おすすめ度*1 |
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ASIN |
ヘッドバンドの締め付けは優しめ。ゆるゆるではないが、人によっては付け心地が甘く感じられるかも知れない。イヤーマフは厚みがあって、やや蒸れやすいが、装着感は良い。遮音性はそこそこ。音漏れは少し目立つ。
amazonの商品ページにも箱にも機種名らしき記載は無いが、付属のマニュアルに「V9」と明記されていた。
型番の類似性から、おそらくKooBee V6と同じく「Dongguan Zeming Electronics」製ではないかと推測される。
【1】外観・インターフェース・付属品
付属品は英語のペラペラなマニュアルペーパーが1枚付属している。ケーブルのタッチノイズはない。
このヘッドセットはamazonの商品ページで7.1chサラウンド対応と書かれている。商品ページの記載を信じると、USBコネクタ部分にDACが搭載されていて、(ドライバー数的にリアルサラウンドとは考えられないので)バーチャルサラウンド対応しているかのようである。
リアルサラウンドの可能性を排するのは、リアルサラウンド製品はドライバー数が出力チャンネル数より多くなるはずという単純な理由からである。たとえば以下のRazer Tiamatの4Gamerのレビューを読んでもらえば事情はわかるだろう。一見「4つのサウンドユニット搭載」と商品説明で紛らわしい書き方をしているので、4×2の8ドライバーでリアルサラウンド対応かと思わせるが、実際には片側2ドライバーで両方合わせて4つであるのでドライバー数が足りない。
ということで、この機種はバーチャルサラウンド対応ではないかと推測されたわけであるが、ネタばらししてしまうとただのステレオヘッドセットであった。この製品の商品ページの主張通り、外部サウンドカードでのバーチャルサラウンド対応である場合は、専用のドライバーソフトのインストールが不可欠である。しかし、このヘッドセットにはドライバーソフトのCDは付属されておらず、Windows PCに繋いでも標準のステレオUSBヘッドセットのドライバーで判別される。Windowsからは明らかにステレオヘッドセットとして認識されているのだ。
それでも万が一、PS4ではサラウンドに対応している可能性もあり、また考えられないことであるが、ドライバーなしで7.1chサラウンド対応するサウンドカードなんてものがあるのかもしれないと、小一時間ほど念のためweb検索して情報を集めたり、いくつかの音源でテストしてみたりしたが、やはりステレオのようである。最終的には、ペラペラの英語マニュアルを隅から隅まで読んで、Windows標準ドライバーで動作していること、マニュアルの末尾で明確に「stereo headphone」と明記されていることを確認した。
amazonの商品ページではPS4対応と書かれていたが、マニュアルではWindowsでの動作しか保証していない。 まあ決まり文句のように「The specifications are subject to change without notice(仕様は予告なく変更される場合があります)」と書かれているので、もしかするとマニュアルの作成時期より後にPS4に対応する仕様になったのかもしれないが、経験上そんなことはまずない。
どちらにせよ中華製ゲーミングヘッドセットの「7.1chサラウンド対応」と「PS4対応」という文言はまずうさんくさい。これまで販売者やメーカーとやりとりしてきた経験からいえば、メーカー側が動作確認しているわけではなく、販売者が勝手に宣伝文句として、USBであればPS4で動くだろうと無思慮に入れている可能性が高い。
正直ここまでのチェックで時間をだいぶ食われてしまった。普通であればWindowsにステレオと認識されている時点で結論は出るのだが、なまじ商品ページで「外部サウンドカード搭載」などと謳っているので、特定に余計な時間がかかった。よくある中国製品の誇大広告癖はこの製品ではとくに悪質極まっており、この場合、甚だ迷惑としか言いようがない。明らかに嘘とわかる「7.1chサラウンド対応」ならすぐ特定できるのでかわいいが、ついてもいない外部サウンドカードがさもあるかのように表記するなど、素人には紛らわしく、消費者を惑わすものでしかない。
過去にはUSBゲーミングヘッドセットを謳いつつ、実際にはイヤホンジャック対応のゲーミングヘッドセットだったmixcder MAT2という製品もあった。MAT2はマニュアルから記載が間違っていたので、中国では製造現場でも混乱があるのかもしれない。
【2】音質
仕様の面では騙りが多く、信頼の置けない本製品であるが、大口径2ドライバーの構造は嘘ではなく、音質的にはなかなか悪くない。ゲーミングモデルらしく低域に寄せており、音楽を聴くと明らかに重たげで暗く、もっさりする。が、ゲーム向けとしてはバーチャルサラウンドを使ったときの定位感の明瞭性の強さ、足音と銃声音の分離感の良さと重みのある衝撃音で、この価格にしてはかなりいい表現力を持っていると言える。かなり重厚感が出るので、動画でもかなりの迫力を感じる。
[高音]:高域は太く暗め。天井感がある(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:全体的に音が太い。弦楽もぶっとく肉厚で、ピアノもかなり重みを感じさせる鳴り方。
[低音]:ぶっとい振動で100hzから40hzまで素直な減衰。30hz以下はかなり落ち着く(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:定位感も良く、奥行き感と広さのバランスも良い。やや広め。低域の厚みがかなり奥まで広がっており、地平線を感じやすく、動画向きに思う(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムは地熱感がやたら強く、ボワボワした音で鳴る。ハイハットは薄味気味(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルは高域で重たげになるので女性ボーカルは暗く感じやすい。
【3】ゲーミング体験
ゲーミング用であるが、付属にサラウンドソフトウェアはついていない。以下は手持ちのサラウンドソフトウェアを用いてテストしている。
やや広めの空間で定位感良く聞かせてくれる。オープンワールドゲームには向く。衝撃音や空気感は太めで重厚に出るので、ホラーゲームの臨場感もかなり強い。炎音には落ち着いた太い存在感があって、肉厚でリアルな印象を受ける。
PUBGではチャットしながらでも銃声音は十分よく聞こえる。銃声は太めで輪郭はあるが、浮つかず低域でしっかり出る音なので把握しやすい。広めで圧迫感も少ない。
【4】マイク
マイク品質も悪くない。篭もらないクリアな声色で自然に聞こえる。指向性は必ずしも高くないが、マイク位置が口に近いせいかキーボードの打鍵音はやや抑えめ。チャット用としては必要十分、配信用としてもそれなりの品質は確保されている。ノイズもない。
【5】総評
音質やマイク品質、使い勝手を考えると価格以上のコスパは感じられる。とくに音質は動画鑑賞でもなかなかに迫力を感じさせるし、音楽では妙なライブ感が出るので、ブーミーでメリハリ感には乏しいものの、一部の低域ジャンキーには好まれるかも知れない。2ドライバーの火力もたしかに迫力と解像度に貢献している。定位感はかなり優れている。
宣伝姿勢にいろいろと問題を感じる製品ではあるが、それなりの実力は確かに感じられるのでおすすめできる。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。