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【ゲーミングヘッドセット mixcder MAT2 レビュー】衝撃力のある音、重みや風切りのしっかり感じられる空気感。そして良好な定位感。5000円前後のクラスでは一つのメルクマールになるだろう機種

ヘッドライン

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Mixcder ゲーミングヘッドセット ヘッドホン 高音質 USB ヘッドセット ゲーミングヘッドホン マイク付き 1年保証期間 ブラック MAT2

 

おすすめ度*1

mixcder MAT2

ASIN

B0732ZQ6PY

 ゲーミングモデルとしてはかなりデザインはかっこよく、LEDライトを点灯しなければ普通のヘッドホンとしてもなかなかに悪くないデザイン。マイクのデザインが若干浮いていて個人的にそこだけ気に入らないが、このマイクは上向きに収納できるので使わない人でも邪魔にならない。付け心地はかなり柔軟で優しく、イヤーマフも柔らかい。ネックバンドのひねり耐性もぐにゃぐにゃとはいかないが良質で、伸縮性もよい。装着感、デザインの面では価格帯標準以上の洗練性を感じる。

 なお色は商品写真で見ると一見渋いマットブラックかメタリックブラックに見え、かっこよく見えるが、実際はプラスチック感丸出しのクリアブラックなので、高級感はあまり感じられないだろう。

 密閉性はあまり高くないというか、開放型であり、装着しても無音状態だと環境音がかなりダイレクトに聞こえるため、音自体の没入感は高いものの、環境に依存し、遮音性は低い部類。音漏れも結構だだ漏れに近い。首掛けしても音はしっかり聞こえるので、DJホン的な使い勝手がある。

 

【1】外観・インターフェース・付属品

 まずこの製品は「USBヘッドセット」と説明書で名乗っていたので、てっきりUSB音声入力もいけるのかと思ってSONY NW-A25にUSB接続したが、音が鳴らずに困惑した。PCで試してみた結果、結局USBのほうはよくある、LEDを光らせるだけの電源を取っているタイプのようである。ゲーミングPCだけでなく仕事用のノートPCや家族のPCでも試したが、USB音響用ドライバーがインストールされるといった動作はない。たまたま手に入れた個体が不良品で不具合が発生している可能性もあるが、それならそれで問題なので、個人的にはこれはUSBゲーミングヘッドセットではないものとしてレビューしている。

 説明書には「最初はUSBドライバーのインストールが終わるまでお待ち下さい」と書かれていたり、Q&Aで「Q:USBを挿しても反応しません」「A:USBをハブなどを通さずPCに直接挿して下さい」というふうなやりとりまで記されていて、構想段階ではUSB音源入力に対応する予定があったか、説明書執筆者が製品をよくわからずに書いてしまった可能性を感じさせる。

 開封当初は「USBヘッドセット」だと思い込んでいたため、コネクタ形状からUSB音源+マイク出力と思っていたが、実際にはLED用USB+サウンドマイク入出力AUXという構成であった。エントリークラスならともかく、この価格帯だとPS4を意識してUSBでの音源に対応してほしいものだが、その点残念である(むしろエントリークラスのほうがUSB対応なうえに疑似サラウンドソフトウェアまでついていて配慮してたりすることさえある)。USBで音が鳴らないものをUSBヘッドセットと書くのは誤解を招くので正直この点は配慮に欠けている。

 付属品はマイク入力とステレオ出力を分ける変換アダプタ、日本語含む多言語説明書。ケーブルはゴムコーティングタイプだが、タッチノイズはそれほど目立たない。操作インターフェースはボリュームコントロールだけだが、本体左耳背面にあり、コード途中にないので煩わしくないのも個人的に高評価。

 

mixcder MAT2mixcder MAT2

 

【2】音質

 既述の通りこのヘッドセットのUSB音源入力機能が再現できなかったので、以下の音質レビューはあくまでAUXケーブルを通した状態のものをレビューしている。

 

 音質面ではゲーミングモデルらしい鳴り方の傾向をし、低域は爆発力があるタイプで空気感や臨場感を重視しており、ピアノ音などはその中でかなりクリアに出るので、劇伴的な音をきれいに入れる、映画的な音響構造を丁寧に意識している。そのため、音楽はライブ音源向き。高域の表現は若干キンキンした感じで曲によっては気になるかも知れず、またCDに入っているような普通のバランスの曲だとドラムとボーカルが近くてうるさげに出やすい。映画館のEDスタッフロールで音楽を聴く、妙にボーカルが近くてやや下から曲の密度をたっぷり入れてくる、あの感じだ。クラブサウンドも臨場感が感じられるので、そういう音源にも向く。

 

