audio-technica 完全ワイヤレスイヤホン ノイズキャンセリング Bluetooth マイク付き ATH-ANC300TW
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「耳への収まりは良く遮音性も良好」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「充電コネクタはType-C。デザインはコンパクトで持ち運びしやすい」
- 【3】音質「熱気のある低域を持つオーテクらしいサウンド」
- 【4】概括
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【1】装着感/遮音性/通信品質「耳への収まりは良く遮音性も良好」
ASIN | |
---|---|
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
4.5h/18h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | aptX/AAC/SBC |
防水性能 |
IPX2 |
装着感は良好です。やや大きめですが、ノズルが長く、丸いデザインで耳にしっかり嵌まります。遮音性も良好です。
対応コーデックはaptX/AAC/SBC。通信性能については、いつもはロケテストをするんですが、今回は行っておりません。新型コロナの流行もあり、外出を控えているためです。
FiiO M15にaptX接続で繋いでテストしましたが、距離耐性は悪くなく、5mくらいまでは充分繋がり、シームレスです。遮蔽物があっても大丈夫なようです。
テスト環境
今回のファーストインプレッションのテストはFiiO M15を使って行っています。
【2】外観・インターフェース・付属品「充電コネクタはType-C。デザインはコンパクトで持ち運びしやすい」
付属品はイヤーピースの替え、専用充電ケーブル(Type-C)、専用充電ケース、説明書です。
【3】音質「熱気のある低域を持つオーテクらしいサウンド」
周波数特性イメージ
下は自由音場補正済みです。
※周波数特性イメージはあくまでレビューの便宜上、個人的に周波数分布のだいたいのイメージを掴むための参考情報で、測定方法も測定されたデータも非常にアバウトで厳密な信頼性や正確性に欠けます。
ファーストインプレッション
今回は標準イヤピの中で、Mサイズを使ってファーストインプレッションを確認します。
熱気のあるドラムとベース、ライブ感のある熱狂空間(川田まみ「JOINT」)
このイヤホンの最大の魅力は熱気のあるベースとドラムとその暖かみを受けて聞こえるウォームな中域です。中域は後退的なので透明感やみずみずしさには欠け、ドライでもしゃもしゃするところがありますが、ロックテイストな曲とは相性が良いと思われます。
この曲は私のお気に入り曲なんですが、パワフルで厚みがあり、熱気も充分で適度な重さのドラムと、必ずしも深くはありませんが、ジンジンして広がりのあるベース、ジュワジュワした黒みのあるギター、少しアンニュイで暗めの甘い吐息のあるボーカルが非常にかっこいいです。
空間の清潔感は明らかに足りないので、すっきりとのびやかな音が好きな人には向かないでしょうし、ハイハットがわりと地味でクラッシュ感が足りず、カタルシスに欠けるという意見はもっともです。はっきり言って万人向けの音とは言い難いでしょう。しかし、私は大好きな音です。
温かみのある豊満で充実した床面(Nulbarich「Silent Wonderland」)
中域は必ずしも前進的ではなく、どちらかというと低域より後退的で、のびやかというよりはどっしりした感じになることもあり、人によってボーカル周りの清潔感がよくなく、暗くて聞こえづらいという意見もあるでしょう。そういうわけで必ずしもポップス向きとは言い難いですが、低域との繋がりが良い、若干埋没的なくらいの調和性の高いウォームな雰囲気が好きなら、間違いなくおすすめできます。もちろん篭もりが気になるタイプの人には基本的に向きません。
私はたとえばこの曲のような床面が柔らかく膨張的な、ボーカルとの距離感が近い曲をこういうイヤホンで聴くのが好きです。たしかにボーカル周りがもやもやし、人によってノイジーでしょう。しかし、ちょっと暗いニュアンスのぼんやりした雰囲気が、音楽全体にどこか紫がかった夕焼けの色合いを感じさせ、この曲の黄昏のような幻想的な雰囲気にマッチしていると思います。
