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【カナル型イヤホン audio-technica ATH-CKB70 レビュー】シームレスで明瞭感のある精緻な中高域と輪郭感できれいに見せる品の良い低域。オーテクのバランス感覚極まれり

audio-technica ATH-CKB70

audio-technica カナル型イヤホン バランスド・アーマチュア型 ブラック ATH-CKB70 BK

 

おすすめ度*1

audio-technica ATH-CKB70

ASIN

B00OTADU36HMX

 独特の横長ハウジングは大抵の人の耳への収まりは良いと思うが、耳の形によっては干渉するかも知れない。遮音性はそこそこ高く、環境音は大分低減される。反面音漏れはカナル型にしてはだいぶ目立つほうかも知れない。

 

【1】外観・インターフェース・付属品

 付属品はイヤーピースの替え。細身のコードのタッチノイズは目立たない。

 

 

【2】音質

 まず、この機種の謳い文句は「低域の量感」とのことだが、率直に言って量感を感じる低域ではない。この機種が音質の割にあまり評判を耳にしない最大の理由はおそらくこの売り出し文句が見当外れなせいであろう。この機種の低域は量感より輪郭感で存在感を感じさせる音で、タイトでまとまりのよい、聞き心地が良く、中高域を阻害しない上品な音だ。量感低域モデルと聞いて想像される、ズンドコズンドコした音ではない。その点がこのモデルをドンシャリモデルと勘違いさせ、量感低域という言葉に惹かれる人はその素っ気なさに不満を感じさせるし、逆に本来このイヤホンを気に入ってくれそうなタイトな低域ファンは量感低域という言葉を聞いて直感的に避けてしまうのだろう。

 このイヤホンの音質は尖ったり刺さったりしやすいバランスドアーマチュアの高域を中域との連携良く、素直につながってしかも伸びが地平まで続くような伸縮力のある形で、精緻で明瞭感のある良い部分だけをうまく取り出して、耳当たりよく仕上げているところから語られるべきだ。曲によってはそれでも刺さるところは若干出てくるが、価格帯での表現力としてはかなり完成度は高い。そのうえで輪郭がはっきりしていて衝撃力がありながら、中高域を散らかさない分離感のある低域が丁寧に音場の底を支えている。この低域は中高域が鳴っているのをかき分けて出てきたり、そもそも前に出てきて自己主張してくる、そういう音ではない。中高域とほどよい距離感を保ちながら、空間に丁寧に深みを加え、タイトで衝撃力もあるドラムで引き締め引き上げ、引き立てる。このイヤホンは精緻で整った中高域がまずあって、そこに良質な低域が乗っている印象で、低域が先という感じのイヤホンには思えない。むしろ中高域の色気や透明感を求める人に対して、より訴求力の感じられる音だろう。

 

[高音]:キンキンしないほどよい透明感。シームレスな高低と糸のようにつながる伸縮力。冷たくなりすぎず、ほのかに色気を感じさせる音。尖りづらく刺さりにくい良音(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:高域に対して特にスムースに連携し、中高で途切れる感じはない。低域との関係もよく、連携して緻密さと広さを兼ね備えたプラネタリウム的空間表現をする。音の明瞭感は価格帯最高クラス。色気もそれなりに出る。

[低音]:タイトで締まりが良く、まとまりがよい。中高域を邪魔しないが、丁寧に存在感を出して曲の精彩を引き立たせる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:個々の音の描き分けは緻密で、空間表現的にも広さと密度をうまく両立させている印象。曲によって広さも出るし、密度感が前面に出てくるところもあってその意味でも器用さの感じられる表現力(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:芸が細かい技巧は。衝撃力や材質的な硬さ、深みはしっかり出る。重量感はあまりない。うるさくない上品で丁寧な良質の低域(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:スムース。尖るところなく、息も強調されすぎず、ほどよいシャープ感のある輪郭の中に少し厚みを感じる、若干透明に傾いた自然な声色。女性ボーカル・男性ボーカルに限らず、のびやかさをウリにしている曲にはめっぽう強い。

 

【3】官能性

 UVERworld「CORE PRIDE」はドラムの衝撃力と粘りのバランスが良く、迫力がありながら臭みを耳に残さないスムース感があり、耳当たりよく楽しめる。中高域は明瞭で瞬発力も良好。全体としてクリアでスムース、かつスパイシーという比較的理想的に近い形で量感だけやや弱いか。しかし量感の不足はドラムの粘りのよさでほとんど相殺されており、曲の骨格を表現する説得力は失われていない。ボーカルも不自然な尖りなどなく、中空に消えない線の通ったのびやかさで聴き応えがある。

 fhána「Appl(E)ication」はシャープでエッジ感を聞かせ、またこの曲の持ち味が引き立つ透明感を出すのがうまい。低域はタイトで深みを備えており、量感的な感じではないが、重みを感じられる。低域の存在感は中高域を邪魔せずに曲を引き立てる良質なもの。後半多用されるゆがむような効果音も輪郭がしっかりしており、効果はちゃんと出て、スパイシーさが感じられる。

