おすすめ度*1 |
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ASIN |
いわゆるAirPodsタイプの完全ワイヤレスイヤホン。ハウジングは非常に細いデザインのAirPodsに比べると、かなり太く、見た目でかなり目立つ。大きいので装着性について不安になったが、これに関しては比較的安定している。満員電車などで人と直接衝突するような場面でなければ、外れることはないだろう。
完全ワイヤレスで一般的なカナル型とは異なり、外耳道にイヤーピースを挿入しないので、カナル型のイヤホンが苦手な人にはよい。
遮音性は余り高くない。音漏れも比較的目立つので注意。
aptXには対応しない。遅延・途絶はなく、通信性能は安定している。ただし稀に片耳だけ音が一瞬消える場面がある。3曲に1回くらいのペースで再現する。一瞬なのでそれほど問題ないと思うが、明確な違和感は感じる。
amazonのレビューで左右チャンネルが逆という指摘があったが、これは再現しなかった。左右のチェック動画でテストしたところ正常。ただamazonのレビュアーがわざわざ嘘を書いているとは思えないので、個体差はあるかも知れない。
【1】外観・インターフェース・付属品
付属品は充電用ケーブル、専用充電ケース、英語マニュアル。日本語説明書についてはメーカー側から電子説明書が案内される。商品到着から電子説明書の案内まで多少時間があり、商品到着と同時に閲覧できないので注意。
【2】音質
音質的にはまず全体的に音が近い。ただ外耳道に挿入される一般的なカナル型モデルに比べると、空気に溶け込んで聞こえるので音が全体的に丸く、シャリ感はない耳に優しい音。そのため圧迫感を感じづらく、聞き疲れしにくいのは良い。音質的にも中域に少し厚みがあって、高域低域はやや控えめなフラットに近い形で聞こえる。ただし低域はかなり空気に溶け込むので衝撃感や重量感は薄まり、柔らかく空間を支える穏やかな音になるので、低域ジャンキーには向かない。高域は突き抜け感はほどほどにやはり上で空気に溶け込む。
[高音]:高域の伸びやかさは感じやすいが、上で空気に溶け込むため突き抜け感は柔らかい(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:弦楽とピアノともに演出はあまり感じず、比較的自然に聞こえる。空気に溶け込む感じで耳に優しい。
[低音]:低域の存在感はあるが、中高域以上に溶け込む感じが強く、エッジは丸く、衝撃感や重量感はあまり強くない(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:音は近め。奥行き感はそこそこ(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムはボボンボボンという柔らかめの音。張りは少し出るのでタイトさはわずかに感じるが、衝撃力はほとんどない。シンバルはほぼ空間に溶け込んで存在感は薄い(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ややウェットで高域で若干暗く思えるが、息音にはほっこりした温もりのある声色。男女ともに丸く優しい感じで聞こえる。
【3】官能性
奥華子「さよならの記憶」は全体的におだやかに聞こえる。透明感のある奥華子のボーカルの空間への溶け込み感も良く、ピアノの旋律も優しく広がりキンキンしない。比較的良好に聞こえる。ほかに「桜並木」なども相性が良さそうだ。
fhána「Appl(E)ication」も比較的暖色で溶け込みのよい音響に合う。ただし、この曲では繊細な電子音表現にやや雑味が出て価格なりの表現力の限界を感じるところはある。しかしシャリシャリ感もなく、刺さらず、なめらかに聞こえるボーカルは、若干高域で暗いとはいえ、味わいは良好。低域にもゆったりした厚みを感じる。
鈴木このみ「DAYS of DASH」のような曲は、明らかにドラムに衝撃力が無いため、疾走感はかなり弱い。高域でのボーカルの突き抜け感もほどほどで清涼感も出づらい。明るめで元気いっぱいすぎる曲とは相性が悪いか。
山崎あおい「君のいない夏なんて嫌いだ」はもっさり気味ではあるが、やはり叙情感が出るのでよい。弦楽のつま弾きも柔らかく空間に溶け込み、ボーカルの息遣いもほっこり。ただサビでのボーカルには天井感が感じられ、すっきりと天空に抜けてくれないところがあるのは好みではないので、残念だ。
【4】総評
独特の装着感と外観は好みを分ける。見る人が見れば明らかにApple Airpodsのレプリカに見え、本家をよく知っている人から見ると妙に太い筐体デザインは洗練さに欠けているように見えるだろう。空気に良く溶け込む音響は耳に優しく、聞き疲れしにくくて叙情的な味もあってよい。全体的に音が丸いので、音にエッジ感やアタック感を求める人には向かない。
コスパ的には悪くないように思うが、片耳がときどき一瞬途切れる症状は非常に気になる。amazonのレビューでは短期間での故障報告もいくつかあるので、耐久性の面で不安を覚えることは確か。それを除けば、同価格帯の完全ワイヤレスらしからぬ、ギスギスしたところのない安定感のある暖かい音質はかなり高く評価できる。
【5】このイヤホン向きの曲
全体的に空気に溶け込む優しい味わいが叙情的な音楽空間を作り出すので、Aimerの曲ではこの曲と相性が良い。全体的に音が近いので、この曲の立体感の妙味は出にくいが、暖色のボーカルと丸い低域、柔らかい弦楽ののびは全体的にセピア色の情景を思わせて曲調に合う。
空気に溶け込む表現は、同じく叙情的なこの曲にも合う。パーカッションや低域の鳴り方が耳に優しく、弦楽には穏やかな輝きを感じさせ、非常に温もりがある。そして空間に溶け込みながら広がっていく良質なボーカルが一番素晴らしい。(池田綾子「ふたつの街で」)
スウィートな味わいの強いこの曲も、ほっこり甘味が増す。シャープなイヤホンで聞くとベタベタした音味になるので、こういう曲はこのイヤホンでないと満足感が出にくいのではなかろうか。(河辺千恵子「Little Wing」)
低域が出過ぎると重すぎてしまうこの曲だが、このイヤホンの低域の具合はちょうどよく感じる。重厚感が少なめで圧迫感はないが空間に響く地鳴り感はしっかりしていて暖色の色合いをよく加える。楽器音もボーカルに空間に良く溶け込み、一体的に聞こえてくる。(宮島依里「わたしぼっち」)
ドラムの表現がこの曲向き。そこそこ張りがあって曲にタイトさを加えつつ、柔らかい膨張感のある音が曲調の叙情感を演出する。ボーカルもふっくらして温もり感が出ている。ベースの表現も暖かい。ただしアタック感はやや緩いので、少しもっさり気味に聞こえる。(nano.RIPE「月花」)
このイヤホンの温もり感を味わうなら、この曲も外せない。ベースの空気に溶け込みながら聞こえる、優しい鳴り方が非常によい。(岡崎律子「For フルーツバスケット」)
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。