Edifier NeoBuds Proを手に入れましたので、そのファーストインプレッションとして、ノーマルモードの音質について語ります。
まずはNeoBuds Proの立ち位置などから今回のプロジェクトを紹介しましょう。
中国オーディオの巨人、Edifier
Edifierは中国オーディオ業界の老舗企業で巨人の一つですが、あまり一般には知られていないかもしれません。そして、Edifierの立ち位置は一般的な中国の低価格完全ワイヤレスイヤホンメーカーとは少し異なります。
とくに完全ワイヤレスイヤホンを出している中国のオーディオメーカーはスマホメーカーやガジェット系の企業のサブブランドや関連ブランドであることが多く、Bluetooth技術側からのアプローチで製品作りしているところが多い傾向があります。
しかし、Edifierは元々スピーカーコンポーネントやアンプを作ってきたバリバリのアナログ寄りのオーディオブランドであり、かの静電型技術で知られる日本の高級オーディオメーカー、STAXの親会社でもあります。彼らがSTAXを傘下に収めたのも、景気で浮き沈みの激しいオーディオ業界の荒波の中で、その一流のサウンドと技術力を絶やさないためでした。
彼ら自身が本当のオーディオファンとしてSTAXを信頼し、愛好しており、友好的なホワイトナイト的立場として世界最高水準として揺るぎない、日本の一流ブランドと提携したのです。
完全ワイヤレスイヤホンにおける音質革命の立役者の一つ
その彼らの完全ワイヤレスイヤホン製品は、登場した途端、市場で大きな反響を呼び、注目を集めました。中国製の低価格完全ワイヤレスイヤホンは若者向けの低域を強調したものが主流でしたが、Edifierは元々スピーカーメーカーやヘッドホンメーカーとして、ゲーマーから成熟したオーディオファンまで、世界中に多様な顧客層を持っていたため、とくに熟練したオーディオファンも納得できる音作りを行いました。そしてEdifierの物語は新たなステージへと進みます。
彼らの完全ワイヤレスイヤホン市場への貢献として、新進気鋭のブランド「EarFun」と組んで日本や欧米市場に投入した「EarFun Air Pro」の大きな成功はよく知られています。
熟練した工業デザイナーと優れたサウンドエンジニアや音楽スタッフからなるEarFunは、その使命として「Better Sound, Better Life」を掲げています。人々の音楽ライフをより豊かにする世界最高レベルの完全ワイヤレスイヤホンを作りたいという夢を抱いたとき、彼らがパートナーとして選んだのは優れたサウンドチューニングに基づいたスピーカー設計技術を持つ「Edifier」でした。優れたデザインセンスとサウンドを持つ彼らはEdifierが目的のための不可欠のパートナーであることを熟知していたのです。
そして、EarFun Air Proは世界中でヒットし、その蓋に印字された「Tuned by Edifier」の文字とともに、世界中の人に愛される製品となりました。Air Proは世界で50万台以上売れ、今も多くの人に愛されています。
Edifier 25周年記念モデル。技術の結晶
今年Edifierは創業から25周年を迎え、その集大成となる完全ワイヤレスイヤホン「Edifier NeoBuds Pro」のプロジェクトを開始しました。Edifierは彼ら自身がパイオニアの一翼として実現した、「音が良い完全ワイヤレスイヤホンが当たり前にある世界」の中で、さらに究極を目指す最高傑作を生み出したいと考えたのです。
それは高音から低音までクリアで大迫力なサウンドを持つことはもちろん、デザインや快適性においても一流であるべき製品でした。
高品質なハイブリッドドライバー構成と業界最高クラスのANCで実現する、かつてないサウンド体験
Edifierはオーディオファンを満足させるプロスタジオ級のサウンドを完全ワイヤレスイヤホンで実現するため、業界で最も信頼性の高いKnowles製のバランスド・アーマチュアドライバーと自身の技術の粋を集めてチューニングしたダイナミックドライバーを組み合わせました。これによりNeoBuds Proのサウンドは繊細さとダイナミックさを併せ持つ、業界最高峰のサウンドに到達します。
さらに喧騒に満ちた市街の中心部でも音楽に快適に没入できるよう、最大42dBもの深度を持つアクティブノイズキャンセリングを搭載しました。
Edifierが世界中の音楽ファンのために、持てるすべての技術を注ぎ込んだ渾身の製品が「Edifier NeoBuds Pro」で、現在Makuakeで絶賛クラウドファンディングされています。
サウンドインプレッション