[高音]:高域の高さはよく出ている。鮮明度は透明に近い感じでややキンキンして中低域の音が鳴っていてもしっかり浮き上がるタイプ(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:奥行き感は感じられやすい。曲によっては中域の奥まる傾向のせいでスカスカした感じを受けるかも知れない。ただ定位感の表現はうまく、左右もしっかりしていて、空間の趣向を凝らしている曲の味わいはなかなか。弦楽ののびやかさもかなりきれいに出る。

[低音]:低域は量感と弾けのあるスマッシュ感のある音。開放構造のせいか耳に粘る感じがなく、こもる感じがなくきれいに広く抜けていき、穿ちも深さを感じる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:低域が出張ってこず、ボーカルの下に丁寧に広がって空間全体を深みから持ち上げてくれる天井の高いドーム構造を感じる。開放的な表現力は実に魅力的(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:ハイハットは塩振り感が強く出過ぎず、まとまりがよい。ドラムは表面の弾けが強めに感じられる。衝撃感がくっきり出るので空間的なボリューム感はよく出る上、重苦しく滞留せずに抜けるので中高域に被る感じがない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:ゲーミングモデルらしくボーカルの分離感は明瞭。歪みが出るところがあるので、曲によってとくに女声ボーカルは若干不自然に感じられやすい。しかし高低の再現度はよく、高さも出る。

 

【3】ゲーミング体験

 ゲーミング用であるが、付属にサラウンドソフトウェアはついていない。以下は手持ちのサラウンドソフトウェアを用いてテストしている。ゲーム音響再現性能に関して言えば、結論から先に言うと、これは個人的にかなり買いだ。

 

 空間的な表現が多く、ステルスアクションでもあるので非常に丁寧な定位感がプレイフィールに大きく影響する「Shadow of War」は風切り音やオブジェクト音の表現も丁寧に出る。結構生々しく出るので肝心の敵オークの足音や存在感が埋没しないか心配したが、こちらも方向感がしっかりしていた。このゲームは映画的な劇伴曲が多用されているが、こちらもしっかり聞かせてくれるので、没入感はかなり高い。オープンワールド系ゲームでの使用で不満はないと思う。

 「Minecraft」でも、メェメェうるさい羊とワンワン吠える犬の中にいても、ストーンゴーレムの足の重みがドスドスと埋没せずに聞こえてくる。ゾンビの声も耳元近くに下からえぐってきて、ゾクゾクさせてくれ、一人プレイでも没入感高く楽しめるだろう。

 

【4】マイク

 サウンドブラスターの機能を切った状態でも、マイクは自然でクリア。かすかなホワイトノイズは背景に感じるものの、鼻がかる感じもなく、妙にエコーがかったりボソボソした感じもない。こもった感じがないので品質的に実況にも耐えられそうだ。

 

【5】総評

 ゲームだけでなく動画も楽しめる臨場感ある空間表現が魅力。音楽でも癖が強すぎて音が歪んで感じられて興を削がれるといった低価格帯の大抵のゲーミングヘッドセットによくある欠点が感じられにくく、むしろ開放感と臨場感のある表現が下手なヘッドホンより音楽を盛り上げてくれる側面もある。クラブサウンドやライブ映像、サントラ曲を楽しむ目的でも十分な実用性に長け、価格以上のパフォーマンスが感じられる。付け心地もよく、マイク品質も良好。見た目的にも臭みが少なく、パッと見た感じではDJスタイルでかっこよさも感じられる。全体として見ると、結構驚くパフォーマンスで満足度は高い。ここまで仕上げてきてもらうと、どうしても今後はこの製品の到達点を基準にゲーミングヘッドセットを見てしまいそうだ。

 ただしゲーミングヘッドセットとしては疑似サラウンドソフトウェアなどは付属しないことや、USB音源入力ではないところなどに注意が必要だ。もしこのヘッドセットが今の手ごろな価格を維持しつつ、USB音声入力に対応していたり、標準で良質なソフトウェアが同梱されていたら世界がひっくり返るのに実に残念である。

mixcder MAT2

 

【6】このヘッドホン向きの曲

  一定のボリューム感がないと味が十分に出てこないところもあり、意外と多くの音響製品で消化不良を感じやすいこの曲。だが、このヘッドホンではベースの深掘り感がよく、低域が感じさせる熱気のある充実感が感じられるうえ、海面に反射する陽光を感じさせる透明音も鮮烈で旨味がうまく出ており、夏の地中海の穏やかで眩しいバカンス気分を空間いっぱいに満たしてくれる。(菅野よう子「Olive Wind」)

 

 劇伴色の強いこういう曲を立体感を出しながらうまく表現してくれる。孤高を感じさせるピッコロの音が甲高く、清涼感のある透明な鳴り方できれいに出る。風の香る草原、燻る荒野、潮騒に満ちた海辺、寂れた炭鉱街。空間性に優れ、臨場感の強い表現がそういう旅の足跡が浮かび上がらせてくる。(蓜島邦明「Railtown」)

