XROUND FORGE NCを手に入れたので、ファーストインプレッションをお届けします。今回のユニットはXROUNDから読者に誠実な印象を伝えることを条件に提供されました。
XROUNDとは?
日本ではそれほど有名ではないかもしれませんが、台湾のオーディオブランド「XROUND」は知る人ぞ知るオーディオマニア必見のメーカーです。
このブランドはこれまでXROUND VERSA、XROUND AERO Wirelessと一部で非常に人気となった製品を2機種リリースしています。VERSAについてはレビューしましたが、とてもよくできていました。このブランドは音質と装着感を追求するあまり、同じく台湾の有名イヤーピースブランド「Spinfit」に専用イヤーピースを特注するくらいの音バカです。実証的な製品開発を行っており、最新の音響理論にも精通している先端的なブランドです。このブランドのチューニングモデルは3D音響に基づいて行われています。
最新のANC搭載モデル「XROUND FORGE NC」
今回紹介するXROUND FORGE NCはROUND初のアクティブノイズキャンセリング搭載完全ワイヤレスイヤホンとなります。ブランド的にはVERSAの後継機種という位置づけのようですが、サウンドはかなり変更されています。
サウンドインプレッション
ということで、サウンドインプレッションです。
まずは基本となる周波数特性ですが、以下がカプラーによる測定値です。
一応興味がある人のために今回の測定値について解説します。7kHzに共振ピークが設定されているのは、装着感を再現するHATSの測定値に基づいて校正しているためです。同時にXROUNDの公式測定データも7kHz付近を共振ピークとしていることから、ここに設定されています。
個人的な好みで言えば、VERSAのサウンドの方がよりニュートラルに近く、正統派に近いチューニングなので好みです。しかし、FORGE NCのほうが中域が広く、ボーカルは少し暗く聞こえ、落ち着きがあるので大人びて上品だという人もいるかもしれません。ただ、艶やかさはそれほど悪くないにしても、輝度がやや低く、音が鈍く聞こえやすいところがあるのはあまり好みではありません。
オーディオステータスを見てみても、エッジ感とクランチ感がかなり低く、中域の立体感の再現度がかなり悪い傾向にあることがわかります。ボーカルはしっかり聞こえますし、歯擦音は抑えめになるので高域に敏感な人でもほとんど不快感がなく音楽を楽しめるはずですし、鮮明感が高いので解像度が悪いと思う人は少ないと思います。それに地味な音の割にマイクロディテールも聞こえるので繊細さも良好というわけではないですが、まあ悪くないかなという程度です。
VERSAがニュートラル系スタジオチューニングを意識したかなり良い感じの調整だったので、あのはっきりくっきりした感じを期待すると、FORGE NCはどうもゆったりした聞かせ方で、時間の進みが遅いと思うかもしれません。
たとえばいきものがかりの名ロックナンバー「ブルーバード」を聴くと、アタックが弱く、スネアはスコスコした上品な音で聞こえ、ギターはボーカルを邪魔しないようにおとなしいエッジで、色味の少し薄い、落ち着いたサウンドでボーカルから十分離れて聞こえます。全体的にスムーズすぎて、ロックと言うよりもっと都会的なスムース・ジャズかシティ・ポップス風に聞こえます。これはこれで聴き心地が良いですが、なんていうか快活さに欠け、この曲にあふれている成長の絶頂期に近い、若い「いきものがかり」の溌剌さが感じられませんね。雰囲気は完全に「帰りたくなったよ」に近く聞こえます。
一方で、雄大さの点で優れていて、SENNHEISERの高級機種のようなステージングの広さと充実感の高いサウンド表現は別の層に好まれそうです。それこそいきものがかりであれば、前述の「帰りたくなったよ」とか「ありがとう」、「心の花を咲かせよう」というようなバラード系の曲はぬくもり感に溢れ、充実感たっぷりに楽しめますし、LiSA「シルシ」、Supercell「銀色飛行船」とか情感のこもったポップスは少し暗い空間の中でボーカルに穏やかなスポットライトを当て、雄大に聞かせます。
クラシックも静寂感が感じられる奥行きのある空間で上品に優雅に聞こえるので、雰囲気はかなり好きですね。それが原音忠実的かというと全く違いますが。
非常に感情に訴えかけるところのうまい、ノスタルジアのあるサウンドを聞かせるので個人的には好みですが、率直に言って万能機ではなく、奥行きが強調されすぎた、やや癖が強いサウンドです。まあ音聞いてたときから、ゼンハっぽいって思ってましたけど、周波数特性見たら、もう完全に「あれ?これ、どっかのMTW...ゲフンゲフン」って感じでしたね。まあ全体の作りが似ているだけで細かな相違があり、MTWのほうがもう少し鮮やかな音に聞こえると思いますが。
アクティブノイズキャンセリングは効果が薄いかもしれない
調整可能なアクティブノイズキャンセリングは最大の20でもおそらく多くの人にとって効果は薄い気がします。聴感と測定値で確認しましたが、耳栓目的なら他を当たるべきという感想でした。
ただし、これはXROUNDに報告したところ、ANCは低音強化イヤーピースを使用することで効果が高まると思うという回答を得たので、もう少しテストを重ねることにします。
aptX固有の問題あり
FORGE NCで今のところ最大に気になるポイントはaptX接続に時々ある厄介な問題があることです。
接続相手にもよるようですが、aptX接続時にものすごいノイズが表れてしばらく消えないことがあります。これは時間が経って接続が安定してくると減り、なくなります。以前一部の完全ワイヤレスイヤホンでaptX接続すると同様の症状がありましたが、久しぶりに体験しました。
まとめ
前作のVERSAがどちらかというとNUARL NT01AXに近かったのに比べ、FORGE NCはSENHEISERのような雄大なサウンドになり、前作VERSAを楽しんだユーザーにも新たなサウンドを提供します。アクティブノイズキャンセリングは留保付きなものの、現状ではおまけみたいなものという認識ですが、高機能なアプリが付属しており、何より装着感が良いので、いまのところ、個人的にはかなりおすすめですね。
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