LIZER LABをご存知ですか?頭外定位イヤーピース「JIJU」シリーズを開発している日本のオーディオブランドです。じつは11/4からMakuakeでJIJUの第3世代、「JIJUFIN」がクラウドファンディング開始しています。
というわけで、今回はこの興味深いイヤーピース「JIJUFIN」の紹介です。
JIJUFINの特徴、自然な拡散効果のある反射音の実現
JIJUシリーズの開発目標は頭内定位するイヤホンの音の不自然さを解消することにありました。LIZER LABによれば、JIJUFINはイヤホンの課題である頭内定位の解消を目的として、直接音だけでなく、自然な音場に存在する反射音も再現し、より没入感の高いサウンド再現を狙ったものです。
前世代から装着感の改善
JIJUの第一世代はとくに、独特の装着感によって付け心地が安定しないことがありましたが、JIJUFINでは装着感もかなり改善されています。私の感じでは第2世代のJET以降、ごわつく感じが少なくなり、耳への収まりがより安定しましたが、JIJUFINも同様の装着感を引き継いでいます。個人的にはいつものイヤーピースよりサイズは小さめに選ぶと、しっくり来ることが多いですね。
サウンドインプレッション
JIJUFINには使用に適した条件があります。その条件とはイヤホンのベント穴の位置です。イヤーピース付近で後ろ側にベントがある場合、効果が薄れるので推奨されません。そこで今回JIJUFINのファーストインプレッションをするにあたり、ベント穴がイヤーシェル上部に前向きについており、サウンドがニュートラルに近いThieAudio Legacy 2を使うことにしました。
周波数特性
まず周波数特性です。以下はHATS(音響測定用ダミーヘッド)によって測定されたThieAudio Legacy 2の標準イヤーピースでの測定値とJIJUFINによる測定値です。
以下のグラフはLRと書いてありますが、実際には青がJIJUFIN、赤が標準イヤーピースになります。
今回の測定値ではイヤーピースをJIJUFINに換装すると低域と高域の両方で減衰が見られ、また4kHzでピークの上昇が見られました。4kHzは鮮明感が高まる一方、キンキンして聞こえやすい傾向があるので、この点は気になりますね。高域の減衰によって左右が耳元から離れ、耳に音が張り付く頭内定位感は減ると思いますが、音場が少し狭く聞こえやすいでしょう。
ポジティブな効果としてはピークディップ(山谷、凸凹)が減るため、倍音の響きがよりナチュラルとなり、自然な減衰感で聞こえることが期待できます。
時間周波数領域
次に時間周波数応答関連の測定値を確認しましたが、最も驚いたのはC50(音声明瞭度指標)およびC80(音楽明瞭度指標)の測定値です。JIJUFINは直接音と反射音を増大させ、音の解像感を高めるとされていますが、それが実際に測定値で確認できました。
まずC80ですが、青のJIJUFINのグラフを赤の標準イヤーピースと比べると、周波数特性で弱まっている高域と低域以外で全般的に明瞭性が改善されることがわかります。実際に聴感上も中域の透明度がすぐわかるほど改善されて聞こえるので、これは効果が高いですね。
しかしさらに驚いたのはC50の大幅な改善です。これにより音声作品、たとえば朗読作品とかASMR、ボイスドラマ、ナレーション作品の解像度が劇的に改善されます。実際ASMR作品をいくつか聴いてみましたが、ボーカルの解像度が非常に高いので、生々しく没入感が高く聞こえることを確認しました。
レビュー
まとめ
JIJUFINで期待できる効果
- 耳元近くから聞こえる感覚の改善(音が耳から離れる)
- 倍音表現がより自然になる
- 解像度の改善
- 音声作品の聞き取りやすさが劇的に改善
- 音場は少し狭くなる
まだファーストインプレッション段階ですが、今回の測定値に基づけば、JIJUFINはその主張通り、一般的なイヤーピースより格段に解像度が向上することが期待でき、全体的な周波数特性もピークディップが平滑化されることが期待できるため、より自然なサウンドを実現していると言えます。
今回の場合、4kHzの強いピークが音楽鑑賞の場合に耳障りになりやすいのが気になりますが、これはイヤホンとの相性次第というところもあります。サウンド全体のイメージングの改善はこの欠点を差し引いても余りあるところがあり、とくにASMRなどの音声作品に対しては高い効果が期待できそうです。
【関連記事】