Baseus Simu S1 Proを手に入れましたので、そのファーストインプレッションとして、サウンドインプレッションをお届けします。
この機種は技適取得済みで、近日中に日本でも発売されると思います。おそらく実売8000円くらいで(どうも日本国内での価格設定は、海外より良い水準になりそうです)日本のamazonに登場するのではないでしょうか。
Baseusについて
Baseusは中国のガジェットメーカーで、少なくとも日本のオーディオファンにはあまり馴染みがないブランドだと思います。2011年創業なので、中国のガジェット系ブランドとしては古くはありませんが、それほど新参というわけでもありません。
Baseusのブランドビジョンは「Base On Use」、つまり実用主義と、「Base On User」、ユーザー第一主義で、それがブランドネームに結びついています。中国では自らのブランドショップを展開するほどの比較的大規模なブランドですが、日本では、少なくともオーディオの分野で知名度が高いとは言えないでしょう。
元来はAUKEYと同じような、バッテリー関連の製品を得意としており、中国でのスマホの急速な躍進とともに成長したガジェットメーカーです。
Baseus Simu S1 Pro
Baseus Simu S1 ProはBaseusの完全ワイヤレスイヤホンシリーズであるSimuシリーズの最新フラッグシップモデルです。
以下の6つの機能を特徴としています。
- アクティブノイズキャンセリング(ANC)
- アンビエント(ヒアスルー)機能
- 通話用の環境ノイズキャンセリング(ENC)
- 低遅延通信
- 没入感の高いサウンド
- ワイヤレス充電
ビルドクオリティ
早速サウンドインプレッション……と言いたいところなのですが、このイヤホンのビルドクオリティに触れざるを得ません。
私が手に入れたのはブルーなのですが、全体的な作りはかなりよく、高級感があります。少なくともケースの品質感はAirPods Proと同等以上、本体も遜色ないくらいのように思います。
接続相性問題がありそう
もう一つ触れておかなければいけないことがあります。それは接続品質です。
私の手に入れた個体は、AACでFiiO BTA30でつないだ場合と、SBCでFiiO M15につないだ場合に通信が不安定になる傾向があり、露骨な音飛びやノイズが見られました。AACでCayin N6IIに接続した場合も細かに音飛びがありますが、それほど目立ちません。どうもFiiO製品との相性の可能性もありますが、少なくとも私の個体は、どの機器でも多かれ少なかれ音飛びが出るのは今のところ確かなようなので、気になります。
この点はメーカーに確認してみます。
サウンドインプレッション
今回はファーストインプレッションということで、Baseus Simu S1 Proのサウンドインプレッションと、各モードの音の違いについてお届けします。
まずそのサウンドについてですが、私の測定値によると、Baseus Simu S1 Proのノーマルモード時のサウンドはニュートラルサウンドの中域を彫り込んで凹ませたドンシャリというべきもので、低域と中高域がやや目立ち、中域で奥行き感が強調されるサウンドを持っています。
以下が測定で得られたBaseus Simu S1 Proのノーマルモード時のサウンドです。灰色のHarman Target IEM 2017(私が高く評価するハーマンターゲット*1)と比べると、1kHzで正規化した下のグラフでは、ニュートラルから低域も高域も強調したドンシャリサウンドに見えます。
しかし、見方を整理するために、今度はニュートラル系IEMのThieAudio Legacy 2のグラフと高域と低域を合わせて正規化してみると、むしろニュートラルサウンドの中域を深堀りしたサウンドという解釈のほうがわかりやすいと思われます。
実際、Baseus Simu S1 Proのサウンドは低域と高域のバランスが取れているために、全体のイメージングはわりと聴き心地がよく、中域のイメージングが窮屈に感じる以外はほとんど違和感がありません。
中域のイメージングの悪さは、とくに女性ボーカルとギターサウンドに現れやすく、とくに力強いボーカル表現のあるロック系のサウンドではボディが薄っぺらく、シャウト感が強く出やすいですね。大橋彩香「ダイスキ。」、ASCA「Howling」なんかは清潔感があるとも言えますが、ボーカルの肺活量が足りない感じの、腹から出る母音の安定感のない、少し喉をからして歌っているような、やや息苦しい表現になっていますし、たとえば小田和正「まっ白」を聞くと、ボーカルがシンセやギターと混濁しやすく、サ行はじめ子音も刺々しく、ガチャガチャして聞きづらいですね。
少なくともボーカル音像は同じ価格帯のライバルでは、EarFun Air Pro 2に軍配を上げる人が圧倒的に多いでしょう。
逆にいえば、ニュートラルよりは低域と中高域は目立つので、艶やかでダイナミックな感じは強いといえ、EDMは奥から伸びている感じが強調され、立体的に聞こえるとも言えます。Sia「Chandelier」はAir Pro 2より奥行き感が出て面白いといえる側面もあります。
各モードのサウンドの違い
次に各モードの音質の違いを見てみましょう。以下のグラフが赤がノーマルモード、緑がアンビエントモード、青がアクティブノイズキャンセリングモード時の周波数特性になります。
このイヤホンはモード変更しても音質の変化が事実上ないようですね。
まとめ
この記事で説明したBaseus Simu S1 Proのサウンドインプレッションは、全体バランスは悪くないですが、中域のイメージングの不自然さがとくにボーカルものやJAZZ、クラシックで不利になりそうなことを示しています。一方で、ロックファンやEDMリスナーには、その立体感を強調するサウンドがダイナミックで好ましく思える可能性があります。ボーカルはシャウティですが、そのシャウト感を勢いがあると肯定的に判断する人もいるでしょう。ただ音楽で充実感を重視する人にはあまりウケなさそうなサウンドです。
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*1:ちなみになぜ私が2017を2019より高く評価するかと言うと、たまたま、私の評価スキームでそちらのほうが高く評価され、実際にそれに近いサウンドが2019に近いものより私の好みに合っているからで、ハーマンの研究とは直接関係ありません。