今回はファーストインプレッションということで、Edifier NeoBuds Proのノーマルモードの音質と、ライバルとなるEarFun Air Pro 2と比べてどうなのかという内容をお届けします。
まずそのサウンドについてですが、私の測定値によると、Edifier NeoBuds Proはノーマルモード時、かなりバランスの良いニュートラルに近いサウンドを持っています。
以下が測定で得られたEdifier NeoBuds Proのノーマルモード時のサウンドです。灰色のHarman Target IEM 2017(私が高く評価するハーマンターゲット*1)と比べると、低域が強く、中域以上はわずかに高域方向にずれた形をしていることがわかります。
また、これはハイブリッド型イヤホンによくあるのですが、中高域から高域でピークが多めに出ている傾向があり、このあたりは少し音像が乱れ、乱雑に聞こえやすいことがわかります。ただし、こうした周波数特性の揺れ(いわゆる「共振分布」)は、ダイナミック感や表現の繊細さとして捉えられることもあるので、一概に悪いとも言えません。しかし、イメージングには悪影響を与えます。優れたイヤホンは一般的にこの共振をうまく抑制しているもののことをいいます。
高域の伸びはよさそうに見えますね。
実際に音楽を聞いてみると、やはり高域のピーク感が少しイメージングに悪影響を与えていることがわかります。ライバルとなるであろうEarFun Air Pro 2と聴き比べてみます(こちらも実際はEdifierがチューニングしている可能性がありますがw)。
下はEdifier NeoBuds ProとEarFun Air Pro 2、そして参考用にオーディオマニアの間で名機と言われているニュートラルサウンドIEMのTHIEAUDIO Legacy2を比較したものです。1kHzで正規化されていますが、これを見てみると、Legacy 2のようなサウンドを高く評価するガチガチのオーディオマニアはAir Pro 2のほうを好ましく思うだろうことは簡単に予測されます。
とくに中域を見てみますと、EarFun Air Pro 2がほぼLegacy 2と一致しているのに対し、NeoBuds Proはラインの下側にずれており、Neutralityで少し劣ることがわかります。この意味は、ボーカル音像を重視するなら、ガチガチのオーディオマニアはAir Pro 2を選んだほうが良いということです。
NeoBuds Proの場合、4.5kHz付近にあるピークも気になりますね。実際Air Pro 2と聴き比べると、NeoBuds Proのボーカルの子音が強調されて刺々しく、歯擦音がやや強く感じられる場面が多いです。またエレキギターのエッジ感やスネアの打撃感、ハイハットの粒立ち感や輝度が強調されて聞こえやすく、歯擦音やサ行が刺激的になりやすい傾向があります。Air Pro 2のほうが音の全体像は明るい方向にいるにも関わらず、NeoBuds Proのほうがアグレッシブで、少し聴き疲れやすいように思います。全体のスムーズさがやや不足しているせいでしょう。
たとえばロックを聞くときに、エッジーで少しピーキーなサウンドが好きならNeoBuds Proをおすすめできますが、ボーカルものやクラシックはAir Pro 2のほうが合うでしょう。Air Pro 2が透明度で勝ります。
まとめ
この記事で説明したEdifier NeoBuds Proのサウンドインプレッションは、Edifierがそれに自信を持っている根拠を十分に裏付ける、良好なサウンドバランスを持っていることを示しています。しかし、ライバルであるEarFun Air Pro 2と比較する場合、Air Pro 2のほうが大多数の人により良好なエクスペリエンスを提供する可能性が高く、とくにボーカル音像にこだわる場合はその差はかなりはっきりするでしょう。
今回の比較はあくまで周波数特性に表れたサウンドデザインのみでの話であり、機能性やANC性能などを比較していないので、Edifier NeoBuds Proが総合的にAir Pro 2に劣るという話ではありません。しかし、音質にこだわるタイプの人には、いまのところEdifier NeoBuds ProよりEarFun Air Pro 2を推奨します。
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*1:ちなみになぜ私が2017を2019より高く評価するかと言うと、たまたま、私の評価スキームでそちらのほうが高く評価され、実際にそれに近いサウンドが2019に近いものより私の好みに合っているからで、ハーマンの研究とは直接関係ありません。