ISELECTOR 密閉型ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン Bluetooth対応 ブラック BNC80
おすすめ度*1 |
---|
付属品と機能が満載のミドルレンジBTヘッドセット。 その搭載する機能は多彩でレビュー1つで紹介しきるのはとても困難だ。 どうしてもレビューは長文になるので、まずは要点だけ最初に記載する。
【このヘッドホンの機能・特徴】
1)BTとAUX有線ケーブル両対応。
2)ノイズキャンセリング機能
3)aptX対応。
4)軽量で柔軟だが頑丈なボディ
5)ケーブルとケーブルレス、ノイズキャンセリングにより相貌を変える3つの音質、2つの個性
6)密度のある音だが、しかし音質的にずば抜けたものはない
◆◇◆
【1】外観・インターフェース・付属品
携行ケースが付属しており、パッケージにはケースに収まった形で収納されている。
付属品はマニュアルの他、AUXケーブル・USB充電ケーブル・航空機用のデュアルジャック・ステレオ標準ジャックを付属する。 それぞれコネクタやプラグといった他機器への接続部分は金メッキコーティングされ、錆防止が図られている。
メインフレームは軽量、曲がりとひねりに耐性があるが頑丈さも兼ね備えている。 イヤーマフは大きさと厚みがあり、耳をしっかりと包み込み、音漏れも比較的小さい。意外に圧迫感はあり、当方は3時間ほどで耳が痛くなってきた。
入力インターフェースはAUXかBlueTooth。 aptX対応。 USBケーブルは充電専用で音響入力用ではない。 またヘッドホン側にボリュームコントロールなどはなく、あるのは電源スイッチとノイズキャンセリングスイッチのみ。
左イヤーカップが電源。 右イヤーカップがノイズキャンセリング。 充電時は左イヤーカップのLEDが赤く点灯する。 なお動作時もLEDが青く光る。
ペアリングはまずヘッドホンの本体電源を入れて、Bluetooth接続場面で「BNC80」の表記を検索する。 クリックすると接続完了する。
◆◇◆
【2】音質
BlueToothとAUXケーブルで音味が変わる。 またノイズキャンセルをONにすると音の鮮やかさがやや増し、低音の振動感が強くなる傾向にある。
[高音]:突き抜け感に富むが、BTではやや音が尖る傾向があり、大音量で刺さる。AUXケーブルでは尖りが丸く出て痛さのない聞きやすさが出るが、突き抜け感は減り、どちらかというと篭もった感じに変わる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は密度感が強く近い。音にはほどよい温度感があるが、自己主張はそれほど感じず、はっきりいって地味。
[低音]:深掘り感と存在感はあるが躍動感がなく少し沈む。80hzくらいから振動感があり、50hzくらいでピークを迎え30hz以下ではほとんど感じない。20hz程度まで震える感じがあり、深掘りされた音場を感じやすい(分島花音「killy killy JOKER」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:密度感が強く、全体としてタイト。方向感はそこそこ感じられるが、広さはなく平面的に感じられる。ノイズキャンセリングを入れるとボーカルや楽器音の近さが増し、少し前屈みな音場になる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:立ち上がりは悪くないが、弾みがなく少し元気がない。ドラムは下方向に地鳴りを響かせる感じも少なく、迫力もあまりない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルはノイズキャンセリングなしではやや楽器に近く、ノイズキャンセリングを入れるとやや前面に出てくる。
◆◇◆
【3】官能性
さすがにこの価格帯だと低価格帯無線ヘッドホンにあるノイズ感のようなものは全くない。 だがBT接続だと大音量で高域がやや尖りすぎて聞きづらいこと、低音が振動するわりに音に存在感が薄いことに少し不満を感じる。成熟が足りないせいかもしれないが、数日鳴らして馴らしてもあまり味わいに変化を感じなかった。
音はよくいえば素直、悪く言えば地味。 落ち着いた曲はそのせいか少し暗く、元気がなく、ぼけた感じになりやすいのは明確な欠点に思う。
たとえば多田葵「Brave Song」は落ち着いたリズム感のあるメロディーと透明感のあるボーカルが特徴だが、リズムに弾みがそれほどなく、ボーカルにも鮮やかさと透明感があまりないので、温度感だけが目立って全体としてほんわかしている。 悪く言えば面白みのないボケた音で聞いてて眠くなる。
Claris「STEP」もはじけた感じよりは安定感重視の音になっており、サビに向けて鮮やかになっていく展開を比較的落ち着いて楽しみやすいが、躍動的な楽しさはない。 価格帯なりの解像度の良さはあって緻密さは感じられるが、それだけではウリになりにくいのではないか。 同じClarisでも「irony」や「nexus」は元々低音に存在感のある曲なので、このヘッドホンだとほどよい振動感もあって気持ちよく聞ける。 ただボーカルはきらびやかさが足りない気がする。
ただし味付けは自然なので、面白みがない一方で丁寧に聞かせる姿勢は見逃せない。 いろいろ聞いてた中でおっと思ったのが坂本真綾「プラチナ」。 落ちつき過ぎない曲調、ほどよく広がりのある弦楽の音、透明感と力強い粘りのほどよく混ざったボーカルがしっかりと聞かせる。 少し昭和歌謡のような吹き鳴らし感はあるが、比較的気持ちよく聞けた。
◆◇◆
【4】総評
ヘッドホンは定価と実売価格に開きがあったりするので、このヘッドホンが実際はどの価格帯に収まるかはわからない。
ただ作りからもミドルレンジ帯、つまりだいたい8千円以上~2万円を射程に収めているように思う。 実際機能面で見ればこの価格帯で通用する多機能性を備えており、十分価格相応といえるだろう。
一方でこの価格帯は個性的なヘッドホンが多く充実してくる価格帯でもある。 ただ高音質というだけで勝負しづらいことも確か。 このヘッドホンは価格相応の解像度があり、楽器音の多い曲でもそれぞれの楽器を鳴らし分ける緻密さを感じるが、そういう高解像度というものに頼ってしまっていて、そこに何か一工夫が感じられない。
むしろこのすぐ下の価格帯である5千円クラスは有線に限れば面白みのある製品が多く、そうしたエントリークラスの強者と渡り合うには魅力が足りないのではないか。 価格相応の実力は感じられるものの、それだけでは少し推しづらい。
ノイズキャンセリング機能も素直に環境音に作用するというよりは音味そのものを変えてしまっている印象で、本来のノイズリダクションの意図とは異なり、成熟途上の性能を窺わせる。
【関連記事】
*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。