 

 この曲の魅力は映画的な空間表現がうまく出ないと全然楽しめない。まずこのヘッドホンは爆発力のあるパンチをうまく利かせて空間全体の拡がりをしっかりと意識させてくれる。そのうえで奥行き感と左右を意識した細かな表現の中毒性を味わえる音響機器は稀だ。(浜田良美「未来への神話」)

 

 この名曲の中毒性も実際になかなか味わうのは難しい。通常版もこのヘッドホンは味わいをしっかり出してくれるが、それ以上に最終回で流れた劇伴色の強いこのバージョンがとくにおいしい。寶船に乗った鯛の尾頭付きといえるほどの豪勢な音の盛り合わせ。(有坂美香「dis- (R&B Ver.)」)

 

 思いの全てを吸い込んでいくような星空に向き合うボーカルの寂寥感を鼓動のように空間に伝えるドラム。この曲の味わいポイントもしっかり押さえてくれるヘッドホンだ。(ひろえ純「サイレント・ヴォイス」)

 

 この曲の圧倒的密度感の中でもボーカルは埋没しない。高級機種にあるスリム感や色気は出ないので、ディテール感に劣るところがあり、これくらい盛り込んだ曲になるとだいぶうるさいところも出てくる。直情で音を流して込んでくる、やや聞き疲れしやすい傾向になるが、それでも価格を考えるとよくこの曲の迫力を表現している。(奥井雅美「輪舞 -revolution-」)

 

 こちらも実にスパイシーで魅力的に聞こえる。定位感も若干強調された良好な形で出ており、空間的な味わいも文句ないレベル。同価格帯のヘッドホンでもなかなか気持ちよく聞かせてくれるものは少ない。(Fire Bomber「SEVENTH MOON」)

 

 重厚でしっかりと重みを感じさせながら、一方で音が吸い込まれていく広い空間が見事に再現される。コーラス表現はやや奥まり、好みを分けそうだが、量感と開放感のバランスが良く、価格帯では文句ない水準で実現している。何より弦楽の表現の高低感が素晴らしく、中盤の情感表現の強い部分で気持ちよいカタルシスを与えてくれる。(澤野弘之「Unicorn」)

 

 しっかりした空間のディテール感、色づきがよく鮮明度のある音楽空間の中でほどよく分離して浮き上がるボーカル。勢いとパンチ力のある爆発表現。この曲の世界観そのものに投入されてしまうような、飲み込んでくる没入感がある。音の鳴り方に粗があるところがあり、歪みのようなものは細かく感じられる気がするが、開放的で広さを感じさせる上に定位感は良好でこれもまた中毒的。

 もちろんゲーミングヘッドセットであるし足りない点は多い。高級機種、たとえば同じように開放的な音の傾向のSENNHEISER HD599と聞き比べると、個々の音の色気やディテール感に断然の差があって、HD599で改めてこの曲を聴き直すと、この機種の中低音のバランスの悪さや高域の情緒不安定さが目立って雑に思えてくるしHD599の芳醇な音がいかに洗練されているかを思い知ることになる。HD599は音がきしむ表現なんかはネジを巻いていくような様子が感じられるほど緻密に、しかもそれをギザギザさせずに丸く耳に優しく聞かせてくれる。全体としてリラックスしながら聞き疲れせずに文句なくこの曲のディテールを耳当たりよく味わわせてくれ、長時間音楽に浸れる。その点、このヘッドホンは粗っぽく、少し音をむき出しすぎたり、悪い感じのエグ味を残してしまっている。たとえばこの機種の魅力と褒めちぎったパンチ力さえ野暮に思え、もうちょっと空間にうまく溶かして曲全体の調和性を意識して出したほうがいいと説教したくなってくる。だが定位感と空間表現力に関しては音の拡がりはむしろこちらのほうがやや広く若干明敏に感じられるほどで遜色を感じない。結果としてはこの機種の力不足や粗をいろいろ感じさせられるとしても、5000円ちょうどくらいのゲーミングヘッドセットでHD599と比較してみたくなるような気を起こさせてくれるというのも、なかなか稀だ。

 なおアメリカのamazon.comのレビューで思わず天下のAKG K7XX様(HD599の前型HD598のほぼほぼ格上ライバル)を口に出して、そっちよりも振動が利いていていいかもしれないなんてうっかり口走っちゃっている人もいるので、同じような印象を持つ人は海の向こうにもいたのだろうと思う。この機種にとっても「その衝撃力、人によってはAKG K7XX以上」という実にわかりやすいキャッチフレーズが出来たのではないだろうか。(水瀬いのり&久保ユリカ「動く、動く」)

 

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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。

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