Shokzは2022/3/1、骨伝導イヤホンの新フラッグシップモデル「Shokz OpenRun Pro」を正式に発売しました。この記事では測定値をもとに、音質面でそれが前世代からどう進化したのかを明らかにします。
新世代骨伝導イヤホン「Shokz OpenRun Pro」
Shokzによれば、この最新モデルは前世代から次のように改善されたとされています。
- 第9世代骨伝導技術により、明瞭でクリアな中域・高域を実現
- 「Shokz TurboPitch™」を搭載することにより、驚くほどに深みのある低域を実現
- Shokz史上初の専用アプリ対応
音響構造上の最も大きな違いはドライバーユニット周囲のハウジング
OpenRun Proの前世代からの最大の変更点はドライバー収納部の構造が変わったことです。OpenRun Proは以下のように、ドライバー収納部周辺が開放的な構造になりました。
OpenRun Proは前面・背面・底面の3方向がダクトで開放されている
音質への影響
ではShokz OpenRun Proの開放的な構造は音質面でどのような影響を与えているのでしょうか?実際に測定値で前世代機のShokz Aeropexと比較し、確認しました。
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
音質傾向の違い
商品説明から、AeropexよりOpenRun Proのほうが低域が出ている印象を受けるかもしれませんが、私の聴感ではAeropexのほうが少し低域が強く、また音も全体的に近く聞こえます。ただしShokzによると、社内ラボの客観測定と主観評価によって低域はOpenRun Proのほうが良好な評価を得ているとのことです。
この点についてはRTINGS.comが計測データを掲載しているので、それが参考になるかもしれません。ただし、RTINGS.comの測定データを見ると、骨伝導特有の振動が測定結果に出ていないと思われる点には注意が必要です。
- OpenRun Proの記事:https://www.rtings.com/headphones/reviews/shokz/openrun-pro-bone-conduction
- Aeropexの記事:https://www.rtings.com/headphones/reviews/aftershokz/aeropex-bone-conduction
一方で、ShokzはOpenRun Proでより滑らかな周波数特性を実現したとも述べていますが、上記RTINGS.comの測定値で前世代のAeropexと比べても、周波数特性のピークディップが少なくなっており、全体的に滑らかで自然なサウンドを実現できているのは事実と言えるでしょう。
THDの違い
歪率を確認してみると、ShokzがOpenRun Proで中域・高域で改善を施したと述べている根拠がわかります。
以下に示すのは1番目がOpenRun Pro、2番目がAeropexの高調波歪(THD)測定値です。
たしかにShokzの主張通り、中域から中高域のあたりで劇的に3次高調波歪が低減されており、それが全体的なTHDの改善につながっているようです。これによりOpenRun ProはAeropexより雑味の少ない音を実現していることは事実と言えるでしょう。
解像度の違い
最後に解像度を見てみます。解像度は構造上の違いが出ているのか、傾向が異なっており、それが音の印象の違いに現れます。しかし中域付近でOpenRun Proの解像度がより高いことが測定値から確認され、全体の数値も高めです。したがって、OpenRun Proのほうが解像度ではより優れているということが言えるでしょう。
青がOpenRun Pro、赤がAeropex
レビュー記事
まとめ
この記事では簡潔に主要なオーディオスペックでOpenRun ProとAeropexを比較しました。Shokzの主張通り、その音響性能は概ねAeropexから改善されています。それはより自然な滑らかさがあり、明瞭度も高いサウンドを提供するでしょう。
しかし、サウンドバランスやキャラクター性は異なっており、Aeropexの単純な上位互換というわけではありません。とくに低域やレンジ感を重視する場合、もしかするとAeropexのほうがより好みに合ったサウンドを提供する可能性があります。
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