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【中華イヤホン Audiosense DT600 セカンドインプレッション】DT600を駆動する最適出力インピーダンスの追求

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Audiosense DT600

Audiosense DT600

 

 Audiosense DT600は目下私の注目を集めている機種です。それは同時に取り掛かっているJH Audio Roxanne AIONとかいう機種よりはるかに魅力的です。

 

 JH Audioが高級素材と最新技術、そして面白いオーディオギミックを思いつきながら、なぜRoxanne AIONという高額なゴミを作ったのかということについての私の考察はいずれ披露する機会があるかもしれません。

 しかし、そのサウンドがあまりにひどいので、それに到達する前にその意欲を失う可能性は高いです。私はR AIONをゴミとしか見ていません。毎回「どうしてこんなゴミを売る気になったんだろう」とつぶやきながら聴いています。欠点の一つは、面白い発想の低域ギミックは本当に必要な低域を調整しているわけではないので、有効に機能していないところにあり、それはセールスポイントに関わる部分で決定的に失敗しています。

 

 閑話休題。Audiosense DT600です。このイヤホンがどうも出力インピーダンスが高いアンプを使ったときに美しいサウンドを奏でるようだということは前回説明しました

 

サウンドバランスの追求

 では実際、どのインピーダンス出力時にサウンドカーブは理想的と言えるラインを通るのでしょうか?以下がAntelope Audio Amariを用いて生成した、出力インピーダンスの違いが持たらすDT600の周波数特性変化グラフです。変化は中域から高域にかけて多岐にわたっています。

 

 周波数特性カーブに究極の答えがあるかと言うと、そんなものはないということになりますが、いくつか考察の手がかりがあります。基本的には音楽の心臓部である中域がどれだけ丁寧に構築されているかに注目する考え方があり、それについてはハーマンターゲットカーブがいまのところ正解に近い答えを教えてくれます。

 中域部分を拡大し、ハーマンカーブを重ねてみましょう。おそらく多くの人にとって最適な中域は4.5Ω設定から19.8Ω設定のどこかにあるという推定が一応は成り立ちます。

 

 

 しかし、結論から言いますと、私はこの考えを破棄しました。音楽ソースを聞きながら、4.5Ω~19.8Ωのサウンドバランスと85.3Ωのサウンドバランスを聴き比べると、やはり85.3Ωのサウンドバランスの方が優れていると感じられ、実際私の評価スキームも85.3Ωのサウンドをより推奨していました。再び全体像に戻って考察を続けましょう。

 よく見ると、出力インピーダンス特性が与える変化の方向性は一つの法則性に従っていることがわかります。基本的にそれは出力インピーダンスを上げるほど、ボーカルの音像が前に押し出され、より生き生きとニュアンスを聴かせ、イメージングに関わる高域も改善される傾向があります。全体の形はステージングを考えても、出力インピーダンスが高いほうが合理的なように思われます。

 それはRTINGSターゲットに似た、ステージングポイントの各要素に明確な隆起がありながら、全体はHarman Target IEM 2017のニュートラルバランスにとどまるようになっています。これを簡単に説明すると、全体はスタジオチューニングに忠実なラインを守りつつ、音場の各所で楽曲の立体感を認識できるポイントを設けているということです。出力インピーダンスが大きいほどサウンドバランスはより理想に近づくと言えることは間違いなさそうです。どの程度までかはわかりませんが、出力インピーダンスを上げたほうが多くの人は良い音と感じるかもしれません。

 

過渡応答の劣化の問題

 サウンドバランスの最適解を一度は発見したように思いましたが、出力インピーダンスを上げることによる明確な問題点が発見されます。それが過渡応答の問題です。

 出力インピーダンスを上げるとIEM側の制動が悪化するため、過渡応答は悪化します。第一義的には、過渡応答の悪化はサウンドイメージにマイナスの効果を生み出します。

 実際に確認してみましょう。

 

 500Hzの方形波を入力し、オシロスコープでその形を確認します。0Ω時点では比較的方形波の箱型の形を保っているようです。この状態で音を聞いても、多少濁りがあるものの、音の立ち上がりと消失は比較的良いので、方形波の中心部分が十分に聞き取れます。

 

 85Ωはどうでしょうか。うーん…厳しいですね。この状態で方形波の音を聞いても、音像がラジオのように滲んで聞こえます。

 

 DT600の最高のサウンドバランス設定は、一方で過渡応答を犠牲にすることでイメージングの劣化を招くというトレードオフが存在することがわかりました。過渡応答の劣化は音楽ソースの純粋性を損なうという意味で、オーディオマニアからは歓迎されません。

 

 しかし、過渡応答の劣化は必ずしも悪いものではないということは知られて良いでしょう。

 現実世界では過渡応答のゆるい音が溢れています。過渡応答の強いパリパリした音は、音楽をモニタリングするのには良いですが、音楽を楽しむのに最適とは必ずしも言えません。過渡応答の高い音ははっきりと空間から浮かび上がって音が聞こえますが、過渡応答の多少悪い音のほうが空間に馴染んで聞こえるので、音楽的で調和的だと感じられる可能性は高いです。聞き疲れ感も相対的に低くなるでしょう。

 そういうわけで、出力インピーダンスに関する最終的な判断はしたがって、あなたがどちらの音を好むか、そしてそれを理解した上で、このイヤホンでどんな音楽を聞きたいかということで決定されるはずです。DT600は接続する機器によって、少し違った音を聞かせるはずなので、これを貴方好みに駆動するオーディオチェーンを探す楽しみがありますね。そしてそうして得られるサウンドはかなりバランスが良いので、トライする価値はありそうです。

 

 さて、DT600についての私の考察はまだ続きます。興味深いこの機種について、もっと深く理解をする必要があります。この機種が本当にAudiosense史上最高の機種かの結論はもう少し先延ばしになるでしょう(もちろんこのイヤホンがあらゆるイヤホンの中で史上最高の機種でないことはこれまでの考察からすでに明らかです)。

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