れた機種ではありません。ボーカルにフォーカスされていますが、そのボーカルの音像も滲むところがあり、子音がはっきりしないところがあります。人によっては眠いサウンドに聞こえるでしょうが、一方でノスタルジックで甘い雰囲気があり、適度に濃厚で人肌感があります。
個人的な趣味で言えば、まろやかで好きな音ですが、オーディオマニア的な観点ではわりと厳しい評価の機種になります。
追記
その後レビュー書いていて気づいたんですが、このメールで私がおすすめしているサウンド、『家電批評』が酷評したことで有名な(?)AVIOT TE-D01mに近いんですよね。
『家電批評』がどうしてここまで酷評してるのかは謎ですが、AVIOT TE-D01mは無理なく日本語歌詞を中心に音楽を聞けるように非常に丁寧にチューニングされていて、聴き疲れしにくく、個人的にはかなり高く評価している機種です。そのサウンドには本当に驚いて、AVIOTへの見方が180°変わりましたし、このサウンドを作ったAVIOTのチューニングしている人を私は本気で尊敬してます。私の隠れた愛用機種ですし。だからTE-D01mのサウンドの評価が高いかって言うと、レビュアー的にはサウンドイメージはよくないので、「厳しい」ってなるんですが。
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