もちろんこの音は万人向きではありません。個人的好みを抜きにして、理性的に考えれば、一般にSONY WF-1000XM3でこの曲を聴いた方がはるかにバランスが良く、ボーカルフォーカスも良く、透明感がある音がし、満足度が高いかも知れません。しかし、私にとって興味深く、心に沁み入るのはこのATH-ANC300TWの暗い音です。
温もり感のある穏和でたおやかな歌声、小麦色のアコースティックギター、沈み込みの良い大人びたピアノ(てこぴかり「ふたり少女」)
普段私がこの曲を聴くときはReecho×Peacock SpringだとかEarSonics S-EM6 V2の音が非常に好きで、透明感があり、明るくキラキラした雰囲気で聴くのが好みです。そしてたぶん一般的にはそのほうが満足度が高いことも承知した上で、あえてこのイヤホンで聴くこの曲の素晴らしさを語らせて下さい。
たしかに一聴すると地味です。ピアノの煌めき感は足りないですし、出だしはアコースティックギターも少し元気がなく、ボーカルもどこかもの悲しげに聞こえます。穏やかすぎるかなという第一印象をぐっと堪えたまま、しばらく聴いてみます。そうしてゆっくり、メロディーがだんだんとトーンを色づかせて流れてくるのを待ってみると、いつもなら透明でキラキラ聞こえるはずの音が、豊かに、少し下に末広がりに深淵に沈むような、まろやかな味わいで聞こえてきて、まるで大人びたJAZZのようなサウンドで聞こえてきます。
ボーカルは決して近くありませんが、厚みがあり、もちもちとしているというか、しっとりしているというか、深い甘味があって、優しく子守唄を聴かせるように、おとなしめで温もり感があります。
たしかに地味で色づきが悪いという人はいるでしょう。それはその通りです。まるで誘蛾灯あるいはガス燈の灯りだけで音楽を聴くように暗い音です。しかし、私にはとても美しく、ノスタルジックに聞こえます。私がオーテクの音が好きなことは事実なので、こういう音が素晴らしいという私の話はほとんど信じなくても構いませんし、好みの問題です。ですが、私は好き嫌いはともかく、この音はかなり魅力的で聴く価値があると思います。少なくとも、このイヤホン以外でこんな興味深い聴かせ方をする機種はなかなかないでしょう。
もの悲しく美しいバラード感のあるダークポップスの味わいは最高(Tia「ちょっと出かけてきます」)
私の好みでしかないですが、このイヤホンで聴く、こういう暗く切ないポップスは最高です。たしかに全体的にぼやけて聞こえるという意見もあるでしょう。その通りですが、涙に濡れ、心の痛みに動揺し、か細いボーカルの切々とした心象とこれほどマッチした表現はなかなかないと私は思います。熱気があり、情熱的なギター、ボーカルを引き立たせるかのように煌めきを抑えた抱擁感のある優しいピアノ、ボーカルを元気づけるかのように柔らかく膨らむドラム、ギラつきを抑えて、少し黒い小麦色の暖かいアコースティックギター。この美しい空間にいつまでも浸っていないなぁと思えることは事実です。
【4】概括
個人的には好きな音で、じんじんハートに響くので「相変わらずオーテク、またライブ感があってかっこよく、ボロボロ泣かせてくれる、いい音作りやがってバカヤロー♡」と思いますが、率直に言って万人向きじゃありません。是非一度は聴いて欲しい音ですが、籠もる音が嫌いな人は曲がれ右すべきですし、率直に言って同じ価格帯ならWF-1000XM3のほうが万人向きで「良い音(笑)」がすると評価されるのが普通だと思います。
ただハートウォーミングなJAZZやポップス、そして黒いロックサウンドにはとことん強く、すごく泣けて人間らしい温かみのある美しいダークサウンドです、少なくとも私には。この音が好きかも知れないという可能性のある、おそらく少数の人のためだけに今これを書いている、そういうインプレッション記事です。この音をバカにする人も多いでしょうし、難癖を付けようと思えばいくらでも付けられる音です。しかし、個人的には「だから何なの?この音が楽しめないんだ、ご愁傷様」って感じですね。
繰り返しますが、普通の「良い音」を聴きたいなら、WF-1000XM3を買っておきましょう。
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