 Aimer「茜さす」ではまず中高域の明瞭感がはっきり出るので、この曲のはっきりした色彩感は強めに出て情景への引き込みが感じられる。こうした輪郭の強い音の傾向のイヤホンではシンバルが尖って出過ぎてシャリシャリすることがあるものだが、このイヤホンのシンバルは輪郭感にブレがなく、一定の色気も備えていてまとまりがよいので、シャリッと軽くは鳴らない。低音から高音まで密度感と精緻さに余念がなく、明度の高い形で曲の世界観を伝えようとする意志を感じる。

 ねごと「アシンメトリ」では耳に粘りすぎないが、重みも感じさせる低域が出鼻からぐいっと引き込んでくる。躍動はタイトで曲に推進力をしっかり与えてくれる。個々の音がはっきり出るが、ボーカルは埋没しない。エッジ感強め、スパイシーな傾向で曲調はやや明るく元気、若干重厚さ弱めといった感じの表現。

 

【4】総評

 価格もこなれていて、現状5000円台から7000円台くらいまでで買える機種。量感のある低域という看板には若干違和感を覚えるが、表現力としては価格帯標準以上で、1万円クラスに匹敵する。精緻な中高域が魅力のバランスドアーマチュア音好きな人には、それを引き立てる低域表現力も備えた廉価な日常使用イヤホンとして有力な選択肢になる。低価格でも絶妙なバランス感覚でハートを貫いてくるオーディオテクニカのバランス感覚の良さを感じさせ、個人的にはおすすめである。

 

【5】このイヤホン向きの曲

 若干ボーカルの出足がゾワゾワと雑草味が出やすく、気難しいところのあるこの曲だが、このイヤホンは息の振動の輪郭をうまく表現し、潰れる感じが出ずになかなかのクリーンスタートをしてくれる。ボーカルは透明度のあるきれいなのびを見せるが、透かした先の暖かみが感じられるほどにはふっくら感も残している。ピアノの透明感は言わずもがな、色味としても冷たくなりすぎず尖りも出にくいので、サビでも曲調が厳しい感じにならず、色気を残した叙情感のあるものになっている。

 

 スムースでメリハリあるドラム。同じようにシームレスでほどよい色づきと強い明瞭感のある中高域。描き分けが土地密な空間にパスパスとキレのよいドラムが駆け足を刻み、ボーカルに推進力を加えている。思春期の純粋で輝きに満ちた世界観が明るく快活に展開される。

 

 シンバルの粒の細かさが曲の精彩を引き立てる。ドラムもタイトで心地よい。何より魅力的なのはサビで、水面との距離感を表現するボーカルの上昇感。水面がすーっと遠ざかるように、ボーカルも深みから丁寧に浮かび上がっていく。この上昇に途切れる感じはなく、シームレスに高低の連携が利いている。同様に弦楽も高低が綺麗に出て、空間を躍動的に、ゆらゆらとした水中の感覚を味わわせてくれる。

 

 弾みと深みがありながら重くなりすぎず、ほどよい軽快さと解放感のあるドラム。からかうように遊ぶ多彩な表現を見せるボーカルにもよく追随し、高低の切り替えと連携が良くてうまい。尖りや刺さりも出やすい曲だが、うまく空間に溶かして耳当たりよく、しかも緻密に聞かせるバランス感覚の良さ。緻密でしっかり聞かせてくれるのに聞き疲れしにくい。

 

 ホーミーの倍音的表現もブレなく尖り無く綺麗に聞かせてくれる。高低がスムースでつっかかりや分断がなく、倍音の重層性やサビでの高声の天へとまっすぐ伸びていく感じが明瞭。音にギラつく感じもなく、気持ちよく聞ける。

 

 金管の色気、弦楽のスタイリッシュさ。タイトな低域が統率力を発揮して自由で個性的に踊る楽器たちをまとめあげていく。とくに弦楽の奥行き感の緻密さはハンパなく、細い奥まった音も途切れずきれいに続き、しかも透明感を維持して聞こえてくるのは素晴らしい。

 

 これも価格を考えると絶品クラス。のびやかなボーカル、混濁併せ持つ独特のハスキーボイスが空間に沁み入る感覚の表現力。星空のように煌めき感のある広い空間の中をボーカルが自由にたゆたう。

 

 意外と気持ちよく聞くのは難しいかも知れないこの曲。リズムの輪郭がしっかりでないとなんか間延びした感じに聞こえやすい。だがこのイヤホンの緻密な表現力は薄味になって溶け込みやすいリズムとボーカルの輪郭をしっかり組み立ててくれる。途中やや刺さりやすいところがあったのだけは限界を感じたが、よく頑張っている。

 

 名曲「dis-」の早見沙織カヴァー版。有坂美香のオリジナル版より艶やかさとのびやかさが増しており、爽快でシームレスな表現力のうまいこのイヤホンにはこっちのバージョンのほうが合う。金管の色気も良く、やや盛られたパーカッションもうるさくならず緻密に描き分ける。かなり満足できる。このほかに個人的な神曲「ブルーアワーに祈りを」も実に中毒的に聞けるので、是非おすすめしたい。

 

audio-technica カナル型イヤホン バランスド・アーマチュア型 ブラック ATH-CKB70 BK

 

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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。